43.ユニーク職と関係者
9月22日 ――53日目――
昨日『ELYSION』のギルドホームから出た後、俺はぶっ倒れた。
『死を撒く王』、『不死者の王』と連続で闘ったので疲れが溜まっていたのだろう。おまけに即死攻撃に立ち向かうという精神的疲労もあった。
『大自然の風』のギルドホームで一時的に睡眠をとったものの、鳴沢をギルドから脱会させれたことで気が緩んだのか、一気に疲れが出て俺は気を失ってしまった。
目が覚めた時にはアーデリカの宿の一室のベットに居て、丸1日が経っていた。
特殊スキルのデメリット効果も消えて、何時ものコスプレ巫女姿に戻っていた。
「ごめんね、何か心配かけちゃったみたい」
丸1日寝てたため体調はすっかり回復している。
アーデリカの宿の1階の食堂で俺と鳴沢とクリストでテーブルを囲って朝食を取っていた。
「ううん、あたしが原因でフェルが体調を崩したんだもの。謝るのはあたしの方よ」
「いいのよ、わたしが勝手にやったことだもの」
出来れば鳴沢には負い目を感じて欲しくは無いんだけどなぁ。
「フェンリルの調子も戻ったことだし、また3人でエンジェルクエストの攻略を再開するわけだが・・・次はどの王を攻略するんだ?」
クリスが早速今後の予定を聞いてくる。
まぁ、順当にいけばそうなるわけだが、俺は今回の件で考えていたことを口にする。
「うん、そのことだけど、エンジェルクエスト攻略は進める。けどその攻略の為にギルドを作ろうと思うの」
「どういう事?」
『ELYSION』での苦労を思い出したのか、ギルドと言う言葉を聞いて鳴沢は難しげな表情をする。
「エンジェルクエストの攻略を本気で進めようと思ってね。
もちろん今までも本気だったけど、これまでは行き当たりばったりと言うかその場その場で王の攻略を決めていたから。
それで本気で攻略をしようと思ったのは、早くゲームの外に出ようと思ったからよ」
いつまでもAI-Onの中に居るわけにはいかない。鳴沢を一刻でも早く外に出してあげなければ。
「そのためにエンジェルクエストの攻略を、最強と思わしきAの王、Bの王、Worldの3人の王に絞ろうと思うの。
残りの王は他のプレイヤーに任せて、わたし達はこの3人の王を攻略する。最強の王が倒されるんだもの、エンジェルクエストの攻略は早くなると思うのよ」
「なるほど。そのためにギルドを作るという訳か」
「そう、ギルドを作る目的は3人の王を攻略するための戦力増強と情報収集の為」
戦力増強は最強と思われる王を相手にするんだ。当然と言えよう。
情報収集は未だに名前の出ていないAとBの王を調べるため、Worldの居場所を探るためだ。
「あたしはギルドの設立には賛成よ。
これからの事を考えればフェルの言う通り戦力増強と情報収集は必須だもの。戦闘にしても情報にしても数は力だしね」
「僕も賛成だな。とは言え、フェンリルのネームバリューを考えると相当な人数が集まりそうな気がするが」
「うーん、掲示板を使ってギルドメンバーの募集を掛けようと思うけど、それっぽい条件を付けて募集してみるわ」
確かにクリスの言う通り、俺の名前でギルドメンバーを募集すれば大勢の人数が集まると思われる。
だが、俺達がこれから攻略をするのは最強と思われる3人の王だ。
そこら辺のギルドとは違い、生半可なLvや覚悟をしたプレイヤーが集まっても意味が無い。
「それでギルドの設立ってどうやってやるか分かる?」
俺は鳴沢にギルドの作り方を聞く。
普通のMMOであればシステムメニューの中に有ったり、どこかのNPCに話しかけることでギルドを作ることが出来る。
だが、AI-Onのシステムメニューの中には無いし、どのNPCに話しかければいいのかは分からないのだ。
「設立は簡単よ。冒険者ギルドへ行って個人ギルド設立の申請をして、5人の設立メンバーの署名とギルド支度金の100万ゴルドを収めれば出来るわよ」
