46.レクリエーションとヒュドラ
「ねぇ、1回このメンバーでどこか簡単な狩りにでも行かない? お互いの親睦を深めるためにもね」
『Angel Out』に集まったメンバーはそれぞれが今まで違うPTやソロ何かで戦闘をしていたのだ。
それがいきなり戦闘で連携を取り合って26の王に挑むのは無謀するぎる。
いや、すぐには26の王には挑まないけどね。
まず最初はお互いの戦い方や癖を分かりあうためにも簡単な戦闘をこなした方がいい。
俺は唯ちゃんを除いて全員とPTを組んだことはあるけど、他のメンバーはそうもいかない。
「うん、いいわね。それじゃあどのあたりに行く?
今のあたし達のLvだと深緑の森とか水の砂漠とかかな? 後は竜の巣もありだね」
鳴沢は俺の案に賛同して狩場を選定してくる。
深緑の森は浅瀬から深部までLv50~L60後半までと、意外と幅広いLv帯としてLv上げの狩場としては向いている。
水の砂漠はLv60台の狩場として、最近ちらほらとLv60台に到達したプレイヤー達が出向いていると聞く。
竜の巣は完全に上級者向けとしてLv60以上の高LvPTのエリアとして認識されている。
そう考えると鳴沢達『ELYSION』はかなりの無茶をしてLv上げをしていたんだな。
「あ、水の砂漠と言えば、砂漠に大砂虫って言うユニークボスが徘徊してるんだって。しかも複数の」
唯ちゃんが鳴沢の言葉で思い出したように言ってくる。
ふむ、水の砂漠を横断した時はそんな大型モンスターを見た記憶は無かったんだが。
まぁユニークボスと言うくらいだから滅多に現れないんだろう。
よく考えれば砂漠もかなりの広さだしな。
「あ、じゃあさ、白霊山より北のツンデレ平原の雪女ってユニークボスはどうだ?」
「は? ツンデレ平原?」
「ああ、ツンデレ平原」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
ヴァイのおかしな発言に俺達はお互い沈黙してしまう。
「えーと、そのツンデレ平原に雪女が居るって?」
「ああ、ユニークボスってくらいだから普通の雪女じゃないとは思うけどな」
ふーむ、雪女か。
某FFなら氷を司る女性型召喚獣でシヴァってのがいるけど、実際シヴァは男でヒンドゥー教の3柱の1神で破壊神とも言われている。
ヴァイの言う通りユニークボスと言うくらいだから実際は氷の精霊王とかなんとかかな?
「そう言えば南には錬成火山って火山があって麓にドワーフの町があるそうなのだが、火山にはドワーフが作った特殊なゴーレム――ユニークボスが居るって話を聞いたことがあるな」
それぞれがお互いのユニークボスの情報を出し合ってると、疾風も思い出したように言ってくる。
ドワーフの町か。それは初耳だな。
「南って『十二星座の王』の城よりももっと南の?」
「ああ、そうだ。王都からだとかなりの距離があるな」
ふむ、ドワーフと言えば鍛冶なんだよな。朝霧さんとかに言えば喜んで連れて行けとか言いそうだな。
「北、西、南とくれば残りは東だね。
確か東和都市より東には港町があって海が広がってるそうだよ。
その港町から出る船に乗って隣の大陸に行けばエルフの大国・ジパン帝国があるらしいね。GGはこの国で『黄金の王・Gold』を倒したって話だ。
そして今は港町からジパン帝国の間の海でトラブルが起きてるらしい。
東西南北それぞれにユニークボスが居るとすればその海にも何かいるんじゃないのかな?」
引き続きクリスもユニークボスと思わしき情報を提示してくる。
うーむ、海か。海だとすると全員は行けないな。
泳ぎスキルを持っているのは俺とヴァイとヴィオの3人だからな。
しかも泳ぎだけじゃなくて水中呼吸も出来る必要があるし。
・・・久々に水龍討伐PT集結か?
って、ちょっと待て!
その気になって考えてるけど、いつの間にかユニークボスを倒しに行くみたいな話になってるじゃねぇか!
