名も無き星からの船 その十
さて、進まない話も、ようやく緊迫感の出るシーンになってきました!
タイピングは進むんだ、タイピングはね。
僕が、この居住区10の町に収容されてから、3日が過ぎた。
その間、色々と異能力(僕の場合、テレパシーと、少しだけ超知能があるようだ。長老は、それでもダブルの異能力者は、過去にも数えるほどしかいなかったぞ、と言っていた)を鍛えてはいたんだけどね。
数日だけど、僕はようやく自分のテレパシーを制御するコツを覚えたよ。
あと、今まではまき散らしていたようなテレパシーを絞り込むことも覚えた。
変な感じだね、不特定多数の人じゃなくて、狙った人だけにテレパシーを送るってのも。
それだけじゃないよ、僕のテレパスとしての素質は送信型なんだって長老から言われたけれど、実は少しは受信能力もある。
それでなきゃ、フロンティア船長からのテレパシーは受信できなかったからね。
受信能力も少しは上がったよ。
さて、明日ようやく、この宇宙船、世代宇宙船こと第一号宇宙船は異星人の宇宙船フロンティアとのランデブーを迎える事になってる。
長老は、先頭グループへ、異星人とのファーストコンタクトは、テレパシーで僕が最初に始めたので、異能力者の皆じゃなくても僕だけは、その場に参加せてほしいと願いを出したそうだ。
まあ、その答えは聞かずとも分かるよ。
異能力者と普通人とは、同じ場に出席できないと船内法に規定されているので、許可できないって断られたんだよね。
その点について、僕は楽観視している。
テレパシーって、思考そのものを交わすものだから、時には感情や性格と言ったものまで交わしてしまう。
その点で、僕はフロンティアの船長に期待しているんだ。
彼は純粋に自由と平和を愛していると。
ところで、異能力者の町というだけあって、居住区10には様々な異能力者たちが住んでいるんだ。
超知能、接触テレパス、サイコキネシス、過去幻視に未来幻視、千里眼。
さすがに、それ以上の能力は無いようだけど、それでも凄いよね。
昨日、興味があって未来幻視の力を持つ人の家に行ったたんだけど、僕の顔を見るなり、こう言われたよ。
「おお、未来は確定しないが、大きな平和と自由をもたらすか、それとも未来を闇に包んでしまうか。君の行動に、全てがかかっているだろう」
挨拶もしてない、聞きたいことも言わぬ前から、これだった。
その一言だけで、後は何も語らずに彼は僕らを追い出した。
明日、僕がなにかするんだろうか?
その結果によって、僕らや、この船だけじゃなく、故郷の星まで平和と自由が来るか、それとも閉ざされた暗い未来になるか、が確定されるんだろうな。
今日、僕らは千里眼の力を持つ人の家に来た。
その人は、僕らを歓迎してくれて、こう言った。
「依頼は想像つきますよ。異星人の宇宙船を千里眼で覗けないかって言うんでしょ?確かに、千里眼で覗くことは可能です。でも、今は何か、壁のようなものがあって、私の力が異星人の宇宙船には届かないようですね。うっすらとは見えますが……一言だけ。巨大な宇宙船です」
僕は更に聞く。
「他に、特徴は分かりませんか?船の形だけでも分かれば助かります」
「ふむ……あとひとつだけ。巨大な小惑星ですね、形は。噴射口も無ければ、この船のような推進用爆薬の放出口も無し。球形に近い巨大な小惑星ですよ。どんな原理で宇宙航行しているのか、想像もできません。こりゃ、敵対行動を取ること自体が無意味ですな」
とんでもない回答が返ってきた。
僕は、異星人だろうがなんだろうが、少なくとも科学技術は基本的にこちらの発展形だと思っていたんだから、驚くよね。
異星人の科学力は、小惑星そのものを宇宙船として航行させることすらできるんだな。
「ありがとうございました。明日には全てが分かりますよ。異星人の姿や形も、どうやって小惑星を宇宙船としたのかも」
僕達は、礼を言って千里眼能力者の家を辞する。
本当なら、僕のテレパシーでもってフロンティア船長と交信し、リアルタイムで情報交換すれば良いことなんだろうけど、さすがに今の世代宇宙船とフロンティアのランデブー間近だという事を考えると邪魔はできない。
全ては、明日だ!明日!
明日、世代宇宙船とフロンティアがランデブーした後なら、聞きたいことも、こちらの願いも、全て相手に伝えられる。
と、さっきまで僕は浮わついた気持ちで、明日を待っていたんだけど……
いきなり、警報が響き渡る!
何?
何が起こった?
僕達が長老の家に走って行くと、そこには保安班の姿が。
それに、何だい、この数?
暴動でも鎮圧するつもりか?
「居住区10の異能力者の方々に通告する!これより72時間、この居住区10の町より出ないこと。これは、肉体的なものに限らず、精神的なものにも適用される!テレパシーや千里眼など、居住区10内での使用に関しては認めるが、それ以外の居住区やエンジンルーム、先頭部にテレパシーや千里眼反応を送る事は禁じられる!我々は、異能力検知器を持っているので、この針が一定基準以上に振れるようなら、その人物は強制的に電磁バトンで気絶させるので、そのつもりで」
なんだって?
明らかに異星人との接触を断とうという意思があるぞ?
長老に手を伸ばす。
手を触れさえすれば、長老に意思を伝えられる。
届いた!
長老が、僕の疑問を代表して聞いてくれるようだ。
「強硬にならんでも、儂らは抵抗なんぞせんよ。それより、1つだけ聞きたい。これは先頭グループ、船長からの最上位命令なのか?」
長老の言葉に、保安班のリーダーらしき男が答える。
「いや、船長からの命令ではない。各居住区の統率者からの要請で、先頭グループが保安班に命令を出したと聞いている。こちらも力づくで負傷者や死者を出したくないのだ。おとなしく従って欲しい」
そうか……やっぱり市民の過激派の要請が強硬だったんだろうね。
統率者は、僕らが居住区10に居ることは知らされているはずだから、それを知らない過激派とは言え、統率者に強く要請をかければ、こうなって当然か……
どうしよう?
今から72時間なんて、フロンティアがランデブー宙域から離れちゃうじゃないか!
強引に今回、3日時計を進ませましたが……
本当に、この書き方では時間が進みません。