「そうなると、ギルドメンバーが揃うまではギルドを作ることは出来ないね。
って言うか、100万ゴルドもお金が必要なの?」
「まぁ、そのうち半分50万はギルド資金に回されるけどね」
むむむ、まさかお金が1Mも掛かるとは・・・
『死を撒く王』攻略の為、夕闇の露店からアクセサリーを買ったので懐具合が結構ピンチだったりするんだが。
「・・・フェル、もしかしてお金ないの?」
「あはは~、最近ちょっと物が入用だったのでね・・・」
「そう、それじゃああたしが支度金を出しておくね」
「おいおい、僕を忘れてもらっちゃ困るよ。僕とベルザとで半分ずつだ」
「えーと、悪いわね」
「気にすることないさ。フェンリルのネームバリューでメンバーを集めるんだ。僕たちの方が安いくらいさ」
「そうね。フェルのすることに比べたら、あたしはこれくらいしか貢献できないからね。
・・・それに少しくらいは恩返しさせてよ」
鳴沢は最後のセリフを少し恥ずかしげにぼそっと言う。
「あとはメンバーが集まるのを待つだけね。
・・・ねぇ、メンバーが集まる前にちょっと行ってみたいところがあるんだけどいいかな?」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
俺達は今、セントラル城の門の前に居る。
セントラル城はカイ国王になってから、王の証が無くても城に入れるようになっていた。
ただ2DのRPGとは違い、そう簡単に城の中に入ることは出来ないが。
俺達はカイ国王からの特別恩賞として城の中に自由に出入りする許可を得ていた。
城門に立つ兵士たちに挨拶をして王城の中に入る。
「ねぇ、行きたいところって王城だったの?」
「うん、ちょっと気になることがあってね」
そう、鳴沢を『ELYSION』から脱会させた時に、麗芳さんからセントラル城に行くと面白いものがあると言われていたのだ。
俺自身も戦争イベントで王城に進入した時に気になる事があったのを思い出したのだ。
王城の1階の大広間のロビーには見覚えのあるピエロが居た。
俺はピエロに近づき話しかける。
「久しぶりね、センタ。わたしの事覚えてるかな?」
「ミスフェンリル、お久しぶりでございます。
このような世界一であるとは言え道化であるわたくしめを覚えてくださるとは光栄の極みでございます」」
「あれ? わたしの事知ってるんだ」
「はい、今やミスフェンリルの剣の舞姫の二つ名を知らない者は居ないほど名を馳せております」
おおう、NPCの間でも二つ名が広まってるのは知ってたが、こんなピエロにまで知られているとは。
・・・いや、ピエロだからこそ流行や噂に敏感なのかもしれない。
「それで、この度はわたくしめのような道化に何用でございましょうか」
俺はセンタに促されここに来た目的を思い出す。
そう、あの時センタが言っていた新しき道と言うのが引っかかっていたのだ。
「そうそう、ちょっと気になっていたことを思い出してね。
あの時言っていた新しき道って何なのか教えてもらいたくて。わたしの予想が間違ってなければ、新しき道って言うのは・・・」
「それはミスフェンリルのお考えの通りでございます。
新しき道と言うのは、これまでの特殊職よりさらに上の1人1つのみの職業――ユニーク職でございます」
センタの新しい職業の発言に、後ろで鳴沢とクリスが息を呑んでいるのが分かる。
今まで特殊職が最上級と思われていたのだが、実はそれより上の職業があると言われれば驚くのは無理もない。
半ば予想していた俺でも1人1つのみの職業と言うのに驚いているのだ。
「そしてミスフェンリルはユニーク職の転職条件を満たしております」
「転職条件は強き者の証を3つ示すこと」
「それすなわち、累計Lv80以上の王の証を3つ所持した方の事です」
