番外編 メールのその後
お久しぶりです!
Xに載せたSSです。時系列は1日目の夜。
今年、来年で少しだけ本編を更新しようと思います!
また、『俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?』の書籍化が決定、別作品も更新していますので、ぜひ読んでいただきたいです!
優太からのメッセージが途切れたあと、黒咲茜は自室のベッドに寝転がり、天井を眺めていた。
「はぁ。先輩、かっこいいなぁ」
手のひらに乗っているのスマホの画面には、優太から送られてきた、彼の写真が表示されている。
やはり撮られる人間は撮るのも上手なのか、優太がスタイル良く切り取られていた。
普段見ることができない服装で、そして、おそらく「彼女」にしか見せない表情で。
それについては考えないようにしていた。
「だって、仕方ないし……」
自分と「彼女」……浅川由美を隔てる決定的なものは、きっと時間であると分かっている。
それはどうしても埋まるものではないし、追いつけはしないものの、いずれ手に入るものであるとも言えた。
だからこそ、過度に気にしても意味がないし、精神を摩耗するだけだが――夏の夜の公園、汗ばんだ自分を狙う蚊のようにチラついてしまう。
でも、決して悪いことばかりではなかった。
そもそも、自身が望んでいた優太の写真を手に入れることもできたし、次回のデートの予定も立てられたからだ。
「お互いの服を選ぶなんて、もう付き合ってる2人がすることみたいだな」
どうすれば彼ともっと近づけるのか、思考はいつしかそちらにシフトしていた。
今は膠着状態だが、モデルをやっている元カノ、優太に推されていたメイド。
どちらも自分とは違い、優太から感情を向けてられていた。
後輩に対して向けられている感情なんていうものは、恋人や推しに対するそれに比べると薄いのではないか。
このままでは、戦いから1番に脱落するのは自分ではないか。
危機を脱する方法を早急に考えねばならない。
「でも、だからって2人に追いつく方法は――あっ!?」
電流が走る、という表現が最も適切だろう。
空からヒロインが降ってくるような、唐突で革命的なアイデアが、彼女に降り注いだ。
「そっか、そうすれば……!」
勢いよく立ち上がり、見えもしない頭上の星を指差す。
「待っててください先輩! 私、進化しますっ!」
彼女の勇ましさは、その直後に聞こえた下階からの「早くお風呂入っちゃいなさい」という言葉にかき消された。




