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おるたんらいふ!  作者: 2991+


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ファントムぅ、ショッピング!



 裏庭でお絵描きの体を装って、意識はファントムシャドウで出張中。

 屋敷寄りの位置に『来る者に警戒』の命令を与えたグリューベルを歩哨に立たせる。


 ムクドリ(仮)を目的地周辺まで飛ばして、辺りを偵察。

 この辺はサポートアイズの特訓で習得済だから、何の不安もない。


 人目のないところで、サポートを鳥から人へと形状変化させた。


 しゅたっ!


「ファントム、参上」


 路地裏で小さく呟かせてしまう。

 うむ、相変わらず良い声です。


 視覚・聴覚・発声をシャドウに使っているため、本体は完全にお留守だ。人の寄らない裏庭かつ歩哨バードの厳戒がなければ、とてもじゃないけど怖くて使えない…。


 目立たぬよう、ゆっくりと歩いた。


 喧噪の大通りを外れ、中流地区を抜け、下街区へ向かう。

 アンディラート付きで行くことを許されている上・中街区よりも治安が悪いとされる、旅人やら一時逗留者の増える王都でも外側の地区だ。


 ここら辺には、それこそヴィスダード様のように冒険者活動でもしに来るのでなければ、ふらついている貴族はいない。


 貴族の居住区からは歩いちゃうとメッチャ遠いし、そもそも貴族は外に出るとしても使う門が違う。私にはどんな駄々をこねても行くことが許されないタイプの場所…でした。

 でもファントムさんには関係ない!


 時折細道を覗き、見たことなさげな不思議を売る露店をひやかす。


 …思わず謎の魔道具を衝動買い。

 魔石を嵌めると作動するらしい。

 どこだかの遺跡から出土した氷竜の力が込められたものとか言ってるけど、まぁ、嘘だろう。安いし。でも、付いてる竜のレリーフが何かカッコイイので良し。


 それから、家では「そんなの何に使うのか」と疑問を持たれるため買えない厚手の丈夫な生地やそれを縫うための針や糸、安物の小さなフライパンや鍋や包丁。


 憧れのマイ調理器具だ。

 何でも買えるときに買ってしまおう。


 うわ、工具やら釘も中街区よりお安い。

 別に品質が悪そうには見えないよねぇ。やっぱりショバ代とかそういうののせい?

 今使う予定はないけど大人買いしてしまえ。


 言い訳を考える必要もなく、欲しいものを好きなように見て歩ける自由。


 そうなのよ、こういうことがしたかったのよね。

 ウキウキしながら気ままに、冒険者向けの旅装店を覗く。


 従士隊に所属したときに、おうちでもカンテラや毛布を用意してもらったけど、自分で管理はさせてもらえないのでアイテムボックスには入れられないのだ。


「あら、大荷物。まるで初めて旅をするみたいね」


 ぎっくりーん。


 毛布とテントと雨具とカンテラと、それから魔物除けも…と手にしたところで、店員のお姉さんに見つかってしまった。


「ああ、実は組んでいたパーティが解散してしまってね。半ば追い出されてしまったようなものだから、これから荷物を揃え直さなくてはいけないんだ。しかし、改めて考えてみると、何を持っていたんだったか…相談に乗ってくれるかな」


