負のばよえ~ん。
オルタンシアのぉ~、3分間クッキン☆
取り戻せ…愛は食卓にある。(死兆星↑)
ハイッ、こちらが解呪薬の材料になりまーす。
ダンジョンにも森にも行き、魔物も魔獣も倒し、植物を採集し…ここらで手に入らないものは銀の杖商会に大いに頼る。
そうして言われたものが揃いました。
全速力で集めたぜ。見たか、私とラッシュさんの本気。(コネ込み)
どうやら呪いというものは、解くと身体に負担がかかるらしい。
でも解かなくてもジワジワ弱っていくんだって。あまりに長期間呪われていた場合は、解いた途端に負荷で死ぬこともあるとか。
呪いって、思っていたより怖いものでした。
解呪薬がないと本当に困るじゃないか。薬師ギルド、もっと頑張って!
呪いが魔力で他者を操ることだというのなら、想像図は糸の付いたマリオネットさんだ。
例えば腕を上げっぱなし固定されていたのなら…長年になるほど自分で動かせないがゆえに筋力も弱っていく…とかそういうことだろうか。いや…変だな。
動かされていた人なら、弱らないんじゃないの。
それじゃ個人差出ちゃう。うーん。
他人の魔力糸が全身雁字搦めに絡まるのが呪いと考えればどうだろう。
見えないけれど、他人の魔力で全身ボンレスハム状態なので意思に反して操られ、逆に自分の魔力はうまく巡らず、血流が悪くなってるみたいなもの…なら。
それなら動きにくいという状態も可能だし、長期に渡ると壊死するとか麻痺が残るってこともありそう。
血流が悪くなって劣化した血管に、解呪した途端に新鮮なのがダバッと流れたらブチりそうということも考えられるような。
他者の魔力でガッツリと固定されていた部分が自身の力で動くようになると思えば…え、呪いを解いたらもしかしてリハビリなんて必要なのかしら。
精神的なほうに呪われていた人ってどうなっちゃうの。
どなたかこの世界の呪いの原理に詳しいかたはいらっしゃいませんかー…って、癒術師か。見かけなくなって久しいという、暫定絶滅種だったね。
とにかく薬を使うにも、患者の体力と魔力が十分でないといけないというので、リスターは温存しています。
暇そうに部屋でゴロゴロしているが、何とか耐えてほしい。
ストレスで弱っちゃいそうで扱いにくいな、野性のリスター。
オタ者の目ヂカラにより材料と作り方は判明した解呪薬。ヤツは実際に作る場面を見学したいわけではないようなので、仮宿で作ることができる。
できたものは、効果があるかどうかを邪気眼で確認してもらってから、リスターに飲んでもらう寸法。
ええ、解呪薬は飲み薬でしたよ。
なんで薬飲んだら呪いが解けるんだよ。呪いは飲んでないのにさ…納得いかない。
アンディラートは手伝いたそうにしていたのだが、遠慮してもらうことに。
遊びに行ってこいよとダンジョンに送り出そうとしたら、すごく渋った。
出掛けついでに甘いお菓子のお土産を依頼したら、素直に出かけた。
どういうことなの。反抗期?
さて、私がロンリー調薬に挑んだのには、深くも何ともないけど訳がある。
失敗してヘコんだりしたら、また天使を心配させるだけだし…なんか最近慰めさせてばっかりなので、ちょっと精神的に彼に頼りすぎなんじゃないかな、という不安感が焦燥な冒険絵師なのです。
何しても受け入れてくれることは疑っていないし、幸せなことだとは思うが。
騎士になる夢を諦めさせてまで側にいてもらって、ダダ甘に浸って喜ぶだけなんて…ちょっと私、クズ過ぎるのじゃないかしら?
前世だって、1人でシャキッと立てていたはずだ。
いや、ナヨッとかもしれないが辛くたって独力では立っていたはず。
そもそも支えてくれる人が皆無でした、から…。
うぅ、真実って人を傷つけるぜ。
アンディラートと共に過ごすのは楽しいが、一方的に寄り掛かる関係は不健全。
甘えるな、オルタンシア。
如何に倒れようとも強靱な腹筋力で起き上がれ。
むしろ散々寄り掛かってきた日々を悔い改め、逆に天使を支えろ。鶴ですら恩を返すのだぞ。
つまりは怨敵滅殺を早急に行い、幼馴染みをお早めに故国に帰し、お父様に彼のコネ就職がどうにかならないか相談したい。
14で騎士入隊が可能な年齢に達しはするが、16や17で入隊する人がいないわけではない。
入隊年齢に上限の規定はないのだ。
ちなみに除隊年齢もない。ジジイの生涯現役は夢ではない。現実としてそこまで頑張る人は…あ、ヴィスダード様が怪しいか。
まぁ、出遅れはしても彼の実力なら、出世コースになめらかインするのは難しいことではないと思うのだ。
忘れられた姫君を、本当に世界に忘れてもらうこと…一生かけても為し遂げる覚悟で出ては来たが、手がかりは見えてきている。
ならばこれ以上、アンディラートの人生を引っかき回す前にケリをつけよう。
家を継がないなんて言ってはいるが、見てきた限り、ヴィスダード様は息子が大好きだ。
若い頃のヤンチャなんて、彼の比ではないはず。おうちに帰りさえすれば、きっとまた嫡子としての扱いに戻してくれるだろう。
…チート持ちの転生者は、ちょっと色々大変になる運命を背負っている。
チート4玉の私に比べれば小なりであろうが、テヴェルも何かしら大変な星のもとに生まれているはずだ。正直、クズなだけで人生大変だとは思いますけども。
同じ世界にそんな人が2名もいれば、大変の要因がブッキングすることもあるだろう。
それが私とテヴェルというだけのこと。
私は忘れられた姫君が存続していることを、知る者をなくしたい。
テヴェルは王道チート物語でもしたいのか、忘れられた姫君を手に入れたい。そこには如月軍師がついている。
この軍師が特に特に厄介だ。
姫を嫁にすれば国が手に入るとテヴェルが言っている時点で、姫さえいればあとはどうにかする手筈が整っていると思っていい。
如月軍師には、かの国に女王の血を引く娘を認めさせる下準備ができている。
滅殺せずとも、私に関わらない喋らないが徹底できれば良かったのかもしれないが…テヴェルには無理だ。
チートの数が多いせいなのだろうか。
敵に如月軍師がついているだけでも、私のほうがどう考えてもすんごい大変なんだけど。
既に仲間が呪いアタックの被害を受けているしな。
如月さんは、か弱きテヴェルに護衛を日々付けても揺るがぬ資金力、商人の馬車にお荷物をねじ込めるコネクションをお持ちだ。
そして他人の思考を読み取り、魔物が使えるものだと世間に信じられていた呪いをサラッとかけて来よる。何なんだ、普通の人っぽくなさすぎるぞ。人外か。もっと隠せ。
こちら陣営の人外の知り合いといえばサトリさんだが、彼は私を助けるために行動しない。残念ながら、そういう関係ではない。ビジネスライク。
テヴェルと如月さんが目下の壁だ。
希望的観測をするならば、彼らを何とかすれば、軍師から芋づる式に目的を達することができるだろう。
…と言っている間に、煮上がりましたのがこちらの解呪薬でーす!
