63.不条理と九尾再び
「ちょ、ちょっと待ってよ! GGが26の王って・・・
プレイヤーがクエストボスになるなんて聞いたことないよ」
GGの26の王の宣言にジャスティは思わず声を上げる。
ジャスティだけじゃない、鳴沢達もGGの言葉に驚愕すると同時にある種の疑いを持って見ていた。
プレイヤーはあくまでプレイヤーであって、ゲームシステムに関わる権限は普通なら持ちえない。
だが、ゲーム開発関係者ならどうだろうか。
プレイヤーと同じくゲーム内にログインしてクエストボスとして迎え撃つシステム作りをしていれば、中身に人が入ったクエストボスの出来上がりだ。
みんなはそのことに思い至ったのだろう。
先ほどまでGGを嫌悪の目で見ていたが、今度は憎しみを持った目で見ていた。
「もしかして、Access社の関係者か・・・?」
だが、疾風の呟いた言葉をGGはあっさり否定する。
「そんなわけないだろ。俺もみんなと同じ普通のプレイヤーだよ。
今まで普通にAI-Onをプレイしていた、れっきとした普通の大学生だよ」
「それじゃあ、何で26の王なのよ・・・?」
「それは多分、Bの王――『勇気ある王』がプレイヤーの中から選ばれるプレイヤー参加型ボスだからでしょうね」
GGのAccess社の関係者を否定した言葉を聞いても納得していないジャスティに、俺はGGの言葉から導き出された予想を答える。
「プレイヤー参加型・・・? そんなの聞いたことないんですが・・・?」
フリーダが初耳だと言わんばかりに聞き返してくる。
まぁ、自分で言っておいてなんだが、普通ならあり得ないよな。
「わたしだって聞いたことないわよ。
でもある意味敵役をやりたい人の為のシステムでもあったのかもしれないわね」
普通ならプレイヤーから一転して敵側に回るなんて今までのプレイを水の泡にする行為だ。
でもこれが通常のゲームならお遊びで「フハハハ、よく来たな冒険者たちよ」って敵側に回って楽しむ奴も出てくるかもしれない。
だが、今のAI-Onはデスゲームだ。間違っても敵側に回るなんてありえない。
倒される=死に繋がるからだ。
「そして今までBの王の情報が出てこなかったのも頷けるわ。
誰が好き好んで本当に死んでしまう適役をやりたがるのよ。そんな王の情報なんて出せるわけないじゃない」
「そしてその選出方法がユニーク職の勇者って訳ね。随分と嫌らしい選出方法ね」
鳴沢の言う通り、『勇気ある王』は勇者に転職したプレイヤーが選ばれるのだろう。
26の王を3人も倒して職業最高峰とされるユニーク職に転職しておきながら、それらすべてをふいにして強制的に26の王に就かされるのだ。やり方が実に嫌らしい。
「ま、フェンリルの言う通り『勇気ある王』はプレイヤー参加型のクエストボスだな。
ある意味罰ゲーム的な王なんだが、今となってはもうどうしようもない。
このAngel In Onlineの世界から出るにはエンジェルクエストをクリアしなければならないが、『勇気ある王』である俺が生きているうちはエンジェルクエストをクリア出来ない。
つまり俺はもうこの世界から生きて出ることは無くなった訳だ」
GGは自虐的な感じで言ってくる。
その表情には諦めにも似た寂しげな顔をしていた。
「ちょっと待てよ。王の証の入手方法は『倒した、又は認めてもらった』だ。
別にGGを倒さなくても俺達を認めて王の証を渡しさえすれば『勇気ある王』を倒す必要もないんじゃ?」
「ああ、確かに今までの王の証にはそう記載されているな。だけどBの王の証は『倒した証』しか記載されないんだよ。
そんなのはいの一番に確認したさ。つまりどう足掻いても俺を倒さなきゃBの王の証は手に入らないんだよ」
ヴァイの提案はあっさりGGに否定される。
Access社はどうやっても『勇気ある王』にプレイヤーを据えて殺したいらしい。
「勇者に転職してから1週間くらいか? 突然あなたは『勇気ある王・Brave』に選ばれましたってアナウンスが流れて、アイテムストレージにBの王の証があったんだぜ。
なぁ、お前らに分かるか? 『勇気ある王』に選ばれて26の王になった時の絶望が。お前らプレイヤーに命を狙われると分かった時の恐怖が。
俺はお前らが外に出るための生贄に選ばれたんだ。だったら俺がお前らに好き勝手したっていいじゃないか」
つまり今までのGGの『GGG』での暴虐は、外に出られないための自暴自棄な行動だったのだ。
お前らの為に犠牲になるんだからお前らを俺の自由にさせろと、そういう事なんだろう。
気持ちは分からないでもないが、GGのやっていることは余りにも自分勝手すぎるように思う。
・・・いや、やめよう。どう言ったところで今のGGの心情を俺が図りきれるわけじゃない。
「だからと言って今まで彼女達にしてきたことは許されることじゃないでしょ。それとこれとは別の話よ」
そんな俺の気持ちとは裏腹に鳴沢は毅然とした態度でGGを改めて責める。
「現実の体は傷一つ付かないんだ。少しくらいは大目に見ろよ」
「確かにVRだから現実の体には傷はつかないわね。だけど心の傷はどうなるの?
