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Angel In Online  作者: 一狼
第8章 Lovers
37/84

35.月下美人と月牙美刃

 ムシの森の六武士(ムシ)長・亜芸覇(アゲハ)が杖を構えて呪文を唱える。


『バーニングフレア!』


 巨大な炎弾が俺に向かって襲い掛かる。


「フッ!」


 二刀流スキル戦技・十字斬りで襲い掛かる炎弾を叩き斬り、そのまま亜芸覇に向かって突き進む。

 炎弾の余波を受けてHPが若干削れるが、炎の中を突き進むと言った行動をとったため、亜芸覇は俺に対する反応が遅れた。


「流星連牙!」


 光の帯を引いて左右の剣が亜芸覇を襲う。

 確実にダメージを与えるが、亜芸覇は澄ました顔でふわりと飛んで距離を取る。


『ホーミングボルト!』


 亜芸覇の唱えた無属性魔法の十数の自動追尾弾が俺を追ってくる。

 ステップと月読の太刀と妖刀村正を使って追いかけて来る追尾弾を叩き斬る。

 すぐさま避けている間に唱えていた輪唱呪文を亜芸覇に向かって解き放つ。


「ライトニング・ダブルブースト!」


 雷の一閃が亜芸覇を襲いHPを削る。

 ダメージを受けたにもかかわらず、亜芸覇は余裕の表情でこちらを見ている。


『ふぅ、なかなかやりますね。先ほどの雷もそうですが、貴女の力はまるで別次元だ。

 ですが戦闘は力だけではないんですよ。

 ――幻惑の鱗粉』


 亜芸覇は両手を広げ背中の羽を羽ばたかせ、両手をこちらへ向けて羽の鱗粉を飛ばす。

 広範囲に撒き散らされた鱗粉を、慌ててバックステップで避ける。

 だが次の瞬間、景色が歪んで俺はその場に倒れてしまった。

 どうやら完全には避けきれていなかったようだ。


 くっ、幻惑と言うことは幻の類か? それにしては足もとがおぼつかないというのは幻の効果とは違うような。


 立ち上がろうとするも、頭に霞がかかったように思うような思考が出来なかった。

 俺は慌てて掛けられたBuffを見ると混乱状態になっていた。

 亜芸覇の鱗粉はかなりの広範囲に掛けられたらしく、よく見ると俺だけではなくリムも足下がおぼつかず、棒立ちの様子を見せていた。

 アイちゃんには効果が無かったらしく、火武斗武士と切り結んでいた。


 まさかの混乱効果とは。昆虫特有の麻痺や毒を警戒して麻痺耐性のアクセサリーを付けていたが、ここにきてユニークボスの攻撃とは。

 Buff効果が付いてからのアクセサリーって効果があるのかな?

 早いところアクセサリーを交換して次の攻撃に備えなければ。

 つーか、混乱なのに何で幻惑なんだ?

 幻ったら普通ありもしない強大なモンスターの幻覚を見せるとか、親しい人の幻覚を見せて戸惑わせるとかだろ?

 俺の親しい人と言うか愛おしい人だったら、鳴沢なんだろうけど。

 ここで鳴沢の幻を見せられたら俺どうするんだろ?

 戦う? よく戻ってきてくれたって言って抱きしめる?

 ああ、幻だから抱きしめることは出来ないか。

 いや、その前に抱きしめようとしたところを狙って攻撃されるか。


 ――って、こんなこと考えてる暇はないじゃん!

 ああ、やばい、俺メチャクチャ混乱してるよ!


「がふっ!」


 突如俺の体は何かに殴られたように横に吹き飛ばされ地面を転がる。

 舞い散る火の粉を見れば、火属性魔法の攻撃を受けたみたいだ。


 向こうで亜芸覇が何か言っているが、混乱した俺の頭には何を言ってるのか理解できない。

 亜芸覇はそのまま続けて雷の散弾を放つ。


「ぎゃん!」


 呆然と見ていた俺はそのまま亜芸覇の攻撃を受けて地面を転がされる。

 HPを見れば半分まで削られていた。

 やばいやばいやばい! 早くHPを回復しなくては。

 HPを回復する手段は魔法、アイテム、後は何があったっけ?