強き者の証から王の証と言うのは予想できたが、まさか累計Lv80以上とは。
幸か不幸かと言われれば幸なんだろう。俺は既にその条件を達成していた。
カーバンクル狩りによるLv80に、SとCの王の証に加え、一昨日倒した『死を撒く王』により手に入れたDの王の証で3つの王の証が揃っている。
「そしてこれがユニーク職の一覧でございます。
この中からミスフェンリルに新しい職業を選んでもらいます。
そして選ばれた職業が、ミスフェンリルのみの職業となります。他の方はその職業に就くは出来なくなります」
センタの言葉と同時に俺の前に職業一覧のウインドウが現れる。
○剣聖
○鬼神
○時空蛇
○戦乙女
○天魔
○神薙
○大賢者
○勇者
全部で8職。
剣聖はどう見たって前衛の職業だし、天魔・神薙・大賢者は後衛の魔法関係職だ。
よく見れば、それぞれが一番最初の一般職の派生職と言うのが分かる。
戦士系が剣聖、武闘士系が鬼神、盗賊系が時空蛇、狩人系が戦乙女、魔術師系が天魔、僧侶系が神薙、召喚師系が大賢者、そして系統が統一されていない付与術師は勇者と。
「これは凄いな・・・どの職業を選んでも大幅な戦力強化になるだろう」
「そうね、フェルはどれを選ぶつもりなの?」
このウインドウは俺だけの表示ではないらしく、後ろに居た鳴沢達にも見えているみたいだ。
鳴沢の言葉に俺はどの職業を選ぶか考える。
どの職業もユニーク職らしく特別な特色はあるんだろうが、俺の戦闘スタイルを考えると魔法を使えるのが第一となる。
それでいて前衛でも戦える職業となると・・・
「センタ、戦乙女の特色を教えてもらえる?」
「はい、戦乙女は女性限定の職業であり、全ての武器を扱うことが出来る戦乙女スキルを所持しております。特に剣と弓の扱いに長け他の武器よりも強い攻撃をすることが出来ます。
そして火・水・風・土の基本の4属性の魔法をも扱うことが出来ます」
「天魔、神薙、大賢者は?」
「天魔は魔法の威力に長けた職業であり、その威力を最大限に放つために極大魔力スキルを所持しております。
扱う事の出来る魔法は基本4属性に氷・雷・光・闇・無・古式となっております。
神薙は女性限定の職業であり、癒しの魔法に特化した職業でございます。扱う事の出来る魔法は基本4属性に聖・無・治癒・蘇生となっております。
また前衛でも戦うことが出来、神薙最大の特徴でもある神降ろしスキルにより、さまざまな状況に合わせてその身に神を宿し戦う事の出来る職業です。
大賢者はユニーク職以外の全ての魔法を扱う事の出来る賢者スキルを所持している職業です。
そしてもう1つの特徴といたしましては詠唱破棄スキルによるノータイムでの魔法の行使が出来るという事です」
・・・・・・・・・・・・・・・そうか、俺の持っている極大魔力スキルと鳴沢の持っている詠唱破棄スキルはユニーク職の職スキルだったのか・・・
そりゃあ、チートスキル扱いされるわけだ。
後ろでは鳴沢とクリスが当然のごとく、極大魔力スキルと詠唱破棄スキルのルーツにただただ驚愕していた。
取り敢えず気を取り直してユニーク職を選ぶことにするが、俺の中ではセンタの説明でもう既に決まっていた。
前衛および後衛の出来る職業、今の俺の戦巫女の上位職とも言える神薙だ。
それに女性限定というのが、男でありながら女身体を使っている俺にぴったりだと思ったのだ。
同じ女性限定の戦乙女も俺の戦闘スタイルにはあってはいたが、神薙の神降ろしスキルと言うのに魅かれたからだ。
状況に応じて神を使い分ける。これを使いこなせればかなりの戦力アップに繋がるはずだ。
「決まったわ。神薙、これでお願い」
「承知いたしました。
ミスフェンリルにはこれより新しき道、神薙の道を進んでもらいます」
その瞬間、俺の姿に変化が現れた。
基本のコスプレ巫女姿は変わらないが、その上に半透明の羽織千早がコートのように羽織った姿になる。
