第43話「神前の誓い・揺れる玉座」
モルテア・転移城・謁見の間。
交渉の場にて、王女セリアが条件を提示し終えたその時――
空間が震え、神の声が響いた。
「めんどくせぇなぁ……今呼んじまおうぜ」
リゼが目を見開く。
「セレオス様、まさか……!」
魔方陣が空中に展開され、光が渦を巻く。
その中心から、神の剣を携えたセレオスが姿を現す。
「交渉だの誓約だの、回りくどい。
直接言わせりゃ早ぇだろ」
セリアは息を呑む。
「……神が……本当に……!」
セレオスが手を掲げると、空間が裂けるように開き、王都の広場が映し出された。
その中心にいた王・グラン=イグナリスが、光に包まれて消える。
──瞬間転移──
王は謁見の間に叩きつけられるように現れた。
「な、なにが……!? ここは……!」
目の前に立つのは、神。
「よぉ、王様。
お前がモルテアにちょっかい出した張本人か」
王は狼狽し、膝をつく。
「……神……なのか……?」
セレオスは剣を地に突き立て、静かに言った。
「この城を返してほしいなら、誓え。
二度とモルテアに手を出さないと。
俺に――神に誓え」
王は震える手で胸に手を当て、深く頭を下げる。
「……誓います。
我が国は、モルテアに二度と干渉しません。
神に、誓います」
魔方陣が光を放ち、誓約が刻まれる。
セレオスは頷いた。
「よし。これで、城は返してやる。
だが、誓いを破ったら――次は、俺が裁く」
王は沈黙し、セリアは静かに目を閉じた。
──そして、神の光が収束し、空に静かな風が吹いた。