 ってそんなことを考えるんじゃなくて!

 ああ、混乱ってこんなにも厄介なのかよ。思ったように考えが纏らない。


 その間にも亜芸覇の容赦ない魔法攻撃を浴び続けHPは2割を切る。

 自分のHPがレッドゾーンに入っているのに、俺はそれを他人事のように見ていた。


 だが次の瞬間、意識がクリアになり周りの景色がはっきりする。


「大丈夫ですか?」


 目の前には腰まで伸びた金髪に、どこかおっとりした顔の僧侶の姿をした女性がいた。

 改めて周りの状況を見てみると、亜芸覇には侍の女性と魔導師の女性が対峙していて、火武斗武士にはアイちゃんとフルプレートを着こんだ盾を持った騎士の女性が対峙していた。

 離れたところに俺と先ほどの僧侶の女性、リムの傍には剣と弓を背負った女性がリムを介護していて二丁銃を持った女性がアイちゃんを援護していた。


 どうやらどこかのPTがピンチになった俺達を助けてくれたみたいだ。


「ありがとう、助かったわ」


「いえ、ご無事で何よりです。まずはHPを回復しますね」


 僧侶の女性は俺のHPを回復する。

 俺は改めて左右の刀を構えて呪文を唱える。


「バインド・トリプルブースト!」


 地面から現れた蔦により亜芸覇は3秒間動きを封じられる。

 動きをからめられた瞬間に、侍の女性は刀スキル戦技・桜花乱舞をお見舞いする。

 その間に俺はステップで一気に近づき、バインドの拘束が解けた瞬間に思いっきり蹴りを入れて亜芸覇を吹き飛ばし間合いを取る。


「助けてくれてありがとう。貴方たちが来なければちょっとやばかったわ」


「・・・ん、大したことしてない。当たり前のことしただけ。

 ・・・それより、来る」


 侍の女性にも改めてお礼を言うと、彼女は無表情ながらも答える。

 彼女の言う通り、吹き飛ばされた先から亜芸覇がゆっくりと近づいてきた。


『まさか助っ人が入るとは。まぁいいでしょう、ならば今度はまとめて全員を痺れさせてあげますよ。

 ――硬直の鱗粉』


 亜芸覇が再び両手を広げ鱗粉を撒き散らす。

 痺れさせるということは麻痺なんだろうけど、俺には麻痺無効のアクセサリーがあるから効かない。

 だが、助っ人に来てくれたPTやアイちゃんたちはそうもいかない。

 撒かれた鱗粉は後にして、先に異常状態の対応を先にする。


「サンクチュアリ!」


「サンクチュアリ!」


「トルネード!」


 俺と僧侶の女性をそれぞれ中心に光の魔法陣が広がる。

 サンクチュアリは聖属性魔法でありながら、数秒ごとにHPを回復する自動回復効果と、掛かっている異常状態を回復する効果がある。

 但し自PTにしか効果が無いので、俺はとりあえず自分のPTの対応をしてから個々に助っ人PTの対応をしようかと思っていたが、どうやら考えることは同じだったらしく僧侶の女性も同じ魔法を唱えていた。

