31.アクセサリーと豪鬼
アクセサリーの装備欄には頭、顔、耳、首、手首、指、背中がある。
指輪はステータスを上昇に。
ブレスレットは属性の攻撃力上昇や、防御のための減少など。
ネックレスは異常状態の耐性、無効化など。
イヤリング・ピアスは特殊アビリティの効果が付いている。
頭や顔に装備するバンダナやリボン、メガネといったアイテムはお洒落装備として定着している。今の段階では特に効果が付いたアイテムが出ていない。
背中に装備するのはマントが主だが、若干だが防御力や防刃アビリティが付いたりはしているが、ファッションアイテムとして装備するのが今の現状となっている。
と言うのを、町に戻るまでにアッシュ達に教えてもらっただけなんだけどね。
「さて、町に戻ってきたのはいいが、スタシードの町では碌なアクセサリーは買えないのう」
「え? この町じゃ買えないの?」
「いや、売ってることは売ってるのじゃが、プレイヤーメイドと比べると質が落ちるのじゃ」
てっきり俺はこの町でアクセサリーを揃えるのかと思っていたが、ルーベットさんの話じゃ王都などの都市の露店で買いそろえた方が装備として充実するとの事。
「えっと、それじゃあこれから王都に向かうってこと?」
「ううむ、そうなると往復で丸1日掛かる計算じゃ。しかも向こうでの買い物時間も計算すると、さらに半日ほど時間を取られるのう
質が下がるがここで買うか、時間をかけて王都まで行くかじゃな」
馬、走竜での移動だとしても、始まりの森を突っ切るにしても迂回するにしても半日ほどかかる距離だ。
だが俺の騎獣――白銀騎竜なら、ここから王都まで往復1時間もかからない。
「ルーベットさん、わたし1人なら王都まで半日ほどで戻ってこれるけど、どうしようか?」
「さん付けはいらぬ。ルーベットで良い。
ふむ、フェンリルお主1人なら半日も掛からぬと言うのか。まさか飛竜を持ってるとでも言うのか?」
「あー、飛竜ではないけど、空飛ぶ騎獣を持ってるね」
「なんと・・・お主はどこまでも規格外じゃな。
まぁよい。今日は既に移動だけで時間がとられてる。フェンリルには王都でアクセサリーを揃えてきてもらって、わしらは経験値稼ぎじゃ。
よって、天秤座の攻略は明日からにするぞ。よいな? アッシュ?」
俺の空飛ぶ騎獣発言にルーベットが呆れ気味に言いながら、アッシュに今後の指針を確認する。
なんかこれじゃあ、みんなの言う通りルーベットがギルマスみたいだな。
「あ、うん、その方がフェンリルさんもゆっくり品選びが出来るから、それでいいと思うよ」
「あ、ねぇねぇ、フェンちゃんの騎獣って2人乗り出来る? あたしも王都行って買い物したいんだけど」
千代女が便乗して王都に行きたいと言って来るのだが、騎獣って2人乗り出来るのか?
現実であれば馬などは技術が必要だが可能だ。
だがAI-Onで騎獣に2人乗り出来たなんて話は聞いたことが無い。
「んー? 馬や走竜は2人乗りは出来ないっすけど、飛竜とかなら可能なんすかね?」
「だったら試してみてはどうですか? ここで議論するよりも実際に試してみた方が早いと思います」
志乃の言う通り試してみた方が早いな。
俺達は早速町の外に出てスノウに2人乗りできるか試してみる。
「うおおおお! なんすかこれ! 銀色の騎獣なんて初めて見たっす!」
「くくくっ、まさかここまで規格外とはのう。お主といると飽きることはなさそうじゃな」
「凄い綺麗・・・いいなぁ、こんな騎獣を持ってるなんて」
「ええ、凄く綺麗です。そしてとても力強さを感じます」
「はぁー、これで空を飛んだらさぞ気持ちいいだろうなぁ」
「フェンちゃんフェンちゃん、乗っていい? 乗っていい?」
町の外に出てスノウを呼び出すと、みんなの反応は驚きっぱなしだった。
飛竜とも違う竜に、白銀色とくれば驚かない方がおかしいのかもしれない。
千代女に至っては好奇心を抑えきれず早速乗ろうとしているし。
だが、俺が先にスノウに乗って後ろに千代女を乗せようとすると、見えない壁に弾かれて乗ることが出来なかった。
「ええ~~、何で乗れないのよ~~。こんなに大きんだから2人乗り出来てもいいのに~~」
「千代女さん、諦めてください。
