51.青龍と水中戦
マリーの案内の元、俺達は用意された船に来ていた。
船は大型の帆船で周りには船員が荷物の搬入などの準備に追われていた。
「随分荷物を積み込んでるけど、もしかしてジパン帝国との交易品とか?」
「ああ、ここんところジパン帝国との交易が途絶えてしまっていたからな。一刻でも早く交易を再開させたくて今回の話に乗ったんだ。
だからあんたら冒険者には期待してるぜ。特に噂の剣の舞姫が居るってんで船の野郎共も希望を持ってしまってな」
「・・・それって結構責任重大だね」
俺の質問に答えてくれたのはこの船の船長のドレイクだ。見た目はまんま船の男だ。
って言うか、これって完全に護衛クエストじゃないか。
しかも俺の噂のオマケ付き。
「船の準備はあと少しで完了する。船員の邪魔にならない程度で船に乗っていてくれ」
ドレイクはそのまま船員に指示を出しながら準備を再開する。
「なぁ、これって俺達だけじゃ心許なくないか?」
うん、俺もそう思う。
乗せて行ってくれるって言うからてっきり小型の船かと思っていたのだが、大型客船とはいかないまでもかなりの大きさの船だ。
それをこの7人で船を護りながら青龍を退治するのだ。
「ヴァイの言う事ももっともなのですが、この護衛クエストは定員が7人PTのみとなっていますの。
少なくともゲームシステム的に7人PTでクリアできると判断してることになりますわ」
「・・・マジか? 難易度たけぇよ」
うむむ、これは作戦を見直した方がいいか?
「AI-Onには連隊は存在しませんよね? それって7人PTだけでユニークボスも26の王もクリアできるからだって聞いたことがあります」
ソロで色んなPTを渡り歩いてたからか、ユニ君にはかなりの情報が集まっているみたいだ。
もしかしたら麗芳さんと同じような開発者のサポーターと出会っていたのかもしれないな。
「PTの基本的配置はさっき決めた通りで行きましょ。
場合によっては全員が水中に潜って船に近づきさせずに水際で退治する事になると思うから、みんなもそのことを頭に入れておいてね」
「「「「「「了解」」」」」」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
港町ボートポートから船が出発して3時間ほどが経過した。
ジパン帝国までは丸1日掛かる計算だ。出発したのが昼前頃なので向こうに着くのもその時間になる。
青龍はジパン帝国付近の海域に現れるため、今のところは船は順調に進んでいる。
時間的には明日の朝頃出くわす予定なので俺達は今のところ暇を持て余していた。
「うーん、こんなに暇だったら釣りスキルでも取ろうかな?」
「いや、かなりの速度で進んでいるから釣竿を垂らしても魚は食いついてこないぞ」
俺の呟きに紺碧さんがわざわざ答えてくれる。
釣りスキルは生産系のスキルで、釣りが出来るNPCに教えを請えばすぐにでも覚えられる。
幸い船の上には釣りが出来るNPCが沢山いるので覚えるのには簡単だ。
だけど紺碧さんの言う通り、この船の造船技術が凄いのか、はたまた航行に魔法技術を使用してるためなのか、この船はかなりの速度で進んでいるので折角釣りスキルを覚えても魚は連れることは無いだろう。
気配探知と魔力探知のスキルを持っている俺は甲板に出て風に当たりながら一応周りを警戒している。
そこへ紺碧さんが俺の傍に来て雑談を交わしていた。
紺碧さんも気配探知と魔力探知のスキルを持っているので、後で交代しながら周りを警戒することにしている。
他のメンバーは青龍遭遇まで各自自由行動となっている。
「そう言えば『Angel Out』には神速の癒し手のベルザが居るらしいが、彼女はどうなんだ?」
うん? 紺碧さんが特定の人物を聞いてくるなんて珍しいな。
もしかしてまた自分のギルドへの勧誘かな?
