テスト
「ではクラス分け試験を開始する。各々ギアのチェックと機動までのシークエンスを見せてもらう。なお機体は学園側が用意した最新鋭の第八世代機となる」
その言葉にざわつく一同。
まぁそうだよな、第七世代ですら円換算で数億じゃ足りない。
そんなもんに触れたことがあるやつは少数だろうけど、実の所世代が進んで何が変わるって性能以外だと初期の立ち上げが楽になる程度だ。
ある意味試験内容としては楽になっていると言っていい。
まぁ俺もゲーム内でシミュレーター触ってすげーなーくらいにしか思ってなかったから実戦経験は皆無なんだけどな。
実物は最初から最後まで第三世代機までしか触れてなかったし。
ちなみにギアというのは機体の総称で、どんなロボットでも人が乗って動かすならギアという区分になる。
広義の意味じゃ重機もギアに含まれるが、基本的には二足歩行のロボットに限定されるな。
「では開始!」
えーと、チェック項目として足回りの確認。
出撃時に重要なスラスターは足裏についているが、それを支える足元と、膝関節と股関節は重要チェックリストの一つだ。
それが終われば次は背面スラスター、一番推力を出せる部位のチェックに移る事になる。
リフトを使いながら一つ一つ確認して、一か所だけ煤がたまっていたので工具で軽く清掃してから腕関節をざっくりと確認してコックピットに乗り込む。
機器を立ち上げて、まずデバイスを通して機体全体のチェック。
目視でもやったけど機械でも確認をして……エラーは無しと。
イエローサインとかも無いから電子上では問題ないんだろう。
それからバランサーやジャイロ、各種スラスターの方向調整などを済ませて……。
「生徒番号3番雨傘幸助、機動シークエンス完了。行動許可願う」
『生徒番号3番確認した。機動を許可する』
通信越しの声に了解と返答をしてギアを立ち上がらせる。
そのまま数歩歩いて、足回りに異常がない事を確認。
モニターとレーダーで周囲を確認して人や他のギアが範囲内に無い事を確認してから腕や腰を動かす。
一応ジャイロやバランサーはオートのままにしてある。
「チェック完了、スラスター以外の各部に異常無し。これより待機に移る」
『了解。生徒番号3番はその場で待機せよ。アウト』
通信が切れたので3D端末をどうにか使いこなそうと悪戦苦闘して数分。
『そこまで、なかなか優秀な上位十名が揃った。続けて上位十名は実戦試験に、残りの者は引き続き起動試験に挑むべし』
新たに入った通信からはそんな声が聞こえ、モニターには生徒番号と名前が表示される。
俺の名前が一番上にあるのは……まぁいいか。
この程度なら難なくこなせるしな。
なんなら旧式の起動の方が面倒だ。
『まずは第一試合、生徒番号14番クリス・L・メイラードと生徒番号3番雨傘幸助による試合を行う。判定はこちらでするが降参するしないは自由だ』
「こちら生徒番号3番、問題ない」
『生徒番号14番問題ありません』
おぉ、鈴のような音色とはこの事か。
凛と響くような声色だ。
だが俺の妹ほどではないな!
シスコンと笑いたくば笑え!
一度は失った妹と再会できたのならば俺はどんな世界であろうと全力で妹馬鹿になろう!
『では双方位置につけ』
通信に従うが、試合ができそうな広さではない。
これは……なるほど、そういうことか。
『機体の状態を反映させたシミュレーターによる戦闘を行う。衝撃はそのままコックピットに伝わるから怪我には注意するように。準備ができたら双方モニターに表示されたスタートの文字に触れるように』
なるほどねぇ……。
「こちら生徒番号3番、少し準備をしたいがいいか」
『構わないが何をするつもりだ』
「オートが邪魔だ。それらを解除してからもう一度チェックを走らせたい」
『……いいだろう。だが後で元に戻してもらうぞ』
「もちろんだ」
いぶかしげな声だったけど、第八世代ともなるとオートジャイロもバランサーも超高性能である。
それゆえに無茶な挙動をするとなれば、物凄く邪魔なのだ。
旧式ばかり乗ってきた身としては切実な問題である。
「キャリブレーションを取りつつゼロモーメントポイント再設定……制御モジュール直結させつつリンケージネットワークの再構築。運動野パラメーターを更新、制御再起動伝達関数コリオリ偏差修正運動ルーチン接続システムオンラインっと」
オートで担っていた部分の一部を残しつつ、マニュアルにするべき部分だけを切り取って稼働させる。
うむ、やはり第一世代よりもオート性能がいい分やる事が多いな。
第一世代ならオールカットでワンクリックなんだが……。
いっそオート系全部取り外せれば楽なんだが、第八世代になってくるとこの辺下手に外した方が面倒な事になるんだよな。
だからある程度マニュアル操作にしておいた方が無難なんだ。
「よし、じゃあスタート!」
『レディを待たせるのはどうかと思うわよ?』
おっと、いきなりの煽りか。
勝負事には慣れてるって感じだな。
「待たせても問題ない相手だったからな。とはいえ実戦じゃ遅れて出撃というわけにもいかんだろうし、この辺減点されていそうだけど」
『……失礼ね。それに随分自信があるみたいだけど?』
「自信はないけど口プロレスで負けたらその時点で失格もんだからな。少なくともお嬢さんに口喧嘩で負けて逃げかえるような性格じゃないのは事実さ」
『言ってくれる!』
おぉ、切りかかってきた。
さすがの加速力だけど、こっちも同等のシステムを積んでいるから回避は容易い。
特にバランサーなんかを切ってる以上地面を転がっての回避という普通は取れない方法だってできる。
ジャイロとかその辺オンにしてたら転ばないようにと勝手に修正されて、ってな具合になるからな。
『泥臭いわね!』
「そういうもんだ」
地面を抉るように振られたサーベルをバク転で回避して太ももにジョイントされたナイフを手に取る。
装備チェックしてなかったけど外から見た限りナイフはそのままだったしいいかなって。
『私に近接戦を挑むつもり?』
「だとしたら」
『笑止! 私のミドルネームLはリッパー! 何人たりとも私には近寄れない!』
「じゃあSはスナイパーか?」
『スラッシャーよ?』
「どっちみち切るんじゃねえか……でも、そのミドルネームは返上した方がいいかもな」
『なにをっ!』
背部スラスターを最大出力で吹かして直線で接近。
『血迷ったのかしら!』
「いんや?」
振り下ろされるサーベルに対して急ブレーキに加え、足裏のスラスターを使いステップを踏んで回避。
そのまま横なぎの一閃を半歩下がって回避しながらナイフを投げつける。
『えっ!?』
「振り抜き際が一番隙ができるからな。そういう意味じゃこいつが一番隙の無い武器だ」
カメラのどこかが死んだのだろう。
コックピットに当たらなかったのは技量か運か……といいたいけど普通に俺が下手なだけだな。
そのまま接近してナイフを掴み、コックピットまで切り裂いた。
『そこまで、生徒番号3番の勝利!』
通信の声に一つため息をついて、ナイフをジョイントに戻してから視線をそらさずゆっくりと下がった。
……うん、起き上がる気配はないな。
じゃあ戦闘終了のボタンを押して、後は結果を待つばかりか。
あんまりいい点数じゃなさそうだな。




