45.王会議と割り当て
9月27日 ――58日目――
「本日はお忙しい中お集まりいただき大変ありがとうございます。
メールでもお知らせしたように、至急この案件を解決しない事にはわたし達の命の危険性が増大します。
そのためにも皆さんのご協力を頂きたくこのたびこの会議を開催いたしました」
王都セントラルの冒険者ギルドの会議室。
そこに12名のプレイヤーが集まっていた。
ギルド『Angel Out』からは俺、鳴沢、疾風、ヴァイの4人。
ギルド『GGG』からはGGとお供の合わせて2人。
ギルド『月下美人』からは美刃さんと鏡牙ちゃんで2人。
ギルド『桜花伝』からはアッシュとルーベットの2人。
ギルド『Noble』からはローズマリーとお供の合わせて2人。
「堅苦しい挨拶はいいよ。
で、この集まりは一体なんなんだ?
メールにはエンジェルクエストの攻略に関わる急務ってあったが、てっきり俺は新しい26の王を攻略するための会議かと思ったんだが・・・
集まったメンバーを見るとそんな感じじゃなさそうだしな」
GGは俺の挨拶をそこそこに流して、今回の集まりに対しての疑問をぶつけてくる。
「わたくしも同感ですわ。
てっきりわたくしたちのギルドも攻略組に御呼ばれするほどになったのかと思ったのですが、どうやら違うみたいですわね」
『水龍の王』以来に会ったマリーは相変わらずで、俺達と同様最近ギルドを設立したらしく、マリーの二つ名の薔薇姫も相まってそこそこ名を馳せていた。
「確かに攻略組と呼ばれるくらいのギルドの集まりみたいだけど、それにしたって『神聖十字団』や『軍』や『9人の女魔術師』とか他のギルドがいないってのはどういった基準でオレ達を集めたんだ?」
今回の招集したのは僅かばかりのギルドのみ。それに対しての疑問をアッシュはぶつけてくる。
「・・・ん、共通点はある。・・・王の証」
美刃さんの言葉にみんながハッとする。
それぞれのお供は別として、俺が今回招集したのは王の証を持つ人たちのみだ。
事の始まりは2日ほど前の『Angel Out』の最初の会議に遡る。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
ギルド名も決まって今後の行動方針として、戦力の強化、情報の収集に力を入れることで話を進める。
戦力強化の話の中で、今回発見したユニーク職についても触れていた。
「あの、マスター。マスターのLvについては今は置いておくとして、今回発見されたユニーク職だけど、この8職で間違いないんだよね?」
唯ちゃんがユニーク職についての確認をしてくる。
ユニーク職は、剣聖、鬼神、時空蛇、戦乙女、天魔、神薙、大賢者、勇者の8つ。
神薙は俺が転職したから、実際転職できるのは残り7つとなるが。
「うん、その8職で間違いなよ。それがどうかしたの?」
唯ちゃんは暫く考え込んだ後、深刻な表情で言葉を紡ぎだす。
「マスター、このままだとマズかもしれないよ」
「え? どういう事?」
「東和都市の地獄門は知ってるよね?」
「ああ、未だに扉は閉じたままだけどな」
唯ちゃんの質問にヴァイが答える。
ヴァイの言う通り地獄門は未だに開いていない。
開ける方法は分かっているはずなのだが。
「ウエストシティの冥界門のように特定の職業が扉に触れれば開くと思われるんだけど、全職試したけど未だに地獄門は開かないって言われているわね。
でも実際はまだ全職試したわけではないわ」
「そうか! ユニーク職か! ってことは地獄門に対応する職は・・・鬼神?」
地獄には鬼が付きもの。確かに鬼神なら地獄門の扉が開くのかもしれない。
そうしてそこで唯ちゃんの言わんとすることに気が付く。
確かに今のままじゃヤバい。下手をすればPK合戦が始まってしまう。
「そうね、多分鬼神で扉は開くと思うわ。で、その鬼神にはどうやって転職するの?」
「え? それはLvを80にして王の証を3つ手に入れれば転職できるんでしょ?」
ユニーク職の転職の条件をさっき聞いたばかりだ。
ヴィオは問題なく唯ちゃんの質問に答える。
「問題はその王の証ね。うかつだったわ、まさかこんな罠が隠されてるなんて・・・」
なるべく王の証を複数持たないようにって周りには言ったけが、その考え自体が罠だったとは。
『死を撒く王』と『不死者の王』との時と言い、このシステムを考え付いた開発者はマジでいい性格をしてるよ。
