44.ギルド名とギルドメンバー
9月23日 ――54日目――
俺達は新しく購入したギルドホームの会議室で難しい顔をしていた。
ギルドホームは今後押し寄せるギルドメンバーを考慮して、2階建ての少し大きめの一軒家を購入した。
作りは普通の家と変わらないが、部屋の数を多めにしたのを選んだのだ。
1階にはリビングを休憩用に、ダイニングキッチンは10人用のテーブルを置ける広さ、会議室用に2部屋をぶち抜いた大部屋、1・2階合わせて10部屋の個人部屋などの家だ。
少し大きめのと言ってもせいぜい8人~10人くらいしか住むことのできないギルドホームだ。
もし10人も20人ものギルドメンバーが集まればギルドホームを幹部の住まいとして、申し訳ないが残りのメンバーには個人ごとに宿を取ってもらうしかない。もちろん宿泊費用はギルドが負担することになる。
そう言えば大人数のギルドメンバーの居る『神聖十字団』や『軍』はどうやっているんだろう?
そんな訳でギルドホームを鳴沢とクリスに買ってきてもらったわけだが、その時にあることに気が付いたのだ。
そして俺も掲示板にギルドメンバーの募集を掛けた時に、鳴沢達と同様同じことに気が付いたのだ。
そこで早速ギルドホームの会議室を使って3人で会議を開いているのだ。
「わたしは『フェンリルと愉快な仲間達』がいいと思うな」
「ちょっと待ってよ、あたしの『聖鈴神聖極』はどうなのよ?
確かにフェルはギルマスだから自分の名前を入れるのは分かるけど、流石いそれは無いわよ」
「そんなんで良いんだったら、僕の『大自然の弓矢』はどうだい?」
「ちょっと! それこそわたし達に弓矢は関係ないじゃなん! と言うかもろロックベル達のギルド名と被ってるじゃん!」
そう、俺達は肝心のギルド名を全く決めてなかったのだ。
ギルドホームを購入する時ギルド名とギルドマスターの名前で購入できるのだが、先走り過ぎてギルド名も決めずに来たから取りあえず鳴沢の個人名でギルドホームを購入することにしたのだ。
後で名義変更手続きを行い正式にギルドホームにする予定だ。
そんな訳でギルド名を決めるため朝から会議を開いていたわけだが、それぞれが自分勝手な主張をしてばかりで一向に決まる気配が無かった。
俺はまぁノリで適当な事を言っていたのだが、鳴沢に至ってはネーミングセンスはどこかずれてるらしく、たまに中二っぽい名前まで出てくる。
そもそも、鳴沢のキャラクターネームのベルザもちょっと変わってるし、前にやっていたLord of World Onlineではベルファングなんて名前を付けていたとか。
そしてクリスにしては珍しく、ここぞとばかりに自分の考えたギルド名を推してくる。
鳴沢よりはマシなのだが、どうも自分のプレイスタイルである弓に拘ってるらしく、ちょくちょく弓の名前が入っていたりする。
これが弓ギルドならいいんだけど、まさか弓道士系を集めてAやBの王に挑むわけにはいかない。
「取り敢えずギルド名は一旦保留よ。設立メンバーが揃うまでそれなりに考えておくから、ギルド名はわたしに一任させてもらうわ」
当然2人からは不満が出るが、ここはギルドマスター権限で強引に認めさせた。
「ぶーぶー、そりゃあフェルのギルドだけど・・・せめて名前くらいはあたし達の意見も通してほしいよ」
鳴沢の意見を通したらとんでもない名前になりそうなんだよ。
「マスター権限ならしょうがない。だが、納得いかないギルド名だったら俺達の考えた名前を使ってもらうからな」
うーん、これは真面目に考えないと弓ギルドになってしまうな。
ギルドメンバー募集・1日目
