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第4話「腐敗の水と特別な召喚」


モルテア村は、まだ建設途中だった。


木材の香りが漂う中、ゴブリンたちは柱を立て、オークたちは畑を耕し、コボルトたちは魔法で作業効率を高めていた。スライムのミューは水場の浄化を続けている。


そんな中、レイが手を口に当てて叫んだ。


「みんな集まって〜!お昼ごはんにするよ〜!」


その声に、作業していたモンスターたちが一斉に顔を上げる。


「やったー!おなかすいたー!」


「レイ様のごはん、今日も召喚ですか?」


「もちろん。今日はちょっと豪華にいくよ」


レイは地面に魔法陣を描き、両手を広げて詠唱を始めた。


「召喚魔法・食の恵み《フィースト・ゲート》!」


光が弾け、魔法陣の中心から湯気を立てた料理が次々と現れる。


ふわふわのパン、香ばしいローストチキン、野菜たっぷりのスープ、果物の盛り合わせ――まるで王都の晩餐のような豪華な昼食だった。


「うわぁぁぁ!すごい!これ、ほんとに召喚したの?」


「レイ様、これは……もはや料理人の域では?」


「いや、魔法の力だよ。素材は魔界の保存庫から引っ張ってきたんだ」


モンスターたちは歓声を上げながら、思い思いに料理を手に取る。


ミューはスープにぷるぷると浸かりながら「おいしい〜」と幸せそうに震え、グラはパンをちぎって毒霧の調合に使えないか真剣に考えていた。バルはチキンを一口食べて「これ、盾より強い」と謎の感想を漏らし、リリィは果物を口いっぱいに頬張って「レイ、天才!」と叫んだ。


レイはその光景を見ながら、静かに笑った。


「……こうして、みんなで食べるだけで、幸せになれるんだな」


辺境の森に、笑い声が響く。


それは、誰にも知られていない、小さな国の昼下がりだった。


そんなある日、村の門に一人のオークが駆け込んできた。泥だらけで息も絶え絶えの様子だった。


「お願いだ……助けてくれ……!」


レイが駆け寄ると、オークは膝をつきながら訴えた。


「隣のオーク村の水場が……急に腐ってしまった。飲み水がなく、病に倒れる者も出ている。どうか、助けてほしい……!」


レイはすぐにミューを呼び、浄化魔法の準備を始めた。


「ミュー、行ける?」


「うん!ミュー、きれいにする!」


レイたちは急ぎオーク村へ向かい、腐敗した水場を目の当たりにする。水は黒く濁り、異臭を放っていた。


「これは……魔物の呪毒かもしれない。ミュー、浄化魔法を最大出力で!」


ミューがぷるぷると震えながら魔法陣を展開し、淡い光が水場を包み込む。数分後、濁った水が澄み渡り、空気まで清らかになった。


「……すごい。こんな魔法、見たことがない……」


オーク村の長老が驚きの表情でレイに近づいた。


「そもそも魔族でもないモンスターが魔法を使うなんて、ありえないんじゃが……」


「え!そうなの?」


「うむ。通常、魔法を扱えるのは魔族か、特別な血統を持つ者だけ。だが、あなた様の召喚したモンスターたちは、明らかに魔法を使いこなしておる……これは、あなた様の召喚魔法が何か特別なものなのではないかと、わしは思うのじゃ」


レイは言葉を失った。自分の召喚魔法が“特別”――そんなこと、考えたこともなかった。


「……僕の魔法が、彼らの可能性を引き出してる?」


「その可能性は高い。あなた様の魔力が、彼らに“進化”を促しているのかもしれん」


その言葉に、レイは静かに頷いた。


「僕は、彼らを信じてる。それが力になってるなら、誇らしいよ」


長老は深く頭を下げた。


「レイ殿、あなたの力と仲間たちの絆に、我々は深く感銘を受けた。どうか、我々をモルテア村の一員として迎えてはいただけないか?」


「もちろん。僕たちは、種族に関係なく共に生きる国を作っている。歓迎するよ」


こうして、隣村のオークたちがモルテア村に合流。農業や防衛の面で大きな戦力となり、村はさらに活気づいた。


その夜、焚き火の前でバルが静かに語った。


「レイ様……オーク族が他種族と共に暮らすなど、かつては考えられなかった。だが今、我々は希望を見ている」


レイは微笑みながら答えた。


「僕たちの国は、誰もが居場所を持てる場所にしたい。その第一歩が、今ここにある」


モルテア村は、確かな絆と共に、国としての形を少しずつ整え始めていた。


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