第6話「女神召喚スキルと進化の兆し」
モルテア村の朝は、いつも通り穏やかだった。議事録をまとめていたリゼは、ふと窓の外で魔法訓練をしているモンスターたちに目を留めた。
スライムのミューが回復魔法を展開し、ゴブリンのグラが毒霧を操り、コボルトのリリィが複合バフを調整している。オークのバルは、シールド魔法で魔力の衝撃を受け止めていた。
リゼは眉をひそめた。
「……ちょっと待って。何でモンスターが魔法を使えるの?」
レイは、昼食の準備をしながら答えた。
「僕の召喚したモンスターは、魔法が使えるんだよ。最近、進化もしたし」
「進化?魔法?……あんたの召喚魔法、どうなってるのよ」
リゼはレイのギルドカードを手に取り、ステータスを確認する。そして、目を見開いた。
「これは……最上級召喚スキルよ。普通の召喚士が持つようなものじゃない」
「え?僕、そんなすごい魔法使ってるの?」
「“そんなすごい”どころじゃないわ。これは……神話級の召喚魔法。しかも、魔力の流れが特殊すぎる。まるで……神の加護を受けてるみたい」
その時、空が唸った。
「レイ様!空から魔物の群れが接近しています!」
見張り台の報告に、レイとリゼはすぐさま村の広場へ向かう。空には、複数のワイバーンが旋回していた。前回の個体よりも大型で、群れで連携している。
「全員、戦闘配置!村を守るぞ!」
モンスターたちが即座に動く。
- バルが前線に立ち、シールド魔法で突撃を受け止める。
- グラが毒霧と麻痺を組み合わせ、空中のワイバーンの動きを封じる。
- リリィがバフ魔法で全体の魔力と速度を強化。
- ミューが範囲回復を展開し、仲間の体力と魔力を維持する。
レイは後方から召喚魔法を発動。風の精霊「シルフィ」、炎の精霊「イグニス」、そして新たに光の精霊「ルミナ」を呼び出し、三属性の連携攻撃でワイバーンの群れを撃墜していく。
戦いは激しかったが、モンスターたちの連携と進化した魔法が勝利をもたらした。
そして――
【モンスターランクアップ:D → C】
【召喚士ランクアップ:C → B】
レイのギルドカードが光を放ち、ステータスが更新される。
リゼは震える手でカードを見つめた。
「……女神召喚スキル。まさか、そんなものが……」
「女神召喚?」
「ええ。伝説級の召喚魔法。神の加護を受けた者だけが扱える、世界に一人いるかいないかのスキルよ。あなた……本当に何者なの?」
レイは戸惑いながらも、静かに答えた。
「僕はただ、仲間を信じて召喚してるだけだよ」
リゼはしばらく沈黙した後、ぽつりと呟いた。
「……やっぱり、仕える価値はあるわね」
その言葉に、レイは少し照れながら笑った。
こうして、モルテア国は新たな力を得て、次なる局面――魔族界との接触、そして“神の力”を巡る物語へと進んでいく。




