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Angel In Online  作者: 一狼
第5章 Pandora
23/84

21.亡国の王女と希望の女王

「パ、パティア様!?」


 今、俺の目の前にいるのは太陽神の巫女でありプレミアム王国王女のパティアだった。

 それが何でこんな森の中を大軍で居るのかが疑問だった。

 これじゃまるで戦争に行くような・・・


「フェンリル様、わたくしたちはこれから王都セントラルに奇襲を仕掛けます。

 なので将軍は情報漏洩の為、貴女方を消そうとしました」


「女王様! 何故このような者たちに作戦を教えるようなことを・・・!」


 隊長――いや将軍はパティアに詰め寄る。

 そりゃ今から奇襲しますって情報を教える方がどうかしてる。


「構いません。ここで彼女に会ったのは三柱神(みはしらのかみ)の御導きです。

 この出会いに何か意味があるのでしょう。

 それに彼女には月神様の祝福があります。そのような者を亡き者にしようなどと、太陽神の巫女として許せません」


 ん? 月神様の祝福って何のことだ?


「そしてこの程度で奇襲が失敗するようであれば、初めからわたくしたちの戦争は負けが決まっています。この試練を乗り越えてこそわたくしたちに勝利があるのです」


「ですが・・・!」


 将軍は尚も食い下がるが、パティアは俺達の排除を認めない。

 てか、やっぱり戦争なんだ。いつの間にイベントが始まったんだ?

 仲間の方を見ても今の状況を把握できてる人は居ず、みんな混乱している状態だった。


「あの、パティア様、セントラル王国と戦争とはいったいどういう事なのですか?」


「貴様・・・! よくもぬけぬけと・・・!」


 突如口を挟んできた俺に将軍が怒りの眼差しを向ける。

 うぉお、怖ぇ!


「お止めなさい、将軍。セントラル王国の冒険者と言うだけで彼女には何の咎もありません。そしてそのセントラル王国の冒険者がわたくしの命を救ってくださいました」


「・・・・」


 そう言われて将軍は口を閉ざす。

 そしてパティアは俺達の方を向いて事情を話し始める。


「フェンリル様・・・数日前プレミアム王国はセントラル王国の仕掛けられた戦争で滅亡しました。

 攻撃は王都ミレニアムまで及び、王城も崩れ落ち今では瓦礫の山となっております」


「なっ!?」


 俺達は言葉を失う。

 あの王国が滅亡したって!?

 つーか都市のようなセーフティエリアが壊されるのか!?

 このイベントどうなってるんだ!?


「そして陛下、王妃、兄上が殺害され、生き残った王族は『亡国の王女』のわたくしただ1人となりました」


「いいえ、貴女は我々の希望です。『希望の女王』なのです」


「ありがとうございます、将軍。そうわたくしはプレミアム王国の民の為、希望でなければなりません」


「待ってください。ならば王族の生き残りである貴女が民を率いて王国を再建すればいいのでは? 兵を率いてセントラル王国に戦争を仕掛けるよりもそちらが最優先ではないでしょうか?」


 クリスの進言にパティアは首を横に振る。


「王国を再建する為には、わたくしが女王としての証が必要となります。

 その王の証はセントラル王が自ら率いた軍に奪われてしまったのです。

 わたくしはその王の証を取り戻さなければなりません」


「はぁっ!?」


 俺は思わず声を上げてしまう。

 ちょ!? 王の証!? って、まてまてまてまて! 彼女は26の王なのか!?


「・・・あの、パティア様のフルネームは? それと亡くなった陛下のお名前も」


「あら、そういえば言いそびれてましたわね。

 わたくしのフルネームはパティア・パンドラ・プレミアムです。

 父上・・・陛下はパトリック・パンドラ・プレミアムです」


 ・・・26の王・Pandoraじゃないですか。

 まさかこんな形で王のイベントが起こるとは。

 いや、でも彼女は王の証を持っていない。セントラル王から奪えばPの王の証は手に入るのか?

