EX3.魔法少女ソードダンサー 第7話
明けましておめでとうございます。
番外編その3です。
この物語はフィクションです。登場人物、設定等に突っ込みはご遠慮願いますw
「そこまでよ! 愛怨!」
「この町の平和はボク達が守って見せます!」
「大人しく退治されて下さいね」
ピンク、オレンジ、ブルーの色の魔法少女たちは今しがた女性を襲おうとした愛怨に向かって高らかに叫ぶ。
「魔法少女ソードダンサー! 貴方の歪んだ愛を踊り斬ります!」
「魔法少女ラブチェイサー! 貴方の歪んだ心を狙い打ち!」
「魔法少女クイーンプリンセス! 貴方の歪んだ性格、調教して差し上げますわ!」
そう、彼女たちはこの町を守る魔法少女たちだった。
「はぁぁぁ! 剣舞!」
ソードダンサーが両手に剣を持って愛怨に向かって行く。
その隙にラブチェイサーとクイーンプリンセスは女性を避難させる。
「ソード! 女性の避難は終わったわ! 後は遠慮しないでやっちゃいなさい!」
「了解! 二天双極・エレメントファング!」
クイーンプリンセスからの襲われた女性の安全を確保したという言葉にソードダンサーは安心して愛怨に止めの必殺技を叩き込む。
『グアァァァァッァァァァァァッ!!』
ソードダンサーの必殺技を受けた愛怨は光の粒子となって消滅する。
と、そこへ拍手の音が響き渡る。
「相変わらずソードダンサーは強いね。敵ながら惚れ惚れしちゃうよ」
現れたのは小学校低学年くらいの少年だった。
少年は見た目通りのソプラノボイスでソードダンサー達に話しかける。
「悪世栖の26の幹部の1人! ゾディアック!」
「よくのこのこあたし達の前に現れたわね。あなたがソードを騙していたことは許されない事ですのよ」
ラブチェイサーとクイーンプリンセスの非難を少年――ゾディアックは肩をすくめて受け流す。
「ソードダンサー、ううん、優しい舞姫お姉ちゃんなら僕のしたこと許してくれるよね?
だって僕は子供のふりをしていただけで別にお姉ちゃんを騙そうとしてたわけじゃないんだよ。そう、不幸な偶然が重なっただけさ」
ゾディアックの言っていることは事実だ。
2人はお互いの正体を知らずに出会い、仲を深め友達になっていたのだ。
ソードダンサーはゾディアックをやんちゃな少年として、ゾディアックはソードダンサーを優しいお姉ちゃんとして。
だが、些細なことが切っ掛けでお互いの正体がばれてしまったのだ。
「ゾディ君、わたしは怒ってなんかないよ。
だからね、もうこんなこと止めよう。ゾディ君はこんなことしちゃいけないよ。君はまだ子供なんだから」
「残念だけどそれは出来ないよ。僕は悪世栖の26の幹部だ。
お姉ちゃんこそ悪世栖へ来てよ。僕と一緒にこの町を愛と怨みで満たそうよ。それが人間の本当の姿なんだから」
「なら、力ずくでもゾディ君を止めて見せる!」
「だったら僕もお姉ちゃんを力ずくでも僕のモノにしてあげる!