それではフェンリルさんは王都でアクセサリーを揃えて来て、明日の朝合流しましょう」
スノウに乗れない千代女は不満を周りにまき散らす。アッシュはそれをなだめながら俺に明日の合流地点を言ってくる。
「これ、いつまでも文句を言うではない。わしらはこれから同時攻撃の練習をしつつ、経験値稼ぎじゃ。
今のままではフェンリルの足を引っ張りかねないのでの」
アッシュ達はそのまま十二星座宮のある荒野に向かい、俺は王都へスノウを飛び立たせ王都へ向かう。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
王都に着いた俺は、アクセサリーを揃えるためにある場所へ向かう。
アクセサリーを揃えると言っても、複数種類のあるものを厳選するのは骨が折れる。
だったら売ってる人からのお勧めを選べば手間が省ける。
なので、俺にとってはお馴染みになった朝霧さんの店へ直行する。
「と言う訳で、アクセサリー一式下さい」
「・・・いきなり来て何が「と言う訳で」なのよ。
アポなしなのはいつもの事だけど、今回は更に唐突過ぎるわね。おまけに見た目が巫女さんに変わってるし」
挨拶も何も、いきなり店に突入しての俺の言葉に朝霧さんは呆れながら対応してくれる。
「あはは、ごめんなさい。
今さらなんだけど、わたしアクセサリー一式全然装備してなくてね。それで朝霧さんのところに来たという訳。スーパー生産者の朝霧さんならアクセサリーも作ってるんでしょ?」
「スーパー生産者とは、ずいぶん持ち上げるね。
まぁ、確かに彫金スキルもあるからアクセサリーも作れるけど、あたしは防具をメインに生産販売してるからね~。そのついでに武器を作ってるわけ。
フェンリルちゃんに相応しいようなアクセサリーだと、他の店に行った方がいいよ?」
うーむ、流石に朝霧さんでもアクセサリーまでは手が回らないのか。
言われてみれば当たり前なのだが。
ボタン1つで生産が可能とは言え、数種類の武器・防具生産、それらの素材アイテムの収集、そして生産Lvを上げるための生産等、普通であれば時間がいくらあっても足りない。
「別にわたしに相応しいとかは気にしないんだけど、まぁ朝霧さんがそう言うなら他の店に行きますね」
「だったら、夕闇って人の露店に行ったらいいよ。
彼は変わってて、既に店を構えるくらいの腕があるのにアクセサリーは露店で売るのが一番だって変なポリシーがあるのよ」
「確かに現実でもアクセサリーは露店とかでも売ってますけど、確かに変わってますね。
ありがとうございます。その人の露店に行ってみますね」
朝霧さんに夕闇の露店のある場所を聞いて店を後にする。
店を出ていくときに朝霧さんの呟いた「あの子も普段通りなら普通のお客が付くのにね・・・腕が勿体ないよ」という言葉にちょっと引っかかっていた。
朝霧さんのセリフから夕闇って人の事だとは思うけど・・・
俺は露店広場に行き、朝霧さんの教えてもらった場所でアクセサリー売りの露店を探す。
すると目についたのは、革ジャンにジーンズ、金髪のモヒカンにサングラスと言う格好のファンタジー世界にはそぐわない男が居た。
売ってるのはアクセサリー。指輪・ブレスレット・ネックレス・イヤリング・ピアス・サングラス・髪飾り止め、エトセトラ。
「Hey! お嬢ちゃん、何か買ってってYo!」
ファンキーな格好をした男が声を掛けてくる。
「ええっと、随分と斬新な格好をしてるんですね」
「ファンタジーの世界だからって、必ずしもファンタジーな格好をしなければならない法則はないZe!」
それはそうなんだけど、あまりにも周りと比べると浮いてるんだよなぁ・・・
「あはは、まぁ人それぞれと言う事で。
ああ、そうそう、朝霧さんの紹介で夕闇って人の露店探してるんだけど知らない?」
「なんだ、姉貴の知り合いかYo 俺がその夕闇だZe」
これはびっくり。まさか朝霧さんの弟とは。
朝霧さんも心配するわけだよ。いくら腕が良くてもこれじゃあね。
「その左右の腰の刀、風変わりな巫女衣装。あんたが噂の剣の舞姫Ka
姉貴からよく話は聞いているZe
ここに来たってことはアクセを買いに来たんだNa?」
