第11話「三つの村と一つの旗」
モルテア国は、静かに、しかし確実に拡大していた。
ワイバーンの襲撃を退けたことで、周辺の種族たちの信頼を得たレイたちは、近隣に点在していた三つの村――オークの村、エルフの村、ゴブリンの村――との交流を深めていた。
それぞれが独自の文化と技術を持ち、長らく孤立していたが、モルテアの理念「誰も拒まない国」に共鳴し、ついに統合を決意する。
「この地に、種族の壁を越えた新しい秩序を築こう」
レイの言葉に、各村の長たちは静かに頷いた。
統合にあたり、リゼが指揮を執ることとなった。
「まずは、各村の代表を正式に“評議員”として任命するわ。種族間の調整、資源の分配、魔力の管理――すべて、ここから始まる」
- オークの村からは、長老バルグが代表に。力と誠実さを兼ね備えた戦士。
- エルフの村からは、魔導士セリアが選ばれる。自然魔法と知識の管理を担う。
- ゴブリンの村からは、技術者ドルガが就任。建築と戦術に長けた実務家。
リゼは彼らを前にして、厳しくも的確な指示を飛ばす。
「種族の誇りは尊重する。でも、ここでは“国”として動く。個の力ではなく、連携こそが未来を拓くのよ」
こうして三つの村はモルテア国に合流し、庇護を求めてやってきた民たちを含め、人口はついに120人を超えていた。
村の規模は急速に拡大し、居住区は三倍に。農地、訓練場、魔力管理塔、そして新たな議事堂が建設される。
レイはその中心で、静かに誓った。
「僕たちは、ただ生き延びるために集まったんじゃない。ここから、世界を変える」
モンスターたち、精霊たち、そして三種族の民が、その言葉に力強く応えた。
辺境の森に生まれた小さな村は、今や“国”としての輪郭を持ち始めていた。
だがその動きは、王都にも魔族界にも、確実に届き始めていた。




