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Angel In Online  作者: 一狼
第14章 World
62/84

58.玄武と呪い

1月5日 ――158日目――


 俺達は半日ほど時間をかけて氷の都市に戻ってきた。

 氷で覆われていたドームは見事溶けていて人々が何事もなかったかのように生活していた。


「そう言えばここの人たちって氷に閉じ込めれていたって認識は無いのかな?」


「大騒ぎしてないところを見るとスノウメイデンの事も氷のドームの事も何も知らないと思うわよ。

 それとどれくらい閉じ込められていたか分からないけど、時間の認識にもズレが生じてると思うわ」


 アイちゃんの疑問に俺が答える。

 多分、一瞬で都市全体を閉じ込めたから住人達は自分たちが時間からも隔離されたことも認識していないはずだ。


「うーん、下手をすれば100年単位で閉じ込められていた可能性もあるのか~

 気が付いたら100年先の未来にタイムスリップしたみたいなものなんでしょ? ボクはタイムスリップ系のお話は好きだけど、流石にこういうのはちょっとなりたくないね」


「あら、でもスノウメイデンじゃないけど永遠に若さを保ったままってのもジャスティにはピッタリじゃない?

 日頃から言ってるじゃない。若さは今だけだ、時間はお金じゃ買えないって」


「ちょ、それとこれとは違うよ! それに氷漬けじゃ若さは保てても何もできないじゃん!」


 今まで2人PTだったのでいじり慣れているのか、ジャスティとフリーダはお互い言い合いを始める。


「はいはい、そこまでにして。取り敢えず都市の中に入って情報収集よ。

 第1目的は玄武だけど、出来ればAの王やBの王の情報も集めたいところだね」


「今まで発見されなかった都市です。そこは期待していいかと思いますよ」


 るるぶるさんの言葉に俺は頷く。

 まぁここだけじゃなく、南に行った鳴沢達の方にも火山都市があるからそっちの方にも期待はしているが。

 俺達は情報を集めるべく新たな都市へと足を進める。




◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 情報収集に長けたるるぶるさんは1人で動くことにし、残った俺達は冒険者ギルドや露店などで情報を集める。


 この都市は冬華都市アイスブロッサムと呼ばれていて都市の中央には巨大な氷で出来た大樹が植わさっていた。

 都市の名前を冠するこの大樹は、氷で出来ているものの姿かたちは桜の木そのものだった。但し樹齢何千年とも思われるほどの桁違いなほどの大きさだが。

 樹体は透き通るような氷をしていて、花びらは桜を思わせるような薄いピンク色をしていた。

 花の散り様は花びらがヒラヒラ落ちるのではなく、花びらがパキンと砕け散り氷の粉を振り撒く幻想的な景色を醸し出していた。


「うゎぁ・・・」


 俺達はその圧倒的な氷の大樹と所々降り注ぐ氷粉の景色に目を奪われていた。


「どうだ? 凄いだろう。外から来た人たちはこの景色を見て必ずと言っていいほど目を奪われるんだ」


 そう言って俺達に近づいてきたのは上等な制服を着た髭を生やしたダンディなおっさんだった。

 おっさんなのにカッコいいとは・・・この世界は何処に行っても美形キャラしかいないのか?


「俺はこの都市の警備隊隊長のグラスだ。

 あんたらは冬華都市の外から来た冒険者だろう? この辺では見ない格好だからな。

 最近この都市に訪れる冒険者もめっきり減ってきてしまったからなぁ。これも呪いの影響なのかね」


 もっとも最近まで氷漬けにされていたから冒険者は訪れやしなかったんだけどな。

 おっさんの言う最近と言うのは氷漬けされる前の事だからその時から既に冒険者の数は少なかったってことか。

 と言うか、呪いってなんだよ。この都市は呪いが掛かってるのか?


「呪いって?」


「ああ、この冬華樹にも関係ある話なんだがな。

 かつてこの辺一帯の土地は玄武の呪いにより人が住めなかったんだ。そこへ現れたのが月神ルナムーン様の御使いのアルテミ様だ。

 彼女はお供の神狼フェンリルを連れて玄武を北へ追い払って下さった。そしてこの地に人が住めるように月神様から授かった呪いを払うと言われている冬華樹アイスブロッサムを植えたのがこの都市の始まりだ」


 ぶ――――――――っ!!


