71.神とアイ
『魔王A.I.』を倒したがデスゲームは終わらない―――
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「ふざけんなっ!」
ヴァイは声を荒げて壁を思いっきり殴る。
「エンジェルクエストの次は連続クエストだと? 俺達をおもちゃにするのもいい加減にしろよ!」
ヴァイが怒るのも無理もない。
エンジェルクエストをクリアすればこのデスゲームを終わりにできる。
俺達はそれを目標にひたすら頑張ってきたのだ。
それをあっさり覆されれば怒りたくもなる。
ヴァイが先に怒ってしまったので、俺は逆に帰って冷静になれた。
よくある先に誰かが頭に血が上っているのを見ると冷静になるって本当なんだな・・・
だがまぁ、確かにエンジェルクエストがクリアしたらデスゲームクリアだって一言も言っていないし、ヘルプにも明記されていない。
ヘルプにはグランドクエストをクリアしたらデスゲームがクリアだって書かれているのだ。
俺達はエンジェルクエスト=グランドクエストの認識でいたが、システム側にしてみればエンジェルクエストには連続クエストが存在しており、この2つのクエストを纏めてグランドクエストとしているのだろう。
もしかすれば連続クエストが2個・3個と続く可能性もあるが。
「ここで喚き散らしてもしょうがないわ。
わたし達はどう足掻いてもこのクエストをクリアしていくしか道は無いのよ」
「・・・そうね。どのみちやらなければならないのならいっそ開き直った方がいいのかもね。矢でも鉄砲でもどんと来いってね」
俺の言葉に鳴沢が頷く。
みんなもそれに同意して折れかけた心を再び奮い立たせる。
・・・そう言えばさっきまで怒り狂っていたヴァイが大人しいな。
そう思ってヴァイの方を見てみれば、その場で倒れていた。
ああ、特殊スキルUndeadの効果が切れてデメリットが現れたのか。
確か24時間仮死状態になってしまうんだったな。
そう言えば俺達もそろそろ各特殊スキルのデメリットにより24時間ほとんど戦闘行為が不可能な状態になるな。
「丁度いいと言うのも変だけど、今から24時間休憩にするわ。
連続クエストの神へ至る道はその後ね」
そう言いながら俺は謁見の間の玉座の後ろを見る。
そこには天井を光の靄で突き抜けた光の階段が天に向かって伸びていた。
多分これが神へ至る道なのだろう。
そしてその先には・・・
「神がいるのですね」
「多分ね。
そしてこの次は神との戦いが待っているはずよ」
「だよなぁ・・・はぁ、ここまで来るとAI-Onの鬼畜仕様も見事としか言いようがないな」
AI-Onの仕様を考えればただ神に会ってそれで済むわけが無い。
多分真のラスボスとして俺達の目の前に立ちはだかるのだろう。
マリー、鳴沢、アッシュは既にこの後の戦闘を見据えていた。
「・・・ん、次も負けない。神様を・・・斬る」
「次の相手は神とはな・・・まぁ良いさ、こうなったらとことんやってやるまでよ」
勿論、美刃さんと疾風も神と戦う意気込みを見せていた。
「取り敢えずみんななるべく謁見の間から出ないようにね。今のわたし達は特殊スキルのデメリットでほとんど戦闘が出来ないから」
ヴァイは勿論の事、疾風はNの王の証で全てのスキルが使用不可能な上、日の光を浴びると死亡してしまう。
鳴沢はKの王の証で戦技と魔法が使用不可能に。
マリーはVの王の証で水属性魔法が使用不可能に、Yの王の証で魔法スキルが使用不可能に。
アッシュはIの王の証で魔法スキルが使用不可能な上、Zの王の証で戦闘行為自体が不可能になっている。
美刃さんに至ってはXの王の証で何かが使用不可能な状態―――全てのスキルが使用不可能となっていた。
勿論俺もSの王の証で全てのスキルが使用不可能になっている。
俺達は否応なくこの場に留まらなければならないのだ。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
