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Angel In Online  作者: 一狼
第10章 ギルド
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 EX2.三者三様

ほとんど勢いだけで書きました

何が言いたいのかよくわからなくなってます^^;

EX2-1  バカップル


「ねぇねぇ天夜! お姉様が新しくギルドを設立するんだって!」


 そう言ってまるで自分の事のように話しかけてくるのは俺のパートナーの舞子だ。


 彼女は剣の舞姫(ソードダンサー)の熱烈なファンであり、その熱意が強すぎて舞姫親衛隊を結成しその隊長を務めていたことがある。

 ただその舞姫親衛隊は実は副隊長の玲子と言う人物が裏でPKをするための隠れ蓑に過ぎなかった。

 舞子はあまり頭がよくなかったので玲子に上手い具合に乗せられて隊長をさせられていたのだ。


 しかし運がいい事(?)に本物の剣の舞姫(ソードダンサー)と出会い、見事玲子の野望を打ち砕き親衛隊を解散させることが出来たらしい。


 俺が舞子と出会ったのは親衛隊解散後の事だ。

 同じ舞姫信者として話が合ったのだが、会話をしているうちに彼女がお馬鹿だということに気が付き放って置けなくて一緒に行動することとなったのだ。


 その後剣の舞姫(ソードダンサー)とも一緒にPTを組んで戦ったこともあったが、剣の舞姫(ソードダンサー)のあまりの実力に俺達はもっと強くなってから改めてPTを組もうと決意し剣の舞姫(ソードダンサー)と別れた。


 舞子はそんな剣の舞姫(ソードダンサー)をお姉様と慕っている。

 まぁ、同じ舞姫信者としてそれは別にかまわないのだが・・・


「ああ、知ってるよ。何でもAとBの王とWorldを攻略するんだろ?

 ラスボスクラスと称される王を狙うなんて流石剣の舞姫(ソードダンサー)だな」


「うん! 凄いよね! 流石お姉様!」


「で? 俺達もフェンリルのギルドに加入しに行くか?」


 てっきり喜んで「加入する」って言うと思ったら、舞子は渋い顔をして首を横に振る。


「ううん、まだあたし達の力じゃお姉様の力になれないよ。

 だってお姉様は「命懸けで」って人を募集してるんだもん。生半可な覚悟じゃお姉様の傍に入れないよ」


 フェンリルもそこまで考えて「命懸けで」って募集したんじゃないと思うけどなぁ。

 まぁ俺にしては好都合だ。まだ舞子と2人だけでPTを組んでいられる。


 最初はただ舞子のお守りだったが、今では彼女の事が気になってしょうがない。

 馬鹿な子ほど可愛いと言うが、まさにそんな感じだ。

 お馬鹿な言動行動をとる舞子を見るたびに俺の胸の鼓動が大きくなるのが分かる。

 もちろん彼女にはそんなことは言えないし、言わない。

 つーか恥ずかしくて言えるかよ。


 そう言えばフェンリルとPTを別れる時「次会う時は付き合ってるとか言わないわよね?」とか言われたが・・・

 フェンリルは俺が舞子の事を好きになりかけてるって分かってたのか?

 恐るべし剣の舞姫(ソードダンサー)


「そっか、それじゃあまだ暫くは一緒のPTだな」


 俺のなんとなしに言った言葉に舞子はニヤニヤしながら俺の顔を見てくる。


「ふ~ん、あたしと一緒で嬉しいんだ~? ふ~ん? 素直じゃないんだから」


「ばっ、お前何言っちゃってるの?