俺は簡単な狩りが出来る場所を聞いていたつもりなんだが。
そんな俺の考えもお構いなしにヴィオもユニークボスの情報を言ってくる。
「ユニークボスで思い出したけど、今日冒険者ギルドに行ってきたんだけどロック平原に現れたユニークボスの討伐クエストが掲示されてたわ。
なんでもロック平原の中央にある複数の鉱石が採れる大岩にヒュドラが現れて鉱石が取れないって生産者からの陳情が届いたんですって」
今度はヒュドラか・・・
と言うかロック平原にヒュドラは無いだろ。
今は大抵のプレイヤーがLv40~Lv50位だから初心者用のフィールドのロック平原には狩りに行く人は少ないが、最低限の戦闘力しか持たない生産者プレイヤーもしくは生産NPCはロック平原に出向くことはある。そこに大物モンスターはあり得ないだろ。
うーむ、そう考えると生産者の為にもヒュドラを退治するのが最優先か?
「ねぇヴィオ。そのロック平原のヒュドラ退治、誰か受けそうだった人とかいるの?」
「残念ながら誰もいないわ。ヒュドラなんて大物そう簡単には手は出せないわよ。
それに最近高Lvプレイヤーは冒険者ギルドをあまり利用していないからね」
あー、なるほどね。
Lvが高くなるにつれて稼ぎも大きくなってくるからな。
冒険者ギルドに張り出されるクエストでは稼ぎにならなくなってるってところだろう。
だが俺達プレイヤーには問題ないかもしれないが、NPCにとってはクエストを受けてもらえないのは困ることになるだろう。
それが今回のような生産に直結することとなれば尚更だ。
そしてこれはNPCだけの問題ではなく、生産者プレイヤーにも大打撃なはずだ。
そう考えるとこのクエストを受けておいた方が今後の為にもなるはずだ。
よし! そうと決めたらこのクエストを受けよう。
「うん、ヒュドラ退治を優先させましょ。
このままだと生産者たちが困るからね。引いてはわたし達戦闘プレイヤーも困ることになるしね」
「フェルならそう言うと思った。いいわよ、あたし達ギルドの初仕事はヒュドラ退治ね」
ギルドマスターの俺の決定にサブマスターの鳴沢が賛成して、続いてみんなが頷く。
簡単な狩りに出るつもりだったのに、最終的にはヒュドラなんて大物を駆ることになってしまったが・・・まぁこれも『Angel Out』ならではと思ってこう。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
9月28日 ――59日目――
初心者用のフィールドと言ってもロック平原は大きく3つのエリアで別れている。
王都寄りの西部、東和都市へ続く街道を境に北部と南部に。
西部はスタート直後用の為にモンスターの適正Lvが低く設定されている。
北部はモンスターの適正Lvが30台、南部が適正Lvが40台と出現するモンスターPTの数はさほど多くは無く、転職後のLv上げには最適なエリアとなっている。
複数の鉱石が採れる大岩はロック平原の中央、丁度西部北部南部の境目にある。
大岩は10mもある巨大なもので、その麓には5mはある複数の頭を持った蛇――ヒュドラが寝そべっていた。
今さらロック平原には敵となるモンスターは居ないので、俺達は何の問題もなくクエストの目的地である大岩の傍に到着した。
「居るわね。って言うか寝てる?」
「クエストの依頼内容によれば件のヒュドラは鉱石を食べるらしいわ。そのことから亜種のヒュドラと思われるけど。
今は丁度お腹一杯で御昼寝中ってところかしら」
ヴィオがクエストの内容からヒュドラの生態を予測する。
「クリス、ここからヒュドラの頭の数は見える?」
「ああ、問題ない。・・・頭の数は8つだな」
鷹の目スキル持ちのクリスにヒュドラの頭の数を確認してもらう。
ヒュドラの頭の数はピンきりであり、多ければ多いほど強さを増していく。
