表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Angel In Online  作者: 一狼
第15章 Brave
68/84

62.GGGとGG

 俺達6人は『GGG(スリージー)』のギルドホームのある王都の住宅街の一角に来ていた。

 『GGG(スリージー)』のギルドホームは一軒家と言うより、3階建ての庁舎のように見えた。


「うちとは大分違うね」


 鳴沢が『GGG(スリージー)』のギルドホームを見上げながら言う。


 結局、鳴沢達女性陣は俺の反対を押し切り付いてくることになった。

 うちのギルドホームに『GGG(スリージー)』の使いの男2人が訪ねて来る前とは違い、限りなく黒になりつつある『GGG(スリージー)』の本拠地であるギルドホームに訪ねるのだ。

 何かしらのトラブルがあるとみていいのだが、鳴沢達はあまりにも酷い女性の扱いにGGに直接文句を言いたいと聞かないのだ。

 俺としてはこういう類いの案件に鳴沢を巻き込みたくはないんだがなぁ。


「そりゃあ、資本力に差がありすぎるからね」


 俺達『Angel Out』のギルドは少数精鋭なので、戦闘力はあれど資本力はそれほど大きいわけでもない。

 それに比べ『GGG(スリージー)』は結成当時とは違い、今ではそれなりにギルドメンバーを抱えて有名ギルドとして名を馳せている。

 もちろんトッププレイヤーであるGGがギルドマスターであり、攻略ギルドとしてそれなりに成果を上げているので周りの評価もかなり高い。

 まぁ、今回のこの件でかなり評価が下がると思われるが。


 若干、『GGG(スリージー)』を妬みながらも玄関へ赴き、受付をしている男へ近づき用件を伝える。


「これはこれは。話は聞いていますよ。どうぞこちらへ」


 受付から連絡を受けて出迎えてくれたのは如何にもモテそうなイケメンの男だった。

 彼は爽やかな笑顔で俺達を歓迎する。

 だが美琴の話を聞いているので、その笑顔も周りを騙すための作り物のように見てしまう。


「この度はうちの美琴がご迷惑をおかけして申し訳ございません。

 彼女は妄想が激しくて度々周りに迷惑をかけていて、ほとほと手を焼いているんです。

 フェンリル様の提案がギルドマスターに許可を頂ければ彼女にとっても改善していけるのではないかと私も思ってます」


 彼は俺達をGGまで案内する為案内をしながら、美琴の事を心配しているように会話をしてくる。


 うーん、これが本当なら美琴の事を心配している爽やかイケメンなんだよなぁ。


「ああ、申し遅れました。私『GGG(スリージー)』のサブマスターをしています大河郷太郎と言います」


「ぶっっ」


「えっ!?」


 彼の思いがけない名前に思わず吹いてしまう。

 同時に鳴沢もビックリした声を上げていた。


 ちょ! 何で名前が俺と同じ大河なんだよ!?