連続クエストの事は兎も角、一応『魔王・A.I.』との決着はついたので、表の王都で結果を待っているクリスたちに携帯念話で連絡を取った。
「クリス、アナウンスで分かっていると思うけど、『魔王』との決着はついたわ。
みんな一応無事よ」
『ああ、こちらでもアナウンスを確認した。
だが、連続クエストとは・・・これからその神へ至る道を調べなければならないな』
「ああ、そのことなら心配いらないわよ。
今わたし達の目の前にその神へ至る道があるから」
俺はクリスへ目の前にある玉座の後ろの光の階段の事を話す。
『そうか。そうなるとまたフェンリル達に頼ることになってしまうな。
すまない、君たちにばかり負担を掛けてしまうことになってしまって』
「気にしなくてもいいわよ。
ただ王の証の特殊スキルを使いまくったから24時間ほど動けないから、連続クエストは明日になるわ」
『分かった。こっちのみんなや他の攻略ギルドの人たちへこちらで説明しておくよ』
携帯念話の通話を切って取り敢えず一息を付く。
表の王都の方はクリスに任せておけばいいだろう。
クリスは話さなかったが、多分エンジェルクエストをクリアしたのにデスゲームが終わらないことでパニックが起きているのかもしれない。
今伝えた情報で少しでも騒動が収まればいいのだが。
後は24時間ひたすら時間が過ぎるのを待つだけだ。
謁見の間の外は天使モンスターがうろついているからこの場から動くことは出来ない。
それでも一応警戒して俺達は一塊になって休息を取る。
場所が場所なので24時間特に何もすることが無いのであれこれ暇を持て余していたが、俺はふと王の証の事を思い出した。
Aの王――『魔王・A.I.』を倒せばそれで終わりだと思っていたが、よくよく考えればAの王にも王の証があってもおかしくないのだ。
そう思い、PT用のアイテムストレージを見ると案の定Aの王の証がドロップしていた。
Aの王の証
『魔王A.I.』を倒した証。
※QUEST ITEM
※譲渡可/売却不可/破棄不可
※この***を***は*****する事が出来なくなる
※特殊スキル「A.I.」を使用することが出来る。
効果: *の******に******に**させた****を**させます
特殊スキル効果終了後、この***は**します。
なんだこりゃ?
バグってる・・・のか?
特殊スキルの効果欄が伏字になっていた。
どういう事なんだろうと考えていると、隣に座っていた鳴沢が俺の行動に疑問を思ったのか何をしているのか聞いてきた。
「どうしたの? 何かあった?」
「え、ええ。『魔王』を倒したからAの王の証はどうなっているのかと思ってみて見たんだけど・・・」
俺の言葉にみんなが揃ってAの王の証の詳細を見る。
「『魔王』を倒したらデスゲームがクリアだと思っていたからAの王の証なんて考えてもいなかったけど・・・この後があるのなら確かに王の証はドロップするよな」
「ええ。ですが・・・なんなんでしょう、これ? 効果欄の所がおかしな風になっていますわね」
「伏字になっているって言うのがなんか不気味ね。
何らかの条件なら今まで見たいにはっきり明記しているわけだし」
アッシュ、マリー、鳴沢の順でそれぞれ疑問を口にしているわけだが、確かに鳴沢の言う通り何らかの条件ならこんな風にはなっていないはずだ。
「・・・ん、試してみる?」
「・・・いえ、やめておきましょう。今の状態で不測の事態が起これば対処できないわ」
試しに特殊スキルを使用するれば効果の具合を確かめることは出来るだろう。
だけど今の俺達はほぼ戦闘行為が出来ない状態だ。
この状態で特殊スキルで戦闘が発生してしまえばそこで詰みだ。
伏字になっている部分の「*****する事が出来なくなる」っていうのも気になるし。
それにPの王の証みたいに効果がイマイチ分からないのもあるしな。
「Aの王の証はどうする?