掲示板にはギルド加入者にはこのギルドホームに来るように書き込みをしていたから、募集期間の3日間はここに常駐していなければならない。
鳴沢とクリスは少しでもLvを俺に近づけるべく経験値稼ぎに出かけている。
ついでにギルドホームでかかった費用を埋めるべく資金集めも行っている。
そんな訳で早速加入者第1号と第2号が来たわけだが。
「よう! フェンリル、久しぶりだな」
「フェンリルちゃん、久しぶり~!」
現れたのは革鎧に身を包んだヴァイオレットと、法衣を纏ったヴィオレッタだった。
「ヴァイ! ヴィオ! 久しぶりだね、元気にしてた?」
「ああ、元気すぎてこの間『恋愛の女王』の試練を受けてクリアしてきたぜ」
「え!? あの『恋愛の女王』の試練をクリアしてきたの!?」
「何言ってるのよ。フェンリルちゃんだってクリアしてるじゃない」
いや、確かにクリアはしたけど、俺の場合は偽装カップルだったんだが。
「わたしの場合はちょっと特殊なのよ。それにしてもよくあの試練をクリアできたね」
「ああ、あれは確かに厄介だったよなぁ。隣でヴィオが凄い目で睨んでくるんだぜ」
その時の事を思い出したのか、ヴァイは身震いをする。
「なによぉ、鼻の下を伸ばしてるヴァイが悪いんじゃない」
まぁヴィオの怒る気持ちも分からないわけではない。
確かにあれはそんなつもりが無くても自分の恋人がデレデレになってるように見えるしな。
「ところでここに来たのって、わたしのギルドに加入するために?」
「ああ、俺達をフェンリルのギルドに入れてもらいたくてな」
「あたし達フェンリルちゃんがギルド作るのずっと待ってたんだよ」
話を聞くと2人は『水龍の王』を倒した後、俺の事を大層気に入ったらしく、絶対に名を馳せてそのうちギルドを作るだろうと予想して2人だけでPTを組んで力をつけていたらしい。
時には他のPTに混ぜてもらって未踏破フィールドを探索したり、時には俺が攻略をした王のところに行っては俺に追いつくべくLv上げをしたりしていたのとか。
「それで、俺達の加入は認めてくれるのか?」
「そりゃあもちろん! でもいいの? 掲示板にも書いたけど、わたし達の目標はラスボスクラスの王よ? 『水龍の王』の時とは違い、本当に命懸けの戦いになると思うわよ」
「大丈夫よ。ゲームの外に出るためだもん。命だって懸けるわ。
そもそもこのゲームの中に居る自体が命懸けだよ」
そりゃあそうだ。既に俺達はデスゲームで命を懸けている状態だ。
命が惜しければ戦闘なんかせずに町に引きこもっていればいいんだ。
まぁ実際は今までより激しい戦闘になるから死ぬ確率も高くなるってことなんだが、ここでそれを言うのも野暮ってもんだろう。
「それじゃあ2人をギルドに歓迎するね!」
俺達は久々に会ったことで、今までどうしていたかなどを報告し合った。
ヴァイは上級職の侍から特殊職の閃撃士に転職をしていた。
最初のころは二刀流でMOBを倒しまくっていたのだが、獣化スキルを使っているうちに次第に二刀流を併用した肉弾戦をするようになったとか。
極めつけはランダムスキルブックで魔獣憑依スキルと幻獣憑依スキルの2つを引き当てたことから完全に素手による野獣と化したそうだ。
特殊職に転職する時には当然武闘士系の職業を選ぶことになる。
今現在のヴァイの累計Lvは60とかなり上位のプレイヤーとなっている。
ヴィオは上級職の司祭から順当に特殊職の大司教に転職していた。
何でもヴァイが破壊士や幻想士でもないのに肉体言語でモンスターと語り合うため、常に回復をしなければならないため必要に迫られたとか。
ヴァイ・・・いつの間に脳筋キャラにチェンジしたんだ・・・?