 何かややこやしくなってきたな。


「フェンリル様、王の証を取り戻すためにもわたくしたちは王都セントラルに攻撃を仕掛けなければなりません。

 本隊は北の白霊山の麓から進軍しております。そのまま29日の昼に攻撃を仕掛け、わたくしたちは奇襲部隊として王城に攻撃を仕掛ける手はずとなっております。

 フェンリル様はこのことを報告しても構いません。もしこれで負けるようであればそれがわたくしの運命なのです」


「女王様・・・もう何も言いますまい」


 パティアの覚悟を聞いて将軍はこれ以上の意見を止める。


「フェンリル様、それでは戦場でお会いしないことを祈っております」


 パティアと将軍達は俺達を開放して森を進軍していく。

 残された俺達は当然パニックになっていた。




◇ ◆ ◇ ◆ ◇


「えーと、お姉様? これはどういうことなんでしょうか?」


 流石に事態についていけなかったのか、舞子が訪ねてくる。


「・・・現在進行形でエンジェルクエスト『希望の女王・Pandora』の関わった戦争イベントが進行してるみたい」


 エンジェルクエストと戦争イベントの同時進行だ。

 しかもエンジェルクエストでありながらPの王の証の入手方法が不明ときたもんだ。


「このままだとどうなるんだ?」


「・・・まずは奇襲軍の攻撃で王都の施設が破壊されれば使用が不可能になるだろう」


「エンジェルクエストのクリア方法も不明だわ。彼女を倒せばクリアになるのか、王の証を手に入れればクリアになるのか。

 どちらにしてもプレミアム王国の再建の邪魔をする形になるわね」


 天夜の質問に、クリスと鳴沢が答える。

 そうすると俺達に出来ることは、奇襲前にPの王の証をパティアに返してプレミアム王国を再建させることか?


「ベル、わたしの方でも連絡を取るけど、ベルの方でも王都の誰かにこのことを連絡して。

 対応には大勢のプレイヤーが必要になってくるはず。

 みんなも他の人と連絡を付けて情報を集めて」


 俺はメニューを立ち上げ、多分王都にいるであろうロックベルにメールを送る。

 メールの返信はすぐに返ってきた。


 タイトル:緊急

 本  文:戦争クエストでギルドで連合を組んで迎え撃つことになった。

      フェンリルも作戦会議に出て情報を提供してほしい。


 どうやら王都の方でも事態は動いてるみたいだ。


「フェル、王都でギルド連合が結成されて事態に当たるみたい。

 少なくともあたし達プレイヤーが負けない限りは王都が崩壊することは無いと思うわ」


「ええ、わたしの方でも確認できたわ。

 ただ、そのギルド連合の作戦会議に参加してほしいって」


 要請を受けた俺達は急いで王都に戻ることにした。

 時間短縮の為、騎獣の笛でスノウを呼び出しウエストシティ経由で王都に向かう。

 流石にみんな騎獣を持っていた。ただ走竜(ドラグルー)を持っていたのは、俺とクリスだけで他のみんなは馬だったので馬の速度での帰還となった。




◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 王都セントラルの冒険者ギルド大会議室。

 王都についた俺は早速ロックベルの指示に従いそこに向かう。


 王都は北に展開した元プレミア王国軍の対応で騒動になっていた。

 時間は夕方に差し掛かっており、普段ならばクエストや狩りを終えたプレイヤーが帰宅したり、NPCも夕飯などの支度に取り掛かる風景が見られるのだが、プレイヤー・NPCを含む大勢の人々がこの事態に右往左往していた。


 当然冒険者ギルドも緊急クエストの手配、アイテム等の支給、プレイヤー以外の人員の配備などで大騒動だった。

 俺達はそんな中を抜けて冒険者ギルドの3階にある大会議室へ向かう。


 大会議室にはすでに大勢のプレイヤーが集まっており、俺達の到着を待っていた。


「待っていたわ。これで全員が揃ったのでギルド連合による対プレミアム王国軍の作戦会議を始めたいと思います」


 俺が代表して席に付き、鳴沢は俺の後ろに控える。

 他のメンバーは会議室の外で待機中だ。

 他のギルドも代表者が席に着き、サブマスターや幹部と思わしき人たちがその後ろに控えてる。

 席についてるのは俺を含め全部で9人。

 正面の議長席と思われるところに女性が1人、左右のテーブルに男女が4人ずつ座っており、俺は議長席から見て右の一番奥に座っている。

 俺の正面にはロックベル、ロックベルの後ろには景虎が控えていた。


「僭越ながら議長はこの私、ギルド『9人の女魔術師(ソーサレスナイン)』のギルドマスター・ルージュが努めさせてもらいます」


 なるほど、彼女が紺碧さんのギルドのマスターか。

 見た感じ感情を表に出さないクール系美人のように見える。指揮官とかに向いてそうだ。

 よく見れば彼女の後ろには女性1人と紺碧さんが控えていた。


「異議あり。何故あんた達のような少数ギルドが議長を務めるのだ?