「彼女は凄いよ。まぁ辛いこともあったけど二つ名を貰うくらい頑張ってるからね。
ただ、頑張りすぎるところがあるからそこが心配といえば心配ね。
ここだけの話、わたしベルとは現実で知りあいなの。だからなのかベルが無茶だけはしないように傍に居たいってのもあるわ」
「ベルザと知り合いなのか?」
紺碧さんは驚いた顔で俺を見てくる。
「ええ、高校の同級生よ。とは言っても元々そんなに親しいわけじゃなかったけどね」
「いや、知り合いが居ると居ないとでは気持ちの持ちようがかなり違うと聞く。少なくともベルザにとってはフェンリルが傍にいるだけでかなり助かってると思うよ」
「そうだったらいいんだけどね」
最初のPTを組んでいた時は、約束があったから一緒にいてくれたんだと思っていた。まぁ俺の剣の舞姫としての実力を頼ってた部分もあったのだろうけど。
『Angel Out』を設立した時はもうただの約束で一緒にいるんじゃないと分かってきた。
いくら鈍い俺でも何となく気が付く。
だけどこれと言った確信は無いし、今はここを出るのが最優先だ。
お互いの気持ちを確かめ合うのは外に出てからでもいい。
ってこんなことを考えてるのはもしや死亡フラグだったりするのか?
紺碧さんは雑談をした後、警戒の交代まで休むと言って船内に戻っていく。
11月1日 ――93日目――
朝日が昇り辺りを照らし始めたころ俺の気配探知と魔力探知に反応が出た。
紺碧さんの方にも反応があったらしく、PTメンバーを俺に任せ船長のドレイクに報告に行く。
「みんな、青龍が出たわ。戦闘の準備をして」
俺の言葉にみんな緊張を含みながらも戦闘準備を始める。
各自Buffを掛け、俺とヴァイと真桜ちゃんは水中戦仕様に水属性魔法のアクアブレスを掛ける。
甲板に出ると既に目視できるほど青龍が接近しているのが分かった。
慌てて俺とヴァイと真桜ちゃんは水中に飛び込み青龍の船への接近を阻む。
水中に入ると早速萌えスキルの影響で俺の姿はスク水に変化する。ただし神薙の影響か白スクだったりする。
紺碧さんも既に水中戦仕様に準備を終えてたようで、俺達より先に水中で青龍の迎撃の準備を整えていた。
青龍はそのまま突進してきて船に体当たりをしようとする。
そうはさせまいと俺は物理防御の盾の魔法の呪文を唱える。
「マテリアルシールド!」
青龍は目の前に現れた光の盾に衝突してその場で動きを止める。
その時になってようやく俺達を認識したらしく、邪魔をした俺達に睨み唸り声を上げる。
『グルゥゥ・・・!』
「お前の相手は俺達だよ。何で船を狙うのかは知らねぇが、悪いけどあの船を壊させるわけにはいかないんでな。ここで沈んでもらうぜ。
幻獣憑依! マーマン!」
幻獣憑依スキルを使ったヴァイの体は鱗で覆われ手には水かき首元にはエラが出来、足は魚の尾と化し完全に見た目は魚人である。
水中戦に必要とは言え、ハッキリ言ってお近づきになりたくない姿だ。
と言うか、幻獣憑依があるのならアクアブレスは必要なかったんじゃないのか?