と言うか、麗芳さんが考えたシステムじゃないよな。
「でも今現在王の証所有者は8人。まだ間に合うわ」
「確かに。ここでわたしがLv80になっていたのも運がよかったのかもしれないね」
「ちょ、ちょっと、あたし達にも分かるように説明してよ!」
途中から俺と唯ちゃんとで話を進めてしまった為、鳴沢達にはまだ事の重大さに気が付いていない。
「そうか・・・! ユニーク職には王の証が3つ。ユニーク職は8つ。
王の証の数は決まっているから、ユニーク職に就ける数も決まっている。だがその王の証の所持数が満たなければ・・・」
クリスは俺と唯ちゃんの会話から俺達の言わんとすることをいち早く察知する。
「クリスの言う通り王の証の所持数が満たなければユニーク職には就けないわ。
で、極端な話、地獄門に居る王を除いた25個の王の証を1人1つずつ25人で持ってたらどうなる?」
「それは、誰もユニーク職には就けないな。・・・なるほどな、そういう事か」
質問に答えながら疾風も事の真相に気が付く。
「そう、誰もユニーク職に就かなければ地獄門は開かない。
で、次に待っているのはユニーク職に就くために26の王を復活させること」
「「「あ!」」」
ここで鳴沢、ヴァイ、ヴィオの3人も気が付く。
「ちょっと! これ下手をすれば王の所持者同士でPK争いが始まってしまうじゃない!」
「うわー、マジか? これ? そのために所持者が死亡時に王が復活ってなってるのか。
この設定マジえぐいわ」
「王の証が欲しければ他の所持者をPKして新たに王から奪い取れってことなのね」
3人とも事の真相に驚愕する。
ユニーク職の為、王の証の為、PKを推奨するようなシステムになっているのだ。
そりゃあ驚くのも無理はない。
「マスター、出来れば他の王の証所持者も集めて話し合いした方がいいと思う」
「そうね。このまま他のプレイヤーに王の証を無作為に取られると、エンジェルクエストのクリア自体が危ぶまれるからね。
わたし達、今現在の王の証所持者で話し合いをしないとね」
幸いと言うか王の証所持者は『Angel Out』に4人も揃っている。
そして他の4人も全員俺の知り合いだったりする。
俺は早速残りの4人にメールを送り、冒険者ギルドで会議を開くことにした。
4人が集まる前に麗芳さんのところにこのシステムの事について聞きに行った。
麗芳さんはエンジェルクエストのシステムを担当していたわけではないので詳しくは分からないが、攻略にはいくつかのユニーク職が必要だと聞いていたらしい。
必要なのはユニーク職そのもので、獄門の開け方のように特定のユニーク職が必要とは聞いていなかったので麗芳さんは大変驚いていた。
流石にどのユニーク職が必要になるか分からないので俺たちが安全策を取ろうとしたように、出来る限り全ユニーク職をそろえておいた方がいい事を俺に告げた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
俺は『Angel Out』の会議でも話したユニーク職と王の証の関連についてみんなに説明をする。
「待て待て待て待て! 突っ込みどころが多すぎてどこから突っ込んでいいのやら・・・
まずはフェンリル、お前Lv80って何だ!? あり得ないだろ、それ! ついこの間まで俺と同じくらいのLvだっただろ!」
まぁ、GGの言わんとする気持ちも分かる。
数日会っていないだけでLvが一回りどころか二回りも差がつけられてるんだ。そりゃあビビるわ。
「・・・ん、カーバンクル?」
「フェンリルさんもカーバンクルに会ったのです?」
美刃さんと鏡牙ちゃんは流石に気が付いた。
自分たちも同じ方法で急激にLvUpしてるからなぁ。
「なんだそれ? 経験値モンスターか?」
アッシュが言っている経験値モンスターとは、1匹倒すだけでたくさんの経験値が貰えるモンスターだ。いわゆるドラ○エのはぐれメ○ルとかの事だ。
「経験値どころかLvUpモンスターよ。1匹倒すだけで1LvUpするんだもの。はっきり言って超激レアモンスターよ」
「って、何だそれ!? そんなおいしいモンスターが居るのかよ!?」
「確かに1匹倒すだけでLvが上がるのでしたら超激レアと言われてもおかしくありませんわね」
俺の説明にGGが突っ込みマリーは納得する。
「わたしは運が良かったって言うのかな? あれは?