 ここは大手ギルドである我々『軍』のギルドマスターが議長を務めるべきであろう」


 のっけから異議を言い出したのは俺の向かいの席の一番左、ルージュさんから見ての左側一番手前に座るギルドマスター・・・の後ろに控える男からだった。

 つーか、こんな時に何を言っているんだ? いや、こんな時だからこそ自分たちの権力を主張するのか。


「黙れ、軍曹。ここは『軍』とは違う」


 突然の暴言を諌めたのは、『軍』のギルドマスターその人だった。


「しかし、サイレス殿。我々こそが一般市民の為に・・・」


「黙れと言っている、軍曹」


「・・・は、申し訳ありませんでした」


「すまなかった、ルージュ殿。続けてくれ」


 どうやら『軍』のギルドマスターは常識人のようだ。『軍』がその軍曹のような人だらけじゃないことを願おう。まぁ、この間の鳴沢の知り合いの女性のような人も居るから大丈夫だろうけど。


「いえ、それではここに集まった8つのギルドと剣の舞姫(ソードダンサー)のPTでこの戦争イベントを対処していきたいと思います」


「『軍』の隣に座っているのが、『GGG(スリージー)』のギルマス・GGよ。二つ名は豪鬼。その隣が『SilverSoul』のギルマス・ファルク、その隣に座ってるのが最近ギルドを設立した『大自然の風』のギルマス・ロックベル。

フェルの隣に座っている黒髪の女性が女性中心のギルド『黒猫』のギルマス・黒猫さん、その隣が多分『CIRCLE』のギルマスだと思う。一番端に座っているのが今AI-On(アイオン)で最も実力と人数のあるギルド『神聖十字団』のギルマス・ランスロット」


 俺の後ろに控えている鳴沢がこっそり教えてくれる。

 ほとんど面識のないギルドマスターばかりなのでこの説明は助かる。

 しかし、鳴沢はよく調べてあるなぁ。顔が広いのか、情報収集能力が凄いのか。


 そこで俺の隣の黒猫さんが手を上げる。


「あの、よろしいでしょうか。他のギルドの参加は無いのでしょうか?

 例えば最近『深緑の王』を攻略した『月下美人』とか『オークの女王』を攻略した『ELYSION』とかはどうなっているのでしょうか?」


「残念ながら『月下美人』とは連絡が取れませんでした。『ELYSION』は今現在王都や都市の近くにはおらず離れた場所での活動の為、こちらに来るのが間に合わない状況になっています」


「そうですか、それは残念ですね」


 ルージュさんの説明に黒猫さんが残念そうにする。

 ルージュさんがクール系の美人だとすれば、黒猫さんはおっとり系の美人だ。残念そうにしてるその姿が様になっている。


「それでは、今の状況を説明させていただきます。

 現在、王都セントラルの北部、白霊山の麓に元プレミアム王国軍が進軍してきております。当初これを迎え撃つ算段でしたが、剣の舞姫(ソードダンサー)が持ち帰った情報により対処方法を変更せざる得なくなりました。

 フェンリルさん、持ち帰った情報の提示をお願いします」


 俺はルージュに言われ、サンオウの森でのパティアとの出来事を話す。


「と言うわけで、彼女の目的はセントラル王の持つPの王の証と思うわ」


「なるほど、北に展開してる元プレミアム軍は囮か」


「女王自ら奇襲とは・・・」


 俺の説明の後にランスロットとサイレスが唸る。

 まー確かに女王自ら奇襲ってなかなかないよな。


「あーちょっといいかな? 今の剣の舞姫(ソードダンサー)の説明の中にあった、女王を王都ミレニアムから助け出した冒険者ってのは俺達の事なんだが」


 手を上げて発言したのはロックベルだった。

 ってパティアを助け出した冒険者ってロックベルだったのか!?