「うん、とりあえず効果のある、指輪、ブレスレット、ネックレス、イヤリングの4つね。
何かお勧めのあるかな?」
とりあえず気を取り直して買い物に徹しよう。
格好に問題はあるが、朝霧さんの推薦であり弟だ。
「あんたはスピードタイプのようだから指輪はこれとこれだNa
ブレスレットは耐性より増加の方がいいだLow
ネックレスは毒耐性、麻痺耐性、石化耐性、魅了耐性、混乱耐性の5つを持って使いまわした方がいいZe
イヤリングは巫女を考慮して、治癒魔法の威力が上がる奴とMPの消費が抑えられる奴だNa」
そう言ってトレードウィンドウに表示された品々を見てみる。
敏腕の指輪 AGI+20 STR+10
即断の指輪 AGI+20 INT+10
氷炎のブレスレット 氷属性増加 炎属性増加
風雷のブレスレット 風属性増加 雷属性増加
水土のブレスレット 水属性増加 土属性増加
無毒のネックレス +毒無効化
無麻痺のネックレス +麻痺無効化
耐石化のネックレス +石化耐性
耐魅了のネックレス +魅了耐性
耐混乱のネックレス +混乱耐性
治癒のイヤリング 特殊アビリティ:治癒増加
減魔のイヤリング 特殊アビリティ:MP消費減少
・・・なんだこりゃ。
耐性のネックレスやイヤリングはまだいい。指輪とブレスレットが異常だ。
俺の知る限りじゃ効果は1つしか付けれないはず。
なのに指輪にはステータスアップが2つも、ブレスレットに関しては相反する属性効果が付いていたりする。
「指輪とブレスレットの付加凄いね。2つもついてるなんて初めて見るんだけど」
「どうだ、スゴイだLo
姉貴は全ての生産を扱うことが出来るかもしれないケド、それじゃあ器用貧乏な上に莫大な時間や労力がかかるZe
だから俺は1つの生産を極めることにしたんDa その成果がこれってわけだZe!」
俺は勧められたアクセサリーを全て買うことにした。
合計で2Mも掛かった。お蔭で全財産のほとんどが吹き飛んでしまった。
アクセサリーの相場はよくは知らないが、多分これでも安い方だろう。
早速アクセサリーを装備する。
ネックレスは標準装備として、麻痺無効化の装備にしておく。残りの装備は対応モンスターにより変えるつもりだ。
ブレスレットは左腕には携帯念話を装備してるので、右腕のみとなる。
基本装備として氷炎のブレスレットを装備しておこう。
俺は夕闇にお礼を言い露店を後にする。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
さて、アクセサリーを揃えたのはいいがどうしよう。
普通であれば露店を巡っていい品を探すので時間が掛かったりする。
だけど俺は朝霧さんの紹介であっさりいい品を見つけてしまったので、時間が余ったりしていた。
アッシュ達との合流は明日の朝だ。
今はちょうど昼食の時間になっている。半日も時間が余ってしまった。
今からアッシュ達と合流してもいいのだが・・・
そう思いながら露店広場をぶらついていると、見知った人物から声を掛けられる。
「よう! どこのコスプレ巫女かと思ったら、フェンリルじゃないか。戦争イベントぶりだな」
体格のいい大男――戦争イベントの時にギルド連合の会議で顔を合わせたことのある、ギルド『GGG』のギルドマスター・GGだった。
「久しぶり、GG。ギルドマスターがこんなところに1人で何をしてるの?」
「おいおい、ギルマスだからって誰か必ずお供を付けなければならないなんてことはないぜ。俺だってたまには1人でぶらつきたいこともあるさ。
そっちだって1人じゃないか。連れの巫女さん達はどうした?」
うぐ、痛いところを付かれる。
未だに何で鳴沢がPTを離れたのかよく分からないんだよな。
あの時はエリザとのエロイチャ?に腹を立ててたみたいだけど、鳴沢はそれくらいの事でPTを離れたりはしない。・・・と思いたい。
多分他の理由があるんだろうけど、俺にはさっぱりだ。
因みにメールも何度かそれとなく出してるが返事は無し。ちょっとへこんだりしている。
「あー、ちょっと事情があってわたし1人で行動してるのよ。
それより聞いたわよ。GGってAI-Onの中でも頂点にいるほどのトッププレイヤーなんだって?」
「お前が言うか?