 うわー、これで『GGG(スリージー)』が黒だったらマジ最悪。


「あの・・・? どうかしましたか?」


「「いえいえ、何でもありません」」


 自分の名前に驚かれたので少し不安げになりながら郷太郎(絶対に大河とは言ってやらん)は訪ねてくる。

 俺と鳴沢は慌ててシンクロしたように首を振る。


 道案内されながらギルドホーム内を見てみるが、居るのは男性メンバーだけで女性メンバーの姿は1人も見当たらなかった。

 ますます美琴の話が真実味を帯びてきた。


「この会議室の奥のギルドマスターの執務室にGGが居られます。どうぞこちらへお入りください」


 連れてこられたのは少し大きめの会議室だった。

 扉を開けて入るとそこにはロの字型にテーブルが並べられて、如何にも会社の景色を思わせる部屋だった。

 その奥には郷太郎が言うように扉が設置されていて、執務室へと繋がるようになっていた。


「さぁ、こちらへどうぞ」


 郷太郎が先頭になって執務室への扉の前に立つ。

 だが扉の前に着いたにも拘らず郷太郎は扉を開けようとはしなかった。


「ところでフェンリル様はうちのギルドマスターと肩を並べるほどのトッププレイヤーですよね。

 もし宜しければその腕を見せてもらえませんか、ね!!」


 郷太郎は腰に下げていた刀を振り向きざまに居合抜きで俺に放ってくる。

 SA内であるために戦技の使用は出来ないが、それに準ずるくらいの精度の居合抜きだった。


 俺はある程度予測はしていたのですぐさま僅かなステップで郷太郎の居合抜きを躱す。

 当然俺も戦技は使えないわけだからステップも自前のものになるが、戦闘で培われたステップは戦技無しでもそれに準ずるほどの動きを見せる。


「ほう、今の不意打ちを躱しますか。流石ですね。」


「そりゃあ、ね。始めっからあんた達を疑って掛かってたもの」


「それならこれはどうですかね」


 そう言いながら郷太郎は刀を上段に構える。

 戦技を使えない状態でありながらこの余裕だ。余程自分の剣技に自信があるのだろう。

 もしかしたら現実世界(リアル)では剣道の有段者とかなのかもしれない。


 郷太郎が打ち込もうとする瞬間、隠密スキルもしくは暗殺スキルで会議室に隠れていた『GGG(スリージー)』のギルドメンバー達が現れ襲ってきた。

 姿形からすると暗殺者(アサシン)なのだろう。確かに不意打ちで襲い掛かるにはこれほど適した職業は無い。

 だが――


「ふっ!!」


「おらぁっ!!」


「バレバレだよ!」


「はぁっ!!」


 俺にはこの会議室に入った時から暗殺者(アサシン)の存在が分かっていた。

 そのことを目線で合図し、部屋での待ち伏せを予測していた俺達はすぐさま対応することが出来たのだ。


 俺は郷太郎の刀を左の月読の太刀の居合抜きで弾きながら、そのまま回し蹴りで暗殺者(アサシン)の腹を蹴り吹き飛ばす。


 ヴァイは戦技を使わずともその鬼神の体から繰り出される剛腕で暗殺者(アサシン)の攻撃を受けながらも叩き伏せる。


 ジャスティも背中に背負っていた盾を咄嗟に構え暗殺者(アサシン)の攻撃をいなしている。


 天夜も持ち前の回避で暗殺者(アサシン)の攻撃を躱しながら抜き放った刀を振るう。


 鳴沢とフリーダも接近戦は可能だが、予備の為に中央で控えてもらっている。


 現れた暗殺者(アサシン)は4人。郷太郎を入れても5人。

 SA内と言えど、俺達を相手取るのに5人は少なすぎだな。

 郷太郎は必殺の策が躱されたのが分かると、表情を歪ませこちらを睨んでくる。


「何故彼らが潜んでいたのが分かったのですか?」


「悪いけどわたしには最初っからこいつらが潜んでいたのが分かっていたわよ」


「馬鹿な、こいつらの暗殺スキルはLv80ですよ!? 気配探知スキルでもそう簡単に見つけれるLvじゃないはずです」


「それは残念だったわね。わたしの気配探知スキルはLv110よ。

 次からは(ジョブ)スキルじゃなくサブスキルでLv110以上の人を連れてくることね。もっとも次なんて無いんだけどね」


