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第17話「精霊の壁・国を囲む意志」



モルテア国・評議の間。


レイは広場の地図を前に、静かに言った。


「今回の件で、僕たちの防御がいかに脆かったか、痛感した。結界も、警備も、何もかも足りなかった」


リゼが頷く。


「結界は精霊領域に依存していたから、王都の封魔術に干渉されやすかった。物理的な防壁が必要ね」


すると、エルフ族の長老・ミルディアが一歩前に出る。


「我らの魔力を、あなたに託します。この国を守るためなら、命も惜しくはない」


レイは目を見開いた。


「でも、それは……あなたたちの精霊契約が弱まるかもしれない」


「構いません。あなたが築いたこの国は、私たちの希望です。守る力を、あなたに」


エルフたちが一斉に魔力を解放し、レイのギルドカードへと流し込む。


その瞬間、カードが土色に染まり、魔法陣が地面に展開された。


「来て、土の精霊王《グラン=テラ》!」


地鳴りが響き、大地がうねる。


広場の中心から、巨大な土の精霊が姿を現す。その体は岩と根で構成され、瞳は深い森のように静かだった。


「命令を、召喚主よ」


レイは地図を指しながら言った。


「この国全体を囲む塀を作ってほしい。高さは20メートル、厚さは10メートル。北と南に門を。誰も、簡単には入れないように」


グラン=テラが頷き、両腕を広げる。


「大地よ、我が意志に応えよ」


その言葉と共に、地面が震え始めた。


村の外周に沿って、巨大な土の壁が隆起し始める。岩と根が絡み合い、精霊の加護によって魔力障壁が組み込まれていく。


北門には、精霊の紋章が刻まれた石の扉が出現。南門には、エルフの魔法文字が浮かぶ木製の門が形作られた。


村人たちはその光景を見て、息を呑んだ。


「これが……召喚士の力……!」


「国を守るために、精霊が動いてる……!」


リゼはレイの隣に立ち、静かに言った。


「これで、誰かが来ても簡単には入れない。あなたは、国を守る“壁”になったのね」


レイは頷いた。


「でも、壁はあくまで“準備”だ。次に来るのは、もっと大きな波かもしれない」


その言葉の通り、遠く離れた王都では、密偵がモルテア国へ向かう準備を始めていた。


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