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自称魔王にさらわれました 〜聖属性の私がいないと勇者が病んじゃうって、それホントですか?  作者: 真弓りの


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これは、国家間の話し合いの場だ

言葉通り、ヴェルティ様の手によって、僅か数秒後には魔王城の謁見室に見事に全員が集められていた。


どう見ても説明なしでいきなり掻っ攫われてきたっぽいのに、アーサーさん、スカーレットさん、クワイトさんは驚いた顔は見せたものの、今では玉座に座るヴェルティ様に膝をついて頭を垂れている。


逆に何がなんだか分からない、といった様子で騒ぎまくっているのがニルス。


「魔王!?」「何ここ!?」「え、城!?」「何が起こってんだ!?」と心の声が全部口から出てしまってるんだけど、まあ、そうなるよね。


エルンストもその横で不安そうに辺りを見回して、リッツを見つけると安堵のため息を漏らしていた。


そんな彼らを玉座から眺めていたヴェルティ様は、殊更にゆっくりと口を開く。



「面を上げよ」



アーサーさん達が顔を上げ、恭しく礼をした。



「お招きいただき、ありがとうございます。まだまだこの地を踏むには至らぬ身、今しばらく力をつける時間をいただければと思っておりましたが」


「腕を磨いているところ、急に城に呼び寄せてすまぬな」



ヴェルティ様とアーサーさんのやり取りに、開いた口がふさがらない。


ちょっと待って、何なの、この会話。


そう思ったのはもちろんあたしだけではなかった。



「待てよ! なんだよオメーら、なんでそんな親し気なんだよ!」


「王家と魔王は、何か密約を取り交わしてるらしい。知らなかったのは俺達だけで、アーサー達はそれを隠して俺達を魔王城に誘導してたみたいだ」



声を荒げるニルスに、リッツが暗い声で応じる。


ファルに羽交い絞めにされたまま、すっかり気落ちしたように目を伏せる姿が痛々しい。



「はあ!? 何だよ、それ!」


「なっ……まさか」



ニルスもエルンストも、信じたくない思いだったんだろう。激昂したニルスは、アーサーに掴みかかろうと前に出た。


でも、その拳はクワイトによってすんでのところで捕らえられてしまう。



「やめておけ」


「すまない、ニルス。事情は後でしっかりと説明する。しかし今は国家間の話し合いの場だ。私情は挟まないでくれ」



私情。


あたし達をだましてこんなところまで連れてきて……それをたった今知らされたあたし達の懊悩すら、私情だと切って捨てるというの?



「ふざっけんなよ、テメー! 国家間だ? 相手は魔族だぞ、わざわざこんな北の果てまで、こいつらを討伐しに来たんじゃねえのかよ!」


「討伐などしない。俺達はこの魔王城に自らの力で辿り着く事だけが、そもそもの役目だ」


「……は?」



クワイトの言葉に目を見開いたのはニルスだけじゃない。あたしも、エルンストも、リッツも、理解できずに言葉を失った。



「魔獣に怯える民を安心させるには、そう言っておくのが一番都合がいいからな。勇者をここまで連れてくるための口実にもなるだろう?」


「クワイト」



表情すら変えずに淡々と酷いことを口にするクワイトを、アーサーさんが軽く窘める。沈黙が落ちたその場に、ヴェルティ様の声が静かに響いた。



「して、貴殿ら三名が此度の侍従か?」


「はい、誠心誠意、お仕えさせていただきます」


「こちらからは七位以上の魔石、此度は二十用意したが、気に入ったか?」


「確かに受け取りましたが」


魔王の笑みに、アーサーさんが困ったように眉を下げる。



「魔獣のまま王都に投げ込まれると民が困ります。次回より、魔獣より取り出した魔石の形で届けていただきたく」


「む、それは……すまなかった」



僅かに目を見開いたヴェルティ様は、次いで胡乱気な瞳でファルにチラリと視線を送る。


ファルは「魔族の慣習にのっとった進言だったのですが。魔物を屠れば武勲になりますから」と素知らぬ顔。そんなやり取りを、あたしは信じたくない気持ちで見つめていた。



「な、んだよ、それ。まさか、王都に魔獣が出たのも」


「魔族が一方的に攻めてきたのでは、なかったのですか?」


「契約によるものだ」



ニルスとエルンストの口からこぼれた問いに、ヴェルティ様が淡々とした口調で答える。


町の人が傷ついて逃げ惑ったあの魔獣の襲来さえ、不可侵条約の範疇だなんて。もう、何を信じたらいいのかわからない。あたし達の混乱をよそに、アーサーさん達とヴェルティ様との間で、交渉は滞りなく進んでいく。


そんな中、あたしはさらに耳を疑う言葉を聞いて、絶句した。



「さて、貴殿らを急遽招いた理由だが。単刀直入に言おう。ミリアを私にくれないか?」


「……それは、どういう」


「言葉通りだ、ミリアを妻に迎えたい。ミリアさえ私にくれるのならば、貴殿ら侍従予定だった三名も、勇者たちも、私が責任を持って王都まで送り届ける。ここまで旅を続けてくれた労に対しての褒賞も充分に用意しよう。要望があるならば、出来る限り対応する。……ミリアには、それだけの価値がある」


「ふざけるな!」



リッツの絶叫に、漸く飛んでいた意識が戻ってくる。そうよ、なんなの急に!



「冗談じゃない! ミリアを助けるためにここまで来たんだ! ミリアを返してくれ!」


「そーだよ、王家の都合なんか知ったこっちゃねえ!」


「そうです、あまりにも身勝手だ……!」



リッツが、ニルスが、エルンストが、口々に叫んでくれて、胸が熱くなる。知らず、涙がこぼれていた。


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