今現在のヴィオの累計Lvはヴァイと同じく60とお揃いだ。
何でもそんな2人にも二つ名が付けられたらしく、付いた二つ名が「美女と野獣」だそうだ。
野獣はヴァイの肉体言語で語り合う姿を見て、野生の魔獣と称されたことから来ているらしい。
美女の方は野獣に合わせた二つ名なので、実際にはヴィオが途轍もない美人という訳ではない。俺にとっては美人系と言うより可愛い系の方ではないかと思うのだが。
ヴィオの方も美女と言われ満更でもないらしく、その二つ名を受け入れてるみたいだ。
9月24日 ――55日目――
ギルドメンバー募集・2日目
今日はヴァイとヴィオの2人と交流を深めるべく、鳴沢とクリスは外には出掛けずギルドホームで語らいをしていた。
「いやー、まさかフェンリルの仲間が神速の癒し手と百発百中とは」
「え? ちょっと待って、ベルと・・・クリスにも二つ名が付いてるの?」
ヴァイの発言に俺は驚いて鳴沢とクリスを見る。
「あれ? フェンリルちゃん知らなかったの? ベルちゃんの神速の癒し手は回復職の間では有名だよ。
回復職に重要な詠唱をノータイムで放つ詠唱破棄スキルに、それを駆使してダメージを受けると同時に回復する無敵マジック。
そこから付いたのが「神速」なんだよね」
「クリスの方もかつての不遇職と言われていた弓道士にも拘らず、どんなモンスターでもピンポイントで命中させてしまうからな。
それが特殊職が広まるにつれて弓による不遇が無くなったんだ。となれば弓の腕があるクリスは更にその名を広めてな。
絶対にハズなさい命中率から付いた二つ名が百発百中という訳だ」
ヴィオとヴァイの説明に鳴沢は苦笑しながら、クリスは驚いた表情を見せる。
「あー、その二つ名が付けられてるのは知ってたけど、そんなに有名になってるとは思わなかったなぁ」
「僕はその二つ名は初めて聞く。弓矢使いにとっては名誉ある二つ名何だが、出来ればもう少し凄味のある二つ名が・・・いや、なんでもない」
そんな感じでリビングで盛り上がっていると、玄関からチャイムの音が鳴る。
新しいギルド加入者かな?
そう思いながらみんなをそのままにして玄関に向かい扉を開けると、そこには5人ほどの男が居た。
先頭に居た侍風の男が俺に話しかける。
「あ、こんにちはー! 貴女がフェンリルさんですか?」
「あ、はい、そうだけど・・・ギルド加入希望者の人たち?」
「いや、ギルド加入希望はこいつだけなんだ」
そう言って騎士風の男が一番後ろに居た人物を俺の前に出す。
その人物は見覚えのある顔だった。
「えーと、久しぶり・・・と言っても10日ぶりだがな」
「え!? 疾風!?」
そう、『恋愛の女王』で一緒にPTを組んだ瞬動・疾風だった。
「いやー、こいつさ、フェンリルさんのところへ行けって言っても言う事聞かなくてさ。
だもんでこうやって連れて来たってわけ」
魔術師風の男が言うが、何がどうなってるのか訳が分からん。
疾風を俺のギルドに入れるために仲間たちが強引にここに連れてきたってことなのか?
前に疾風が言っていた「恋人が出来ない」と言ってからかっていた仲間がこの男達なんだろうか。
何かわざわざ世話を焼いて俺の下に疾風を連れてきたように見えるんだが。
「えーと、玄関で立ち話もなんだから取りあえず上がって」
俺は疾風たちをリビングに通して、鳴沢達をダイニングキッチンの方へ移動してもらった。
リビングとダイニングキッチンは繋がっているから俺達の会話は鳴沢達にも聞こえるが、取り敢えず鳴沢達には口出ししないでもらって俺が疾風たちの話を聞くことにする。
「えっと、それで疾風がわたし達のギルドに加入したいという事なんだけど・・・」
「ああ、前にフェンリルさんと一緒に『恋愛の女王』をクリアした時にフェンリルさんの事が気に入ったみたいでね。
あれから何かあるごとにフェンリルだったらとか、フェンリルはこう凄いんだとか言うようになってさ」
僧侶風の男が『恋愛の女王』の後の疾風を教えてくれるのだが・・・
これって、恋愛に鈍かった疾風が俺に惚れたってことなのか・・・?