まぁ、カーバンクルの群れに出会って全部薙ぎ倒したらLvが80を超えてたのよ」
「くくくっ、流石剣の舞姫じゃの。いつも儂達の想像を超えていくのう」
ルーベットに至ってはどこかツボにハマったらしい。
アッシュも俺の規格外さをアクセサリー事件で分かっているのか、ルーベットと一緒に笑っている。
「そのカーバンクルとか言うモンスターは何処にいるんだ?」
「残念ながら何処かとかしか言いようがないわ。何せ超激レアだからね」
あわよくばGGもカーバンクルでLvUpを図ろうとしたんだろうけど、こればっかりは自力で見つけてもらうしかない。
「まぁ、話は戻すけど、ユニーク職には累計Lv80の他に王の証が3つ必要よ。
前にわたしが言っていた、所有者が死亡時に複数の王が復活するために王の証を1人1つ持つ方法は取れないわ」
「それでここに居るあたし達で24個の王の証を集め、全ユニーク職を割り振りしようと思うの」
俺の説明に続いて鳴沢が今回の会議の目的を示す。
「ちょっと待った。別に俺達で全部のユニーク職を取る必要は無いだろ。
要は地獄門を開けれればいいんだから鬼神を最優先にして、他は別に俺達じゃなくても王の証が集まったやつから自由にすればいいんじゃないのか?」
GGの言う通り地獄門を開けるだけならそれでもいいが、問題はそれだけではない。
麗芳さんが言っていたように、複数のユニーク職が必要だ。
それがどの職かわからない以上すべてを揃えておかなければならない。
だが情報元である麗芳さんの事を言うわけにもいかないので、説得の効力としては弱いが俺の予想としてみんなにユニーク職の必要性を告げる。
「必要なユニーク職が鬼神だけだったらね。
多分わたしの予想じゃ他のユニーク職にもそれぞれ役割があるんじゃないかと思うの。
もしそうだとしたらユニーク職をコンプリートしておかないと拙いわ」
「そう考えると、今の王の証所持者のお姉ちゃん達で全8職を取らないといけないですね」
「そしてこれはわたくし達だけの問題ではなくなりますわね。
他のプレイヤーにも告知しておかなければ、わたくしたち以外に勝手に26の王を倒されることになりますわ」
「なるほどな。最上級の職業だ。それぞれに何か役割があるのかもしれないか。それだと全8種を取っておくに越したことはないな。
そしてそれを全プレイヤーに知らせておく必要もあると」
俺の発言に鏡牙ちゃんが賛同する。
そしてマリーの言う通り、他のプレイヤーに知らせておく必要もある。でなければ王の証の配分が崩れて全てのユニーク職が取ることが出来なくなってしまうのだ。
GGにも事の重要性を分かってもらえたみたいで、全ユニーク職を俺たちで独占するのを納得してくれた。
ただ、俺達のこの案にAI-Onの全プレイヤーが賛同してくれればいいが、中には己の名声の為に先走るプレイヤーや、王の証を独占する俺達に反発するプレイヤーが出てくるかもしれない。
「全プレイヤーが素直に分かってくれればいいんだけどね。中にはただ気に食わないと言う理由だけで反発する人も居るからなぁ」
「王の証を手に入れたらPKに巻き込まれるかもしれないんだから、そんな人居ないと思うけどな」
「己の命を懸けてまで反発する輩もおらんじゃろ」
アッシュとルーベットの言う通り普通ならそうなんだけど、世の中には常識の通じないやつもいる。
そう言う奴らは何をしてくるか分からないから実際に事が起きるまで対策の立てようがない。
そんな奴らが出てこないことを祈ろう。
「で、これから誰がどのユニーク職を取るか決めていきたいんだけど」
「ん? どういう事だ?」
「誰がどの職を選ぶのか決めないと。
みんなが自由にユニーク職を選んでいくと、魔法職なのに最後に残ったのが剣聖とかだったら折角のユニーク職を使いこなせないでしょ?」
「ああ、なるほどな。そういう事か」
俺の説明にGGは納得する。
丁度うまいことに今の王の証所持者は前衛と後衛である程度別れている。
これが全員が前衛とかだったら割り振りに一苦労しただろう。
「だったらまずは俺から決めさせてもらうぜ。もちろん俺が選ぶのは勇者一択だがな」
