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おるたんらいふ!  作者: 2991+


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燃え尽き…ないっ!



気になる「婿舅、ドキッ☆男同士の話し合い」はとても長引き、うっかり寝ちゃって気付いたら朝…もはやどちらもいなかったという。カタスカシンシア。

え…太陽が眩しいぞ…今何時だい。

明らかなこの大寝坊、そして使用人が起こしてくれないという現実。


確かに起こしてとは頼んでないし、今日も何の予定もない。だが、幼き頃は寝坊なんてそうそう許されなかったので、少し新鮮です。

使用人達は、お父様から「娘は帰ってきたばかりなので、しばらくのんびりと自由にさせてやるように」と言われているので、仕方ないのだろう。目の前で聞いたので確か。過保護なお父様、大好き。

でも使用人達にはいつまでも朝ごはん片付かないでしょが!って思われてるかもな。オカン風。


モソモソ身支度をして食堂へ向かう。

高位貴族だけど、エーゼレット家には着替えを使用人に手伝わせる習慣はあまりない。

お父様の着替えはお母様が手伝っていたし、お母様の着替えはお父様が手伝っていたのだ。そう、それは永遠の新婚、ただの朝からイチャラブカッポー。

お母様は服の構造上か使用人に手伝われることは間々あったけど、お父様はイチャコラタイムでないのならばさっさと1人で着替える派だった。暗器仕込んでるからなのか、使用人に手伝われたくないっぽい。

娘もある程度動けるようになったら「1人で出来るもん」を発動したよ。

親がこうなので、この件での私の変人度は低いであろう。


1人での朝御飯は、栄養補給でしかない。

楽しむとか美味しさとか、あんまり感じずに無心で胃に押し込むのだ。

なんて、嘘ついた。

パン美味しいよ、やっぱり。楽しんじゃう。

貴族って専属の料理人が雇われているだけのことはあるよね。

このパンを冷凍してアイテムボックスに入れたいなぁ。


…が欲しがると、なぜ食事外のパンが必要なのかと聞かれるだろう。

非常食を貯めときたいだなんて答えられないので、料理人への発注は不可能なのである。

パンを自分で作れない以上は、お店で買うしかないのよね。

王都の美味しいパン屋さん、昔聞いたことがあるような気がする。行ってみるかな。


旅の間に買ってた庶民パン、特に旅食ともなると日持ちを考慮してるから、固くてパサってることが多かった。その中で如何に美味しいパンが探せるか…食卓を守る者に求められるのは目利きである。


そんな私とは裏腹に、アンディラートもリスターも一番安いパン買ってたな。

私が出しゃばることも多かったが、食事当番は交代制だったから…固いパンも黙って笑顔で食べたさ。幸い、顎も丈夫だし。

経済観念のいい人材です。良いことなのだよ。良いことなのだが、男子は所詮、質より量なのか…。


静かな食堂に、私がカトラリーを使う音だけが響く。

お父様のお見送りしたかったなぁ。

昨夜も寝ちゃってたから、アンディラートにバイバイすらしていないし。

あの子、何時に帰ったのかな。夜中の1時までは私も耐えて起きてたから覚えてる。


2人から何か言伝てないですか?

あ、ないの。そうですか…。


トボトボとお部屋に戻る。

今日は何をしようかなぁ。

リスターは客寄せがなくなって暇になるのかかと思いきや、銀の杖商会に降り注いだ宰相ボーナスにより奥様営業部がてんてこ舞いになったので、護衛業務のほうが忙しい様子。

そこに「遊んでおくれー」などと押し掛けるわけにはいかない。

薄給冒険者の大事な稼ぎ時…今ッ。


暇なのは私だけである。

そうだったね、昔からそうだったわ。


令嬢業務というのは社交だ。

だからそれを華麗に避けては暇になっていた私は、絵を描いたり色々作ったりしていたんだね。余暇の充実だね。

…ただボーッと過ごすには、1日は長すぎる。昔やっていた能力開発訓練なんてもう今更だし、お屋敷の家事は使用人がやるものだから、社交しない令嬢はまさにニート。


うーん、旅に出てからの毎日は、充実していたのだなぁ。

社交ねぇ。…お茶会しようにも、招く人がおらぬよな。

いや、しないよ。まだ服がないし、知らない令嬢なんか怖いしね。令嬢に限らず、知らない人を家に招きたいなんて思わないわ。

会わなきゃいけないなら、人目の多い外がいいじゃないの。

だって、もしその人の正体が実は殺人鬼だったらどうするのよ。ないとは断言できない。予知夢様、手強くない敵はわりとスルーなので。退っ引きならない奴にしか反応しない。


それは置いとくとしても、誰かをエーゼレット家で招待すれば、それはそのまま「宰相さんちでの出来事」になる。

下準備もせず気楽に開催は無理ですね。

やるなら気合い入れてかないと…それはむしろ失敗できないイベントだよ。

うん、やっぱり必要ないのでやりませんね。


私の帰宅をどこから聞き付けるものか、逆に私宛の招待状は細々と届く。

でも、知らない人からの招待ってのもどうなの。私が知らないんだから、相手だって私のことなんか知らないよね。

オルタンシアのことは全然知らないけれど、宰相さんちのお嬢さんなんで、変な人は来ないだろうってこと?

楽観的だな。来ちゃうよ、変人令嬢がヲホホと高笑いしながら。

…服がなくて命拾いしたな!


そんな捨て台詞で招待状達を眺め…うぅ、5分も経ってない。

アンディラートなんて、ちょっと見てるだけであっという間に1日経ってしまうのに。

…暇…。

お絵描き、するかぁ…?