来い! 愛怨・タウロス! 愛怨・キャンサー! 愛怨・レオ!」
ゾディアックの背後から3体の愛怨が現れる。
1体は猛牛の頭をした巨大な戦斧を持つ牛人。
1体は鋏の形をした剣と甲殻類の盾を持った蟹を模した鎧を着た麗人。
1体は炎を纏った巨大な獅子。
「行け! 彼女たちを捕まえろ!」
ゾディアックの合図とともに3体の愛怨はソードダンサー達に襲い掛かる。
ソードダンサー達は応戦はするものの、今までの愛怨と違い強さは格段に彼女たちに匹敵するレベルだった。
「くっ! こいつら強い・・・!」
「そう、私達はゾディアック様に特別に力を与えられた特別な存在。
お嬢様方、悪いことは言いません。素直に降伏してください。でなければ私達はお嬢様方の美しい肌を傷つけなければならなくなります」
3体の中で唯一人の姿をして話すことが出来るキャンサーが仰々しいポーズを決めてソードダンサー達に降伏を促してくる。
「うっわ、ボクああいうタイプは駄目。ナルシストぽくってキモイ」
「キモイ・・・? この私がキモイですって!? ふざけんな!! どいつもこいつもキモイウザい言いやがって! 切り刻んでやる!!」
ラブチェイサーの何気なく放った一言でキャンサーがキレてしまう。
キャンサーの持っていた剣が鋏のように真ん中から2つに割れる。
チョキンチョキンと音を慣らしキャンサーは一言を発したラブチェイサーを狙って攻撃を繰り出す。
ソードダンサーもクイーンプリンセスもタウロスとレオの2体を相手していてラブチェイサーの援護には向かうことが出来なかった。
だがその時突如現れた槍の攻撃に、タウロスとレオは動きを牽制される。
そして横合いから現れた1人の緑色の衣装を身に纏った少女により、ラブチェイサーに襲い掛かろうとしていたキャンサーが弾き飛ばされる。
「魔法少女オンリーランサー! 貴方の荒れ狂う牙をへし折ります!」
突然現れた魔法少女にゾディアックは驚きを隠せないでいた。
「馬鹿な! 残りの魔法少女には4体の十二星座愛怨を差し向けていたはず・・・!」
そんなゾディアックに向けて光の矢が襲い掛かる。
ゾディアックは辛うじて襲い掛かる光の矢に気が付き、咄嗟に躱すことに成功する。
「残念ですが貴方には私たちを止めることはできません。
魔法少女ビューティープリースト! 貴女の醜く蝕む病を治してあげます!」
ゾディアックの前に現れたのは白色の衣装を身に纏った魔法少女だった。
「ランサー! ビューティー! 来てくれたんだね!」
2人の姿を見たソードダンサー達は俄然やる気が出て愛怨に猛攻を仕掛ける。
「ゾディアック、ここで降参してください。貴方の戦力の愛怨は直ぐにでも倒されてしまいます。
ソードの手前貴方には酷い事をしたくありません」
ビューティープリーストは杖を突きつけてゾディアックに降参を促す。
だがゾディアックは子供らしからぬ微笑みを見せたと思うと笑い声をあげる。
「あははは! これで僕を捕まえたつもり? 僕にはまだ切り札があるんだよ!」
ゾディアックの言葉と同時に上空から影が舞い降りる。
舞い降りた影は狼の姿をしていた。
いや、ここは人狼と言った方がいいのだろう。
革鎧を着こんだ人狼はゾディアックの前で悠然と腕を組みビューティープリーストの前に立ち塞がる。
「ビースト・・・!」
「ビューティー、ここは引け。俺はお前を傷つけたくない」
「何故貴方が悪世栖に・・・!」
「いや、俺は悪世栖に付いたわけじゃない。ゾディアック個人についてる」
「だけどゾディアックは悪世栖の26の幹部なのよ!」
「悪い、こっちにも色々都合があってな」
ビューティプリーストとビーストのやり取りを見ていたゾディアックはニヤニヤしながら言ってくる。
「ふーん、2人はそう言う関係なんだ。まぁいいや。ビースト、なんならビューティープリーストも連れて帰っていいからお姉ちゃん達をのしちゃって」
苦戦はしているものの、ブロッサムパイレーツが加わった今は時間を掛ければ十二星座愛怨を倒すことは出来る。
だがそこに切り札とまで言われるビーストに襲い掛かられれば流石のソードダンサー達も対抗は出来ないだろう。
そんなピンチを見計らったかのように三度新たな人物が現れる。
「ビースト、悪いがあんたの相手はこの俺だ。あんたがゾディアックの切り札なら、俺はソードダンサーの切り札だ」
「ウインド・・・! そうか、ビューティー達に差し向けていた愛怨を倒したのはお前か」
ビーストは風を纏った男――ウインドに目を向ける。
彼は風を使った攻撃と移動を得意としていて、ビーストが看破した通りビューティプリースト達に襲掛かっていた愛怨を一手に引き受けていたのだ。
「さて、これで戦力はまたこっちに傾いたわけだ。そしてこれでこっちが一気に優勢になる。
ソード! これを使え!」
ウインドはソードダンサーに向かって巫女が使う祓串を放り投げる。
祓串を受け取ったソードダンサーは祓串を横に振るい天に掲げる。
「ソードステップ・クイックアップ!」
天に掲げた祓串から光の帯がソードダンサーの体を覆う。
光の帯が弾け、巫女の白衣と緋色のミニのプリーツスカートと白いニーハイソックスの上に白のラインの入った赤色のニーハイブーツが次々現れる。
そしてそのまま光の帯は半透明の羽織千早に変わりコートのように羽織った姿になる。
最後に祓串は一振りの刀に変化してソードダンサーの手に収まる。
「魔法少女ソードダンサー・アルティメット巫女フォーム!