貴方に傷つけられた彼女たちの心の傷はそう簡単には拭いきれるものじゃないわよ」
「俺も傷ついているんだがなぁ・・・」
GGが誰にも聞こえないような小さな声でぼそりと呟く。
「まぁ、確かに俺が外に出られない理由に酷いことをしてきたことは認めるよ。
だから好きなだけ俺を恨めばいいさ。そして俺を倒しに来いよ。
もっとも俺を殺せる覚悟があればの話だがな」
っ! GGの言葉に俺達の表情が強張るのが分かる。
そうか、『勇気ある王』――GGを倒すという事は、俺達がGGを殺すと言う事だ。
そして俺はGGの言い方も少し気になった。まさか・・・
「覚悟が出来て向かって来るのはいいが、俺だって死にたくないから当然お前らを返り討ちにしてやるがそこは恨むなよ? ゲームが続くうちは俺はこの世界で生きていられるんだからな」
確かにデスゲームをクリアしなければ永遠にこの世界に留まっていられる。
だが幾ら生命維持装置が付いているVR機とはいえ、何十年も生きていくことは出来ない。
だけどそれでも少しでも長く生き続けるためには、GGは向かって来るプレイヤーを返り討ちにしなければならない。
GGはこの世界で生きていくとは言っているが、本当は・・・
「さて、もうここには用は無いな。
これからはお前らを迎え撃つために外でお前らを待っているよ。流石にこのままここに居座るわけにもいかないしな」
そう言いながらGGは部屋から、王都セントラルから出て行こうとする。
「ちょっと待ってよ。せめて居場所くらい言いなさいよ。
わたしが・・・貴方を殺してあげるから」
俺の言葉にGGが、みんなが目を開いて驚愕する。
「――ハッ! 言うじゃねぇか。いいぜお前が俺を殺しに来るのを楽しみに待ってるぜ。
俺は女狐のところに居るからいつでも来な。
・・・じゃあな。次に会った時には確実に俺達は敵同士だ」
GGは部屋から出ていく。
俺達はそれを止める術を持たない。いや、止められない。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
その後は後始末で大変だった。
『軍』が『GGG』のギルドホームに押し寄せ、『GGG』のギルドメンバーを次々捕縛していく。
地下に閉じ込められた女性プレイヤー達を保護して、その治療や心のケアにあたったりしてかなりの大騒動になった。
当然俺達も当事者として『軍』に事情を説明したり手伝ったりしてかなりの時間を要した。
途中で『Angel Out』の残りのメンバーも招集して事態の鎮静化を図った。
最初のうちは勇者のギルドと言う事で『GGG』のギルドメンバーは王城の兵士に止められ地下牢には入れることが出来なかったが、途中から何故か急に兵士の態度が変わり地下牢に入れることが出来た。
最初は余裕の表情でいた『GGG』のメンバーは、急に兵士の態度が変わったことによって絶望の表情へと変わっていった。
後で調べたところによると、勇者の後光の影響で『GGG』はある程度冒険者ギルドや王国などには融通が利くのだとか。
それで美琴が冒険者ギルドでギルド脱退をしようとしたが出来なかったのか。
そしてGGが王都を出る前に冒険者ギルドへと足を運び、冒険者ギルドで『GGG』のギルドを解散していったらしい。