腰を据えて取りかかるのは久し振りだから、うん、いいかもね?


お手元にあるのはスケッチブックだけだが、帰宅後まだチェックしていなかった秘密の小部屋をオープンしてみる。

久々に大物を描いてみよう。こっちにはイーゼルスタンドなんかも押し込んだはず。

あ、絵の具が固まってる。溶かせなくはないが、すぐには使えないな。

手持ちはあるけど、良く使う色は良く使うので、やっぱり心許ない。

…こっちも買い物からのスタートなのか。


溜め息をついて小部屋を見回した。

表に置けない荷物をガンガン入れ込んだので、もっとゴチャついてたイメージがあるのだが…もしかしてお父様に片されている?

お忙しいお父様が自ら掃除するかしら。

でも、ここに使用人を入れようとなんてするかしら。


あら、一番のカサバリストである大物の絵達が、結構減っているような…あっ、お母様の絵がいない!

もしかしてお父様、貰ってくれたのかしら。貰ってくれてたらいいなぁ。あの絵は結構自信作なのだ。

ちょっとテンションが上向きになった。


ふぅむ。残ってる絵は、特に気に入っているわけでもないのばかり。

自画自讃まさにしてたものが軒並み小部屋からいなくなっているので、どこかに飾られているのかもしれないね。

さすがお父様、お目が高い。

別に売り払っていても構わないけど、お金に困ってないのにそうするとも思えないしね。まぁ、どっかにあるんじゃろ。


んー、もう何かの際の身バレに備えて下手めの絵を残しておく必要もない。

この辺のは剥がしちゃって紙を張り直そうかな。そして新しい絵を描こう。

古いの達は今度お外に出た時にキャンプファイヤーすればいい。

そう、ヴィスダード様を見習って、二足のわらじで生活するのだ。でないと無理じゃんコレ、暇すぎる。

フランさんはギルドを退会するまで有効なのです。そして退会する気は全くないので、永遠の冒険者です。生涯現役。


紙と木枠の隙間にサポートナイフを入れながら、自分の思考に驚く。

すごい、物を捨てられないタイプだという自覚があるのに、今ナチュラルに前の絵を廃棄する思考になれたよ。

とりあえずはアイテムボックスへ入れておいていつか焚き火にするので、結局すぐにちゃんとは捨てられていないんだけれども。


今まではどんな絵でも、それこそ悪戯描きであっても、捨てようなんて思ってなかった。たまりすぎて置き場所に困っては小部屋を作ったり、アイテムボックスが使えるようになってからは、延々と溜め込んでおけばいいとしか思わず。

だけど廃棄して燃料に回そうと思うこと自体、もう進歩じゃない?

汚部屋製造機からの脱却…見えた気がする。


よし、まずはこのポテンシャルのまま片付けをしようか。

今剥がしたのと同様のキャンパスリサイクルのために、捨てられないだけで積み上がっていた絵とスケッチブック、棚に押し込んでいた色の変わってしまっている刺繍なんかもアイテムボックスへ回収した。

ついでに小部屋の埃も回収。お掃除完了!

今度アンディラートを誘って何か依頼を受けたら、お外で処分してこよう。


…使用人に頼めって?

いや…なんか、何となく無理…。

こんなのを悪用される可能性はさすがにないだろうけど、他人に処分を任せるのは何か嫌なので仕方ない。そう、黒歴史は己の手で燃やすものよね。

というか、どうせこれからもいっぱい作るのだし、自分でどうにかしますよ。


さて、板に紙を水張りして、と。

どんな絵を描こうかな。


旅の思ひ出、をテーマにしていこうかしら。

振り返るあの日々、みたいな。

…初っ端死にかけの思い出か…。

あ、マジカルシスター!

お礼に行かなくちゃいけなかったのに、どうしよう。あの勢いのある子供達には会いたくないのだが…それって我が儘ですよね。

手土産持って慰問的に行けばいいか。子供にはどうせ私のことなど見分けつかんし、何ならもう存在を忘れてるだろう。


シュトーレンみたいな日持ちするお菓子がいいのかな、それとも日々の糧として、狩りでもして肉を差し入れた方がいいのかしら…孤児院に詳しい人なんか知り合いにいないな。

次に誰かに会ったときにでも相談してみよう。リスターかアンディラートのどっちか、または両方が共に行くだろうし。

…え…、行くよね?


う、うん、少なくともアンディラートは誘えば行くはず。

私だけ暇だからといっても、予定を合わせて出掛けることくらいはできるさ。

でも、せっかく家に帰ってきたのに、また片道1週間くらいの旅なんて嫌がるかなぁ。

…いや、あれだけ遠征行ってたし、きっと大丈夫…大丈夫よね。

お世話になった人へのお礼参りだ、お父様とてダメとは言わないだろう。

それに、外から見た王都を全力で描こうと思っていたのだったよ。


よしよし、目的が出来たぞ。

2度目の燃え尽き症候群は免れた。


キャンパスを立てて、必要な画材を並べ…あっ、絵の具足りないんだった!

お嬢様は商人を呼びつける方式なんだよなぁ…まずはエーゼレット家御用達の、いつもの商人さんを呼んでもらうか。

来るまでは下書きをしていればいいし、ある色から塗っていればいいのさ!



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― 新着の感想 ―
[一言] 早速ご挨拶に向かうのかと思いきや、まずは絵を描くのですね。 オルタンシア的には断捨離出来るようになったのは成長ですけどお父様的にはどの作品も大事やもですねー。 さてアンディラート宅と孤児院ど…
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