 いいか、俺がお前と一緒に居るのはお前のお守りに過ぎないんだからな。そこんとこ間違えないように」


「またまたぁ、そんなこと言って内心嬉しいくせに。いいわよ、あたしも天夜と一緒の方が楽しいもん。もうしばらくは一緒のPTだね」


 舞子の言葉と笑顔に俺は思わずドキリとしてしまう。

 分かってるのか分かってないのか、舞子は時々素で今のような言葉を言ってくる。


「・・・あれ? やっぱり嬉しいんだ。顔がにやけているよ?」


 顔には出してないと思ったが、舞子は目ざとく俺の顔を見て突っ込みを入れてくる。


「あのな、嬉しいんじゃなくて呆れてるんだよ。

 まだ暫くはお前のお守りに徹しなければならないんだからな。いい加減お馬鹿な発言は慎むように」


 俺は何とかポーカーフェイスを保ちながら如何にも疲れるよみたいな事を言い返す。

 くそ、何でこういう時は鋭いんだ? 普段はお馬鹿なくせにして。


「ぶーーぶーー。

 ふん、いいんだ。あたしにはお姉様が居るもんね。いつか天夜なんか捨ててお姉様と一緒になるんだから!」


「舞子・・・だからそう言ったレズ発言みたいなこと言うなよ。ただでさえお馬鹿なんだから尚更お馬鹿に聞こえるぞ?」


「なにおう!」


 こういった他愛もない会話が楽しかったりする。

 だけどそのことを舞子には言えない。言ったら最後、こいつは鬼の首を取ったように嬉々として囃し立てるだろう。

 いや、案外純情に反応してしおらしくなるか?

 そんな表情もみて見たいが、そうなったらお互いが気まずくなりそうだ。


 まぁ、暫くはこのままでいいだろう。

 無理して焦る必要は無い。俺達のPTはこのまま続いていくのだから。





EX2-2  リムの思い


 あたしの名前はリム・リリカル。

 至ってごく普通の14歳の女の子だ。


 もちろんリム・リリカルはAngel In Onlineでのゲームキャラクターの名前だし、本名は別にちゃんとある。


 Angel In Onlineのデスゲームに閉じ込められて約2か月が経とうとしている。

 あたしはデスゲームに怯えながら毎日ビクビクしながらプレイをしていたけど、ある日彼女に会ってから生活が一変した。


 彼女の名前はアイ。

 あたしと同じ14歳の女の子。


 デスゲームにも拘らずアイちゃんは楽しそうにこのAngel In Onlineをプレイする。

 いつだったか「何でそんなに楽しそうなの」って聞いたらアイちゃんは笑って答える。


「あたし小さい頃から家から出してもらえなかったのよね。だから学校とかも行ったことないし、友達もいなかったの。

 けどゲームの中だけどあたしは今こうして友達と一緒にこの広大な空間で遊んでいるの。それが物凄く堪らなく嬉しいの!」


 アイちゃんの話を聞いて幼児虐待かと思いきやそんなことは無く、両親に箱入り娘のように可愛がられたみたい。

 何かの事情があるみたいで学校の方も行けなかったみたいだけど、特別な家庭教師を雇い学力に関してはあたしよりも高いみたい。


 そんなアイちゃんはあたしと一緒に居られるのが嬉しいみたいだ。

 たとえそれがデスゲームであろうとも。


 そして特別な環境で育てられたせいか、アイちゃんは時々どこかずれた発言や行動を取ったりする。

 あたしはアイちゃんに振り回される日々を送っている。

 気が付けば毎日のデスゲームの生活に怯えることは無くなっていた。


 そしてある日あたし達はとんでもない人物と出会う。

 Angel In Onlineのトッププレイヤーの1人、剣の舞姫(ソードダンサー)の二つ名を持つフェンリルさんと出会ったのだ。


 なんとアイちゃんはフェンリルさんと知り合いでフレンド登録をしている仲だという。

 後でアイちゃんに話を聞くと、なんでもAngel In Online開始初日にフェンリルさんに魔法少女の格好可愛い(フェンリルさんは当時魔法少女の格好をしていた)と話しかけたのが切っ掛けだったのだという。

 アイちゃんはその時から物怖じしない性格だったみたいだ。羨ましい。


 アイちゃんの誘いでフェンリルさんと一緒にプレイすることが出来たのは嬉しいんだけど、行き先がね、ムシの森ってどういう事よ。

 あんな虫だらけの森なんて気持ち悪くて仕方がないのに、アイちゃんは平然と森の中を進んでいくんだもん。

 一緒に付いて来てもらったフェンリルさんも苦笑いをしていたけど、あたしは申し訳なくて仕方が無かった。


 多分フェンリルさんはアイちゃんに配慮して無理に付いてきたせいだと思う。

 あたし達はムシの森のユニークボスに挑みピンチになってしまった。

 そんな時颯爽とピンチを救ってくれたのがトッププレイヤーである月牙美刃さん率いるギルド『月下美人』の人たちだ。


 あたしは立て続けにトッププレイヤーの人たちに会ったのに興奮していた。

 もっともその時はピンチだったのでそれどころじゃなかったんだけどね。


 美刃さん達の助けにより何とかピンチを切り抜けることに成功したけど、トッププレイヤーの御手を煩わせてしまい、あたしは更に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