GGが早速8職の中の勇者を選択する。
自称勇者を名乗っていたのが正式に勇者を名乗ることが出来るんだ。そりゃあ選ばないわけが無い。
「他に誰か勇者をやりたい人いる?」
俺が確認の為みんなに聞いてみるが、勇者を選ぶ人は他には居なかった。
「じゃあ、ユニーク職の勇者はGGにお願いね」
「よっしゃぁ!」
嬉しさのあまりGGはガッツポーズを取る。
よっぽど勇者が好きなんだなぁ。まぁハンマーを使う風変わりな勇者なんだけど。
「えっと、次は戦乙女ね。これは女性限定だから、美刃さんかマリーにお願いすることになるんだけど」
「どういった職業ですの?」
「んーと、確か狩人系の最終職で全ての武器を使う事の出来る職業ね。
後は四属性魔法を使うことが出来るわ」
今現在、美刃さんは剣豪、マリーは聖騎士の職に就いてる。
戦乙女は狩人系だけど前衛仕様になっている。
2人のどちらかが戦乙女を選んでも問題は無いはずだ。
「剣聖はどちらかと言えば防御より攻撃を重視した職業ですわよね?」
「そうね、騎士系より侍系よりの職業ね」
俺の答えにマリーは暫く考え込む。
「分かりましたわ。わたくしが戦乙女の職業に就かせてもらいますわ。
盾職が無い以上、戦乙女がわたくしのベストの職業になりますからね。
盾はサブスキルで補う事に致しますわ」
「うん、じゃあ戦乙女はマリーにお願いね。
次は、これは確実に取っておかなきゃならない鬼神だけど・・・ヴィオやる?」
何故か丁度合わせたかのように戦士系から武闘士系に変更していたヴァイに聞く。
「おう、いいぜ。男なら拳で語れってな。
鬼神化ってのもまた面白そうじゃないか。今から楽しみだな」
「じゃあ鬼神はヴァイにお願いね。ヴァイには地獄門を開けてその奥にいる26の王・・・多分Hellだと思うけど、その攻略も含まれるからよろしくね」
ただちょっと不安なのは、ユニーク職で開く地獄にいる26の王は普通の強さなのかという事だ。
もしかすればAやBの王、Worldと同様にラスボスクラスの王なのかもしれない。
「次に剣聖と時空蛇なんだけど、前衛で残った2人の美刃さんと疾風にどちらかを選んでもらわなきゃならないんだけ・・・」
剣聖はいいのだが、盗賊系という癖の強そうな時空蛇は2人に合うかどうかと言ったら微妙なところだ。
「時空蛇は俺がやろう。剣聖は月牙美刃にお願いするよ。
俺の戦闘方法は職業を問わないからな。一撃離脱。スピードさえあれば何も問題は無い。
寧ろ時空蛇の時空魔法と相性がいいのかもしれない」
決めるのに時間が掛かりそうだと思ったら、疾風が進んで時空蛇を選んでくれた。
ふむ、確かに。時空魔法と言うからには動きを速めたりする魔法もあるのだろう。
疾風の瞬動と合わせれば途轍もない破壊力を生むかもしれない。
これは意外とベストチョイスなのかも。
「それじゃあ、時空蛇を疾風に、剣聖を美刃さんにお願いね」
「・・・ん、分かった」
「そうすれば、残ったのは魔法職の天魔と大賢者何だけど・・・う~ん、どうする?」
俺は魔法職の2人、鳴沢とアッシュを見る。
魔法の威力の高い天魔と、ユニーク職以外の全ての魔法を使える大賢者。
これはどっちがどっちに就いても問題は無いような気がするんだけど。
「う~ん、威力の高い天魔か全魔法の使える大賢者か・・・迷うな、これは」
「しかし、ベルザは神速の癒し手なんじゃろ? 治癒魔法が使えないと困るわけじゃからベルザは大賢者、アッシュが天魔がいいのではないか?」
悩んでいるアッシュにルーベットがアドバイスをするのだが。
「いえ、別に二つ名の通りにしなければならないという事はないのですから、ベルザさんが天魔でもいいと思うです。
詠唱破棄スキルに極大魔力スキル。この2つを持ったベルザさんは無茶苦茶強力な使い手になると思うです」
これまた鏡牙ちゃんが魅力的な提案をしてくる。
確かに2つのチートスキルが揃えば途轍もない破壊力になると思う。
「そうだな。それにベルザが大賢者に就けば詠唱破棄スキルがダブルから勿体ないしな」
「あら、それだったらサブスキルにある詠唱破棄をスキルブックに移してアッシュさんに渡すわよ?