 それと同時に魔導師の女性が風の竜巻を俺達の中心に放ち、撒かれた鱗粉を吹き飛ばした。


 打ち合わせをしていたわけでもなく、俺達の連携を目のあたりにして亜芸覇は驚愕の表情でこちらを見ていた。

 俺は鱗粉が吹き飛ばされたと同時に亜芸覇に向かって突き進む。

 すると考えることは同じで、侍の女性も俺と一緒に並走して亜芸覇に向かって突進していく。


 俺は亜芸覇の目の前に着くと、ターンステップとクロスステップを駆使して亜芸覇の背後に回り込む。

 亜芸覇は俺が目の前から消えたように見えるが、目の前には侍の女性が戦技を放とうとしていたので俺を探している暇はない。

 そんな狼狽えてる亜芸覇を余所に、俺と侍の女性は前後からそれぞれ戦技を放つ。


「・・・ん、五月雨」


「桜花十字閃!」


『がぁあ! くっ! こうなれば・・・!』


 俺達の思いがけない連係に苦戦を強いられた亜芸覇は羽を羽ばたかせ上空に逃れようとしたが、助っ人PTの銃使いに羽を撃ち抜かれる。


「チャージバレット×2!」


 左右の銃により羽を撃ち抜かれた亜芸覇はそのまま地面に叩き付けられる。


「お姉ちゃん! 巫女さん! 離れて下さいです!

 メテオストライク!!」


 魔導師の女性の声に従って俺は慌ててその場を離れる。

 メテオストライクは上空より巨大な隕石を落としてぶつけるという古式魔術スキルの魔法だ。

 その威力は凄まじいものがあるが、その上空からの特性上と効果範囲により使い勝手がいまいちな魔法だったりする。

 古式魔術スキルってことは、あの魔導師の女性は古式魔導師エンシェントウィザードか。

 まてよ、古式魔導師エンシェントウィザードは確か魔法収束の特殊アビリティがあったはず。

 と言うことは、メテオストライクはピンポイントで亜芸覇に向かって落ちるはず。


 事実、落ちてきた隕石は巨大なではなく、1mサイズの小型な隕石だった。

 魔法収束の効果により、巨大なサイズを小型に凝縮したと言った方が正しいのかもしれない。

 一条の光となって降り注いだ隕石は亜芸覇と周囲の物を巻き込み、その場にクレーターを作り出した。


 地面のオブジェクトにまで影響を与えるように設定するとは、AI-On(アイオン)の開発者も細かい仕事するなぁ。


 かろうじてHPが残り生き残った亜芸覇は、何とか立ち上がり俺達に反撃をしようとするも、反撃の隙も与えずに近づいた侍の女性の一撃になすすべもなく光の粒子となって消えた。


『まさか、私がこんなにも簡単に・・・』


 火武斗武士の方を見るとアイちゃんと騎士の女性が同時に攻撃をし、光の粒子となって消えるところだった。


『・・・無念』




◇ ◆ ◇ ◆ ◇


「ふぅ、改めてお礼を言わせてもらうわ。貴方達のお蔭で助かったわ」


「・・・ん」


「困ったPTがいたら助け合う。これがMMOの基本でしょ? あたし達は当たり前の事をしたまでです」


 俺のお礼の言葉に、侍の女性は一言、古式魔導師エンシェントウィザードの女性は当たり前だと言って謙遜をする。


「それでもよ。わたしもよくピンチになったPTの助っ人に入るけど、経験値やアイテムドロップが入るわけじゃないからなかなかできることじゃないわよ」


「そう言ってもらえるとこちらも助っ人に入った甲斐があります。

 それにしても女性だけでこのムシの森に入るのは珍しいですね。何かのクエストかでしょうか?」


 僧侶の女性が首をかしげながら聞いてくる。

 と言うか、助っ人PTも全員女性なんですけど。


「うん、あたしがさっきの火武斗武士の討伐のクエストを受けて、フェンリルお姉ちゃんに助っ人を頼んだんだけど、まさかもう1匹のユニークボスが現れるとは思わなかったなぁ」


「ああ! やっぱり剣の舞姫(ソードダンサー)のフェンリルさんだったんですね。

 掲示板の噂通りの萌えスキル効果による、左右の刀にミニスカ巫女。会えてうれしいです!」


 アイちゃんの言葉に古式魔導師エンシェントウィザードの女性が顔を輝かせ俺の方を見てくる。


「あー、そんなに噂程のものじゃないよ。特に今回なんかは逆に貴方達に助けてもらったんだしね。幻滅したでしょ?」


「そんなことないです! 魔法使いでありながら魔法を駆使して前衛で闘う姿。お姉ちゃんと並んであたしの憧れなんです!