 俺の言葉に郷太郎はあり得ないという表情でこちらを見てくる。


「サブスキルのLv上限は100だったはずです。Lv110なんて出鱈目はやめて下さい」


「あら、出鱈目なんかじゃないわよ。

 限界突破スキル、これがあればサブスキルの上限をLv150まで伸ばすことが出来るのよ」


 郷太郎の言う通りサブスキルは使えば使う分だけLvが上がるが、どのサブスキルも上限がLv100と決まっている。

 ところがその上限を取っ払うことの出来るスキルが存在する。

 それが限界突破スキルだ。

 このスキルをサブスキル枠にセットしておくと、残りの12枠にセットされているサブスキルの上限がLv150まで伸ばすことが可能になるのだ。


 このスキルの入手条件はそれほど厳しくもない。

 Lv100になったサブスキルを5つサブスキル枠にセットした状態で、スキルブックを売っているNPC店の店長に話しかければ入手が可能なのだ。

 俺は既に二刀流、ステップ、ダッシュ、気配探知、魔力探知の5つがLv100の上限に達していたので簡単に手に入ることが出来たのだ。


 後は神降しスキルを使うようになってほとんど使わなくなった獣化スキルを外し、限界突破スキルをセットしてサブスキルの上限を上げている。

 もっともLv100以上からはそう簡単には上がらず遅々たるものだが。


「さて、これであんた達は真っ黒だって証明されたわけだけど、大人しく捕まる気はある?」


「ふ、それは脅しですか? こちらもそれ相応の覚悟を持ってやっているんです。

 今さら後に引くことなんてできませんよ」


 郷太郎のその言葉を合図に再び暗殺者(アサシン)達が襲い掛かってくる。

 SA内での戦闘はダメージが無く衝撃だけなので、最終的にはどちらかが気絶するまで戦闘は続くことになる。

 何かを狙っているのは分かっていたが、幾合か打ち合い攻撃は武器だけのものと意識が向いたところで俺達は魔法の不意打ちを掛けられる。


「ライト!!」


 持続時間0、光量最大の目暗ましだ。

 これはかつて俺が『始まりの王』を倒したときに使った手段でもある。


「くっ!」


 瞬間的発光により俺達の目は眩み思わずその場に佇んでしまう。

 その隙をついて郷太郎たちは何かの液体を俺達に振りかけた。


「ははっ! やった! これでこいつらは俺達の性奴隷だ!」


「まさかトッププレイヤーの剣の舞姫(ソードダンサー)が手に入るとはな」


「それだけじゃない、この3人も見た目はいい方じゃねぇか。これは意外と掘り出し物かもな」


「さぁて、どうやっていたぶってやろうか」


 彼らの口ぶりからするにかけられた液体は媚薬なのだろう。

 俺達の体の自由を奪ったことにより彼らは大はしゃぎをする。


「皆さん落ち着いてください。彼女たちを調教する時間はたっぷりあるんですから。

 さて、フェンリル様。体のお加減はどうですか。我慢できなくなったらいつでも申し出てください。

 私達が誠心誠意おもてなしいたしますよ」



 ようやく視力が戻り始めてニヤ付いている彼らの表情が目に飛び込んでくる。

 彼らの表情は同じ男でありながら不愉快なものを感じさせた。

 欲望丸出しの感情はこうも醜いものなのだろうか。


「調教すると言っておきながら誠心誠意おもてなしとは矛盾してないかしら?

 お生憎様、体の加減はすこぶる調子がいいわよ」


「おやおや、無理をなさらずに。我慢は体に毒ですよ」


「そう思うのならいい加減お縄に付いてもらいたいものね」


 何時まで経っても変化のない俺達に流石に郷太郎も不審に思い始めた。


「言っておくけどわたし達にはあんた達が持っている媚薬は効かないわよ。

 まさかまるっきり対策を立てないでここに乗り込んでくるわけないじゃない」




◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 『GGG(スリージー)』のギルドホームに突入する数時間前に話は遡る。