このままPT用のアイテムストレージに入れっぱなしと言うのもなんだし、誰が持つ?」
疾風の言う通りPT用のアイテムストレージに入れっぱなしだと王の証の特殊スキルを使うことも出来ないしな。
話し合いの結果、PTリーダーとして俺がAの王の証を持つことになった。
その後も時間を持て余した俺達はこれまでの事、これからの事などを思い思いに話し、時間を潰していった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
1月31日 ――184日目――
「さて・・・と。みんな準備はいい?」
天に向かって伸びる光の階段の前で俺達は準備を整える。
俺の言葉にみんなは神妙に頷く。
これが・・・本当に最後の戦いだ。
「それじゃあ、行くわよ」
俺と疾風を先頭に光の階段を駆け上がっていく。
どれくらいの距離を駆け上がったのだろう。
天井を突き破る光の靄を潜り抜けてからは、辺り一面が光に包まれていて高さを感じずに済んだので良かったのだが、代わりにどれくらいの距離を進んだのかは感覚があいまいになっていた。
だがようやく終着点が見えてきた。
光の階段の最上階に扉が設置されていた。
扉にはセフィロトの樹の彫刻が描かれている。
・・・真理の扉かよ・・・
この扉を開ける代償に何か持って行かれないがドキドキしながらも、両手を添えてそっと扉を開ける。
扉の奥に広がる光景に俺達は驚きを隠せないでいた。
今までのAI-Onの世界は剣と魔法のゲームや物語であるような中世の世界観だったが、今俺達の目の前に広がる光景は現代日本のよくある会社のオフィスのようだった。
いくつもの並べた机にパソコンが設置されており、窓から見える景色もビルの群れが見て取れた。
図らずとも一瞬でも現実世界へと戻ってきたような感覚に陥る。
俺達がその光景に戸惑っていると、そのオフィスの一番奥――上役が座るような席から人の気配を感じた。
「待っていたよ」
中肉中背、メガネをかけて白衣を着たどこにでもいそうな中年が椅子から立ち上がり俺達の前へと歩み出てきた。
「初めまして、と言うべきかな? 私はこのAngel In Onlineの最高責任者の榊原源次郎だ。
とは言ってもAI技術を応用した人格コピーにしか過ぎないんだけどね」
目の前の人物がこのデスゲームのすべての元凶・・・!
人格コピーとはいえ、その事実に俺は目の前の男にかつてないほどの怒りを向ける。
「この場に居ると言う事は、貴方が神で間違いないのかしら?」
「そうだね。私がAngel In Onlineの神だね。
私を倒せばデスゲームは解除されるよ。私はそのためにここに居る様なものだからね」
まさかデスゲームの元凶がラスボスの神とはな。
これほど殺りごたえのあるラスボスは居ないだろう。
「最も神と言っても名ばかりで、私には戦う力なんて一切ないよ。
倒そうと思えばその拳一つで簡単に倒せるよ。『十二星座の王』の様にね」
「は? じゃあ何のためにあんたはここに居るんだ? ラスボスとして君臨する為じゃないのかよ」
確かに『十二星座の王』は転んだだけで倒せてしまうほど弱かったが、ラスボスがそれでいいのかよ。
ヴァイの言う事じゃないけど何でラスボスの意味があるのか?
「何のためにと聞かれれば、アイの為にと答えるよ。
このAngel In Onlineはアイの為に創られたものだからね。私はアイのデータを取るために人格コピーをこの場に残したんだ」
「ちょっと待ってよ。
アイちゃんはこのAngel In Onlineの為に自分が作られたって言っていたわよ。だからここで消滅するのが自分が為すべきことだって」
アイちゃんはAIとは言え14年間生きて生きた自分を犠牲にしてこのゲームを終わらせようとしたのだ。
それが逆でAngel In Onlineはアイちゃんの為に創られた?
「はぁ、アイの奴あれほどいったのにまだ勘違いしていたのか。
私は元々Access社とは部外者の人間だよ。
アイから聞いているとは思うけど、14年前にアイを創ったんだ。14年前にわざわざこんなゲームの事なんて考える暇はないさ」
「・・・だったら、何で、何でアイちゃんを死なせるような仕様にしたのよ。
アイちゃんはあんたを父親として慕ってたのよ。あんたはそれを知っていたんでしょう。
それなのに・・・!