「っらぁ!」
まるでロケットのように水中を突進して青龍に一撃を見舞う。
「こっちも負けてられないな」
その言葉を口にすると同時に紺碧さんの姿が消えたように見える。
隠密スキルを発動したのだと思うけど、あれってモンスターがよほど他の事に気を取られていない限り戦闘中にはあまり効果が無かったはず。
紺碧さんは素早く青龍の背後?を取り二刀流スキル戦技・剣舞六連を放つ。
俺は後頭部に攻撃を食らい目を回している青龍にプチ瞬動で接敵し、そのまま顎を蹴りスキル戦技・昇竜脚で思いっきり蹴り上げる。
そこへ真桜ちゃんの銃スキル戦技が放たれる。
「ブラインドバレット!」
モンスターを盲目状態にする銃スキル戦技だが、青龍には効果が無かったようだ。
ここで盲目状態にしておけば船には近づけなかったので後の戦闘は楽だったのだが。
青龍は俺達に構わず船へ向かおうとするが俺達がそれを阻むため薙ぎ払うようにウォーターブレスを吐き出す。
俺達は辛うじてウォーターブレスを避けるが、青龍はただ俺達を狙ったわけではなく、その背後の戦域から離脱していく船を狙った攻撃だった。
気がついた時には遅く、ウォーターブレスは船へ迫っていた。
「マテリアルシールド!」
だが、ユニ君が唱えたと思われる魔法で辛うじて船への直撃を防ぐことが出来た。
危ない危ない、こりゃあ背後の位置関係を考慮しながら戦わないといけないな。
「トリプルバレット!」
ブレスを吐き出した直後を狙って真桜ちゃんの銃スキルが炸裂する。
三連弾を食らって怯みはするものの、青龍は更に怒りを上げて俺達に襲い掛かる。
青龍は体を大きく捻り、その勢いで尻尾による薙ぎ払いを仕掛けてくる。
薙ぎ払いを難なく躱すが、さっきとは逆に俺達が躱した直後を狙われて俺と紺碧さんが前足の攻撃を受けてしまう。
ヴァイは幻獣憑依の、真桜ちゃんは泳ぎスキルが高かったお蔭で辛うじて青龍の攻撃からは逃れられた。
ここにきて泳ぎスキルのLvの低さの影響が出ていた。
ヴァイみたいに水系の憑依スキルがあればそれなりに動きが向上するのだが。
ってあるじゃないか。俺にはヴァイの憑依スキルを上回るスキルが。
「神降し! オオワタツミノカミ!」
俺もあまり詳しくは無いが、オオワタツミノカミは山幸彦海幸彦の日本神話に出てくる海神様だ。
オオワタツミノカミを宿した俺の動きは先ほどまでと比べ物にならないほど鋭さを増した。
更に海神の力か、海流をある程度操作できるようになっていた。
俺はその力を使い、青龍を船へと近づけないように海流を操作する。
青龍は隙を見て船に近づこうとするも、海流に阻まれ思うように動けずにいた。
「流石はユニーク職の力だな。スキルの規模もけた違いだ」
紺碧さんは感心したように俺を見てくる。
動きの鈍った隙に俺達は一斉に攻撃を叩き込む。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
青龍との戦闘は海流を操作した俺の力によってほぼ一方的になりつつあった。
とは言っても腐ってもユニークボス。流石に一気に殲滅とはいかずにじりじりとHPを削るように攻撃するだけだったが。
「ゲヘナストーン!
ライトニング!
――迅雷冥府石破!!」
水中戦で有効な土属性魔法と雷属性魔法を組み合わせた輪唱呪文で、雷を這わせた巨大な六角形の石柱を放つ。
『グルァア!』
石柱を食らいたたら踏んでいるところへヴァイの拳スキルが炸裂する。
「俺の拳が真っ赤に燃える! 青龍を倒せと轟き叫ぶ! 爆炎螺旋拳!!」
ちょ! 何遊んでんだよ!
ヴァイは自分の拳に火属性魔法の炎の槍を纏わせ、そのまま拳スキル戦技の螺旋拳を叩き込む。
『イメージ効果理論』を使えてるのにはビックリしたが、わざわざそのセリフを言う必要なないだろうよ。
畳み掛けるように真桜ちゃんが剣スキル戦技を叩き込む。
「サンダージャベリン!
――スラッシュストライク!!」
真桜ちゃんも『イメージ効果理論』を使い、雷の槍を剣に纏わせて剣スキル戦技の斬撃をお見舞いする。
「おーおー、みんなやるなぁ。そんじゃ俺もとっておきを見せるか。
バーストフレア!
アクアプレッシャー!
サイクロンバースト!
――火水風撃三連魔弾!!」
紺碧さんはショートカットポーチから飛苦無を3つ取出しそれぞれに空間一点発動型魔法を掛けて、当的スキル戦技・三連射で飛苦無を放つ。
空間一点発動型魔法が掛かった飛苦無は、青龍の頭、胴、尻尾に当たりそれぞれ火、水、風の効果を撒き散らす。
おいおいおい、みんないつの間にか『イメージ効果理論』を使いこなしちゃってるよ。
確かに最初にPTを組んだロックベルの次にみんなに『イメージ効果理論』を教えたけどさ。
まさかここまで使いこなしているとは。嬉しいやら悔しいやら。
『グルゥァァァァァァ!!!』
俺達の猛攻に苛立ちが頂点に達したのか、青龍が呪文を唱え始める。
『ウォーターボール・フルバースト!!』
青龍の周りに現れたのは無数の水属性魔法の水弾。その数ざっと100はあった。
ちょ! 何だよ、その数!