 美琴は今まで気が張っていた緊張の糸が切れたのか、ぐったりしてしまって今はヴィオが付き添いで別の部屋で休んでいた。


「さて、『GGG(スリージー)』が限りなく黒になった訳だけど、流石にこのまま無策にギルドホームまで行くわけにはいかないわね」


「でもフェル、仮に『GGG(スリージー)』の人たちが襲ってきたとしても、セーフティエリア内の戦闘くらいならあたし達にはどうってことないと思うけど?」


「セーフティエリア内の戦闘だけだったらね」


 鳴沢の言う通りSA内で戦技・魔法が使えないとしても、今の俺達クラスのLvスペックだけでも対抗することは可能だ。

 だが、どんなことでも抜け道は存在する。

 特に悪事を働く者にとってそういう事には天才的な腕を発揮する者もいたりする。


「正直、搦め手で来られたりすると拙いわね」


「搦め手って・・・お姉様、例えばどんなふうにですか?」


「典型的なところで言えば、毒ね。特に今回は『GGG(スリージー)』が媚薬を使ってくる可能性が高いわね」


「でも毒だったらボク達のキュアポイズンで治せるんじゃないかな」


 SA内では戦技・魔法は使えないが、唯一の例外が治癒魔法だ。

 『GGG(スリージー)』のギルドホームに行くのに、俺と鳴沢とジャスティといった治癒魔法を使えるメンバーが3人も居るので普通であればそれほど心配はないのだが。


「普通の媚薬だったらキュアポイズンで治せるけど、普通じゃない媚薬だったら?

 ヴァイはさっき毒4の他にも魅了とかの効果も付属する媚薬があるって言ってたじゃない」


「まぁ、確かにそう言った媚薬もあることはあるが・・・俺もそこまで詳しいわけじゃないぜ」


「ふむ、じゃあこういった事に詳しいのは・・・」


「るるぶるさんですね。フェンリルさんるるぶるさんに連絡を取ってみてはいかがですか?」


 確かにるるぶるさんは情報屋(ジャーナリスト)の二つ名を冠しているだけあって戦闘や特定モンスター以外にもあらゆる情報に通じている。

 ここはフリーダの勧めに従ってるるぶるさんに連絡を取ることにした。




『ええ、ありますよ。毒4以外にも効果が出る媚薬が』


 るるぶるさんに携帯念話(テレボイス)で連絡を取り、これまでの事情を説明して

GGG(スリージー)』が使ってくるであろう媚薬等の事に関して聞いたところ、あっさりと質問に答えてくれた。


「やっぱりあるんだ・・・」


『最近出回ってきた媚薬ですけど、エクスタシーヘブンと言って効果に淫乱Buffが付くんですよ。

 この状態になればどんな淑女でも娼婦のごとく、どんな好青年でもケダモノのごとく乱れますね』


 乱れますねって、るるぶるさんは簡単に言うけど、これって結構やばい効果じゃないのか?

 毒ならキュアポイズンで、麻痺ならキュアパラライズで、石化ならキュアストーンで、魅了・混乱ならサニティでそれぞれ治せるが、淫乱って異常状態の治癒方法って聞いたことないぞ。


 全ての異常状態を直し、尚且つ常時HPを回復し続けるサンクチュアリなら治せると思うが、この魔法は聖属性魔法の為SA内での使用は不可能だ。

 普通であれば恋人同士とかでしか使わない媚薬だが、『GGG(スリージー)』の様に悪事に使えばこれほど効果的なものは無い。

 これが市場に大量に出回ればパニックが起きるんじゃないのか?


『もちろん治癒方法も存在しますよ』


 るるぶるさんはそんな俺の考えを一蹴するかのように、あっさりと答える。


『淫乱の異常状態限定ですけど、賢者の石が淫乱の治療に効果を発揮します。

 賢者の石は高価な品ですが、淫乱の治癒に効果を発揮するとなればその額に見合うものだと思います。

 これから『GGG(スリージー)』のギルドホームに突入するのであれば、人数分ご用意しましょうか?

