第8話「森の来訪者と庇護の誓い」
朝のモルテア国。収穫を終えた畑では、オークたちが土を整え、コボルトたちが魔法で土壌を活性化していた。村は日に日に活気を増し、新たな住居区の建設も始まっていた。
そんな中、見張り台から緊急の報告が届く。
「レイ様!森の東側から、複数のエルフが接近しています!」
レイとリゼが急行すると、そこには傷だらけのエルフたちが立っていた。彼らは疲弊し、衣服は泥にまみれ、魔力も乱れていた。
「どうか……助けてください……」
エルフの代表と思しき女性が、膝をついて懇願する。彼女の名はセリア。森の奥にあるエルフの集落から逃れてきたという。
「最近、森の魔力が乱れ始め、動物たちが凶暴化し、ゴブリンの群れが異常なほど攻撃的になったのです。私たちは、もう耐えられませんでした」
レイは迷わず手を差し伸べた。
「ここは、誰も拒まない国だよ。君たちも、モルテアの仲間になってほしい」
リゼは一歩前に出て、冷静に状況を確認する。
「エルフの魔力がここまで乱れるなんて、ただ事じゃないわ。森の奥で何かが起きてる」
セリアは涙を流しながら頭を下げた。
「私たちは、戦う力を失いました。でも、知識ならあります。魔法、薬草、自然の管理……この村に貢献させてください」
レイは微笑みながら頷いた。
「歓迎するよ。君たちの知恵は、僕たちにとって宝物だ」
その後、エルフたちは村の一角に住居を与えられ、農業や水管理の分野で即戦力として活躍し始める。ミューと協力して水質改善を行い、リリィと共に魔法の調整を行う姿は、すでに村の一員だった。
評議会では、リゼが静かに言った。
「この国は、ただの避難所じゃない。種族を超えて共に生きる“秩序”がある。魔族界でも、ここまでの協調は見たことがないわ」
レイは、村の中心にある石碑を見つめながら呟いた。
「僕たちは、誰も拒まない。それが、モルテアの誓いだ」
だがその頃、森の奥では異変がさらに進行していた。
ゴブリンの群れが、かつての知性を失い、獣のように咆哮を上げながら森を荒らしていた。
その背後には、黒いローブを纏った魔族の影が、静かに笑っていた。
「ふふ……モルテア。面白い国だ。ならば、試してみようか。どこまで耐えられるか――」