『GGG』のギルドが無くなり勇者の後光が効かなくなった為、兵士の態度も変わったのか。
大方のところが片付いた為、後の細かいところは『軍』に任せて俺達『Angel Out』のメンバーはギルドホームの会議室に全員が集まっていた。
「今話したことが『GGG』であったことの全てよ」
途中から事態の鎮静化に参加していたメンバー、クリス、ヴィオ、疾風、唯ちゃん、舞子、るるぶるさん、アイちゃん、リムにこれまでの事情を説明する。
流石に『勇気ある王』の事に関してみんなは驚愕していたが。
「それでどうするんだ? これから」
いち早く驚愕から脱したクリスがこれからのこと――『勇気ある王』をどうするかを聞いてくる。
「『勇気ある王』――GGを殺すわ。わたし1人でね」
「ちょっと待って! 1人で行くなんて聞いてないわよ!?」
鳴沢が机を両手で叩きながら立ち上がり詰め寄ってくる。
鳴沢の言いたいことも分かるが、これは責任の問題だ。
「なら聞き返すけど、ベルにはGGを殺す覚悟はあるの?」
俺の言葉に鳴沢は声を詰まらせる。
「手を汚すのは少なければ少ないほどいいわ。だけどGGほどのトッププレイヤーと渡り合えるプレイヤーって限られてる。
そう、同じトッププレイヤーであるわたしが一番適任なのよ」
「だからってフェル1人にやらせるわけにはいかないわよ」
「ここにもう1人のトッププレイヤーが居るんだが?」
俺と鳴沢が言い合いをしていると、疾風が手を挙げて自分を主張してくる。
「疾風はGGを殺す覚悟があるの?」
「・・・正直ここにきてPKをしろだなんて言われてもやりたくもないさ。
だが、外に出るためにやらなきゃいけないんだったら、その覚悟はある」
まぁ、疾風ならそう言うだろうな。
疾風だけじゃない、他のメンバーも躊躇しながらも覚悟をもってGGを倒すだろう。
だからこそみんなには自分の手を汚してほしくない。特に鳴沢にはその手を血で汚させたくない。
「そう。でも手を汚すのはわたしだけで十分よ。
わたしは『Angel Out』のギルドマスター。貴方達の責任者よ。
そしてわたしはAngel In Onlineの最強プレイヤー。自分で言うのもなんだけどね。
最強プレイヤーの名は全プレイヤーの希望を背負っているのと同意よ。
そのわたしが先に立たなくて誰が立つのよ。そして人殺しの責任を取るのもわたし1人で十分なのよ」
「・・・分かった。フェンリルがそこまで言うんなら俺はどうこう言わねぇよ」
「ヴァイ!?」
ヴァイの言葉に鳴沢は非難の声を上げる。
「但し、GGとの戦場には俺も付いて行くぜ。いざとなったらフェンリルに非難されようが俺も手を出す」
「勿論俺も付いて行くぞ」
「あ、あたしもです! お姉様!」
ヴァイと疾風を皮切りに次々とみんな付いて行くと宣言してくる。
「みんな・・・フェル、勿論あたしも付いて行くよ。文句は言わせないわよ」
みんながみんな、覚悟を決めた顔だった。
鳴沢に関してはもはや決定事項だった。
まぁ、しょうがないか。薄々こうなるんじゃないかとは思っていたし。
「それに、GGのところに行くまでのモンスターはどうするつもりだったのよ?