 ああ、自己紹介が遅れましたですね。あたしはギルド『月下美人』のサブマスターの鏡牙彗月です。鏡牙と呼んで下さいです。こちらがあたしのお姉ちゃんでギルドマスターの月牙美刃です。みんなからは美刃と呼ばれてますです」


 古式魔導師エンシェントウィザードの女性――見た目は俺より年下な感じで、黒のミニスカのワンピースに黒のとんがり帽子、二の腕まである黒のグローブに黒のニーハイブーツ。おまけにマントまで黒と言う全身黒ずくめであり、そのせいか三つ編みにしていた金の髪が映えていた――鏡牙水月の自己紹介に俺は驚いていた。

 ギルド『月下美人』は深緑の森の26の王・Forestを倒したギルドだ。

 ただし深緑の森の深部は攻略Lvが累計Lv60以上必要な森だ。『深緑の王・Forest』もそれに準ずるほどのLvのはず。

 今のAI-On(アイオン)では累計Lv50後半台が攻略組の主なLvだ。

 それを上回るギルドが『月下美人』だ。


「貴方達が噂の『月下美人』なのね。こちらこそ会えて光栄だわ。

 そう言う貴方達こそ何でこのムシの森に居るの?」


「・・・ん、恥ずかしい」


 は? 恥ずかしいってどういうことだ?

 ギルマスの美刃さんは170cmの長身に腰までの金髪をざっくばらんに後ろで纏めただけの髪型に、袴をはいた侍と言うより武士と言った衣装に革の胸当てを付けただけの装備をしていて、美人顔でありながらその無表情な顔によりぱっと見、男装の麗人に見える。

 美刃さんのその無表情な上に言葉も少ないので、なかなか感情が読めない。

 それを補うかのように鏡牙ちゃんが言葉をつなぐ。


「あー、あのね、実はあたし達迷子でここに居るのです」


「「「は?」」」


 俺とアイちゃんとリムは思わず疑問の声を上げてしまう。


 鏡牙ちゃんの話によると、『深緑の王』を倒した後に地下への入り口が現れたという。

 その入り口の奥には地下都市が広がっていて、さらには地下迷宮まで存在するとの事。

 で、その地下都市を拠点にして今まで地下迷宮を攻略していたのだが、迷子になってしまい偶然見つけた地上への出口がこのムシの森だったという訳だ。


「はぁー、地下都市に地下迷宮ねぇ。暫く『月下美人』の噂も聞かないと思ったらそんなところに籠っていたとは」


「まぁ、人目に付かないようにしていたのはちょっと訳ありです。

 それと、その地下都市はダークエルフが住民で普通のプレイヤーや入ること出来ないですよ?」


「え? じゃあ貴方達はどうやってその都市に出入りしてるの?」


「それは『深緑の王』を倒した特権・・・です。

 Fの王の証は他の王の証とちょっと違うみたいで、特殊スキルが常時発動の地下都市への許可証になっているんです。『深緑の王』はダークエルフだったので納得と言えば納得なんです」


 鏡牙ちゃんの言葉に俺は納得する。

 その地下都市の入り口をダークエルフの王である『深緑の王』が守っていたのだろう。

 ダークエルフは色んな物語でもあるように、迫害されやすい種族だ。

 このAI-On(アイオン)でも扱いは同じなのだろう。


「深緑の森と言えば、貴方達よくあの森を攻略できたわね。あの森のLvは尋常じゃないはずだけど」


 俺の言葉に『月下美人』の面々は苦笑いする。


「お姉ちゃん、話してもいいです?」


「・・・ん、問題ない」


「お姉ちゃんの許可が出たのでお話しますけど、実はあたし達Lvが60後半なんです」


 鏡牙ちゃんの言葉に俺は驚きを隠せないでいた。

 ちょっと待て! 俺でさえあの深緑の森で累計Lv60まで上げたようなものなのに、彼女たちは既に60台後半だと!?