ポニーテールに留めている金のかんざしは更に豪華になり、頭の上にはティアラのような金の髪飾りが付けられていた。
よく見ればコスプレ巫女の端々にも豪華な飾りが付けられている。
おおう、相変わらず萌えスキルは健在だ。
「流石ユニーク職ね。見た目もそれなりの風格を漂わせているわ」
いや、萌えスキルの効果だってば。
「神薙か。確かに今のフェンリルの戦闘スタイルにはあっているな。と言うかこれとないほどフェンリルに併せた職業ではないかと思ってしまうほどピッタリだな」
「流石にそれは出来過ぎよ。
まさかAI-On開発者も最初のサブスキルのランダムでユニーク職の職スキルを手に入れるとは思ってなかったんだろうし」
俺の戦闘スタイルは極大魔力スキルがあっての代物だからな。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
俺は新しい職業・神薙に転職して次の目的地に向かう。
ユニーク職の発見と転職には興奮はしたが、俺達は意気揚揚に城を出てあることに気が付いた。
新しいギルドを作るという事は、その拠点であるギルドホームが必要と言う事だ。
必ずしもギルドホームは必要という訳ではないが、これからの俺達の活動を考えればあるに越したことは無い。
鳴沢の話によればギルドホームを購入するのはギルドを設立する前でも出来るが、購入費はそれこそ普通の一軒家から豪邸までピンきりだ。
普通の一軒家で最低で1Mゴルド、豪邸ともなれば1G(1,000M)ゴルド以上もするとか。
お金のない俺はまたもや鳴沢達に資金を出してもらうことになり、2人には今後の拠点となるギルドホームの購入を任せた。
俺はと言うともう1つの気がかりの為、あるギルドに向かうことにする。
その気がかりは他の人には知られたくないため、鳴沢達2人とは別行動を取ったのだ。
いずれは話すことであろうが、今は時期尚早と判断した為だ。
俺はつい一昨日も尋ねたギルド『ELYSION』のギルドホームの前に立つ。
丁度ギルドホームの玄関口にマキナが居たので、彼女にお願いして『ELYSION』のサブマスターの麗芳さんに取り次いでもらう。
「・・・麗芳さんに何の用なのよ?
あんたにはちょっと借りがあるから大目に見るけど、あたし達はあんた達とは馴れ合うつもりはないのよ」
「麗芳さんにはちょっと聞きたいことがあってね。
それにこっちもマキナ達とは馴れ合うつもりはないわよ。ベルの為にもね」
「・・・ふん」
それで納得したのかしないのかは分からないが、マキナは俺を麗芳さんのところに案内する。
「フェンリルさん、よく来てくださいました。それで今日はどういったご用件で?」
「ええ、ちょっと麗芳さんに聞きたいことがあってね」
そう言いながら俺は麗芳さんの傍に控えたマキナに目をやる。
それに気が付いた麗芳さんはマキナに席を外すように指示をする。
「ですが麗芳さん・・・」
「心配しなくても大丈夫です。何もフェンリルさんは私を取って食おうとしてるわけじゃないんですから。
それにフェンリルさんはギルドとしてではなく、私個人に用があってのご様子」
その言葉にマキナは渋々ながら部屋から出ていく。
ギルドマスターとなったマキナを差し置いて、サブマスターの麗芳さんに直接話すのは確かに面白くは無いだろうが、麗芳さんの言った通りこれは麗芳さん個人への話なのだ。
「それで、聞きたいことと言うのは・・・?」
「何も難しい話じゃないわよ。麗芳さんは何を隠してるのかなぁっと思って。
わたしはCの王の証の特殊スキルを誰にも話してはいないわ。麗芳さんは何故か特殊スキルの効果を知っていた。
それにさっき王城に行って特殊職の上位職のユニーク職への転職をしてきたわ。
麗芳さんは王城に行けば面白ものがあると言ってたけど、貴女は王城にユニーク職の転職NPCが居たのを知っていた。そうよね?