さぁ! 一気に踊り斬るわよ!」
ソードダンサーが刀を片手に剣舞を始める。
「愛を纏う光の舞! 剣閃剣舞エンジェル・ラブ・ライトニング!!」
光を纏った刀に3体の愛怨達は為すすべもなく瞬時に切り刻まれてしまう。
「くっ、仕方がないね。ビースト、ここは引きます」
「・・・分かった」
「お姉ちゃん、次会ったときはこうはいかいないからね」
ゾディアックはビーストに守られながらこの場から離れていく。
ラブチェイサー達はそれを追いかけない。
何故ならソードダンサーが追いかけるのを止めたからだ。
「ソード、いいの?」
「うん、今回はゾディ君を止められたからいいよ。今は無理でも必ずゾディ君を悪世栖から助け出して見せる」
そう、今追いかけたところでゾディアックの悪世栖の呪縛からは解放できない。ソードダンサーはそう判断したのだ。
「ウインドもありがとね。助かったわ」
「なに、いつだって俺はソードの味方だよ。ピンチの時は必ず駆けつけてやるさ」
ウインドは風を纏いそのまま跳びあがって去っていく。
「さて、後始末をして帰りましょ」
ソードダンサー達は魔法を使い、町に出た被害を治して避難させた女性を送っていく。
こうして魔法少女たちは秘密結社・悪世栖との戦いに新たなステージへ移行したのだ。
ソードダンサーとゾディアックとの行く末はどうなる。そして新たな力を手にしたソードダンサーは何を思う。
次回第8話、魔法少女ソードダンサー「第6の魔法少女!?」
頑張れ魔法少女! 負けるなソードダンサー!
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「って言う夢を見たんだけど、どう思う?」
俺の話が終わってみんなを見ると、笑う人、呆れる人、怒り出そうとしてる人など様々だった。
「はぁ、またその夢かい?」
「ぶははっ! 俺が敵役か! しかも何か燃えるシュチエーションじゃねーか」
「えーと、唯がオンリーランサーなのかな? うーん、もう少しカッコいい名前が良かったかな?」
「フェンリルちゃんの夢って面白いわね。出来ればビューティーとビーストの関係を詳しく聞きたいところね」
「ふむ、そのウインドとか言うキャラは好感が持てるな。ピンチになったところを颯爽と現れる・・・いつか俺もやってみたいな」
「ふーん、またその夢なんだ。
ねぇフェル、知ってる? あたしのQの王の証の特殊スキルって鞭スキルが使えるようになるんだよ? フェルの夢に出てくるクイーンプリンセスと一緒なんだよね。
スキル発動、Queen、コール・スタンダード」
鳴沢はそう言いながらQueenの特殊スキルを発動させ、AI-Onには無い鞭の武器を召喚する。
「ベルザさん・・・? 何をしようとしてるのかしら・・・?」
「そうね、フェルには一度痛い目に遭った方がいいのかな、と思ってね?」
そう言いながらニッコリ笑う鳴沢は笑顔なのにとても怖かった。
「ロンドウィップ!」
「ちょ! 待っ!」
町中――セーフティエリアなのでダメージは受けないと分かっていても、俺は思わず避けてギルドホームの中を逃げ回る。
当然鳴沢は追いかけて来るし、みんなはその様子を見て囃し立てるし。
暫くまた鳴沢の機嫌が悪かったのは言うまでもない。