 ちょ、思わず吹き出しかけたよ!

 玄武の情報を聞けたのは良いけど、それ以上に余計な情報も聞いちゃったよ!

 特に神狼フェンリルの名前が出た時はみんなが一斉に俺の方を見たし。


 確かに月と狼は何かと関係がある。

 狼男は満月で変身するし、ギリシャ神話の月と狩りの女神アルテミスは狼を従えてたって話もある。

 それにしてもまさかここでフェンリルの名前が出てこようとは・・・


「アルテミ様はそのままこの地に留まってくれて月神の巫女としてルナムーン神殿を建てたんだ。

 この都市の北側に神殿があるからあんたらも一度行ってみたらどうだ? 月神様の加護がもらえるぜ」


 いや、既に月神様から加護を貰ってますよ。

 と、そこでリムが気が付いたこと言う。


「そう言えばフェンリルさんの持っている月読の太刀とこの冬華樹って同じ性質を持っていますね。呪いを無効化するっていう。

 何か関係があるのかな?」


「月読の太刀は月神様から授かったものだし、冬華樹も月神様から授かったものだもの。まぁ全くの無関係って訳でもないわね」


「なっ!? あんた月神様に会ったことがあるのか!? しかも武器を授かっただと!?」


 グラスのおっさんは俺の言葉に驚愕する。

 おっさんの話によればこの都市は月神様を崇拝しているみたいだから、月神様本人に会ったとなればそりゃあ驚くわな。


「ええ、ちょっと一人前の月神の巫女になるための神格顕現の儀に立ち会ったことがあってね。

 その時に月神様からこの月読の太刀を頂いたのよ」


 俺はそう言いながら左腰から月読の太刀を鞘ごと外しておっさんに見せる。

 そこで月読の太刀がカタカタと震えてるのが分かった。

 耳を澄ませばキィィンと甲高い音まで聞こえてくる。

 よく見れば冬華樹も淡い光を放ちながら震えているのが見て取れた。


 共鳴している?


 俺は何となしに月読の太刀を鞘から抜き放つ。

 次の瞬間、月読の太刀と冬華樹から辺り一面塗り潰すほどの光が迸る。


 光が収まると月読の太刀の振動も収まっていて、冬華樹も何事もなかったかのように佇んでいた。


「な・・・何が起こったんだ?」


「・・・それはこっちも聞きたいわよ」


 おっさんは呆然としながら月読の太刀と冬華樹を見比べる。

 まぁ、何が起こったかは分からないが、何かしらのフラグが立ちイベントが起こったのは分かった。


「と言うか、あんた何者だ? 一人前の月神の巫女になるための神格顕現の儀なんてここ暫く行われていないはずだ。一体どういう事か説明してくれないか?

 いや、まずはルナムーン神殿に行こう。そこで詳しい話を聞こう」


 俺達はグラスのおっさんに連れられて冬華都市のルナムーン神殿に向かうことになった。




◇ ◆ ◇ ◆ ◇


「なんてこった・・・まさかそんなことが起こってたとは・・・」


 俺の月神様に関するこれまでの経緯と、冬華都市のスノウメイデンによる氷に覆われていたことを説明にグラスのおっさんは頭を抱えていた。


「そう、ですか。姉はもう亡くなっており、ルーナが月神の巫女に・・・」


 そう呟いたのは冬華都市のルナムーン神殿の巫女のアルセレさんだ。

 巫女と言っても三柱神(みはしらのかみ)の巫女ではなく、神殿の代表者としての巫女だ。

 アルセレさんはルーナちゃんの母親の妹でルーナちゃんにとっては叔母にあたる。

 冬華都市が氷に閉じ込められていたのは約10年ほどらしい。

 アルセレさんにとってはルーナちゃんはまだ2歳でしかなく、アルセラさんの姉でありルーナちゃんの母親のアルセナさんも存命していることになる。

 だがいつの間にか都市の外では10年が経っており、姉は亡くなって姪のルーナちゃんは12歳という若さで月神の巫女という大職に就いているともなれば驚くなと言うのは無理なものだ。