「最初のころはLv50まで森の入り口付近でLvを上げていたんです。

 で、みんな特殊職に転職し終わってから森の奥に入って行ったんですけど、そこで転移トラップに引っかかってしまったんです。

 その転移先に居たのが超激レアモンスターのカーバンクルの群れなんです」


「カーバンクル・・・? 聞いたことないモンスターだね」


 アイちゃんやリムを聞いてみたが、彼女たちも聞いたことないそうだ。

 一応、伝説上の生物で竜の姿やリスの姿をしたともいわれている。共通しているのは額に真紅の宝石を持っていると言われている。


「もし聞いたことがあるのであれば、今頃プレイヤーの間でカーバンクル狩りが流行ってるかもしれないです。

 見た目は緑色のまん丸いリスで、額に真紅の宝石があります。そして一番の特徴はLvUPモンスターと言う事です。

 カーバンクルは経験値に関係なく、1匹倒すごとに1LvUPするモンスターなんです」


「え、ちょっと待って。そのカーバンクルを倒せばすぐ1LvUP?」


「はいです、すぐ1LvUPするのです」


 ・・・はぁっ!? 何だ、そのふざけたチートモンスターは!?

 いや、この場合チートと言っていいのか!?

 1匹倒すだけで簡単にLvが上がるって、はぐ○メタルやメタルキ○グの遥か上をいってるじゃねぇか!