頭の数は8つは妥当なところだろう。けど頭8つて・・・
「頭8つって八岐大蛇かよ」
ヴァイが俺と同じ感想を持つ。
古事記に出てくるクシナダ姫を助けるためにスサノオに退治される大蛇の化け物だ。
今回助けるのは姫ではなく大岩なんだけどな。
「さて、これからヒュドラに挑むわけだけど、ヒュドラって確か厄介な再生能力を持ってたわよね?」
「そうね。頭を切り落とされてもすぐ再生されるわ。再生を防ぐには切り落とした首を火で炙る方法が有名ね」
「ふむ、わたしとベルで切り落とした首を火属性魔法で焼くしかないわね」
この中で火属性魔法の職スキルを持ってるのは俺と鳴沢しかいない。
疾風とクリスと唯ちゃんも火属性魔法スキルを持っているが、サブスキルの為Lvがそんなに高くないのだ。
それに職業が魔法職でないため魔法威力がそれほど見込めない。
ヒュドラを相手するのでそれなりの威力があった方がいいと判断したのだ。
「それじゃあ隊列を決めましょ。
切り込み隊長の疾風を先頭に左右にヴァイと唯ちゃん。その後ろにわたし。後方にクリスを中心にベルとヴィオ。
これで行くわよ。いいわね?」
俺の言葉にみんなが頷く。
瞬動のオリジナルスキルを持つ疾風を先頭にして突っ込ませ、そのフォローをヴァイと唯ちゃんに頼む形に。
俺は前衛後衛どちらにも対応できるため隊列の中央。
後方には遠距離攻撃対応のクリスを中心に、回復職の鳴沢とヴィオを左右に。
こうしてみると純粋な戦士系は疾風しかいない上、魔術師系は1人もいない、その代わり回復職が3人もいるという風変わりなギルドだな。
俺とヴィオで蘇生魔法スキルのプリザベイションを掛ける。
このプリザベイションはHPが0になっても即死亡とならず、十数秒の間幽霊状態となってその場に残ることが出来る。
そしてその間に蘇生魔法スキルのリザレクションを掛ければ生き返ることが出来るという、デスゲームとなった今では必須と言っていいほどの超重要な魔法だ。
その後でそれぞれが各自で強化Buffを掛けていく。
俺も六芒星の盾、四重加体強化、獣化スキルでベアアームとガゼルレッグを掛けてフルBuff状態でヒュドラに挑む。
累計Lv81である俺がここまでする必要は無いと思うが、再生能力を持つヒュドラを相手にするのだ。一応用心の為だ。
「みんな準備はオーケー?
準備が出来たらまずは切り込み隊長・疾風、GO!」
「了解!」
次の瞬間、ドンっという音とともに一瞬でヒュドラの反対側に移動する。
それと同時に寝そべっていたヒュドラの首の1つが崩れ落ちる。
相変わらずの威力の瞬動だな。
っと、このままでは折角切り落とした首が再生してしまうな。
「ベル!」
「バーニングフレア!」
鳴沢から無詠唱で放たれた巨大な炎弾が切り落とされたヒュドラの首を焼く。
それを合図にヴァイと唯ちゃんがヒュドラを目指して駆け出す。
「へへっ、いくぜぇ! 魔獣憑依・ウルフ!」
ヴァイの掛け声とともに体が変化を始める。
体毛が伸び、体は一回り大きくなり、顔は牙が生え耳の位置も頭上に変わる。
ヴァイの体は人狼へと変化した。
幻想士系のスキルである魔獣憑依スキルは、魔獣の力をその身に憑依させることで力を発揮することのできるスキルだ。
その際シンクロ率を自由に設定でき、当然シンクロ率が高ければ高いほど発揮できる力は大きくなる。
その代わり見た目もより魔獣へと近くなるのだ。
中には部分部分で上手く調整してネコ耳だのイヌ耳だの狐尻尾だの、もふもふ娘に変化している強者女子プレイヤーもいるんだとか。
疾風の攻撃を受けたヒュドラは慌てて寝ていた体を起こし迎撃態勢を取り始める。
そこに魔獣の敏捷力で一気に近づいたヴァイは大ジャンプをしてヒュドラの頭上まで跳びあがり、そのまま頭の1つに向かって拳を振るう。
「螺旋拳!」
ドゴォン!!