 アルテ村にあるのがルナムーン神殿の本殿で、冬華都市にあるのが分社ということになる。

 本殿より分社の方が立派なのは村と都市の違いの所為だろう。

 当時ルナムーン神殿本殿には女性が居なかったため月神の巫女は存在しなかった。

 月神の巫女の血を引く本殿当主に嫁いだのがアルセナさんで、そして生まれたのがルーナちゃんという訳だ。


「俺はこの事を領主に話してくる。

 多分この後、都市の中と外との違いに問題が起こるだろうからな。今のうちに出来るだけ対処しておかないと」


 そう言いながらグラスのおっさんは神殿から出ていく。

 あー、俺達も何か手伝った方がいいのか・・・?

 いやいや、俺達の目的は玄武だ。この都市の事はこの都市の人たちに任せればいいだろう。何か問題があれば冒険者ギルドを通じてクエストでも発行されるだろう。


「あの、もし宜しければルーナの事、アルテ村の事をもう少し詳しく教えてもらえませんか?」


「ええ、構いませんよ。そのかわりと言っちゃなんですが、玄武の事について教えてもらえませんか?

 わたし達は玄武を倒しにこの地に来たのですから」


 アルセレさんは俺の言葉に神妙に頷く。

 この都市のルナムーン神殿にとって玄武討伐はいつか果たすべき望みなのだから、俺達への協力は惜しみないそうだ。


 この地はグラスのおっさんの説明にあったように玄武に呪われていて、当時のアルテ村の月神の巫女アルテナ様が神託を受け、その妹のアルテミ様を使わした。

 その途中で神狼フェンリルを仲間にし、玄武と戦い北の洞窟へ追い払ったという事だ。

 そして呪われた土地を払うため月神様から授かった冬華樹アイスブロッサムを植えて、冬華樹と共にこの地を護るためにルナムーン神殿を築いたのが冬華都市の始まりだ。


「それで玄武は北の方へ追いやられたという訳ね」


「はい、ここからさらに北に向かったところにある玄武洞に潜んでいて、未だにこの地を虎視眈々と狙っていると言われてます。

 ですが、一説には神狼フェンリルが睨みを利かせて抑えていると。

 そう言えばあなたもフェンリルと言うのですね。そしてアルテミ様も月読の太刀をもって玄武を退かせたとあります。

 フェンリルの名を携え、月神様から直に神刀を授かり、玄武を倒しに来たと・・・まるでアルテミ様の再来のようですね」


 俺もここまで揃うと話が出来すぎてるんじゃないかと思うよ。

 でもアルテミ様の再来は言い過ぎだろう。そこまで期待されてもこっちとしても困る。


「そう言えば、さっきの冬華樹の光って何だか分かりますか? どうも月読の太刀と共鳴していた感じがするのですが」


「先ほどの辺りを覆った光ですね。私も今まで冬華樹を見てきましたがあんなのは初めてです。

 冬華樹は月読の太刀から力を分け与えられた神樹とされています。その大元の月読の太刀が近づいたことで何か力が解放されたのかもしれません」


 そうか、唯ちゃんの言うようにさっきの月読の太刀は共鳴していたのか。

 力の弱まった冬華樹に月読の太刀が再び力を与えたのか?

