表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【2025/09/30翻訳書籍化】こちら、あやかし移住転職サービスですー福岡天神四〇〇年・お狐社長と私の恋  作者: まえばる蒔乃@受賞感謝
第五章・柳川、そして立花山。淋しい狐と私の顛末。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

55/61

10.縛られていたい癖に。本当は。

徐福さん視点です


「ふー、吃了一惊びっくりした


 徐福がゆったりと一人掛けの椅子に背中を預けると、空間から溶け出すように襦裙を纏った女官たちが現れる。彼女たちはそれぞれ徐福の肩を揉み、扇であおぎ、茶の準備を始める。

 徐福はされるがままに寛ぎながら眼鏡を外し、やれやれ、といった様子でそして目頭を揉んで目を閉じた。


「面倒事に巻き込まれるのは嫌いなんだよね。諦めてくれればいいけど、小娘だけならともかく彼がいるのがネ……」


 ーーまあ、考えても詮無いことだ。

 そう思ってまどろみかけた徐福の上に、ぎゅっと重たい物が乗る。


「誰」

「目を開けたらいかが? 方士様」


 目を開けばそこには、髪を長く伸ばした狐の童女が腹の上に座って頬を膨らませていた。仕草は可愛いが、広がった九尾が、童女の可愛げのない霊力を示している。徐福の構築した旅館に容易く侵入してくるなど、並大抵ではない。


 彼女はじっと、金色の双眸で睨みつけてくる。


「私、楓に手を出さないでって、貴方に約束してなかったかしら?」

「さあてね。こっちこそ、そちらの面倒に我を巻き込まないでほしいんだけど」

「……」


 双方じっと見つめ合い、暫し沈黙する。

 お互い実力行使に出ないのは、強い霊力を持つ者同士の暗黙の了解だ。そもそも元人間の二千年の方士と千年の女狐、相性はとんでもなく悪い。悪いからこそ互いに領域を侵さぬよう、無難な関係を築いてきた。

 それをぶち壊すのはーー素人の変な霊力だだもれ女、だ。


「……そもそも」


 徐福は口を開く。


「菊井楓ーー彼女が己の自由意志で、ここで働きたいと言い出したら貴方は否定できないでしょ?」

「楓はそんな事言わないわ」

「そう、()()()()()()()()と願うしかない」

「……」


 僅かに耳を震わせる女狐に、ニィ、と目元だけで徐福は笑う。


「契約切ればよかったじゃない。弟は切ったんでしょ? なぜ弟には、あの娘が前世とは別人と思い知らせた癖に、自分だけは刻まれた絆を後生大事にとっておくの」

「彼女の霊力を見守る必要があるからよ。素人のあの子を、貴方のような人に利用されないようにね」

「愛してるくせに」


 徐福が言葉を発した瞬間、九尾の女狐の双眸が光る。部屋に雷光が轟く。部屋の中にいた徐福の女官たちが、たちどころに煙となって消えていく。


「おお、怖い怖い。でも我、女性にょしょうと狐の面倒事は逃げると決めてるのよね」


 雷光を軽々と袖で交わし、笑みを絶やさず徐福は余裕を見せる。

 女狐は舌打ちし、掲げた手を下ろした。


「……とにかく。楓は渡さないから。絶対」

「だから、それは女狐如きが決められることではないでしょ?」

「……」

「さて、もうこの空間にあの娘を捕らえて暫く経つ。……例の我慢比べに慣れた旦那ならともかく、普通の娘ならそろそろ根をあげる頃じゃ、」


 その瞬間。

 部屋の方に向かって、地鳴りするような駆け足が近づいてきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
画像の説明
【連載開始しました!リメイクのご当地あやかし異類婚姻譚です!】
身に覚えのない溺愛ですが、そこまで愛されたら仕方ない。―福岡天神異類婚姻譚

+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