けどそんなあたしにアイちゃんは「今度はあたし達がお姉ちゃん達を助けれるようになろうね」なんて前向きな発言をしてきたりする。

 うん、そうだよね。いつまでも落ち込んでちゃだめだ。


 アイちゃんは水蓮氷河の魔法剣士なんて呼ばれてたりする。

 でもこれはアイちゃんが自分で広めた二つ名だ。

 どうやらクールビューティーな剣士に憧れているらしく、そのために水属性魔法スキルや氷属性魔法スキルのサブスキルを取ったりしている。


 けどアイちゃんは前向き発言のように意外と熱い心の持ち主だ。

 元気と言い換えてもいい。

 その為、水蓮氷河の魔法剣士の二つ名の裏側にはドライアイスなんて二つ名が広まってたりする。

 氷でありながら火傷をするような熱さを兼ね備えている。

 まさにアイちゃんにピッタリな二つ名だ。

 ・・・本人に言ったら文句が飛び出してきそうだけど。


 フェンリルさんが新しくギルドを設立すると聞いた時、アイちゃんは真っ先に加入すると言うと思ったけどそうはならなかった。

 アイちゃん曰く、「お姉ちゃんが欲しがってるのは強い人だからね。あたしはまだそこまで強くなってない」との事。


 でもあたしはアイちゃんは十分強いと思う。

 それはLvだけではなく、心がだ。

 このデスゲームを心の底から楽しめるのは十分に強いと思う。

 フェンリルさんの求める人もそんな人たちじゃないかな?


 アイちゃんは自分に納得がいくまでフェンリルさんのところには行かないのだと思う。

 けどアイちゃんはそれでいいのだと思う。

 ひたすら前を向いて突き進む。


 あたしもそうなりたいと思う。アイちゃんみたいに常に前を向いて心を強く持って。

 だってあたしはアイちゃんの友達だから。





EX2-3  紺と紅


「紺碧さん、フェンリルさんが新しくギルドを設立するらしいですよ」


 ギルドホームの一室でくつろいでいる俺に、ギルドマスターのルージュが声を掛けてくる。


「ああ、知ってるよ。何でもABの王とWorldを相手取るってって話みたいだな」


「ええ、彼女ならきっとやってくれるでしょう。これまでの彼女の実績を考えると現実味がありますからね。

 しかしそうなると今さらながら我がギルドにスカウトできなかったのが悔やまれますね」


「まぁ仕方がないさ。あの時はここまで活躍するとは思わなかったし、フェンリルもソロで行動するのに向いてたみたいだからな」


 ゲーム初期のころ、フェンリルは『水龍の王』討伐の為に臨時PTを募集していたことがあった。

 丁度条件の合った俺はルージュの命令でフェンリルの協力兼スカウトに向かったのだ。


 結果としては『水龍の王』だけではなく、『トロールの王』も攻略することが出来た。

 そしてスカウトの方は、ギルドに縛られずに自由に行動をしたいと言われ断られてしまったのだ。


「確かに、フェンリルさんの活躍は目覚ましいものがありますね。

 殆んどの王の攻略がフェンリルさん絡みだというのが凄いです」


 あり得ないことに現在攻略されている26の王のうち11人中8人にフェンリルが関わっていたりする。


 『月影の王』、『死を撒く王』、『始まり王』の3人は自分で倒しているし、『王の中の王』、『恋愛の女王』、『トロールの王』、『水龍の王』、『十二星座の王』は臨時PTを組んで攻略している。


 こうして見ると確かに凄まじいな。

 この上AとBの王とWorldまでも攻略しようとしているし。

 このまま放って置いても彼女1人でエンジェルクエストを攻略するんじゃないか?