 何かしらのイベントなのだろうけど、聞いた感じじゃ悪いようにはならないみたいだしそれほど心配する事でもないか。


「まぁ、何にしても玄武が北の洞窟に居るのが分かったのはありがたいわ。るるぶるさんと合流して早速行きましょう」


 まだこの後、西の白虎の攻略も残っているんだ。早めに玄武を倒しておくのに越したことは無い。


 一応、玄武の対策として呪い耐性のアクセサリーを装備しようということになり、冬華都市の転移門の魔法陣を使って一度王都セントラルへ戻ることになった。

 冬華都市の転移門は中央の冬華樹の傍にあり、王都の北の門の傍に新たに現れた転移門に繋がっていた。

 今まで冬華都市は氷に覆われていたから王都の転移門も機能していなかったようだ。

 突然現れた俺達に周りにいたプレイヤーはビックリしていた。

 これからは転移門を通じて王都と冬華都市の行き来が可能だ。


 因みに呪い耐性のアクセサリーはそれほど揃えることが出来なかった。

 アクセサリーの専門である夕闇のところを訪ねたが、そもそも呪いを使うモンスターが少ないため市場には呪い耐性のアクセサリーはそれほど数が無いそうだ。

 流石の夕闇も在庫が3つほどしかなかったので、前衛の唯ちゃん、アイちゃん、ジャスティの3人に持ってもらうことにした。


 全ての準備を整えた俺達は再び転移門を潜り、冬華都市から北の玄武洞へと向かった。




◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 冬華都市からひたすら北に向かって3時間ほど進んだところに3mほどの高さの洞窟が見えてきた。


「ここが玄武洞ね。ここからは騎獣に乗って入れないから隊列を組んでいきましょ」


 先頭には罠と索敵の為にるるぶるさんと盾を装備しているジャスティを、その後ろには唯ちゃんとアイちゃん、中位置で俺、最後尾にはリムとフリーダ。

 リムとフリーダは接近戦も可能だからバックアタックの心配もいらない。


 玄武洞のモンスターのLvは大体70~80位だった。

 エンジェルクエストも終盤となったユニーク職クラス(累計Lv80)までLvを上げた俺達にはさほど苦戦はしないで進むことが出来た。

 とは言え、それなりに特徴があるモンスターだったので手間だけは掛かったが。


 岩のような皮膚を持ち圧倒的な防御力を誇るロックラット、氷耐性がピカイチで柔軟な攻撃手段を持つフロストリザードマン、呪5のカウントデスの異常状態を使ってくる首無し死霊騎士のデュラハン、魂だけの存在なくせに魔法攻撃だけでなく物理攻撃まで使ってくるウィルオーウィプス、氷のネットで攻撃してくるアイスタランチュラなどなどだ。


 俺達は補助魔法のライトの明かりを2・3個発動しながら玄武洞を奥へと進んでいく。

 一応、魔法無効化エリアを想定して松明の明かりをるるぶるさんとリムに持ってもらう。


 1時間ほど玄武洞のモンスターと格闘しながら奥へと進むと、ドーム状の広いエリアへと出た。

 そしてその中央には蛇の尻尾を持った5m程の巨大な亀が佇んでいた。

 その周りにはロックラットが3匹ほど一緒に居るのだが、明らかに通常のロックラットとは異なっていた。

 ここまで来る時に見かけたロックラットは1m程の茶色の岩肌をしていたのだが、玄武の傍にいるロックラットは2m程の大きさで青色の岩肌をした変異種だった。


「各自戦闘準備」


 玄武に突入する前に各自身体強化魔法等のBuffを掛けてステータスを強化する。

 時間的にも夜になっているのでジャスティはヴァンパイアブラッドの覚醒が始まっている。唯ちゃんもドラゴンブラッドで竜人化している。

 後は一応、俺とリムで蘇生魔法のプリザベイションをみんなに掛け直しておく。


 俺達の侵入を確認した玄武は周りにいたロックラットをけしかけ、そして小手調べなのか土属性魔法の岩の弾丸を放ってくる。


『ストーンブリット!』


 ジャスティが盾で岩の弾丸を弾き、そのまま玄武に向かって突進する。

 こちらに向かってきているロックラットは俺と唯ちゃんとアイちゃんで対処することにして、るるぶるさんとリムとフリーダはそのままジャスティの後を追い玄武と戦闘を開始する。

 変異種とは言えロックラットだ。速攻で片づけジャスティ達の援護に向かう予定だ。


 変異ロックラットは体を丸めて弾丸のように俺に向かって突っ込んでくる。

 俺は二刀流スキル戦技十字受けで受け止め、そのまま膝蹴りを放って軌道をずらし後ろへいなす。

 変異ロックラットは上手くバランスを取り着地し、すかさず岩肌の一部を槍状に変形し飛ばす。

 飛んできた岩槍を左手の月読の太刀で弾きつつ、プチ瞬動で一足に近づき右の妖刀村正で刀スキル戦技・桜花一閃を放つ。


 ガキン!