麗芳さん、貴女はいったい何者なの?」
そうなのだ。『死を撒く王』に対抗できるアイテム、Cの王の証の特殊スキル効果を知っているのは所持者である俺しかいない。
なのに彼女はその効果を知っていて、俺に『死を撒く王』の攻略をお願いしたのだ。
そして今回のユニーク職。
確かにセンタは「強き者の証を3つ示せば新しい道を示す」とは言っていたから何かあるのは他の人も知っているが、彼女はその内容の意味を理解していて面白いものがあると言っていたのだ。
「何のことですか? 私は普通の1プレイヤーですよ?」
「麗芳さん、いくらなんでもそれは通じませんよ。
貴女はこのAngel In Onlineのゲームシステムを熟知している。それはすなわちAngel In Onlineの開発者又はAccess社の関係者を示している。そうですね?」
Cの王の証の特殊スキルの効果は俺しか知らないが、ゲーム開発者なら知っていて当然だ。
ユニーク職の転職の件もまた然り。転職の条件、転職NPCなど開発者なら知らないはずはない。知っていて俺をそこに誘導したのだ。
ゲームの攻略を円滑に進めるために。
「・・・流石はトッププレイヤーと言ったところですね。戦闘面だけではなく、観察眼も優れていらっしゃる。
ご察しの通り、私はAngel In Onlineの開発者をしておりました。主な担当は職業システムによるものでしたが」
「やっぱり・・・
麗芳さんはこのデスゲームを知っていてAccess社に協力をしていたの?」
「いいえ。私はただの技術者です。今回の件は何も聞き及んでません。
私達がゲームの中に居たのもプレイヤーが円滑にゲームを楽しんでもらうための道案内役みたいなものでした。
ですがこのような事になってしまい、他のプレイヤーの状況を考えれば身分を隠すしかなかったのです」
・・・少なくとも嘘は言ってないと思う。
「いいわ。信じるよ」
「ありがとうございます」
「もう1つ聞きたいことがあるわ」
寧ろこっちが本当に聞きたいことだ。さっきまでのは事実確認に過ぎない。
「カンザキ達の『死を撒く王』の挑戦よ。
麗芳さんは『死を撒く王』の攻略にCの王の証を必要と分かっていながら何故彼らを王の下に向かわせたの?」
そのPTメンバーの中には鳴沢が居たのだ。下手をすれば鳴沢も死んでいたのかもしれない。
「それは・・・私の判断ミスです。
基本上、Cの王の証が無くても攻略することは可能のなのです。
LUC値を上げるアクセサリー又は風水師と蘇生魔法の使えるプレイヤーが居れば倒せるはずでした。
カンザキさんの取った方法は蘇生魔法を使える者を2人用意してお互いに蘇生し合うというものでした。
私もそれで倒せるのではと判断したのです。ですが結果としてはこのような事になりベルザさんには申し訳ないことをしました」
判断ミスね。
まぁ、確かに王攻略には絶対と言った攻略方法があるわけではない。
Cの王の証も『死を撒く王』の攻略するアイテムの一部でしかない。確実な方法ではないのだ。
「もう一度聞くけど、デスゲームには関与していないのよね?」
「はい、それは誓って言えます」
実は麗芳さんはデスゲーム関係者で、何かの目的で周りのプレイヤーを死に導いている・・・ってそれは無いか。
それだったら今頃『ELYSION』のメンバーはもっと大勢のプレイヤーを死亡させているはず。
「ふむ、麗芳さんのような開発者も知らないとなると、このデスゲームはAccess社とかの上の者が独断でやったことなのかな?