ヴァイに頭の1つを地面に叩き付けられてバランスを崩したところに、唯ちゃんの槍スキル戦技が炸裂する。
「旋風十字閃!」
ヒュドラは唯ちゃんの槍スキル戦技を受けるも、そんなのもお構いなしに落下中のヴァイに向かって牙をむく。
「クリティカルショット!」
ヴァイに襲い掛かろうとしていた1頭に向かって、光の矢がヒュドラの目に突き刺さる。
光の矢が突き刺さった瞬間、炎を撒き散らしヒュドラの1頭の視力を完全に奪う。
クリスの放つ光の矢は、閃弓士の特殊アビリティで作られる光で出来た矢だ。
この矢は魔力が続く限り作り続けることが出来る上、光の属性を兼ね備えているのでそれなりに攻撃力も増加している。
それに加え、クリスの放つ矢は『イメージ効果理論』により魔法スキルを纏わせることが出来るので、さらに威力が増すことが出来る。
今ヴァイを援護する為に放った矢も火属性魔法が掛かった魔法矢の為、当たった瞬間に炎が炸裂したわけだ。
そしてヒュドラの目をピンポイントで狙うというおまけ付だ。
だが、ヴァイに襲い掛かるヒュドラの頭数は複数あり、それらすべてにクリスの援護が入れるわけではない。
その内の1頭がヴァイに噛み付く。
「ホーリーブレッシング!」
噛み付かれる瞬間に、ヴィオから聖属性魔法の一定のダメージを肩代わりする聖なる衣の魔法が掛かり、ヴァイは無傷のまま地面に着地する。
その間にも疾風が瞬動を使わず接近戦でヒュドラを攻撃する。
「桜花乱舞!」
疾風の瞬動の威力は途轍もなく破壊力があるが、ある程度距離が無いと使えないオリジナルスキルでもある。
まぁ、疾風なら僅かな距離でもそこそこの瞬動で攻撃できそうだが。
当然、疾風の攻撃手段は瞬動だけではない。
トッププレイヤーに数えられるだけあって、ごく普通に攻撃してもかなりの攻撃力を誇る。
「螺閃槍!」
ズドン!
唯ちゃんの放つ槍スキル戦技によりヒュドラの2つ目の頭を破壊する。
そしてすかさず鳴沢の火属性魔法で首を焼く。
この調子でいけば問題なくヒュドラを退治できるな。
って、よく考えれば俺だけ何もしていないじゃん。
よし、折角だから神薙の神降しスキルを試してみるか。
神降ろしスキルは八百万の神々をその身に宿すスキルだ。
ヒュドラ――八岐大蛇退治に適した神も居るが今回は取り敢えず最初と言う事で、攻撃と同時に首を焼くことのできる火の神を降ろすことにする。
「神降し! ヒノカグツチ!!」
イザナギとイザナミの間に生まれた神で、生まれながら炎を宿した体によってイザナミを焼き殺してしまった言われる日本神話の火の神だ。
ヒノカグツチをその身に宿した瞬間、俺の体から炎が溢れだし衣のように纏う。
俺は左右の刀にも炎を纏わせヒュドラに向かってプチ瞬動で移動する。
ドドンッ!!
一気に駆け寄りヒュドラの頭部まで跳んだ俺は左右の刀を振り瞬く間に2つの頭を叩き斬る。
思ったよりも身体能力が上昇している。
プチ瞬動も本家疾風の瞬動にも劣らず、ヒュドラの頭までのジャンプも今までのステータスだとあり得ないほどだ。
これはヒノカグツチの神降しによって炎の攻撃を得ただけではなく、神そのものをその身に宿すことによりステータスも大幅に上昇するようだ。
これは意外と使えるスキルなのかもしれないな。
一気に2頭を屠った俺にみんなは驚愕しながらも、自分も負けてられないとばかりに攻撃の激しさを増す。
だがヒュドラの方も頭を半分潰されたせいか、ヒュドラの体に変化が起こる。
先ほどまでは普通の蛇の鱗で体を覆っていたのが、徐々に硬質化していき鉱物のような体へと変化した。
流石にユニークボスと言うだけあって一筋縄ではいかない。
どうやら鉱石を食らうことにより体を鉱石へと変化することが出来るらしい。
もちろんそれだけではなく、残った4つの頭の口から何やらエネルギーの塊が現れる。
「ブレスよ! 散開して!」
俺の合図と同時にヒュドラの口からレーザーブレスが放たれる。
俺はもちろんの事、疾風もヴァイも唯ちゃんも回避能力はすこぶる高い。
ヒュドラの放つレーザーブレスを危なげなく躱し、すかさず反撃に移る。
「くそっ! やっぱかてぇ!」
基本素手の攻撃のヴァイは硬質化したヒュドラの体にはダメージが通りにくくなっていた。
だからと言って武器での攻撃が通じるかと言えばそうでもない。
唯ちゃんも槍スキル戦技を放ちながら攻撃するが、思うようにダメージが与えられない。
「バーニングフレア!」
「セイクリッドブラスト!」
ならば魔法ならどうかと、鳴沢とヴィオが火属性魔法と聖属性魔法を放つ。
だが硬質化された体は魔法耐性も上がっているのか、こちらもそれほどダメージを与えることが出来なかった。
むぅ、ここは少量のダメージでも手数で押し切るか――?