「硬った!」


 普通のロックラットよりもさらに数倍は硬かった。

 変異種と言えど、普通のロックラット同様物理攻撃はあまり効果が無いので魔法攻撃で倒すのがベストだろう。

 だが俺はお構いなしにそのまま左右の刀を振るい剣舞(ソードダンス)をお見舞いする。


 ガガガガガガガガガガガガガガッ!!


 無数の剣閃が変異ロックラットを襲い、激しい攻撃により変異ロックラットは動きを封じられてしまう。

 普通であれば変異ロックラットの岩の防御力により武器の耐久力が減少してしまうところだが、俺の武器は耐久力の存在しない伝説級の武器なので問題は無く力押しで攻撃を続ける。

 変異ロックラットの動きを封じてる間に魔法を唱える。


「サンダージャベリン!」


 ズガァン!!


 じりじりHPが削っていき、止めにはなった雷の槍の魔法剣により変異ロックラットは光の粒子となって消え去る。


 唯ちゃんとアイちゃんの方も問題なく変異ロックラットを相手しているので、俺はすぐさま玄武の方へと向かう。


 玄武は亀の頭と尻尾の蛇を上手く使い、それぞれが別々に攻撃を行っていた。


『ロックシェイカー!』


 亀の頭が唱えた土属性魔法の範囲魔法の岩石波により、玄武を中心に扇状に地面らか無数の岩石が隆起しジャスティ達に向かって襲い掛かる。

 ジャスティ達が岩石波に耐えてる間に尻尾の蛇が土属性魔法の冥界石を放ってくる。

 冥界石はデフォルトの六角柱の石柱ではなく、先が尖った六角錐の石柱だった。


『ゲヘナストーン!』


 冥界石の直撃を受けたジャスティは盾で防いだとはいえ衝撃までは防げずその場に転がる。

 るるぶるさんがすかさずフォローに入り、リムが治癒魔法を唱える。


 俺もジャスティのフォローに入るべく、神降しスキルを使いつつ玄武にプチ瞬動で接敵する。


「神降し! オオクニヌシ!」


 オオクニヌシはスサノオの子孫で神話時代の国を作り日本を平定した神だ。因幡の白兎にも出てくる神として医療の神様としても有名だ。


 るるぶるさんに噛み付こうとした亀の頭をプチ瞬動ですれ違いざまに刀スキル戦技・天牙一閃を放つ。

 そのまま玄武の右足に接敵しターンステップを組み合わせて二刀流スキル戦技・剣舞六連をお見舞いする。


「ジャスティとるるぶるさんはそのまま玄武の頭を抑えて! リムは2人の回復に専念をお願い! フリーダはわたしと一緒に玄武の脚を落とすわよ!」


 玄武が亀であるにも拘らず、その巨体で意外と素早い動きをする。

 まずは足を落として動きを封じる狙いだ。


 だがそれをさせまいと尻尾の蛇が鞭のようにしなり、俺に向かって噛み付き攻撃をしてくる。

 俺はステップを駆使して蛇の噛み付きを躱しながら右足を攻撃する。


「ガトリングエアバースト!」


 フリーダも俺が攻撃した右足に向かって風属性魔法の風の連装弾を放つ。

 集中攻撃を受けた玄武は右足を崩してその場に動きを止めた。


 よし! 唯ちゃんとアイちゃんも向こうが片付いてこっちに向かってきたし、後は他の足を攻撃しつつ亀の頭を攻撃すれば・・・


 俺のそんな考えを嘲笑うかのように玄武は黒い霧のブレスを辺り一面に吐く。

 寧ろ今までのが前哨戦で、これが玄武の真骨頂なのだろう。


『カースブレス!』


 そのブレス自体には何の攻撃力は無いが、ジャスティ達に呪いの異常状態Buffが付けられた。

 カースブレスの呪いの種類はランダムなのか、ジャスティには呪2――金縛りが、唯ちゃんとるるぶるさんには呪1――ステータス呪(ステータスダウン)が、アイちゃんには呪3――カウンター呪が、フリーダには呪4――スキル呪(スキル封じ)が、リムには呪5――カウントデスの呪いが掛けられていた。