それだったらアッシュさんでも天魔で極大魔力スキルと詠唱破棄スキルで同じことが出来るわ」
ヴァイが言ったように、鳴沢が大賢者だと詠唱破棄スキルがダブル可能性があったんだが、そうかスキルブックに移して他人に譲渡することが出来ったっけ。
と言うか、チートスキルをスキルブックに移して譲渡なんてなんて豪勢なスキルブックなんだ。
「ベルはそれでいいの? 折角運よく手に入れたチートスキルなのに」
「職スキルで手に入れられるんなら同じことでしょ。
うん、それに良く考えれば今まで培ってきた回復のノウハウを生かすことのできる大賢者の方がしっくりくるわね。
決めたわ。あたしが大賢者をやるわ」
「そうすると俺が天魔か。
そうか俺がフェンリルと同じ極大魔法スキルを扱うことが出来るのか。今から楽しみだな」
何かヴァイと同じように新しいおもちゃを手に入れたような目でいるよ。
まぁ、気持ちは分からないわけではない。
俺も神薙の神降ろしスキルを試したくてしょうがないのだから。
「えっと、それじゃあベルが大賢者、アッシュが天魔と言う事でいいわね」
俺の言葉に2人は頷く。
これで一応ユニーク職の割り当てが決まった。
○剣聖
月牙美刃
○鬼神
ヴァイオレット
○時空蛇
疾風
○戦乙女
ローズマリー
○天魔
アッシュ
○神薙
フェンリル
○大賢者
ベルザ
○勇者
GG
「それじゃあ、各自26の王を倒してユニーク職を目指してちょうだい」
俺はみんなを見わたし今後の協力体制を取りつけ会議を解散する。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「一体なぜこうなった。これじゃあ本末転倒じゃないか」
会議が終わった後俺は『Angel Out』のギルドホームのリビングで頭を抱えて突っ伏していた。
「あれ? マスターどうしたの? 会議で何かあったの?」
頭を抱える俺を見て唯ちゃんが心配そうに声を掛ける。
「ああ、それね、会議自体は滞りなく終わったわ。
けど、問題なのは王の証なのよね。他のギルドは良いんだけど、あたし達のギルドって王の証所持者は4人もいるでしょ?」
「ああ、そういう事ね。確かに本末転倒だね。
ギルドの目的は他の王は無視してAとBとWorldを狙っていたのに、結局他の王も倒さなきゃならないんだもんね」
鳴沢の答えに唯ちゃんは俺の頭を抱える原因をすぐさま理解してくれた。
そうなのだ。ユニーク職をコンプリートするために26の王を倒して王の証を集めなきゃならない。
そして『Angel Out』には王の証所持者が4人もいる。
俺は既に3つ持っているから除外だが、鳴沢はあと1つ、疾風とヴァイはあと2つ王の証が必要だ。
つまり俺達のギルドだけでも26の王を5人も倒さなければならないのだ。
他の王は無視してラスボスクラスに挑もうと思ってギルドを設立したのに、これでは本末転倒だ。
「あーー! もう! いいわよ! こうなったらとことんやってやるわよ!