剣の舞姫、この二つ名を知らないプレイヤーはほとんどいないぜ。つまりお前はそれほどの腕の立つプレイヤーとして有名なんだよ。
俺はフェンリルが最強のプレイヤーじゃないかと思ってるんだがな」
「買いかぶり過ぎよ。わたしの場合はチートスキルがあったのと、小手先の技術で生き残ってるだけに過ぎないよ」
実際、俺の実力と言えばチートスキル・極大魔力を使った魔法剣と回避を軸としたステップしかない。ああ、最近はチートアイテムの刀2本も追加だな。
俺に言わせればチートスキルが無くとも実力でトッププレイヤーにまで上り詰めたGGや、会ったことはないが疾風と言う人の方が凄いと思う。
「謙遜も過ぎると嫌味だぜ。
ふーむ、そうだな。フェンリル今暇か? これから一緒に一狩り行かないか?」
「は?」
GGの突然の申し出に目が点になる。
「俺達は会議で顔を合わせはしたが、一緒の戦場で戦ったわけじゃない。お互いの実力を目にしたわけじゃない。
ここで会ったのも何かの縁だ。お互いトッププレイヤー同時、実力を見極め仲を深めるのも一興じゃないか」
そう言われてみれば、GGがトッププレイヤーだという話を聞いただけで実際戦ってるところを見たわけじゃない。
GGの言う通りこれも何かの縁なのかもしれない。
「いいわよ。二つ名の豪鬼の由縁を見せてもらうわよ」
「はは、それはこっちのセリフだよ」
今日の午後のスケジュールはGGと狩りに行くことに決まった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
俺達はアーデリカの宿で昼食を食べた後、転移門を通って東和都市から深緑の森に来ていた。
俺の累計Lvは60、GGの累計Lvは57なのでここならLv上げにも丁度いいし、2人PTならだいぶ余裕をもって戦うことが出来る。
因みに先日の獅子座との戦いでLvが上がっていた。累計Lvが60になったのでサブスキル枠がまた1つ増えたので、後でまたサブスキルを考えなければならないな。
「はー、まさか空飛ぶ騎獣を持ってるとはな。あとで入手方法を教えてくれよ」
「掲示板の騎獣スレに情報を載せているからそっちを見て。
あー、でも転職関連クエストだったから、もしかして転職後じゃどうなのかな? それに乗ってる騎獣も関係してるみたいだから確実とは言えないね」
「そうか、後で見てみよう。って言うか騎獣の種類も関係あるのか。うーむ、いっそのこと手っ取り早く飛竜を捕まえるのも1つの方法だな」
東和都市から深緑の森まで騎獣に乗っての移動だったが、俺だけスノウでひとっ飛びとはいかず、GGは黄金の走竜に併せてスノウを低空飛行で移動して来たのだ。
しかし、黄金の走竜とは随分とまたレアな騎獣をお持ちだ。
これ、白竜の竜田揚げをあげると黄金騎竜とかになるんじゃないのか?