GGの言っていた女狐って、明らかに護衛のモンスターか何かでしょ」
「多分、女狐と言うのは深緑の森の白面金毛九尾の狐の事でしょう。
どういう手段かは分かりませんが、GGはボスモンスターを手下にしてしまっていると考えた方がいいと思いますね」
女狐で九尾の狐を思い出していたのだが、確かにアレを相手にしなければならないんだったよな・・・
今の俺なら1人でも倒せないことは無いかと思うが、流石に九尾の狐で消耗した状態でGGに挑むのも無謀すぎるな。
「分かったわ。GGの居るところまではPTを組んで行きましょ。
でもGGとの相手はわたし1人でやるから手出しは無用よ。いいわね」
「それは承服しかねるわ。あたしもいざとなったら手を出す予定だから」
鳴沢の言葉にみんなも頷く。
ああ、もう! 俺1人で人殺しの汚名を着ようとしてるのに、何でみんな好き好んで進んで自分から人殺しの汚名を着ようとするのかな。
ああいいさ。みんなが手を出す前にGGを倒せばそれで全てが解決だ。やってやるよ。俺は最強プレイヤーだからな。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
1月14日 ――167日目――
深緑の森――その森の奥深くの巨大な石の前に俺達は立っている。
GGの所へ行くメンバーは、俺、鳴沢、ヴァイ、ヴィオ、疾風、クリス、唯ちゃんと『Angel Out』の初期メンバーであり、最強メンバーでもある。
目の前の巨大な石の名前は殺生石と言われ、かの有名な白面金毛九尾の狐が封じられていると言われる石だ。
そしてその殺生石の前に光の渦が出来上がり、そこから銀髪の妖艶な女が現れる。
頭には狐耳、お尻には9本の尾が生えている狐の獣人、つまり彼女が九尾の狐だ。
「久しぶりね、玉藻前」
「ほう、誰かと思えばいつかの巫女のおなごではないか。
ふむ、お主が主殿の言っていた『客人』か。主殿も何やら含みのある言い方をしておったが、こういう事とはのう」
ん? 主殿って、GGの事か?
前来た時はGGも一緒に玉藻前に敵として認識されていたはずだが。
「ねぇ、主殿ってGGの事かしら?」
「何を当たり前のことを。
わらわにとっての主殿は1人しかおらぬわ」
「前来た時はわたし達に襲い掛かってきてなかったっけ?」
「ふん、確かにあの時はわらわにとって主殿は敵でしかなかったわ。
じゃが、次に現れた時の主殿はオーラが違って見えたのじゃ。これこそわらわが仕えるに相応しい殿方とな。
実際、主殿はわらわを打倒しその実力を見せつけたのじゃ」
オーラが違って見えたって・・・勇者の後光はテイム機能も兼ね備えてるのかよ。
と言うか、いつの間にGGは1人で九尾の狐に挑んでたんだ?
『勇気ある王』とばれた時の為に、前もって26の王としての拠点の確保を探していたのだろうか?
「じゃあ、GGはその中に居るのね?」
「無論、この殺生石の中のわらわの城の中にお主たちを待ち構えておる。
じゃが、わらわの許可なく城の中に踏み入れることは許さぬのじゃ。城の中に入りたく場わらわを倒していくがよい」
そう言いながら玉藻前は垂れ下がっていた9本の尾を扇状に広げ、戦闘準備に入る。
Buff等の強化は殺生石に来る前に既に掛けている。
俺も玉藻前を迎え撃つべく左右の刀を抜こうとするが、鳴沢に止められる。
「フェルは後ろで待機していて。
フェルはこの後『勇気ある王』との戦いが控えているんでしょ。だからここはあたし達に任せて。そのためにあたし達はフェルに付いてきたのよ」
鳴沢は俺を一番最後尾にして、先頭にヴァイ、疾風、唯ちゃん、中間に鳴沢、そして後方にクリス、ヴィオを配置する。
鳴沢が中間配置なのは、ユニーク職大賢者となって覚えたユニーク職以外の全ても魔法が使える賢者スキルを使用する為と、いざという時レーヴァテインを持って接近戦を挑めるからだろう。
「準備はいいか? 良ければわらわから行かせてもらうぞ!」
玉藻前は瞬動の如く速さでダッシュしてきてその両手の爪を奮う。
疾風はそれを迎撃するために瞬動ですれ違いざまにミスティルテインと聖剣グラムの二刀流で玉藻前を斬りつける。
「むぅ!?」
玉藻前は辛うじて咄嗟に両腕を交差して疾風の攻撃を防いだ。
だが前衛に近づくためのダッシュ移動はそこで止められてしまう。
その隙をついてヴァイと唯ちゃんの攻撃が玉藻前の左右から襲い掛かる。
「五穿鳳閃花!」
唯ちゃんの一突きで4つの突きの効果を付属する槍スキル戦技が玉藻前の足下を狙う。
玉藻前はバックステップで唯ちゃんの槍を避けるが、宙に浮いたその瞬間を狙いヴァイの戦技による連続攻撃がヒットする。
「おらぁっ! 烈火竜撃羅刹陣!!」
宙に浮いた玉藻前に右拳で拳スキル戦技・二連拳を叩き込み更に滞空させ、返す左拳で爆拳・崩拳・会心拳の3つの拳スキル戦技を合わせたオリジナルスキル・竜撃を叩き込む。
そして拳を振りぬいた反動を利用して蹴りスキル戦技・旋風脚を打ち付け、繋ぎに左拳で拳スキル戦技・爆拳を打ち付け続けざまに蹴りスキル戦技・昇竜脚で玉藻前を浮かせ踵落としの上位版の蹴りスキル戦技・戦斧脚で地面に叩き付ける。
地面に組み伏せられた玉藻前を狙ってクリスとヴィオの魔法が炸裂する。
「流星!」
「セイクリッドブラスト!」
クリスの弓スキル戦技・ミラージュアローとトリプルショット、そして火属性魔法の炎の矢を合わせたオリジナルスキルと、ヴィオの聖属性魔法が玉藻前に降り注ぐ。
だが玉藻前は咄嗟に9本の尾を前面に伸ばして盾にして2人の攻撃を凌ぐ。
「ちっ、お返しじゃ!