そう考えていると、ヴァイが再び跳びあがり1頭を地面に叩き付ける。
そこに距離を取った疾風が瞬動を発動する。
ガッァァンッ!
「くっ! これでもダメか!」
疾風の瞬動でも硬質化されたヒュドラの首を跳ね飛ばすことは出来なかった。
だが、ヒュドラのHPは大幅に削ることが出来た。
よく考えればこれはゲームだ。
ヒュドラの全ての首を落とさなければ倒すことが出来ないわけじゃない。
首の数が少ないのに越したことは無いが、HPを0にするだけでも倒せるのだ。
「みんな! ヒュドラの頭に固執しないでHPを削って倒す方に切り替えるわ!
ダメージが少ししか与えられないけど、決して0じゃない。少しずつ削っていくわよ!」
俺の指示の下、みんなはヒュドラの頭を潰す方法からダメージで削り倒す方法に戦闘の仕方を変える。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「桜花十字閃・火鎚!」
ヒノカグツチの炎を纏わせた月読の太刀と妖刀村正で刀スキル戦技と二刀流スキル戦技の合わせたオリジナルスキルを放つ。
『シュラァァ!』
流石火の神だけあって、刀に纏わせた炎はヒュドラの硬質化された体をも溶かしダメージを与える。
今のところ硬質化されたヒュドラに有効なダメージを与えることが出来るのは、俺のヒノカグツチの炎だけだ。
その為俺を中心として、疾風とヴァイと唯ちゃんはサポートをメインに行動する。
ヴィオは回復に集中して、鳴沢とクリスも遠距離からのサポートを飛ばす。
時折ヒュドラはレーザーブレスを放ってくるが、俺達には何の問題もない。
だがその慣れたタイミングを見計らっていたのか、HPが残り1割弱となっていたヒュドラはレーザーブレスの撃ち方を変えてきた。
残った4つの頭でレーザーブレスの溜めを一か所に固めて極太のレーザーブレスを放ってきたのだ。
俺達は放たれた極太のレーザーブレスを完全には躱しきれずに弾き飛ばされ、地面に転がる。
そして4つの頭がそれぞれ俺達を目がけて噛み付いてくる。
「マテリアルシールド!」
俺は素早く呪文を唱え無属性魔法の物理の盾を展開する。
疾風は瞬動で素早く回避し、唯ちゃんも俺と同様にマテリアルシールドを展開する。
ヴァイはヴィオからの援護で再びホーリーブレッシングを掛けてもらっていたので、ダメージ無視で向かって来る頭に向かって殴りかかろうとしていた。
展開されたマテリアルシールドに阻まれ、ヒュドラは一時的にその動きを止める。
その瞬間を狙っていつの間に近づいていた鳴沢が、腰に差していた赤い剣を手に握っていて自分の剣に向かって魔法を放つ。
「バーニングフレア!」
鳴沢は放たれた巨大な炎弾を巧みに赤い剣で操り、炎を剣に纏わせる。
そして纏った炎は圧縮され青白い炎の剣と化し、硬質化されたため完全にとはいかないがヒュドラの首を切り落とす。
後で聞いた話によると、鳴沢の持っていた剣はレーヴァティンと呼ばれるLEGENDARY ITEMだったりする。
何でも特殊レシピによって作られた生産アイテムであり、『ELYSION』のギルドマスターであったカンザキの形見でもあったりする。
レーヴァティンに付加されていた特殊アビリティは操炎。故に鳴沢には火属性の攻撃は無効となる。
鳴沢の攻撃が止めとなり、ヒュドラはHPが0になり光の粒子となって消滅した。
「ふぅ~、ベル助かったわ。
けど何で危険な前線に出てきたのよ。ベルの仕事は後方での魔法での支援でしょ?」
「少しくらいは良いでしょ? あたしだって後ろで守られているだけの女じゃないんだから」
別に守っているわけじゃ・・・いや、鳴沢を危険な目に遭わせたくない俺の願望が出ていたのかもしれない。
鳴沢はなんとなしに俺のその気遣いに気が付いていたのだろう。
自分も戦えるとアピールしているのか。
本当に危険な目に遭わせたくなければ町に引きこもってもらえればいいのだ。
戦闘に連れ出す以上守られてばかりでは意味が無い。そういう事なのだろう。
「そうね、何か凄い武器も持っているみたいだし少しくらいはいいのかもね。