「さて、とりあえずはフェンリル1人で戦ってみてくれ。そのあとで俺が1人で戦い方を見せる。で、お互いの戦い方を見た後で連携してLv上げをしよう」
「了解。
・・・さっきから気になっていたんだけど、GGの武器って背中にしょってるハンマーなんだよね。その随分と巨大な風に見えるんだけど・・・」
そう、GGの背中に装備してる武器は槌――ハンマーだ。それも巨大な。
柄の部分はさほど太いわけではないが150cmほどの長さに、その先端の叩き付ける部分――頭部もまた150cm長さにドラム缶以上の太さがあるのだ。
多分STR(筋力)が高いんだろうけど、思わず振り回せるのかと思わせるほどの大きさだ。そしてなぜか黄金色だったりする。
「おう、俺の獲物はこのハンマーだ。
俺は勇者の職業を目指していてな。まぁAI-Onじゃ勇者職は無いけど、せめて武器だけでもと思ってさ。勇者と言ったらハンマーだからな」
「は?」
GGの発言に思わず目が点になる。
勇者職を目指すのはVRMMO-RPGのRPG部分としてまぁ分からないわけではないが、勇者がハンマーってないだろ。
「ええっと、普通勇者って剣とかじゃないの?」
「普通はそうだけど、俺の知ってる勇者は巨大なハンマーを振り回す勇者なんだ。まぁロボットアニメなんだけどな」
ああ、一昔前の某勇者を名乗るロボットアニメか。
確かにあれは黄金のハンマーを扱ってたな。一時期他のコンシューマーゲームでもハンマーを振り回すシーンが在ったとか。
「まぁ、人の主義にあれこれ言うつもりはないけど、周りの人の目って結構厳しくない?」
「そうなんだよなぁ・・・誰もこの魅力を分かってくれないんだ」
「でしょうね・・・」
勇者としてかなり逸脱してるからなぁ。
お互い会話をしながら森を歩いているとモンスターが現れる。編成はラミア2匹、ワーキャット3匹。
「じゃあ、わたしから先に行くね」
そう言いながら左右の刀を抜き放ちモンスターに接敵する。
お互いの力を見せ合うという事なので、剣舞と魔法剣を見せればいいだろう。
「アイシクルランス!」
まずは先にラミアを片づける。
1匹目に氷の槍を当てた後、妖刀村正と月読の太刀で2・3回叩き斬り仕留める。
「インフェルノ!」
火属性広範囲魔法を妖刀村正に掛け、魔法剣で2匹目のラミアを屠る。
続けて残ったワーキャットにステップで間合いを詰め、戦技を使わずに剣舞のみで片づける。
「おー、お見事! なるほど、まさに二つ名通り剣の舞姫だな。
魔法剣のアイデアもさることながら、刀で舞い踊る姿、巫女衣装も相まって綺麗だったぜ」
綺麗だと言われても中身は男だから嬉しさは半減だな。
「あはは、ありがと。今度はそっちが魅せてくれるんでしょ?」
「おうよ、勇者の戦い方を魅せてやるよ」
そう言いながらGGは片手であの巨大なハンマーをぶん回している。
おいおい、どんだけSTRが高いんだよ。普通あれは両手でぶん回すものだろうよ。
次に現れたモンスターはケンタウルス2匹とアラクネ1匹だった。
数も少なかったし、はっきり言ってほとんど瞬殺だった。
「ハンマーヘル!」
片手で黄金のハンマーを振り下し、ケンタウルスに叩き付ける。
「ハンマーヘブン!」
そのまま掬い上げるように下からハンマーでケンタウルスを浮かせる。
「光になれ―――っ!!」
再びハンマーを叩き付けて、ケンタウルスは光の粒子となる。
・・・いや、確かに光になったけどさ、HPが0になったから粒子となっただけで、ハンマーの特殊攻撃じゃないから。
GGの戦闘中のセリフはまんま某勇者ロボットアニメの主人公のセリフだ。
決して戦技とかの名前ではない。
どんだけ好きなんだよそのアニメ。
アラクネが土の槍の魔法を放ってくる。
「プロテクトウォール!」
だがGGはハンマーを一振りして土の槍を砕く。
いや、それただハンマーを振り回してるだけだから。壁でもなんでもないから。
「ブロウクンマグナム!」
GGはハンマーを水平にして頭部の部分で突きを放つ。
ブロウクンマグナムを受けたアラクネは5mほど吹き飛ぶ。
その隙にもう1匹のケンタウルスに光になれコンボを叩き付け、戻ってきたアラクネにも同じ要領で止めを刺す。
「どうだ! これが勇者王の実力だ」
どうだと言われても、豪快の一言しか思いつかないんだけど。
確かにある意味魅せてくれたよ。
ハンマーを振り回すだけなんだけど、なんかスカッとする思いっきりのいい戦い方だ。