それともあんたにとってはアイちゃんは何とも思わないただのデータの塊でしかなかったの?」
「アイは私にとって娘同然だよ。二度とデータの塊だなんて言わないでくれるかな」
今まで穏やかな感じで会話していた榊原源次郎が、ここで初めて感情を露わにして怒りをぶつけてきた。
「だったら何で!」
「言ったはずだよ。全てはアイのためだってね。
私はアイを『人間』にする為にVRMMOを利用したのさ」
俺の知るアイちゃんは紛れもない人間だった。
だが榊原源次郎はアイちゃんを『人間』にする為だと言う。
俺の思っている人間と、榊原源次郎の思っている『人間』は違うのか・・・?
「知っての通りアイは14年前にAIとして生を受けた。
だがAIと言っても出来ることはパソコンの中で考える事のみ。文字通り箱入り娘だ。
見たり聞いたりするのは勿論、触ることも感じることも出来ないただのプログラムでしかない。これでアイが『人間』と言えようか。
そこで私はある会社から技術協力を要請されていたのでそれを受けることにしたのだ」
「・・・それがAccess社なのね」
「そう、Access社の新VRMMO-RPG「Angel In Online」だ。
私はAccess社にAIの技術を提供すると並行して、アイを『人間』にするために動いた。
VRでは人間の五感を再現することに成功していたからな。それをアイに与えて『人間』の様に身体を与えた。
そして一番困難だった感情をVRMMOという不特定多数の人と交流することによって与えることにしたのだよ」
そうか、アイちゃんは俺達と一緒に居た半年が一番楽しかったと言っていたが、それは身体を与えられ自由に動き回れることが出来るようになったからなんだ。
それまではパソコンの中で考える事だけだったのが、初めてパソコンの外に出て見る事・聞く事・触る事など全てが新鮮だったんだろう。
だからあんなにデスゲームであるにも拘らずあんなに楽しそうにしていたんだ。
「あんたがAccess社に協力した経緯は分かったわ。VRMMOを利用してアイちゃんに身体を与えるためだって。
けどそれなら尚更アイちゃんを死なせた理由が分からないわ」
そうなのだ。ここまでやっておきながら最後はアイちゃんを『魔王』として死なせた。
アイちゃんを『人間』にする為だったら死なせる必要は何処にもないはずだ。
「どんなに知識を与えても、どんなに感情豊かになろうともアイには理解できないことがある。どんな生物にも訪れる死という概念だよ。
アイはAIという存在のせいか生物の死を理解できなくてね」
「ちょっと待ってよ・・・まさか・・・」
鳴沢がそんな、と言った表情で呟く。
鳴沢だけではない。他のみんなも同じことを思ったのだろう。
「そのまさかだよ。Angel In Onlineのデスゲームを利用させてもらった。
自分の周りのプレイヤーの死にゆくさまを見て死という概念を理解し、そして最後には自ら死ぬことによってアイは完全な『人間』になったのだよ」
俺達は榊原源次郎の言葉に衝撃を受ける。
この男はアイちゃん1人の為に大勢の人間をデスゲームに巻き込んだのだと言ったのだ。
「ふざけんな! たったそれだけの事で俺達をデスゲームに巻き込んだのかよ!」
「それだけの事だと! 私にとってはアイが全てなのだよ。その為ならどんな犠牲だっていとわないさ。
そのための創りあげたのがこのAngel In Onlineなのだよ」
思わず怒りをぶちまけるヴァイに榊原源次郎も怒りを露わにしながら反論する。
榊原源次郎にとっては俺達の命よりアイの方が全てなのだろう。
だが榊原源次郎の言う通りアイちゃんは最後は紛れもない人間になれたんだが、死んでしまっては何の意味もないではないか。
「榊原さん、もっと他にやりようはあったんではないんですか?