26の王でもエンジェルクエストでも全部まとめて解決してやるわ! 『Angel Out』の名前は伊達じゃないのよ!!」
「「「「「「おおーーー」」」」」」
俺のやけくそ宣言にみんなが手を叩いて賞賛する。
こうして俺達『Angel Out』はエンジェルクエスト攻略に向けて本格的に始動していった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
エンジェルクエスト攻略に関するスレ15
201:フェンリル
我々王の証所持者の8人は残りの王の証を独占することをここに宣言する!
202:光の王子
・・・は?
203:シンドバット
え?
204:東京四郎
へ?
205:浜田浜口浜崎さん
え? 何? どういう事?
206:フェンリル
あー、あのね、職業スレにも書き込みしたんだけど新しくユニーク職が発見されてね
207:メイプル
>>206 本当!?
208:囁きの旅人
舞姫さんマジですか!?
209:一福神
俺ちょい職スレ見てくる!
210:フェンリル
そのユニーク職の転職条件に王の証3つ必要ってのがあって、ユニーク職コンプするために王の証をわたし達8人で集めようってことになったの
211:光の王子
8人×3個=24個
26の王からドロップする王の証は限りがあるからな
212:アイドルリマスター
8人でコンプできるってことはユニーク職って8職なんだ
213:ユーディエット
何でコンプする必要があるんだ?
214:フェンリル
>>213 地獄門を開ける職がユニーク職にあってね
もしかしたら他のユニーク職にも何らかの役割があるんじゃないかと思って
215:月牙美刃
そういう事
そのためにも全職揃えておく必要があると判断したの
216:浜田浜口浜崎さん
え? 地獄門ってユニーク職で開くんだ!?
道理で今までどの職業でも開かなかったわけだ
217:ジャンハワード
独占って・・・そこまでする必要があるのか?
218:光の王子
>>217 いや、ソードダンサーの言う通り今の王の証所持者が独占した方がいい
下手をすれば1個か2個持った所持者がほとんどでユニーク職に就けなくなるという事態が生じる
219:囁きの旅人
・・・あ、それって王の証を集めるために所持者同士のPKが始まるって事?
220:スクランブルエッグ
あ~~~そうか、王の証所持者が死亡するれば26の王が復活だっけ
で、再び王を倒して証を手に入れると
221:ユーディエット
なぁおまえら、何でソードダンサーの言う事を信じるんだ?
ユニーク職に何の役割もないかもしれないじゃん
222:メイプル
>>221 でも本当にAQ攻略にユニーク職が必要だったらどうするの?
223:ユーディエット
>>222 ユニーク職全部に役割が無いかもしれないじゃん
王の証の特殊スキル独占を狙ってのブラフかもしれないんじゃないの?
224:光の王子
いや、王の証の特殊スキルはデメリットの方が大きいから独占の意味は少ないよ
それに彼女たちが26の王を全て倒してくれるんだ
ただ、俺達はただ攻略を待ってるだけの状態になるがな
225:鏡牙彗月
あ、もし26の王の攻略に参加したいとなればいつでも参加できますです
但し王の証を渡すことは出来ませんです
もしくは26の王を見つけたらあたし達の所持者を誰かPTに参加させて欲しいです
226:アイドルリマスター
あー、そうか。ソードダンサー達が王の証を独占するってことは26の王を全部倒すってことか
確かに俺達何もしなくていい状態になるな^^;
227:ユーディエット
お前らそれでいいのかよ
トッププレイヤーだか知らないが他人に任せっきりでおんぶ抱っこするつもりか?
228:ジャンハワード
>>227 言いたいことも分かるが全部任せっきりにするわけじゃないさ
229:メイプル
だね、自分らに出来る範囲の事はやるつもりだよ
その上で王の証所持者たちに協力をする形になるのかな
230:光の王子
下手に見栄を張りあって王の証争奪戦になると最終的には他人を犠牲にしなければならないからな
だったら初めから協力体制を取った方がいいのかもしれないな
231:ユーディエット
ちっ、勝手に馴れ合ってろよ
俺は俺のやり方でAQクリアしてやるよ