けどだからって無茶だけはしないでよね」
「それはもちろん。でもピンチの時にはフェルが助けてくれるんでしょ? サンオウの森の時みたいに」
随分と昔の事を持ち出して来たな。
あれは本当に偶然助けることが出来たんだけどな。
「ピンチの時には駆けつけるわよ、お姫様」
俺の言葉に納得した鳴沢は笑顔でうんうんと頷いた。
「おーい、そこの2人、レズってないで撤収しようぜー」
ヴィオの呼び声に鳴沢が顔を赤くして反論していくのを俺は遠目で眺める。
その後無事にヒュドラを退治すること出来た俺達は、冒険者ギルドへ報告に行き報酬を受け取る。
ギルド内の親睦を深めるのには亜種ヒュドラは少々強敵過ぎたが、それなりに交流は深まったと思う。
そしてこの時からギルド『Angel Out』でのエンジェルクエストをクリアするための攻略が始まる。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
職業に関するスレ11
812:フェンリル
特殊職よりさらに上の職業を発見!
その名はユニーク職!
813:ライラック
>>812 mjd!?
814:朝比奈さん
>>812 本当ですか!?
815:メガMAX
ふおおおおおおおおおおおおおお!!!
新職業キ━━━━ヽ(≧▽≦)ノ━━━━━タ!!!
816:とろろてん
>>812 詳細kwsk!
817:フェンリル
ユニーク職は全部で8職
1つの職に1人しか転職できないので合計8人のみの職業です
しかも転職条件が累計Lv80以上で王の証を3つ所持してなければならないという厳しい条件ですね
818:服部半蔵
むぅ、何と言う厳しい条件でござる
819:パウル
王の証3つってどんだけだよwww
820:フェンリル
ちなみにユニーク職のうちの1つはわたしが転職したから残り7つの職業しかないですね
821:はぐれてないメタル
はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!??
ちょっとまて!! ってことはソードダンサーはLv80以上ってことか!!?
822:メガMAX
なにそれ!!! あり得ないんだけど!!
823:クロワッサン
え!? 今の時点でLv80?
今の攻略組の平均Lvって大体60位だよね?
二回りも違うなんて・・・
824:ライラック
>>820 ユニーク職の8種、名前だけでもPLZ!
825:パウル
なぁ、どうやったらLv80になれると思う?
既にチートの域を超えてると思うんだが?w
826:ルーク&ビショップ
新職の噂を聞きつけて来たんだが・・・
何これ?w いきなりものすごい事実を突きつけられたww
827:フェンリル
剣聖〈アークソード〉、鬼神、時空蛇〈ウロボロス〉、戦女神〈ヴァルキリー〉、天魔、神薙、大賢者〈マギセージ〉、勇者の8つ
それぞれが戦士系、武闘士系、盗賊系、狩人系、魔術師系、僧侶系、召喚師系、付与術師系に当てはまると思われる
ちなみにわたしが転職したのは神薙
828:朝比奈さん
名前だけでも凄そうな職業もありますね
でも転職条件が厳しすぎる・・・。・゜・(*ノД`*)・゜・。
829:服部半蔵
>>828 厳しいどころではないでござる
転職条件の王の証は数に限りがあるので、はっきり言って奪い合いになるので不可能に近いと思われるでござる
830:フェンリル
>>829 この後AQ攻略スレにも書き込むけど、ユニーク職はAQ攻略に必須だと思うので全職そろえたいんだよね
そうなると今王の証を所持している8人で既に枠がうまっていると
831:とろろてん
あー、ユニーク職全部そろえるとなるとそうなるのか
832:クリムゾン
あれ? そうなると、もし王の証を10人も20人もで持ってたりしたら・・・PK合戦が始まる!?
833:はぐれてないメタル
それなんて無理ゲーwww
ストックが切れました
明日のEX2予約投稿後、暫く充電期間に入ります
・・・now saving