と言うか、デスゲーム化した目的って何だろ? 麗芳さんはそのあたりどう思う?」
「デスゲーム化の目的と言われましても・・・
プレイヤーを死させることはゲームにとっては致命的ですから、ゲームそのものより経過・・・何かの観測データ収集では・・・?」
ふむ、あり得ない事ではないな。
デスゲーム化したことによりパニックになった人々の行動分析とか、極限状態における人の脳波の分析とか。
「AI-Onの開発者の中にはそう言った分析に長けた人とかは居なかった?」
「これと言って特には・・・ああ、Angel In Onlineの最高責任者の榊原源次郎さんなら可能かもしれませんね」
榊原源次郎・・・? 何か聞いたことがあるな。
「彼は元々は外部の人間で、AI開発の為にこのプロジェクトに参加した研究チームです。
AI研究の為、人間の感情や行動を色々と分析しながらAIの開発を進めていました。いつの間にか最高責任者の地位に就いてましたが」
ああ、そう言えばAI-Onの為に外部からAI研究チームを引き抜いたって言ってたっけ。
そのAI研究チームの代表であり、AI-Onの最高責任者の榊原源次郎・・・聞いたことあるわけだ。
「その榊原源次郎が今回のデスゲームの黒幕っぽいね」
「にわかには信じられませんが、彼の地位と研究技術を見ればそう・・・なのでしょうね」
麗芳さんは現実で榊原源次郎と顔を合わせて仕事をしたことがあるのだろう。
榊原源次郎の性格を考えて否定したい気持ちなのだが、今の状況を見れば肯定せざる得ない。
まぁ、榊原源次郎が黒幕だって確定したわけではないが。
「まぁ、今はそいつの事を考えてもしょうがないわね。わたし達が出来ることはエンジェルクエストをクリアして外に出ることだけだからね」
「そう・・・ですね。
私に出来ることなら協力いたします。もっとも私の関わっていた部分は先ほどもおっしゃったとおり職業システム関連が主ですが」
「それでもシステムの裏側が分かる人が居るってのは心強いわ。そう言えば他の開発者とかはいないの?」
よく考えれば陰からサポートするのに麗芳さん1人なわけが無い。
普通であれば複数の人が身分を隠してログインしているはずだ。
「私の他にも数人居るはずですが、残念ながら連絡は取ることは出来ません。
誰がログインしているか分からないのです。唯一連絡を取れていた人も既にお亡くなりになられていますので・・・」
「そっか。まぁ麗芳さんだけでも知りあえたのは僥倖よ。この後も出来れば情報提供とかもお願いね」
麗芳さん以外の人との連絡が取れないのは残念だが仕方がない。だが他にも開発者が居ることが分かっただけでも上出来だ。
俺は麗芳さんにこの後の協力を約束し『ELYSION』を後にする。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ギルドメンバー募集スレ9
334:フェンリル
この度ギルドを設立することにしました
それに当たり設立メンバーを募集しております
当ギルドの目標はAとBの王、Worldの攻略です
命を懸けて攻略に当たれる人を希望しております
ギルド加入希望の方は王都南西地区のXX-XX-19のギルドホームまで
第1次〆きりは3日後の9月25日までです
それ以後も引き続きメンバーを募集しますのでよろしくお願いします
335:ジャッジメント
おおおおおおおおおおおおお!!!
遂にソードダンサーがギルドを設立する!!!
336:AVENGERS
マジか!
これは加入しなければ!
337:愚か者の晩餐
>>336 いや待て! これは孔明の罠だ!
338:Dインパクト
>>336 よく募集内容を読め!
AとBの王とWorldを『命懸けで』と書いてある
339:ライジングサン
つまり肉壁になれってことですね
ガクガクブルブル((;゜Д゜))
340:みくみん
気持ちは分からないでもないけどそれは無いでしょうw
341:アルフレット
ソードダンサーに肉壁なんていらないよw
342:名無しのごん子
要はそれだけの覚悟がある人希望ってことだね
343:AVENGERS
えーーσ(・´ω・`;) 命懸けなんて無理だよ
344:ジャッジメント
だけど舞姫様の傍には居たい!
345:DOGS
つまりソードダンサーの傍に居られるだけ強くなければ駄目だってことか
346:Dインパクト
はぅ! なんてギルド加入のハードルが高いんだ!
341:みくみん
舞姫様の傍に居られるだけの強さって・・・トッププレイヤー並の強さが必要じゃないですか
342:愚か者の晩餐
ぐぬぬ! 舞姫様のギルドに加入したいのだが・・・!(血涙)
343:ライジングサン
ソードダンサーもとんでもない条件を出して来たな
344:名無しのごん子
それよりギルド目標が最強クラスの王とは・・・ソードダンサーもやる気満々だね
345:白蛇
あの~何かギルドメンバー募集し辛い空気だけど・・・お邪魔します
ギルド『隠密機動部隊』では新規メンバーを募集しております
活動拠点は東和都市です
構成メンバーは忍者が中心となっておりますが、他の職業も大歓迎です
連絡は白蛇か黒兎までお願いします