鳴沢の方を見れば、俺の正体を知っているため笑いを堪えるのを必死になっているのが分かる。
「いや、俺はフェンリルの戦闘を褒めたんであって、お前らの言うようなことで言ってたわけじゃないんだが」
「あーはいはい、自覚が無いって怖いね~」
「それでそこにフェンリルさんのギルド設立でしょ。俺達が疾風にフェンリルさんのところへ行けと言っても恥ずかしがって動かなくてさ」
「『恋愛の女王』の時は一時的だったからPTを離れたが、俺が居なくなったらPTはどうするんだ」
「あのさー、俺達が疾風が居ないと何も出来ない思ってる? だったら馬鹿にしすぎだろ。
いいか、今お前のやることは俺達のお守りより、自分の力を十分に発揮できるフェンリルさんのギルドに加入することだよ」
疾風が仲間を思ってPTを抜け出せないでいるところに、侍風の男が疾風を後押しする。
前に疾風に聞いた印象だと仲間内に疾風が馬鹿にされてるように聞こえたが、実際に見てみると仲間の方も疾風を思っての行動をしているみたいだ。
「しかし・・・」
「あー! もう! いいからお前は俺達の事より自分の事を優先しろ!
仮にもトッププレイヤーの1人だろ。いい加減弱小の俺達に構わずフェンリルさんのところで思う存分力を振るってゲーム攻略に役に立てろ。それが結果として俺達の役に立つことに繋がるんだ」
おー、いいことを言うなぁ。
後で聞いたところによると、この仲間たちは現実でも知り合いで同じ学校のクラスメイトと言う事だ。
その縁もあって疾風はトッププレイヤーになっても彼らを見捨てず一緒にPTを組み続けていたとか。
彼らもそれが分かっていて心苦しい思いをしていたが、同じトッププレイヤーである俺と知りあえたのを切っ掛けに疾風から卒業をしようと言う話になったらしい。
実は『恋愛の女王』の件も「恋人が出来ないんだろう」とからかったわけではなく、本気で疾風の朴念仁を心配しての事だったとか。
疾風はそれを真に受けて『恋愛の女王』に突撃してしまったのだ。
結果としては俺と知り合い今に至るわけで、彼らにとっては嬉しい誤算だったみたいだ。
「・・・分かった。お前らの言葉に甘えるとする。
フェンリル、俺をギルドに入れてくれないか」
「もちろん大歓迎よ。トッププレイヤーの1人だもの。断る方がどうかしてるわよ」
気がかりとしては、疾風がマジで俺に惚れているのかなんだが・・・
・・・うん、気にしないことにしよう。下手に意識するとマジで疾風の恋愛感情を加速させる気がする。
俺と疾風は何でもない。ただのPT仲間、ギルド仲間だ。
9月25日 ――56日目――
ギルドメンバー募集・3日目
今日がギルド設立メンバー募集の最終日なんだが・・・
思ったより人が集まらない。
あれぇ? 俺のネームバリューってそんなに低いのか?
一応ギルドを設立するための5人は揃ってるから問題は無いんだけど、もっとこうどぱーって人が押し寄せてくるかと思ったんだけど。
そのことをみんなに聞くと、原因が俺にあることが分かった。
この場合ネームバリューではなく、掲示板の書き込みの仕方に問題があったのだ。
「あー、そりゃあ、募集の仕方が悪かったとしか言いようがないなぁ」
「だね。だって「命懸けで」ってあるんだもの。しかもトッププレイヤーが指定する条件のね。
みんなが怖気づくのも無理はないと思うわよ」
「Aの王、Bの王、World、それぞれ強敵を相手にするわけだ。命が幾つあっても足りないと思ったんだろう」
「確かにフェンリルに条件を任せたけど、「命懸け」はそんなに厳しい条件なのか?
僕にはそれほどハードルは高くないと思ったんだが」
「周りはそうは思わなかったみたいね。フェルのネームバリューの強さが裏目に出ちゃったみたい。
掲示板の募集の最初の方のレスなんか肉壁募集みたいになってるし」
ヴァイ、ヴィオ、疾風、クリス、鳴沢の順番でそれぞれ感想を言ってくる。
俺も掲示板のその後を見ながら思わず頭を抱えそうになる。
何だよ肉壁って。誰もそんなこと望んでねぇよ!