ウォーターボールは初期の水属性魔法だから普通に使えばそれほどの威力は無い。
だが俺が極大魔力で唱えると魔法の威力が上がるように、青龍の放つ水弾の魔法もそれなりに威力は上がる。
そしてこの数だ。はっきり言って特殊職クラスの範囲魔法の威力はあるんじゃないか?
俺は咄嗟に魔法防御の盾の呪文を唱えようとしたが間に合わず、俺達に無数の水弾が降り注ぐ。
HPバーを見れば俺達4人ともHPが1/4を切っていた。
俺は慌てて範囲治癒魔法を唱える。
「エリアエクストラヒール!」
何とかHPを9割がたまで回復させたが安心したのもつかの間、青龍は再び呪文を唱えていた。
「させるかぁ! 三連螺旋拳!」
「トライエッジストライク!」
ヴァイの拳スキル戦技・三連拳と螺旋拳の複合戦技、真桜ちゃんの剣スキルす戦技・トライエッジとスラッシュストライクの複合戦技がそれぞれ叩き込まれるも、青龍はお構いなしに呪文を唱え続ける。
やばい、呪文の内容からさっきの無数の水弾ではないのが分かるが、青龍が放とうとしている魔法は水属性魔法の高位範囲魔法だ。
今から迎撃の為に呪文を唱えても間に合わない。
くそ、俺は実戦でもまだ試していない、練習でも成功率が3割未満の『イメージ効果理論』による魔法剣・輪唱呪文に続く第3の戦術を発動させる。
輪唱呪文はカエルの歌のように1節1節を順繰り歌うことによって1つの呪文と見なす。
俺は輪唱呪文を繰り返すうちに、その1節を1つの言葉として捉えるようになっていた。
ならば『イメージ効果理論』によって呪文そのものを短縮できるのではないかと思ったのだ。
いや、短縮と言うより呪文の言葉1つ1つに1節の意味が込められてると言う点では圧縮と言った方が正しいのもしれない。
俺は迎撃にと、青龍と同じ水属性魔法の高位広範囲魔法を圧縮呪文で唱える。
ヴァイと真桜ちゃんは攻撃を加えても呪文を中断しない青龍から距離を取り防御に備える。
青龍の呪文が完成し魔法が解き放たれる。
そして俺の呪文も今回は運よく成功率3割に入って、青龍と同時に魔法が放たれる。
「『タイダルウェイブ!!』」
本来この呪文は地上で使えば術者を起点に前方に大量の水を呼び寄せ大津波を起こす魔法だ。
だが水中で使えば周りの水が1点に集まり巨大な水球弾と化す魔法になる。
同時に放たれた巨大水球弾はぶつかり合い、周りの水域に大きなうねりを生み出した。
そのせいで俺達はバランスを大きく崩し、青龍はその隙をついて俺達の脇を抜けてしまう。
青龍の目的は最初っからただ1つ、船の破壊のみらしい。
「あの野郎! あくまで目的は船かよ!」
ヴァイは散々相手していたはずの俺達を無視されたことに腹を立て青龍を追いかけて行く。俺と紺碧さんと真桜ちゃんも慌てて追いかける。
船は俺達が青龍を押さえてたおかけで大分引き離したと思うが、あの青龍の執着を思えば追いついても不思議ではない。
流石に水中移動ともなると青龍に追いつくのは至難の業で、泳ぎスキルLvの低い紺碧さんはおろか、幻獣憑依しているヴァイと泳ぎスキルLvが高い真桜ちゃんですら追いつくことすらままならなかった。
かろうじて追いかけているのは神降しでオオワタツミノカミを宿している俺だけだった。
俺は携帯念話でマリーに連絡を入れ、全速力で青龍を追いかけた。
追いついた頃には青龍は既に船に襲い掛かろうとしていた。
水中から飛び出し、船に向かってその咢で噛み砕こうとする。
「フルラージシールド!」
マリーの放つ盾スキル戦技により巨大な光の盾が現れ辛うじて青龍の攻撃を防ぐ。
おまけとばかりにヴィオとユニ君の無属性魔法と土属性魔法が放たれる。
「リアクターブラスト!」
「ゲヘナストーン!」
3人の反撃を受けて青龍はそのまま海中へ落される。
3人ともナイス!