 ああ、それだったら宝石スキルで加工したペンダントの方がいいかもしれませんね』


「あ、ああ、お願いするわね」


 るるぶるさんに連絡したらあれよと言う間に突入の準備が整っちゃったよ。

 1回淫乱の治癒をするたびに賢者の石が1個必要になるが、ペンダント型にすると常時効果を発揮するそうだ。但し淫乱限定の効果だから普通であれば意味のない装備だが。


 俺達はるるぶるさんから賢者の石のペンダントを人数分、それと予備に賢者の石を数個貰って『GGG(スリージー)』のギルドホームへと向かう。




◇ ◆ ◇ ◆ ◇


「そんな訳でわたし達にはその媚薬は効果が無いのよ」


「そんな・・・! ギルドマスターは対処法が存在しない媚薬だって言っていたのに」


「まぁ、エクスタシーヘブンに賢者の石が効くのを知っている人は殆んどいないそうよ。

 そう言う意味では対処法が存在しないってのは、ある意味あってるわね」


 俺の言葉に郷太郎たちは先程までの余裕は一切なくなり狼狽えはじめる。


「さて、いい加減に観念した方がいいわよ」


「だからと言って、はいそうですかと捕まるわけないでしょう」


「ならしょうがないわね。力ずくで大人しくしてもらうから」


 その後の戦闘はもうこちらの一方的なもので終わった。

 郷太郎たちは軒並み気絶に追い込まれ、会議室の隅にロープで縛られた状態で転がされていた。


 鳴沢が『軍』に連絡を取り、郷太郎たちを引き取ってもらう事にする。

 勿論それだけではなく、これから『GGG(スリージー)』の一斉検挙をするために『軍』が大軍を引き連れて来るそうだ。

 何でも『軍』でもそれなりに『GGG(スリージー)』を調査していたらしい。

 そこへ俺達が動いて事態を動かしたので渡りに船だったそうだ。


 俺達は気を失う前に郷太郎からGGの居場所を聞き出していたので、『軍』が来る前にGGのところへ行ってGGの考えを聞かなければならない。

 何故こんなことをしたのか、と。

 勿論、このまま逃がさないためでもある。




◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 そして俺達はGGが居ると思われる部屋の前に来ていた。

 だが部屋の中からは何やらぶつかり合う音が聞こえていた。


 俺は不審に思いながらも警戒しつつ扉を開ける。


「っ!」


「なぁ!?」


「きゃぁっ!!」


「ちょっ!?」


 そして部屋の中の状況を見て俺達は一堂に固まってしまった。

 俺の後ろではジャスティ達が悲鳴を上げている。


「おう、もう、来た、のか。すぐ、終わる、から、待って、な」


「・・・ん! ・・・ぁん! ・・・んぅ!」


 部屋の中には裸の男女が絡み合っていた。

 ベッドの上で女に覆いかぶさり腰を打ち付けている男――GGが事も何気に言ってくる。

 女は必死に喘ぎ声を抑えようと手で口を塞いでいる。


 GGは俺達の目の前で堂々と行為を続け、己の欲望を女に注ぎ込み満足して俺達の前に立ち上がる。


「ふぅ、お前ら来るの早ぇよ。つーか、郷太郎も碌に足止めできなかったのか」


 メニューウインドウを操作しながら一瞬で服を装備しながらGGは軽口を叩くように悪態をついてくる。


「あ! あの・・・! あ、あたしまだ体が疼いているんです・・・! お願い・・・! 続きを、お願いします!」


 行為を終えたにも拘らず、女は必死になってGGに頼み込む。


「あー、残念だが時間切れだ。

 まぁ、こいつらの目の前でしていいんだったら好きなだけやるが? どうしても我慢できなければ他の奴らに頼むんだな」


 GGの突き放した言葉に女は絶望の表情をしながら己の体の疼きに堪えていた。


「ジャスティ、フリーダ、彼女を保護して。

 予備の石があったからそれを使って彼女を落ち着かせてあげて」


 本来であれば目の前で行われていた行為は興奮ものなのだが、俺の身体(アバター)が女だからなのか、GGのしている行為が脅迫まがいの強姦(レイプ)だからなのか、今GGに抱いている感情はそんなものではなかった。