トッププレイヤーのギルドに入るには肩を並べるだけの実力も必要ってなってるし。
確かにそれなりの実力は欲しいけど、トッププレイヤーと肩を並べるだけって無茶にも程があるよ。
「あー、どうする? 今さらだけど「命懸け」って外す?」
「いや、これでいいと思うぞ。当初の予定よりは人数が少ないかもしれないが、有象無象のプレイヤーが集まるよりはまだマシだ。
少数精鋭ってのも最強ギルドの条件の1つだったりするからな」
いや、別に最強ギルドを目指してるわけじゃないんだけど。
どうもヴァイの頭の中身は最初の時と違って脳筋になりつつあるような。
「それにまだ今日1日あるんでしょ? もしかしたらそれ相応の実力者が来るかもしれないわよ」
まぁ、後1人来ればPT上限の7人丁度になるからギルドとしてもPTを組みやすいので、大勢来るよりはまだマシか。
そう考えていると望んでいた最後の1人が現れた。
俺と同じくらいの身長に、髪を両サイドでお団子状にチェックの大きなリボンで結んだ女の子だった。
「あれ!? 唯ちゃん!?」
「あ! ベル!?」
彼女をリビングに通すと鳴沢が驚きの声を上げる。
どうやら知り合いだったらしい。
「あれ? 知り合いなの?」
「うん、最初のころにPTを組んでたことがあるのよ。ほら、ケインズ達と一緒に居た時のね」
ああ、あいつらと一緒に居た時のPTか。
そう言えばケインズ達の行動が酷くなって女性プレイヤー2名が離脱したって言ってたっけ。
彼女はその時の1人だってわけだ。
「剣の舞姫のギルドに来てまさかベルと会うとは思わなかったわ」
「あの後いろいろあってね。今まではフェル達とPTを組んでいたんだけど、これから本気でAI-Onの攻略をしようと思ってギルドを立ち上げたのよ」
「この前ケインズとザックに会ったわ。あの後の事を聞いたけど、ベルも大変だったんだね。
ケインズ達も唯と別れた時と違い、心を入れ替えてたみたいでしっかりしてたわ。
少しクエストを手伝ってくれって頼まれてPTを組んだけどあの時のころと全然。あれが出来るなら最初からして欲しかったんだけどね」
おお、あいつらも仲間が1人失ったのが相当堪えたみたいだったんだな。
唯ちゃんが言う通り最初からしっかりしてれば仲間を失うことは無かったんだろうけど、それがあるから今のケインズ達がいるんだろう。
「ううん、あたしはもう気にしてないわよ。ケインズ達が真面目に頑張ってれば尚更ね。
ところで唯ちゃんもあたし達のギルドに入ってくれるんだよね?」
「もちろんそのつもりよ。
改めまして、唯の名前は唯牙独孫。Lvは58で、職業は武棍闘士よ。と言っても扱うのはもっぱら槍何だけど。
唯の目的はお姉ちゃんたちのギルド『月下美人』を超えること!」
唯ちゃんが改めてみんなを見わたし自己紹介をする。
って、え? 『月下美人』がお姉ちゃん達のギルドって・・・
「もしかして、美刃さんや鏡牙ちゃんの妹さん・・・?」
「あ、お姉ちゃん達を知ってるの?」
「ええ、この前ピンチの時に助けてもらったことがあるのよ」
あれは確かムシの森に行った時だったな。
六武士長の亜芸覇の鱗粉攻撃で混乱してた時だっけ。
地下迷宮で迷子になってたところを偶々ムシの森に出口があり、ピンチになってた俺達を発見して助太刀してくれたんだよな。
「お姉ちゃん達は強かった?」
「ええ、美刃さん達がいなければやばかったわね。彼女たちのLvは60後半だったから助太刀は心強かったわ」
「60後半!? むー! 相変わらず唯の先を行ってばかり。
フェンリルさん! このギルドはAとBの王、Worldの攻略を目指してるんだよね!?」
「え、ええ、そうよ」
唯ちゃんの突然の剣幕に俺はたじろぎながら答える。
「うふふ、今度こそ唯がお姉ちゃん達の先を行くんだ。頑張るぞー!」
「唯ちゃん相変わらずお姉さんを目の敵にしてるね~」
「あはは、ライバル意識を持つのは良いけどほどほどにね・・・」
張り切っている唯ちゃんを見て鳴沢は出会った時のころを思い出したのか微笑んでいる。