「ん、群れって言ったよね? と言うことはもしかして」


「はいです、群れを一掃したら一気にLvが60後半まで上がったのです。

 流石にこれは目立ちすぎると思ったので、地下都市を見つけたのを理由に暫く地下活動をしていたのです」


 なるほどね、これが『深緑の王』を倒した後、見かけなかった理由か。

 確かに累計Lv50前後でうろうろしてるところに累計Lv60後半が現れるとさまざまな疑惑が飛び交うのが目に見える。

 どうやってLvを上げただの、チート(この場合完全な不正を差す)を使っただの質問攻めや批判にあっただろう。


 それにそこまでのモンスターだ。カーバンクルのポップ率は多分物凄く低く設定されているのだろう。個体数もAI-On(アイオン)でも限られていると思う。

 そう考えると彼女たちが転移先でカーバンクルの群れを見つけたのは幸運と言える。


「それで地下で活動をしていて、迷子になって今に至る、と。

 で、この後どうするの? わたし達はクエスト報告に戻るけど、『月下美人』のみなさんはまた地下にお戻り?」


「・・・ん、地下はもう飽きた。外出る」


 俺の質問に美刃さんが答える。

 まぁ、かなりの長い間地下に籠ってたんだ。そりゃあ飽きるわ。

 と言うか、そんだけ長く地下に籠っていても攻略できない迷宮ってどんだけなんだよ。


「そうですわね。流石に20日近くも地下に居れば気が滅入りますわね。

 そろそろ他のプレイヤーさんもLvが高くなってきてると思いますので外に出るのも有りかと」


「あー、わたしも深緑の森でLv上げをしてやっと60なんだけど、今の他の攻略組は大体50後半くらいだよ?」


 僧侶の女性が外に出ることを提案するが、俺の言葉に『月下美人』の面々は思案顔になる。


「どうする? また地下迷宮に戻るか?」


「ん! もう地下は嫌。外出る!」


 銃を持っていた――多分魔動機術師(マギティック)だろう――女性が地下に戻ることを提案するが、ギルマスの美刃さんにより却下される。

 普通だと子供が駄々をこねてるように見えるが、文字通り美人顔なので可愛く見えるのが不思議だ。


「はいはい、お姉ちゃんの言う通り外に出るです。あたしも飽きちゃったです。

 まぁ、Lvの事を聞かれたら深緑の森に籠って上げていたと誤魔化すです」


 『月下美人』はそのまま俺達と一緒に東和都市に戻ることになった。

 よほど俺に憧れているのか、鏡牙ちゃんは道中俺にべったりだったりした。

 美人さんはそれを見ては、焼きもちを焼いて無表情ながらぷんぷんと怒ったりしていた。


 そして東和都市について、あのアナウンスが流れた。




 ――Qの王の証の所有者が死亡したことにより、エンジェルクエスト・Queenがリセットされました――




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 エンジェルクエスト攻略に関するスレ8


810:パウル

 エンジェルクエスト・Queenが復活したってことはQの王の証所持者が死亡したってことなんだけど・・・マジ?


811:フレッシュマン

 >>810 マジマジ


812:アメリア

 >>810 本当ですよ


813:サザーランド

 Qの王の証所持者って確か『ELYSION』のギルマスだったよね


814:大帝国陸軍大悪児

 カンザキって人が王の証を持ってたはず


815:パウル

 ちなみに死亡した理由って知ってる?


816:独眼竜

 確かDeathに挑戦しに行ったって聞いたからそれが原因かも


817:ダードリック

 マジか 噂のDeathに挑戦するとは何てチャレンジャー


818:アメリア

 その噂のDeathはかなり凶悪らしいですよ

 攻撃手段は通常の武器攻撃と、光による範囲攻撃の2つしかないけど

 全ての攻撃が高確率の即死攻撃と言う極悪なものらしいです

 カンザキ達はDeathに挑戦して1人だけ生き残ったとか


819:パウル

 うげ!? マジか!? それ極悪なんてものじゃないだろ!?


820:フレッシュマン

 だね、Deathの攻撃は死刑宣告と言ってもいいと思う


821:ソル

 それ攻略方法なんてあるのか?


822:ダードリック

 死刑宣告に立ち向かうとは何てチャレンジャー


823:まほろば

 はっきり言ってしまえば今の時点で攻略法はないな


824:アメリア

 ですね。即死攻撃を防ぐアイテム等は存在してませんから

 ただ即死攻撃を持つのはAI-On中Deathのみらしいですからその点で言えば不幸中の幸いかと


825:パウル

 つーかエンジェルクエストが復活したってことはそれだけ攻略が遅くなったってことだよね?

 そう考えると王の証所持者は最前線で闘うことはしない方がいいのかと思うけど


826:服部半蔵

 >>825 それも1つの考えでござるね


827:怒り新人

 死んじゃだめだ死んじゃだめだ死んじゃだめだ死んじゃだめだ死んじゃだめだ死んじゃだめだ


828:独眼竜

 >>825 だが王を攻略できるだけの戦力を遊ばせておくのも攻略を遅らせる原因にならないか?


829:サザーランド

 あー確かになー

 王の証所持者には死んでほしくないけど戦力は欲しいってな


830:究極の遊び人

 自分の安全を確保しつつエンジェルクエストを攻略するのがベストなんだけど、言うのと実際行動するのとじゃ違うんだろうな


831:まほろば

 ・・・そう考えるとソードダンサーって凄くね?

 王の証2つ持ってる上にエンジェルクエストの攻略に大分関係してるし


832:独眼竜

 確かにこうして王の証所持者が死亡してるのを見るとソードダンサーの凄さが分かるな


833:パウル

 だけど同時にどれだけソードダンサーが危うい事をしてるのかも分かる

 一歩間違えれば今回のようなことになってるはずだし


834:アメリア

 ソードダンサーに限ってそれは無いと信じたいですけど・・・


835:フレッシュマン

 だけど実際に何が起こるか分からないしね・・・




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