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第21話「交渉の門・遠隔召喚と国家の声」



南方商業都市エルヴァン――


石畳の広場に、モルテア国の使節団が到着した。リゼ、リリィ、そしてエルフ長老ミルディア。彼らは、国交と通貨協定を求めてこの地に足を踏み入れた。


エルヴァンは交易都市として知られ、魔族や亜人との取引も盛ん。中立を貫く姿勢から、周辺諸国の信頼も厚い。


「歓迎します、モルテア国の使節団。都市長カリス・ヴェルドがお待ちです」


案内役の女性が微笑みながら言う。


リゼは礼を返しながら、周囲を警戒していた。


「表向きは歓迎……でも、視線が鋭い。私たちの“正体”を探ってるわね」


リリィが小声で答える。


「当然よ。魔族と精霊使いが並んで歩いてるんだもの。普通の国なら警戒する」


会談の場は、エルヴァンの議事堂。


都市長カリスは、銀髪の老紳士。穏やかな笑みを浮かべながらも、目は鋭く光っていた。


「モルテア国。噂は聞いています。種族を問わず庇護を与える国。神の力に触れた召喚士が治める地」


ミルディアが一歩前に出る。


「我々は、通貨協定と交易の自由を求めて参りました。王都の貨幣は使えません。エルヴァン銀貨を基軸に、経済を築きたい」


カリスは静かに頷く。


「その意志は理解しました。ですが、国家としての“信用”が必要です。召喚士レイ・アストリアの意志を、直接確認したい」


リゼが目を閉じ、ギルドカードを取り出す。


「なら、彼を呼びます。遠隔召喚で」


魔法陣が展開され、空間が揺れる。


そして――


光の柱が立ち上がり、レイの姿が現れた。


「僕は、モルテア国の召喚士レイ・アストリア。この国を守るために、通貨と交易の自由を求めます」


その声は、議事堂全体に響いた。


カリスは目を細める。


「あなたが、神域踏破者……?」


「僕は、誰かを傷つけるために力を使ったことはない。守るために使っただけです」


「その言葉が、国家の意志であると?」


レイは頷いた。


「はい。僕たちは、争わない。ただ、生きるために国を築いた。その証として、交易の扉を開きたい」


沈黙の後、カリスは立ち上がった。


「ならば、我々も応えましょう。モルテア国との通貨協定を、検討します。まずは、試験的な交易から始めましょう」


使節団は安堵の息をついた。


リゼがレイに微笑む。


「あなたの声が、国を動かしたわ」


レイは静かに答えた。


「僕たちは、もう孤立していない。世界と繋がる準備が、始まったんだ」

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