俺は一旦深く潜り、そのまま急上昇して落ちてきた青龍を蹴りスキル戦技・流星脚で蹴り上げる。
神を宿した力は凄まじく、青龍を蹴り上げた勢いで俺もはるか上空へ舞い上がる。
再び海上に現れた青龍に3人は警戒するが、俺の姿を見ると3人の顔には安どの表情が浮かぶ。
青龍は目を回しているらしく、Buffに麻痺3――視覚麻痺と混乱状態になっていて、俺と共に海面へ落下していた。
水中から出た俺の姿は元のコスプレ巫女姿になっていて朱色のミニスカをはためかせながら落下していたが、そんなのもお構いなしに俺は青龍に止めを刺すべく次の手を打つ。
神降しスキルは使用時間が他の憑依スキル同様30分だが、待機時間が存在せず1回の神降しスキル発動中に何度でも神を変えることが出来るのだ。
おまけに30分の効果が過ぎた後も、デメリット無しにすぐさま神降しのスキルが使えたりする。
はっきり言ってこれもある意味随分なチートスキルだ。
「神降し! タケミカヅチ!」
タケミカヅチは日本神話の雷を司る神様だ。
当然雷属性魔法は威力を増すし、雷を使った技も使えるようになる。
「神鳴り落とし!」
上空に雷雲が集まり青龍に向かって一条の光が貫く。
「これで止めだ! 神降し! アメノタヂカラオ!」
アメノタヂカラオはアメノウズメと同じく岩戸隠れの神話に出てくる神様で、天岩戸をこじ開けた怪力を司る神様だ。
アメノタヂカラオを宿したことによりAGI等のステータスは低下するが、STRは極限まで上昇され物理攻撃力は大幅に上昇する。
青龍と共に海中へ落下し、その勢いのまま青龍の頭上に二刀流スキル戦技・十字斬りと刀スキル戦技・神威一閃を合わせたオリジナルスキルを叩き込む。
「神威十字閃!!」
『グルゥァァァァァァァァァァァッァァァァァァァァァァァッァァァァァァ―――!!』
残り2割ほどとなっていたHPは0となり、青龍は光の粒子となって消滅する。
ぶはー、何とか船に被害を出さずに勝てたよ。
青龍が俺達の囲いを突破して船を追いかけた時は焦ったが。
俺はそのまま船に回収してもらい、追いかけてきているヴァイと真桜ちゃんと紺碧さんを迎えに行く。
来た道を一旦また戻るわけだが、青龍の脅威がなくなった今となっては多少の遠回りも何の問題もない。
みんなを無事回収し、俺達はジパン帝国までの時間をのんびりと過ごすことにする。
「はー、結局最後のいいところはフェンリルに持って行かれてしまったな」
青龍との戦闘を振り返り、ヴァイがそんなことを口にする。
「そうぼやくな。ただでさえフェンリルは規格外なんだ。こいつと比べようってこと自体が間違ってるんだよ」
「ちょっと、それ酷過ぎない?」
紺碧さんは笑いながら言うが、俺は思わず口をとがらせながら文句を言う。
「なら聞くが、さっきの青龍の戦闘での魔法は何だったんだ? 高位魔法をあんな短時間で唱えられるなんて聞いたことないぞ?」
紺碧さんの指摘に俺は思わず口を噤んでしまう。
「うん、そう言えばあれはあり得ないよね。詠唱破棄とも違う呪文の短縮。
まぁフェンリルさんの事だからまたとんでもない技術を見つけたんだと思うけど」
「あら、そんなことがありましたの。それはぜひともわたくしもみて見たいものですわね」
「あ~、あたし達はギルドでフェンリルちゃんがアレを練習していたから知っていたけど、やっぱり普通じゃないよねぇ~」
「な? お前は一般プレイヤーとかけ離れすぎてるんだよ」
紺碧さんの言葉にみんなは笑い声をあげる。
ちょ、そんなに笑わなくてもいいじゃないか。
そんなのんびりした会話をしながら俺達はジパン帝国の港町ロングネスにたどり着いた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
チアっ娘を応援しようぜ! Part3
555:ファイト1発
なぁ、チアちゃんに関して変な噂を聞いたんだが・・・
556:リリック
奇遇だな
俺も聞いてはならない噂を聞いてしまったんだが
557:名無しのごん子
??? 変な噂って何でしょうか?