 それらしい理由を探しながら言ってみると、店員さんはにんまりと笑う。


「お兄さんがお仲間に手を出して修羅場になったんじゃないの? 仮面で隠しているけど、色男の気配がするもの」


 あ、はい、色男です。

 良かった、ファントム仮面だけど、不審者として通報されることはなさそう。


「とんでもない、私は品行方正なんだ。責任の取れないことなどしないさ」


 これ、ある意味ロールプレイだしね。

 中の人は成人前の女の子ですのよ。

 窓ガラス割ったりすると親が責任取ることになるから、品行方正にもしますわ…。


「ふふん、それじゃあ勝手に女の子達が争って、喧嘩別れになったのかしら。ううん、その女の子のことを好きな他の男の人が混ざったりして、三角関係になったんでしょう」


 いや。修羅場じゃないってば。


 だけどファントムさんの色香に勝手に惑って瓦解したというなら正に傾国属性…ありえない話ではないな。

 現実には居もしないパーティの仲間達に、心の中で敬礼…って、いやいや。お兄ちゃんはサークルクラッシャーじゃないのよ。


 ファントムが肩を竦めて見せると、お姉さんは世間話から接客へと戻ってくれた。


「荷物は何もなくなってしまったの?」


「一から揃え直しだね」


「では着火具に水筒…小鍋やカップは?」


「ん…一応入れてくれ。これも」


「小鍋があるのに薬罐も持つの?」


「変かな」


「まあ、そういう人もいるけれど」


 普通はちょっと沸かすだけなら、小鍋で兼用するものなのかしら。でも、ないよりはあったほうがいいよね。


 石鹸もタオルもあったので買っていく。しかし肌触りはよろしくないな。

 空き瓶もいくつか…これにはうちのシャンプーとか詰めてもいいかな、なんて。


 リュックもないのに、みるみるうちに大荷物だ。

 しかしファントムシャドウには筋力不足などないので。


「あなた、優男かと思ったら、案外力があるのねぇ…流石は冒険者か。一応、あとで宿まで運ぶサービスもあるのだけれど」


「大丈夫だ。色々と、ありがとう」


 微笑ませたつもりが、やはりニヤリと笑うファントムさん。


 大荷物を危なげなく片手で担ぎ、店を出た。

 人のいない細道を曲がった瞬間にアイテムボックスへと荷物を放り込み、身軽にする。

 誰かに見咎められないよう、先程とは違う通りまで細道をテクテクと歩いた。


 アイテムボックス内にはキャンプができそうな荷物が揃ったので、いよいよ職人街で大物達を揃えに…。


「冷蔵や冷凍の魔道具はあまり在庫を抱えても仕方がないからなぁ。それに設置場所によって大きさも違うだろう。注文を受けてから作ってるんだ。できたら運び込んで設置までやるぜ。は? 持ち帰るほうがおかしいだろ」


 揃えに…。


「ベッドを持ち帰り、ですか。自分で組み立てることもできないとは言いませんけれど…町中を荷車でも使って運ばれるので?」


 揃…。


「布団を? 今、持ち帰るのですか? い、いえ、そうされたいと仰るのでしたら…そうですか、あ、ええ、その布で包むのですか。はい、ありがとうございました」


 風呂敷なめんな!


 でも通りに出たら通行人の目がぎょっとしていたので、優雅に路地裏に逃げ込んでアイテムボックスにぶち込んだ。


 ちょっとションボリしちゃうけど、ファントムさんに膝を抱えて蹲らせるわけにはいかない。

 ニヤリと笑って再出陣。


 それから、いくつか電池…じゃなくて魔石を買って。

 魔石灯も大きいのと小さいのを買っておこう。


 できるときに備えておくのだ。

 アイテムボックス内を照らすために。


 前にアンディラートを入れてしまったときに、暗いと言われたから、明かりを置かねばと思っていたのよね。


 あ、ちなみに私もアイテムボックスに入れるようになりました。


 自分は入ったときと同じ場所にしか出られない仕様みたい。

 アンディラートは離れた場所に取り出せたのにね。


 中は確かに少し薄暗くて、通路と部屋になっていた。壁は見えないのに感覚として『ある』とわかる、とても不思議な空間でした。


 それから、この部屋の壁は表示、あの部屋は透過、なんてことも可能だった。細かく設定しようと思えばできるみたいだけど、まだ何ができるのか調べ倒せてはいない。奥が深い。容量無限だけに。


 ただ、縦横何マスとかいう世界ではないし、基本的には延々と部屋が増やせる倉庫の模様。ソート機能もないのは確定。


 アイテムボックス内でも「何々が入った部屋に」と移動できるので、中に入った後でも取り出したいものを探して走り回らなくて済むのは助かる。


 緊急避難所としては使えると思うので、一部屋くらい室内環境を整えようと、ベッドとかを用意したかったんだけど。無念。


 あとは、そうねぇ…武器屋さんと防具屋さんと服屋さんかな。

 私とファントムさんの装備を一応整えておきたい。


 ファントムさんの冒険者登録もしてみたいけど、何でもかんでも一日でというのは無理だろうし…顔を隠して登録できるのかとか、情報も足りてないのよね。


 偽名で身分偽ってもオッケーなのだけはわかってるのだ。

 冒険者リィのお陰でな。




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