 ジャスティとフリーダは彼女をGGから引き離し、アイテムストレージから毛布と賢者の石を取り出して彼女の治療を行う。


「あー、なんだ、もう賢者の石までたどり着いてしまったのか。

 好き勝手出来たのもここまでかな」


「ふざけないで! GG、あんた一体何をしているのか分かっているの!?」


 GGはいたずらが見つかった子供の様にバツが悪そうな表情をしていた。

 俺はそれを見て思わず怒鳴りこんでしまう。


 少なくとも俺の知っているGGはこんなことをする奴じゃなかった。

 某アニメの主人公の勇者に憧れた好青年のはずだった。


「何をしているって・・・ナニをしているんだが」


「GG・・・!」


「そういきり立つなよ。少なくとも彼女とは合意の上でだぜ」


「それは断れない状況に追い込んでからの事でしょ!」


「それでも最終的な判断をしたのはそっちだ。俺だけが責められるのはちと不条理だな」


「よくもぬけぬけと。

 これがGGの目指していた勇者のすることなの?」


 俺の言葉にGGは顔を少ししかめながら言い訳をしてきた。


「何言っているんだ。勇者ってのは平気で人の家に上がり込みタンスやら宝箱を漁ったり、好き勝手な事が出来るんだぜ。

 なのに何で俺が非難されなきゃならねぇんだ」


「それはゲームの中の勇者の話でしょ」


「おいおい、AI-On(ここ)も立派なゲームの中じゃねぇか」


「GG、ふざけないで。

 大勢の女性を手に掛けておいて、勇者だから好き勝手出来るなんて言い訳が通じるわけないでしょ。

 あんたのやってることは犯罪行為そのものなのよ」


「ここら辺が潮時・・・かな」


 俺の問い詰めにGGは諦めたようにため息をつく。

 そして両手を広げて芝居がかったかのように振る舞う。


「君たちに最新の情報を公開しよう!」


「GG、わたしはふざけないでって言ったわよね?」


「まぁ、聞けよ。少なくともそっちには喉から手が出るほど欲しい情報だぜ。

 ――俺はBの王を見つけた」


 なっ!?

 GGの言葉に俺達は驚愕する。

 今まで見つからなかったBの王の情報をGGは持っている!?


「だが残念なことに俺にはBの王は倒すことが出来ない。勇者であるがためにな」


 どういう事だ? 勇者であるからBの王が倒せない?


「だったらその情報を何故今まで隠していた?

 GGが倒せないんだったら俺達が倒せばいい話だろう? そうすれば残りはAの王だけだ。

 まさか自分がBの王を倒せないから腹いせに情報を隠していたのか?」


 もしかして情報を隠していたことに意味がある?

 ヴァイの言う通り腹いせで隠していたわけではあるまい。


「まさか。別に俺でなくてもBの王が倒せればそれに越したことは無いさ。

 だが今の俺はそれすらも許されない状況何でな。それ故にBの王の情報は今まで隠して来た」


「それが今までの犯罪紛いな事をしてきたのとどう繋がるんですか?」


 GGがしてきた犯罪紛いの事と今の話に繋がりが見えてこないため、フリーダの避難の声が浴びせられる。


「・・・そうだな。ぶちゃけると、俺はもうこのAI-On(アイオン)の世界から出ることは出来ない。だからこそ自分のしたいようにしてきた。それが答えだよ。

 ・・・全ての始まりは俺が勇者を選んだことから起きたことだ。今となっては勇者なんて名ばかりなもので、ただの道化(ピエロ)でしかないって気がついた時には後の祭りさ」


「外の世界に出られない・・・? 何を訳の分からないこと言ってるの?