 当然俺にもブレスが掛かったのだが、月読の太刀のお蔭で呪いは無効化される。

 ジャスティ達が呪い耐性のアクセサリーを付けているが、あくまで耐性なので完全には防ぎきれていない。


 と言うか、リムがやばい。

 リムの掛けられた呪5は5秒から5分までのランダムで選ばれた時間が0になった瞬間に死亡してしまうというある意味最悪の呪いだ。

 しかもリムのカウントデスのランダムで選ばれた時間は最小の5秒。はっきり言って解呪の呪文を唱えてる暇もない。


 あっという間に5秒が経過し、リムはHPは0になってその場に崩れ落ちる。

 幸いと言うか、今ではボス戦では主流になっている蘇生魔法のプリザベイションが掛けられてるため、即座にデスゲームでの死亡にはならずに幽霊状態でその場に佇んでいるはず。

 だが幽霊状態にも制限時間があり、それを過ぎれば即現実世界(リアル)での死亡につながる。


 そしてリムもヤバいがジャスティ達も金縛りやらスキル封じやらでピンチ状態だ。

 まさか広範囲の呪い攻撃を行ってくるとは。そしてその呪いの効果が一斉に来るとここまで厄介だとは。


 俺はまずはリムの蘇生を優先すべく呪文を唱えるが、動揺していた隙を突かれて玄武のボディプレスによる巨体が俺めがけて飛んでくる光景を目にしていた。


 右足を潰されていてよくダイビングジャンプなんて出来るな。あ、よく見れば蛇が治癒魔法を唱えて右足を回復させてるじゃねぇか。つーかこれはやばい!


 どこにそんなことを考えてる暇があったのか、目の前に迫った玄武の巨体が俺を押しつぶそうとした瞬間、玄武は銀色の塊がぶつかってきて弾き飛ばされた。


 俺は一瞬何事かと思って玄武にぶつかってきた銀色の塊を見ると、そこには玄武と同じくらいの5m程の巨体の銀毛の狼が居た。

 その美しい銀の狼を見て俺は理屈抜きに理解する。


 ――神狼フェンリル。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 雑談スレ32


494:碇言動

 死海Access文書によりデスゲーム補完計画は順調に進んでいる


495:葛城サトミン

 はい、エンジェルクエストも順調に攻略が進んでいます

 エンジェルクエストが完了され次第デスゲーム補完計画は発動するでしょう


496:怒り新人

 そんな・・・! 父さん! これは全て父さんが考えた事なの!?


497:碇言動

 そうだ、新人

 このAccess社によるデスゲームは全て私が考えた


498:双竜・明日香・嵐昏

 ねぇ、デスゲームで補完計画って・・・何?


499:フュージョンマスター

 え? マジで497がデスゲームを計画したの?


500:彩奈美麗

 >>498 デスゲームで浄化されたプレイヤーが全て一つになるの


501:怒り新人

 彩奈! そんな・・・いままで一緒に戦ってきたのに・・・僕を騙していたんだな!


502:彩奈美麗

 ごめんなさい・・・私3番目だからあなたの事よく覚えてないの・・・


503:シ者カヲルン

 新人クン、何も嘆くことなんてないよ

 僕達は一つになるんだ


504:フュージョンマスター

 あのー、これってマジもんのことなの?


505:双竜・明日香・嵐昏

 バカ新人、いつまでウジウジしてるのよ!

 あたしはデスゲーム補完計画なんて認めない! だからあたしは自ら前に進んで道を切り開くのよ!


506:XYZ

 >>504 真面目に相手にするだけ無駄だよ

 こいつらキャラになりきって遊んでるだけだからw


507:ウラシマ

 そうそう、相手するだけ時間のムダムダw


508:フュージョンマスター

 マジで? つーかまともに受け取っていた俺って馬鹿みたいじゃん!

 恥ずかしー!


509:フレッシュプリティ

 とか言いながら本当にAccess社の人間だったりして・・・


510:碇言動

 もうすぐだ、もうすぐ会えるぞ・・・ユイ






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