まぁ、現実でもいろいろあったんだろうな。俺は兄妹が居ないからよく分からないが、兄妹姉妹の関係と言うのは口で言うほど簡単なものじゃないらしいからな。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「当初予定してた時よりは少ない設立メンバーですが、これからわたし達7人でギルドを設立し、ラスボスクラスのAの王、Bの王、Worldを目標に攻略を目指していきます。
意義はありませんね?」
設立メンバー募集の最終日の今日、この会議室に集まった7人で攻略に向かって意思を統一していく。
「あたしはフェルに付いて行く、それだけよ」
「僕にも異論はない」
「同じく。敵はぶっ叩くのみ」
「あたしも意義は無いわ」
「異議なし」
「唯も異議なし」
鳴沢、クリス、ヴァイ、ヴィオ、疾風、唯ちゃんの順で答えていく。
「それじゃぁ、わたしフェンリルがギルドマスター、ベルザがサブマスターと言う事でギルドを設立します」
実力順からいけば疾風がサブマスターになるんだろうけど、どうも彼には組織の長や補佐は向いていないみたいだ。
なので、『ELYSION』に居た時も麗芳さんに向いていると言われていた鳴沢にサブマスターをお願いすることにする。
「それで今まで未定だったギルド名を決めたいと思います。
ベル、わたし達が今いるゲームの名前は何?」
「え? Angel In Onlineだけど・・・」
俺の突然の問いに鳴沢はちょっと戸惑いながら答える。
「そう、Angel In。直訳すれば天使の中の。
何が天使でどこに天使の要素があるのかは分からないけど、わたし達はデスゲームによって中に閉じ込められている。
だったら意地でも外へ出てやろうじゃない」
俺はそこで言葉を区切ってみんなを見渡す。
「これはAccess社への宣戦布告でもあるわ。――ギルド名は『Angel Out』!!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
二つ名に付いて語るスレ7
201:アイザック
二つ名付きプレイヤーもだいぶ出てきたな~
202:シルクロード
「暴走人型兵器」なんてぴったりっちゃあぴったりだなw
203:X-BLADE
ああ、『エヴァンゲリヲン』とこの3番目の子供くんかw
204:MaxHeart
突然切れてバーサク状態になるんだっけ?
205:シルクロード
そうそうw
206:フリーザー
変わったところだと2人1組でってのもあるな
「美女と野獣」とか「剣と盾」とか
207:ソフィアデルカ
「剣と盾」の噂は生産関係者でよく聞きますね
208:アイザック
ん? 聞いたことない二つ名だな「剣と盾」って
209:フリーザー
そのまんまだよ
1人が剣だけで徹底した攻撃専門、もう1人が盾だけで徹底した防御専門
210:エリザベル
それで戦闘が成り立つの?
211:フリーザー
それが不思議と成り立ってるww
212:リングラット
よく見れば王の証持ちはみんな二つ名付きだな
「ソードダンサー」「瞬動」「豪鬼」「神速の癒し手」「ルナティック」「美女と野獣」「薔薇姫」「クラッシャー」
213:MaxHeart
「薔薇姫」って・・・ああ、あのお嬢様か
214:X-BLADE
彼女も最近二つ名が付いてきたんだよな
王の証はだいぶ前に手に入れてるのに
215:リングラット
「薔薇姫」の二つ名が出てきたのは彼女がギルドを設立したからだな
そこからじわじわと二つ名が広まりだしたんだ
216:沙羅諏訪帝
そう言えば自称で名乗りだしてそれが定着したって子もいたね~
217:アイザック
>>216 え? だれだ?
218:沙羅諏訪帝
「水蓮氷河の魔法剣士」って自称してたのが実際にその通りの戦い方をするもんだからその通りになっちゃったの
219:アイザック
それもまたすごいなw
220:フリーザー
生産者にも拘らず二つ名付きがいるから凄いよなぁ
「オールマイティー」「アクセサリーの魔術師」
221:ソフィアデルカ
>>220 ああ、その二人姉弟だよ
222:フリーザー
マジで!? 姉弟揃って二つ名付きって・・・とんでもない血筋だな
223:シルクロード
そうそう「エターナル」って聞いたことあるか?