「そう言えば、妹さんもフェンリルさんのギルドに入るみたいですね。

 兄としては最前線で闘うギルドに入るのに心配ではありませんか?」


 『王の中の王』を攻略する時は戦争イベントの真っ最中で、ギルド連合でイベントにあたっていた。

 イベント攻略の為、『王の中の王』を俺とフェンリルとの複数の人数で臨時PTを組んで攻略したのだが、その中に俺の妹が居たのだ。

 妹の鈴――ベルザは何故かフェンリルと一緒にPTを組んでいたので、一緒に『王の中の王』を攻略することになったのだ。


 AI-On(アイオン)では身体(アバター)がランダムで決まるため現実(リアル)と違う姿になるわけだが、兄妹の勘とも言うべきか見慣れた雰囲気や仕草だったからか、何故かベルザが妹だというのが分かったのだ。

 その理屈でいくと妹の方も俺に気が付きそうな様なものだが、向こうは流石に気が付かなかったみたいだ。


 そんな妹はフェンリルと一緒になってギルドを設立するようだ。


「心配はしていないさ。なんせAI-On(アイオン)一の最高プレイヤーのフェンリルと一緒なんだぜ。

 それに妹も神速の癒し手なんて二つ名を付けられるほどの実力者だ。俺の心配なんか邪魔でしかないよ」


「神速の癒し手・・・回復職の間では彼女の名を知らない人は居ないみたいですね。

 うちの癒しの魔女も彼女を褒めてましたよ」


「滅多に人を褒めないフィオナさんが? へぇー、それはまたうちの妹も随分な評価を頂いたみたいだな」


 フィオナさんはうちのギルド『9人の女魔術師(ソーサレスナイン)』の設立者9人の内の1人で、火力中心のギルドの中で僧侶職を担当している。

 その為フィオナさんは回復に誇りを持っていて、そこら辺の回復職には厳しかったりする。


「・・・紺碧さんは妹さんに兄だと名乗らないのですか?」


「うん? 必要ないだろ? 自分の兄もデスゲームに閉じ込められてるなんてわざわざ知らせなくても。

 知らなければ余計な心配をかける必要もないからな。無事に外に出られたときにでも話せば「なんで教えてくれなかったの」って怒られるくらいで済む話さ」


 俺がいつになるか分からない外に出る時の話をすると、ルージュは少し躊躇いながら俺に話しかけてくる。


「紺碧さん・・・いえ、響さん。私がAngel In Onlineに誘われてINしたのを後悔してますか?」


 ルージュ・・・いや、赤坂綾子は申し訳なさそう顔で俺を見る。

 彼女は俺の大学の同じサークルの先輩だ。

 サークルはVR研究会と称したVRゲーム部で、俺は彼女に誘われてAngel In Onlineを始めたのだ。

 どうやら綾子先輩は俺をAngel In Onlineに誘ってしまったことによってデスゲームと言う牢獄に閉じ込めてしまったことを後悔しているみたいだ。


「え? いきなりなんです? 綾子先輩?

 AI-On(アイオン)に誘われたこと自体は別に後悔はしてませんよ。むしろ誘ってくれて良かったと。

 下手をすれば綾子先輩がAI-On(アイオン)に閉じ込められて、俺が外で手を出せなくて悔しい思いをしていたのかもしれませんからね。

 だったら一緒に閉じ込められて傍にいて綾子先輩の手助けできる方が何倍も嬉しいですよ」


 俺の臭いセリフに綾子先輩は顔を真っ赤にして俯いてしまう。

 まぁもちろんVR研究会で閉じ込められたのは俺達だけではないのだが。

 俺のVR研究会の入部もAngel In Onlineを始めたのもぶっちゃけ全部綾子先輩の為だしな。


「・・・バカなことを言ってないで26の王の情報でも集めてきてください!」


「へーい」


 まだ顔を真っ赤にしながらその場を誤魔化すように怒りながら俺に指示を出す。

 俺はその怒った顔も可愛いと思いながら王の情報を集めるためにギルドホームを後にする。


 さて、綾子先輩の為にも頑張りますか。






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