シャイニングフェザー!」
玉藻前はすぐさま呪文を唱え、鳴沢とクリスとヴィオに向かって光属性魔法の無数の光の羽を弾として飛ばしてくる。
「シャイニングフェザー!」
玉藻前の光属性魔法に対して、鳴沢も同じ魔法で迎撃をする。
但し、ユニーク職と言えど魔法攻撃力は九尾の狐である玉藻前の方が上なので、まともにぶつかり合えば鳴沢の方の光の羽は打ち負けてしまう。
なので、鳴沢は光の羽同士をぶつけて相殺するのではなく、角度をずらして弾くようにあてて自分たちに降り注ぐ光の羽の軌道を逸らす。
「なっ!? 1発も当たらないじゃと!?」
流石にこれには玉藻前も驚愕していた。
鳴沢は詠唱破棄スキルですぐさま追撃の魔法を放つ。
「マグナギガ!」
古式魔法の溶岩の巨弾が玉藻前に向かって放たれる。
古式魔法は強力であるが故、そのほとんどが広範囲魔法だ。
この溶岩の巨弾の魔法もそれに伴い、周りを吹き飛ばすほどの巨大さを持っての攻撃魔法だ。
何せ現れた溶岩石は直径30mもの大きさを誇っているのだ。
ヴァイ達は巻き込まれないように既に玉藻前とは距離を取っている。
「なめるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
その巨大な溶岩石を前にして玉藻前は怯むどころか挑みかかっていった。
9本の尾を槍と化して溶岩の巨弾に向かって連続して突きつける。
一点集中した9本の尾の攻撃は見事溶岩の巨弾に穴をあけ直撃を防いだ。
しかしまるっきり無被害とはいかずに、玉藻前は幾ばくかのダメージを負う。
「くふぅぅぅぅ! やりおるのぅ! ならばこれならどうじゃ!
シャドウファング!
タイタルウエイブ!
リアクターブラスト!」
玉藻前の9本の尾のうち3本が淡い光を放つと同時に、玉藻前からそれぞれ3属性の魔法が放たれる。
闇属性魔法の影の咢が疾風を、水属性魔法の大津波が鳴沢を、無属性魔法の強大なエネルギー弾がヴァイと唯ちゃんを襲う。
今のは呪文の詠唱無しで魔法が放たれた。多分9本の尾がそれぞれ魔法をチャージしておいて放つことが出来るのであろう。
それぞれ放たれた魔法はヴァイ達を襲い大ダメージを与える。
鳴沢も同じ大津波の魔法で迎撃しようとしたが、流石に全てを受け流せずに鳴沢もダメージを負っていた。
ただ疾風だけは一切のダメージを負うことなく反撃をしていた。
影の咢が疾風に襲い掛かろうとした瞬間に、疾風は玉藻前の前に現れていた。
遅延魔法スキルで時空魔法のクロノスウォーカーを使ったのだろう。
「かふっ! なんじゃと!? まさか時渡りの魔法か!? ええい、厄介じゃの」
そう言いながら玉藻前は治癒魔法を唱えて自分のHPを回復していく。
その間にも鳴沢とヴィオがみんなのHPを回復する。
うむむ。玉藻前は治癒魔法も使うのか。これは長期戦を覚悟しなければならないな。
それにしてもみんなあの九尾の狐とそれなりに戦えているじゃないか。
まぁ確かにチート職とも言えるユニーク職が3人も居ればそれほど難しい事でもないか。
そんな剣と魔法、9本の尾と魔法の応酬が続いていくが、あることを切っ掛けにこの戦場に巨大な銀毛と金毛を持った9本の妖狐が現れる。
『くおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!!!!』
白面金毛九尾の狐・玉藻前が遂にその本性を現したのだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ギルド間情報交換スレ10
920:チキンオブハート
なぁ、今日GGGのギルドホームが騒がしかったけど何かあったのか?