 あーそう言えば、ルーナちゃんを護衛してプレミアム王国まで行ってたっけ。

 丁度その時、襲撃イベントがあったんだろう。


「女王・・・その時は太陽神の巫女だったが、彼女を助け出さなければ王族が居なくなって今回の戦争イベントが起こらなかったんじゃないかと言う人も出てくると思う。

 だけど、彼女を助け出したのは間違ってなかったと思う。剣の舞姫(ソードダンサー)が掲示板に載せていた『月影の王・Crescent』のエンジェルクエストのようにNPCでも人として接することによって、人とのつながり――縁が出来るはずだ。ゲーム的に言えばフラグが立ったはず。

 少なくとも女王と縁のある剣の舞姫(ソードダンサー)が女王から色んな情報を聞き出せた。

 彼女たちをただのNPCとしてこの戦争イベントで排除してしまうのは簡単だ。けどそうすることよりも女王の希望を叶えることが出来れば、この後の何かしらのフラグが立ち、尚且つエンジェルクエストのクリアに繋がるんじゃないかと思うんだが」


「だが女王の目的はセントラル王の持つ王の証だろう? まさか王城に突入してセントラル王から王の証を奪い取るのか?」


「セントラル王がプレミアム王国から王の証を奪い取ったのは、私の方でも別ルートで情報を入手しております。

 そしてロックベルさんの言う通り『希望の女王』に王の証を返して今回の戦争イベントを終結したいと思います。

 なのでGGさんの言う通りセントラル王から王の証を奪還するPTを編成することを提案します」


「「「「「「「「なっ!?」」」」」」」」


 ルージュさんのとんでも発言にギルマス全員が驚く。

 いや、簡単に言うがこれはいろいろ問題が付いて回るぞ。


「いや待て、ルージュさん。ロックベルの言う通りNPCをゲームキャラとして扱うのではなく人として扱うのであれば、王に戦いを仕掛けて物を強奪となればそのプレイヤーはセントラル王国では犯罪者扱いされてしまうぞ?」


 『神聖十字団』のギルマス・ランスロットがルージュさんの発言に異議を唱える。

 そう、ランスロットの言う通りNPCでなく人として扱うのであれば、相手は王族だ。王族に喧嘩を売ってただで済むわけが無い。


「自分で言っておいてなんだが、ランスロットの言う通りそれは相手をゲームキャラとしてしか考えてはいないか?」


「そもそも王城に入ることが出来るのか? 前に一度入ろうとしたが門のところの衛兵に止められてしまったことがあるぞ?」


 『GGG(スリージー)』のギルマス・GGもまさか自分の発言を採用されると思わなかったのか、ルージュの発言に疑問を感じているようだ。

 そして『SilverSoul』のギルマス・ファルクの言う通り王城に侵入できたという話は聞かない。

 俺は試したことが無かったが、王城の中の施設も利用できないかと入ろうとした人が居たらしいが、ファルクの言う通り衛兵に止められてしまったとか。


「あれ? でも『軍』の方では王城の地下の牢屋を利用できてるよね?」


 『CIRCLE』のギルマスが『軍』のギルマス・サイレスに訪ねる。

 そう言えば鳴沢が『軍』では特殊クエストをクリアして牢屋を使ってPKや犯罪者を取り締まってるって言ってたっけ。


「王城に入れないことは我々『軍』でも確認してる。

 『軍』が利用している牢屋エリアは進入口が別でな。正門から堂々と入るわけではなく、裏口っぽいところからの進入となる。そしてそこからのルートは地下の牢屋のみだ」


 サイレスの言うことはもっともだ。正面から堂々と犯罪者を連れて入れるわけじゃない。

 俺達の疑問質問を予測していたのだろう。ルージュは落ち着いた言葉でその回答を口にする。


「皆さんの疑問はもっともです。ですが、対応策はあります。

 セントラル王の討伐に関する問題は王城の中にいる協力者によって問題は解決します。

 そして王城の進入もある条件を満たせば入ることが出来るのは協力者によって確認が取れてます」


 協力者・・・?

 仮にも王族への襲撃事件だ。それを抑えることが出来る人物って何者だ・・・?


