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第2話「見捨てられた力」



辺境の森の奥深く。レイは、モンスターたちと共に小さなキャンプを築いていた。粗末なテントと焚き火だけの生活だが、王都の冷たい視線より、ずっと温かかった。


「レイ様、朝食の準備ができました」


オークのバルが、木の皿に焼いた魚を乗せて差し出す。見た目は粗野だが、料理の腕は意外と繊細だった。


「ありがとう、バル。……昨日の魔物、よく防いでくれたね」


「はい。シールド魔法を改良して、衝撃吸収を強化しました」


レイは驚いた。王都では“鈍重な盾役”としか見られていなかったバルが、独自に魔法を進化させていたのだ。


「グラ、昨日の毒霧もすごかった。敵の動きが完全に止まってた」


「毒霧に麻痺効果を加えました。状態異常魔法は、組み合わせ次第で戦術の核になります」


ゴブリンのグラは、かつて“汚い魔法しか使えない”と蔑まれていた。だが今、彼の魔法は戦場を支配する力を持っていた。


「リリィのバフも助かったよ。あれがなかったら、僕の詠唱が間に合わなかった」


「ふふん♪ 攻撃力と詠唱速度を同時に上げる複合バフ、成功したの!」


コボルトのリリィは、王都では“うるさいだけのマスコット”扱いだった。だが彼女の魔法は、戦闘の流れを変えるほどの影響力を持っていた。


そして、スライムのミュー。


「レイ、つかれた?ミュー、回復する!」


ミューの回復魔法は、ただのHP回復ではなかった。精神的な疲労まで癒す、癒しの波動を持っていた。


レイは焚き火を見つめながら、静かに呟いた。


「……王都の連中は、君たちの力を何もわかってなかった。見た目だけで、判断していた」


彼は立ち上がり、地面に簡易な地図を描き始める。


「バルの盾で前線を支え、グラの毒霧で敵を分断。リリィのバフで火力を底上げし、ミューの回復で持久戦に持ち込む。……これ、完璧な布陣だ」


モンスターたちが目を輝かせる。


「レイ様、我らはいつでも戦えます!」


「レイ、作戦たてるの、かっこいい!」


レイは微笑んだ。彼らは“雑魚”なんかじゃない。王都のSランクパーティーを支えていたのは、間違いなくこの仲間たちだった。


「……僕たちの力で、この世界を見返してやろう」


その言葉に、モンスターたちは歓声を上げた。


辺境の森に、小さな戦術国家の胎動が始まっていた。

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