「GGの方こそ豪鬼の二つ名に相応しい戦い方だったよ。
そう言えばGGって今の職業は何にしているの? ハンマーを扱ってるところを見ると戦士系に見えるけど」
「ああ、今の俺の職業は閃撃士だ。会心の一撃が出やすい職業だな。最初のころの勇者王は武器無しで戦ってたから俺もそれをまねてな。
因みに閃撃士は武器スキルが無いから、サブスキルに槌スキルを持ってるんだ」
あのハンマー攻撃から繰り出される会心の一撃。確かにAI-On一の攻撃力と言っても過言ではないな。
「そう言えばフェンリルの職業って戦巫女で合ってるよな?」
「ええ、巷では地雷と言われてる戦巫女よ。わたしにとってはこれとない職業だけどね」
「みたいだな。
接近・遠距離・回復これらを使いこなせる奴はそう居ないぜ。流石はトッププレイヤーってところか。
さて、今度は連携していこうか」
ここからはお互い連携しての戦闘となった。
まぁ、連携と言っても最初の一撃をGGが叩き込み、あぶれたモンスターを俺が抑え込みながら回復等援護をしていく。で、GGが1匹ずつ片づけていくと。
そんな感じで森の奥まで進んでいく。
「ふぅ、結構奥まで来てしまったか? 森の入り口付近よりもモンスターの強さが上がってきているな」
「だね、この付近になると適正Lvが70近いかもね」
普通であれば2人PTではここまで来ることは出来ないが、トッププレイヤーと言われる2人が組んでいるのだ。余裕とまでは言わないが、ここまで問題なく対応してきていた。
かなり奥まで進んできたが、目の前に巨大な石が現れる。
3m位の巨大な石だ。岩と言っても過言ではない。
「こんなところに石? 何かのイベント用か?」
GGが石を調べるかたわら、俺は石の傍に小さな立石を見つける。
「何か文字が掘られてるみたいだね。えーと、殺生石・・・」
次の瞬間、巨大な石の前が歪み空間の渦を作り出す。
なんかメチャクチャやな予感がするんだけど・・・
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
エンジェルクエストに関するスレ7
459:アイドルリマスター
なぁ、ウエストシティの巨大な門が開いたって聞いたけどホント?
460:鏡子
うん、本当だよ
ちなみに門の名前は冥界門だね
461:ブックストア
ウエストシティの南西にある門だよね?
462:アイドルリマスター
今まで何をやっても開かなかったのに何で開いたんだ?
463:フレグランス
俺が聞いた話によると死霊術師が扉に触れたら開いたらしいぜ
464:アイドルリマスター
へ? なんで死霊術師が触れたら開いたんだ?
465:シ者カヲルン
冥界は死者の世界だからね
死霊を扱う職業の死霊術師が鍵となっていたんだろうね
466:アイドルリマスター
はー、特定の職業が開錠の条件になっていたのか
じゃあ東和都市の北東にある門も特定の職業で開くかもしれないってことか
467:鏡子
みたいだね
今どの職業が門を開けるか片っ端から試してるみたい
ちなみに東和都市の門は地獄門だね
468:XYZ
冥界門って言うだけあって中のMOBは死霊系だらけらしいな
469:アイドルリマスター
スケルトン、ゾンビ、ゴーストとかか?
うわー、俺ゾンビ駄目だわ
470:justice
当然、冥界門のダンジョンの先には王が控えてるんだろうけど、予想じゃDeathがいるからかなり苦労しそうだな
471:フレグランス
東和都市の地獄門にはHellが居ると思われるから、こっちも苦労しそうだ
472:アイドルリマスター
冥界門の攻略はかなり進んでるのか?
473:鏡子
全然だね
最近開けたばかりなのと、中のMOBのLvが桁違いらしいよ
474:XYZ
深緑の森なみのLvらしいね
475:オルカ
>>474 あそこのLvはおかしいよ><
経験値稼ぎに良いって聞いたから行ったら死にかけたorz
476:XYZ
ああ、森の入り口付近ならそうLvは高くは無いけど、奥に入るとMOBのLvがものすごく上がるからね
気を付けた方がいいよ
477:アイドルリマスター
あれ? じゃあ1週間以上も前に深緑の森の王を倒した月牙美刃ってどうやって倒したんだ?
478:XYZ
・・・言われてみればそうだな
479:鏡子
・・・あの頃のLvで倒すなんて凄いね
480:ブックストア
そういや最近ギルド『月下美人』の人たちを見かけないけどそれと関係あるのかな?