貴方が作ったAI――アイちゃんはこんなことをしなくても立派な『人間』でしたよ」
AIを研究していたアッシュはそれなりに榊原源次郎を尊敬していたのだろう。
やり方さえ間違わなければアイちゃんの存在は画期的な研究成果だ。
そのことを惜しみながらアッシュは榊原源次郎に問いかけた。
「アイが立派な『人間』になったのはデスゲームを行った結果論でしかないよ。
そう、結果論でしかない。既にアイは『死んでいる』のだからね。
後の私の役目はここで君たちに倒されてデスゲームをクリアさせることくらいさ」
そうだ。どんなに榊原源次郎を責め立ててもアイちゃんは戻ってこない。
アイちゃんだけではない。GGや死んでいったみんなは戻ってこないんだ。
今の俺達にできることは、目の前に居る榊原源次郎を倒して外の世界へ戻ることだ。
「・・・ん、間違いなくログアウトできる?」
「そうですわ。この期に及んでまだ何かあると思いたくもありません。
今この場でログアウトを出来ることを約束してください」
確かにこの期に及んで連続クエスト2とか言われたら二度と立ち上がれないかもしれない。
美刃さんやマリーは不確定要素を潰そうと榊原源次郎へと詰め寄る。
「それは間違いなくログアウトできるよ。
System・Alice、私が倒されたら全プレイヤーをログアウトするように設定しなさい」
『神の命令を確認。了解しました』
26の王を倒したときに流れるアナウンスの声がこの部屋に響く。
「さて、これで私を倒せばログアウトできるよ」
そう言いながら榊原源次郎はいつでも倒しなさいとばかりに両手を広げた。
「そうか、それじゃあ遠慮なく倒させてもらうぜ」
ヴァイが一歩前に出るが、俺がそれを手で制す。
「ヴァイ、悪いけどここはわたしにやらせて頂戴」
ヴァイは何か言いたそうだったが、少し考えてから後ろへ下がった。
「いいぜ、このPTのリーダーはフェンリルだからな。折角の元凶への恨みを晴らすチャンスだが、ここはリーダーに譲るよ」
「ありがと。
さて、そういう訳でわたしが全プレイヤーの恨みをあんたにぶつけてやるよ。
ついでに現実世界へ戻ったら本物のあんたにも一発入れてやることを宣言しておく」
ここに居るのはあくまで榊原源次郎の人格コピーだ。
本物は現実世界でのうのうと生きている。
だったら本物にも俺達の恨みをぶつけてやるまでだ。
「はははっ。いいだろう、その挑戦状受け取った。
そしてこれは私からの挑戦状でもある。君が見事現実世界に戻ってこれて本物の私を殴る事が出来るのか楽しみに待っているよ」
俺は一歩一歩歩いて行き目の前に迫った榊原源次郎の顔を思いっきり殴り飛ばした。
俺の一撃を受けた榊原源次郎は吹き飛んであっさりHPが0となる。
「おめでとう。これでAngel In Onlineのグランドクエストはクリアだ」
そう言いながら榊原源次郎は光の粒子となって消え去った。
――連続クエスト・神へ至る道がクリアしました――
――連続クエスト・神へ至る道がクリアしたことにより、グランドクエストはクリアしました――
――全プレイヤーは順次ゲームからログアウトされます――
そのアナウンスが流れると同時に、みんなの足下に次々魔法陣が現れ光に包まれていく。
「・・・ん、やっと帰れる・・・」
「ホントにログアウト出来るんだ・・・」
「やったぞ――――! こんちくしょ―――――!」
「やっと・・・やっと帰れるんですのね・・・」
美刃さん、アッシュ、ヴァイ、マリーの順でそれぞれ魔法陣の光に包まれながら姿を消していく。
「フェル・・・ううん、大神君、やっと、やっと帰れるね・・・」
「ああ、やっと帰れる・・・」
鳴沢は涙を流しながら抱き着いてくる。
そして鳴沢の足下にも魔法陣が現れ光に包まれて消えて行った。
最後に残ったのは俺になってしまったが、全プレイヤーのログアウトを行っているんだ。
俺の順番に回ってくるにはそれなりに時間は掛かるだろう。
――10分――
――20分――
――30分――
しかしいくら待てども俺の足下に魔法陣が現れる気配が一向にない。
不審に思いながらも待つが、現実は非情だった。
――全プレイヤーのログアウトが終了しました――
おいおい、この期に及んでまだ何かあるのかよ・・・!!