「その協力者と言うのは信用できるのでしょうか?」


「はい。私たちがクエスト関連で知り合った協力者ですが信用できます。むしろこの事件の関連のクエストだったと今では分かります」


「でしたら、あたしからは何もいう事はありません。ルージュさんの指示に従います」


 黒猫さんとルージュさんの会話に出てきたこの事件の関連クエストで、俺はプレミアム王国系クエストの事を思い出した。

 あれは多分、依頼者は不明になってたらしいがセントラル王国がプレミアム王国を調査するためのクエストだったのだろう。

 そうするとルージュさんが受けたクエストも多分、セントラル王国からのクエストではないだろうか。俺の予想が正しければある王族直接からの・・・


「それでは今回の作戦の詳細に移りたいと思います。

 北に展開した元プレミアム王国軍、女王率いる奇襲軍、セントラル王からの王の証奪還、この3つを対応するため私たちも3つの部隊に分けたいと思います」


 俺の考えを余所に会議は進んでいく。

 ふむ、3つの部隊に分けるのか。そうすると俺達は女王の奇襲部隊に当たるのかな? だとしたらやりにくいな。

 しかし、ここまで大人数になるとPT同士でPTを組む連隊(レイド)PTになるのだろうか? AI-On(アイオン)連隊(レイド)ってあったっけ?


「北に展開した元プレミアム王国軍を『神聖十字団』と『軍』と『SilverSoul』にお願いします。緊急クエストを受けたプレイヤーとの連携もお願いします。

 次に女王率いる奇襲軍ですが、残りのギルド『9人の女魔術師(ソーサレスナイン)』『黒猫』『CIRCLE』そして女王と面識のある『大自然の風』で迎え撃ちます。これは女王撃破が目的ではなく、抑えるのが目的です。

 そして、作戦の要であるセントラル王から王の証奪還を剣の舞姫(ソードダンサー)のPTにお願いしたいと思います」


「・・・は?」


 俺は思わず声が出る。

 え? いやだって、それって重要な役割じゃないか。

 なんで俺達に重要な役割が回ってくるの!?




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


戦争イベントに関するスレ


382:Dインパクト

 戦争イベント、マジやりづれぇ


383:チキンオブハート

 >>382 え? 何がやり辛いの?

 普通に元プレ軍を撃退するだけじゃん?


384:Dインパクト

 >>383 そう言ってると足もと掬われるぞ

 相手は「人間」だぞ。NPCと思ってちゃマジトラウマになる


385:まほろば

 あー、384の言いたいことは分かる

 彼らはただのNPCではなく、AI-Onの開発したAIによって感情のある「人間」だもんな


386:ジエンド

 分かる分かる

 プレミアム王国のあの惨状を見てると彼らをNPCとは思えなくなってくる

 つーか、今までゲームキャラとして扱ってた自分を殴りたい


387:Dインパクト

 そういうこと

 俺らがこれから戦争するのはNPCじゃなくて「人間」なんだよ

 そう思うとマジやりづれぇ


388:チキンオブハート

 マテマテマテマテ、相手はどんなに優秀なAIを積んでようとただのデータの塊だよ?

 お前ら何まじになってんのwww


389:シェリー

 >>388 だから387さんは足もとを掬われるって言ってるのだと思いますケド

 彼らもこの世界で「生きて」いるんだよ


390:まほろば

 んー、ちょい例えを出そうか

 俺達が現実世界に戻ったとする。そして突然神様が現れて、この地球も生物も全て神様が作ったんだから壊すのも自由だって言って人間を皆殺しにされたらどう思う?


391:チキンオブハート

 そりゃあ、ふざけんなって思うよ

 神様だからって何でも自由にできると思ってるのが傲慢すぎる


392:まほろば

 >>391 じゃあ「人間」を「NPC」に「神様」を「プレイヤー」に置き換えてみて


393:チキンオブハート

 ・・・・・・すまん、俺が間違ってた


394:シェリー

 この戦争イベントに参加してる元プレ軍の義勇兵はセントラル王国を相当恨んでいるんだろうね


395:Dインパクト

 >>394 言うなよ! ますますやりづれぇじゃん!


396:スクランブルエッグ

 ギルド連合でこの戦争イベントを殲滅ではなく撃退で決着をつけるらしいよ


397:ジエンド

 >>396 え? なになに? どういうこと?


398:スクランブルエッグ

 まだ未確定情報だけど、プレ王国の王族の生き残りが居て何かセント王国に取られた物を取り返しに来たんだって

 それを返してお帰り願おうとしてるみたい


399:まほろば

 それが本当なら元プレ軍を倒さなくていいから助かるのだが


400:Dインパクト

 いやマジでそうであって欲しい


401:ジエンド

 だね、いくらゲームとはいえあんな光景は勘弁してほしいよ



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