558:天使な小悪魔
なんだろ? そんな噂聞いたことないけど?
559:まほろば
あー・・・もしかしてあれかな・・・?
うん、俺もアレを聞いた時は自分の耳を疑ったよ
560:XYZ
何の話だ?
言いたいことがあるならはっきりしろよ
561:アスピレオス
え? なになに? チアちゃんなら今俺の目の前で応援してくれてるよ?
562:XYZ
>>561 よく戦闘中に掲示板を見る余裕あるなw
563:アスピレオス
ああ、モンスター1匹だけの状態にしてHPをぎりぎりまで削らせて、その状態で応援してもらっているw
564:センスマジック
>>563 強者だwww
565:ファイト1発
あー、あくまで聞いた噂だぜ?
その・・・な・・・チアちゃんには付いてるって噂なんだ
566:名無しのごん子
??? 付いている・・・?
何の事ですか?
567:XYZ
>>565 それだけじゃ何のことか分からないよ
568:ミノ・タン・ロース
付いてる・・・付いてる・・・付いてる・・・
あ! も・もしかして・・・ガクガクブルブル((;゜Д゜))
569:サザーランド
>>565 いや、言いたいことがさっぱりなんだが?
570:双竜・明日香・嵐昏
あんたら馬鹿?
自分たちのアイドルがどんなんなのかも分からないで崇めていたんだ
571:リリック
ぐっ! 返す言葉もない
だがしかし! それはあくまで噂であって真実ではない!!
572:ファイト1発
そ・そうだ! あくまで噂だ!
チアちゃんがそんなことあるもんか!
573:双竜・明日香・嵐昏
いいえ事実よ
うちのとこの馬鹿新人が「チアちゃんチアちゃん」って騒いでたのが昨日突然落ち込んじゃってね
詳しく聞いてみたら可笑しくて笑っちゃったわよww
574:ファイト1発
そ・そんな・・・バカな・・・
噂は真実だったというのか・・・!?
575:リリック
信じちゃだめだ信じちゃだめだ信じちゃだめだ信じちゃだめだ信じちゃだめだ・・・
576:双竜・明日香・嵐昏
>>575 そう言う馬鹿新人みたいなこと止めてよね
577:XYZ
いや、だから何がどうなってるんだよ?
578:天使な小悪魔
まったくよね
知ってる人だけでの内輪話みたいなのやめてよね
579:アスピレオス
ホワィ!?
い、いまチアちゃんに付いてはいけない物が付いてるのが見えた・・・
580:ミノ・タン・ロース
・・・確定だね・・・
581:XYZ
>>579 詳細plz!! いい加減に何のことか教えろ!
582:ファイト1発
チアちゃんの応援を楽しみにしてたのに・・・生きる気力が無くなった・・・orz
583:アスピレオス
チアちゃんのスカートが捲れて縞パンが見えたんだが・・・
584:名無しのごん子
>>583 変態
585:双竜・明日香・嵐昏
>>583 変態
586:天使な小悪魔
>>583 むっつりスケベ
587:XYZ
男なら見てしまうんだ! 仕方がないだろう!
で? 583続きを
588:アスピレオス
・・・付いてた
589:XYZ
だから! 何が付いてたんだって言ってるんだよ!
って、あ・・・
590: 名無しのごん子
あー、なるほど、そういう事なんだ・・・
591:双竜・明日香・嵐昏
そういう事w
592:天使な小悪魔
・・・男の娘?
593:ファイト1発
うわぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁ!!
594:サザーランド
mjd!?
595:リリック
ウワァァ━━━━━。゜(゜´Д`゜)゜。━━━━━ン!!
596:まほろば
ちくしょ―――――――――!!
俺の純情を返せ―――――――!!
597:アスピレオス
・・・死のう・・・
598:センスマジック
>>597 いや待て! お前今マジでHPやばいんだろう!? 早まるな!!