921:浜田浜口浜崎さん
そう言えば『軍』が大勢GGGのギルドホームに押しかけていたね
922:沙羅諏訪帝
『軍』が居たってことは何か事件でも起こしたのかな?
923:X―BLADE
あー、最近のGGGの行動を考えれば『軍』が動いても不思議ではない
924:ビターチョコ
え? それってただの噂でしょ?
925:邪王の蛇王
ふむ、あながちそうとは言い切れまい
実際に『軍』が動いているのだから
926:パウル
え? え? 何? GGGが何かしてたの?
927:チキンオブハート
あー、926は取り敢えず過去ログ読んできた方がいいぞ
928:PERSONA
確かに最近のGGGは酷かったらしいからなぁ
929:チキンオブハート
で、遂に『軍』が動いたわけか
930:ビット=ピット
いや、それよりもそのGGGで重大な事実が判明したと聞いたのだが
931:番台
重大な事実とはなんぞ?
932:チキンオブハート
実はGGGは女性メンバーに売春行為をさせて資金を稼いでいたとか
933:沙羅諏訪帝
実はGGGはロボットを開発していたとか
934:ビターチョコ
実はGGGはホモとレズしかいなかったとか
935:アトラ・ランダ・ダムド
>>932 それは冗談でも言わない方がいいぞ
936:浜田浜口浜崎さん
実はGGGはBの王を匿っていたとか
937:チキンオブハート
>>935 すまん、確かに少し無神経だった
938:心音
>>935 ですね。今回の事件性を考えればそのような発言は控えた方がいいですね
939:ビット=ピット
あ、936正解
940:チキンオブハート
は?
941:浜田浜口浜崎さん
え?
942:ビターチョコ
はぁっ!?
943:番台
ちょっw マジでか!?
944:ビット=ピット
GGGのギルマスがBの王だって話が出てきている
945:沙羅諏訪帝
いやいやいや、無いでしょう、それは流石に
946:独眼竜
おいおいおい、いくらなんでも話盛りすぎだろ
947:X-BLADE
もしその話が本当ならGGはNPCだってことか?
948:チキンオブハート
いや、GGがAccess社の人間だって可能性も出て来るぞ
949:嵐を呼ぶ旋風児
あ、いやそれは無い
ここでこの情報を出すのはマナー違反かもしれないが、GGはリアルでも知り合いで奴は普通の大学生だぞ
950:アトラ・ランダ・ダムド
え? じゃあどういう事?
プレイヤーがBの王ってマジあり得ないんだけど
951:番台
もしかしてAccess社の人間じゃないけどAccess社とグルだったりして
「デスゲームで死なないようにしてあげるからBの王をお願いね」とか裏取引してたり
952:独眼竜
おい、それがもし本当ならマジ許せねぇな
953:沙羅諏訪帝
それが本当なら全プレイヤーに対する裏切り行為ですね
954:パウル
そりゃー自分だけ死なないんじゃトッププレイヤーにもなるよ
955:ビット=ピット
あー、俺が効いたのはちと違うな
確かにGGはBの王らしいが、何でも被害者らしいぜ
956:ユウナレスナ
あの・・・955の言っていることは本当です
あたしGGGのメンバーで酷いことをされてました
でも今日Angel Outの人たちに助けてもらって・・・
あたしその時ギルマスがAngel Outの人たちとBの王だという話になった時その場に居たんです