 エンジェルクエストをクリアすれば外に出られるんでしょ」


 GGの出られない発言に鳴沢は不審に思いながらも聞き返す。


「エンジェルクエストの話はお前らだけの事だよ。俺には別の理由が出来たのさ。

 勘の良いフェンリルの事だ。そろそろ俺が何を言いたいのか見当が付いているんじゃないのか?」


 GGが俺に話を振ってくるが、はっきり言ってGGが何を言いたいのか見当がつかない。

 だが、Bの王、勇者、外に出られない、GGの犯罪行為、それらの情報が頭の中でぶつかり合い、そして唐突にパズルのピースが合うように答えが導き出される。


 そしてその答えに俺は驚愕する。

 だからと言って許せるわけでもないが、GGのこれまでの行動は納得できてしまう。

 これを考えた奴ははっきり言って狂ってるとしか言いようがない。

 そもそもデスゲーム自体が狂っているのだが、デスゲーム自体には努力次第で抜け出せるという希望がある。

 だがこれはそんな希望すらも塗りつぶしてしまう最悪のシステムだ。


「その様子だと気が付いた見たいだな。

 さすがは剣の舞姫(ソードダンサー)、俺とトッププレイヤーの肩を並べるだけのことはあるな」


「フェル、どういう事?」


 鳴沢は俺の只ならない雰囲気に緊張の声を含ませながら聞いてくる。


「GGは外に出られないから自分の好き勝手に行動をした。もちろんそれらの行為は許されるものではないけどね。

 そして外に出られない理由が、Bの王と勇者、この2つが関連しているわ。

 勇者、この単語をよく見れば答えはおのずと出ていたのよ。勇者の英語表記は―――」


 俺の絞り出す声を引き継いでGGがその続きを答える。


「そう、今俺の職業はユニーク職・勇者(ブレイヴ)

 俺がお前らが必死になって探していた26の王の1人、『勇気ある王・Brave』だ」




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 生産に関するスレ26


21:江戸=卯隠

 うおおおおおおお!

 遂に完成した! 蘇生薬を完成させたぞぉぉぉぉぉぉ!!


22:佐々やん

 >>21 mjd!?


23:ちのっち

 うそぉ!?


24:大帝国陸軍大悪児

 それが本当ならプレイヤーの生存率がぐっと上がるぞ!


25:炎の料理人

 今までは蘇生魔法の使える大司教と死霊術師だけだったからね


26:江戸=卯隠

 ああ、但し効果があるのはあくまでリザレクションだけだから

 プリザベイションはそれぞれ大司教たちに掛けてもらう必要があるけどね


27:フレッシュプリティ

 いえ、それだけでも十分ありがたい話です


28:江戸=卯隠

 そうそう、1人でも多くの人が現実世界へ帰れるよう蘇生薬エリクサーのレシピを公開するね


29:小悪魔

 mjd!?


30:佐々やん

 ちょww この人神すぐる!w


31:ワーカーホリック

 普通なら独占してぼろ儲けできるのに・・・!


32:朱里

 流石は双腕の錬金術師


33:MaxHeart

 >>32 双腕の錬金術師って何ですか?


34:江戸=卯隠

 必要生産職Lvは、錬金術Lv80、薬師Lv60、料理Lv40

 必要材料は、竜の爪、賢者の石、ネクタル、神丹


35:朝霧

 >>33 彼は生産職:錬金術師でありながら、職業:錬金術師であるという二つの錬金術師の腕を持っているのよ


36:MaxHeart

 え? 特殊職に転職しないで上級職の錬金術師で頑張っているの!?

 そりゃすげぇ!


37:小悪魔

 ちょ!www

 必要材料どれも入手困難なものばっか!ww


38:ちのっち

 賢者の石、ネクタル、神丹、どれも高Lvの生産品じゃない!


39:朱里

 ネクタル、神丹は辛うじて作れるLvだけど、賢者の石なんてとてもじゃないけど無理


40:朝霧

 うーん、あたしは辛うじて賢者の石が作れるかなぁ


41:ワーカーホリック

 普通はポーション系でHPやMPを回復するから錬金術系の回復アイテムってなかなか作らないんだよね~^^;


42:ダードリック

 材料もそうだけど、生産職Lvも無茶苦茶だなw


43:佐々やん

 錬金術Lv80ってどんだけだよ・・・


44:ちのっち

 錬金術は大抵のレシピで必要になるからLvは上げているけど、80は流石に無理だね


45:朱里

 薬師は辛うじて届くLvかなぁ


46:炎の料理人

 誰か料理Lv40に突っ込みを入れようよ・・・






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