リスター解放! 呪いよ、遠いお空に飛んでいけ! できれば呪詛返し頼む!
むむんと気合いを入れて魔力を込める。
「完成、のはずだけど…」
リトライ用にあと2回作れる量の素材があるのだが…1回ですごい量できるのね。
飲むのは小瓶にひとつでいいはずなのに、中鍋いっぱいできている…というか、さっきはもっと少なかったよね。
煮詰めたら嵩が減るのが普通なのでは。なんで魔力込めたら突然、出来上がりが増えてんだい。込めすぎなのかい。
ばはりんってレベルじゃないぞ…解呪薬の半分以上、3分の2が私の魔力じゃないの。これ、飲んでも平気なの? 正直、有害くない?
もしこれが失敗だったら…無駄にした感がひどい。シチュー4人前くらいの量。
1回分の材料をもっと少量にしちゃ駄目なのだろうか。
でも、これで1回分って言われたからには分量半分で小鍋に少なく作ると、効果に影響するのかな…。
頭を抱える私。
小瓶にひとつ飲ませるっていうから、小瓶は買いました。
予備も含めて、ここに5本の小瓶がございます。
小瓶のサイズ?
そうね、栄養ドリンク…チヨビタより気持ち小さいくらいかしらね。
圧倒的、入れ物不足。
「…いっかぁ。小瓶買うまでサポート小瓶に入れておけば。そんで小瓶の口を合わせて、えいって引っ繰り返せばうまく入るよね。一度小瓶に入れてしまえば、あと何本買ってくればいいのかわかるし」
小瓶なら何でもいいってわけじゃない。
薬用小瓶はサイズが決まっていて、ちゃんと「ここまで入れる」の線もついているのだ。規定量きちんと飲まないと効果に差が出ちゃうものね。
サポートお玉・注ぎ口付きを作成。
そしてサポート小瓶を作成しては中身を入れるチマチマ作業。
サポート小瓶が1匹…チョロチョロ。サポート小瓶が2匹…チョロチョロ。
小さいから零しそうだし…こんなちょっとに漏斗作って使うのも面倒臭いし…シチュー4人前くらいの量を無言で零さぬように黙々と…うぐあぁあぁぁ。
ちょっと精神的にやられた。
ようやく詰め終わったときには、ちょっともうこの瓶の群れを見たくない気分に。
身体強化様の加護がなければ、肩がバッキバキになっていたことだろう。さすがに目はじっと見開き過ぎてドライアイ状態。
えぇい、ゲンナリしたので、こやつらはしばしキッチンに放置だ。アイテムボックスになんて入れてやらん! そこで反省してろ!(勢い)
洗い物も帰ってきてからやります。気分転換が必要!
さて、嵩増しの酷い、この解呪薬…効果はあるのでしょうか。
そんなわけで早速、眼力目当てにオタ者の家に行ってみましょう!
着替えて薄化粧して、令嬢用お忍び外套で街をテクテク。
ピンポン突撃したが…ご不在…だと…?
えっ。勝手に出無精だと思い込んでいたのだけれど、出かけてることとかあるの!
なんてこと…。
できているならすぐに使いたいし、うまくできていなかったら失敗の理由を聞かなきゃ次は作れない。
一応お屋敷の部類なのに使用人とかいないのかしら。執事、執事はドコー。
しかし執事はいなかった。貴族なら有りえぬ対応。やっぱりオタ者は貴族ではない。
…ガッカリ。
せっかく解呪薬(仮)ができたっていうのに、なんだかツイてないなぁ…。
もうじきアンディラートが、甘いお菓子を持って帰ってくるだろう。
それを唯一の慰みに戻ることにしよう。
…自分で追い出したのにね。
この、身勝手な様…こりゃダメだわ、私。クズ改善方法を切に求むよ…。
自分のクズっぷりに更にヘコみながら、トボトボと帰路についた。
ちょっと泣きたい。
うわ、泣き癖と慰められ癖が付いてる…ヘコむ…あぁ、この思考、負の連鎖だな…。




