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70 他の誰でもない君を

後書きが長いです。

 病院から退院した後、すぐに告白の準備を進めた。


 小林先輩にも手伝ってもらい、ついに今日、姫奈に自分の思いを伝える。


 告白の場所は今住んでいる地域から少し離れた所にある、一面に色とりどりの花が咲き誇っている大きな公園で、普段は人が集まる所だが、今日は見渡す限り誰もいない。


 初春の夕方に心地よい暖かさに包まれながら、雲一つない空にある黄金色の夕日に照らされている。


 今は治安維持隊から記念に貰った白い制服を身に着けている。


 告白する時にはその制服は似合わないじゃないかと思われるかもしれないが、人生で一度しかないだろう女性への告白に、普通の服で挑むよりもロマンティックなものになるだろうと考えた。


 官帽は全体の白色にゴールドの線が入り、真ん中は赤の太い線が入っていて中央には星を模したエンブレム。


 制服は肩から飾緒(しょくしょ)が垂れ下がっていて、ゴールドのボタンや、左胸には治安維持隊のエンブレム、胸章が付けられている。


 背中にはマントを背負い、しわ一つない白の生地が心地よく風になびいている。


 白手袋もつけて、身だしなみはキッチリしているはずだ。


 結婚式に警察官や自衛官が制服を着ることもある為、その流れでいけばあまりおかしなことではないだろう。


 ただ、ここまでくると逆に引かれる心配も少しはあるし、恥ずかしい気持ちもちょっぴりとあるのだが、これぐらいに思っていると姫奈に伝わればいいと思っている。


 小林先輩には、この公園に姫奈と2人で花を見に行く約束をしてもらい、色々と姫奈と花を見てもらってから最後、姫奈を自分の所まで小林先輩が連れてきてくれて、そこで自分が姫奈に告白することになっている。


 だから、姫奈はここに自分がいることを知らない。もう姫奈の気持ちは分かっているのでサプライズのようにしようと考えたのだ。


 一面の花畑の中で、綺麗な夕日に照らされて告白する。それが自分の考えた告白方法だ。


 夕日に照らされて心地よい風に吹かれながら、1人、思いに浸る。


 今までに色々なことがあった。


 最初の出会いはあまり良くなかったかもしれないが、それでも姫奈との出会いは確実に自分の人生の中で1番大きなものだ。


 姫奈は自分を変えてくれた。


 あまり人と関わってこなかった自分と関わってくれて一緒に笑ってくれた。


 それは自分にとって何よりも大きかった。


 初めての気持ちだった。心が温かくなった。


 それから姫奈は自分の中で大切な人になった。


 自分の中で一番大切で、好きな人。


 まだ、男として足らないところがあるかもしれない。


 でも、他のどの男よりも姫奈を支えてあげて、引っ張っていける自信がある。


 姫奈の事を幸せに出来る自信がある。


 これからも姫奈の事を自分が支えたい。


 自分自身の思いで。


 姫奈と一緒に、互いに協力し合い、生きていきたい。


 姫奈じゃなきゃダメだ。


 それから、今日の主役が目の前に姿を現す。


「……湊斗くん?」

「やぁ、姫奈」


 そこにやってきた姫奈は少し目を見開いて驚く。


 今日は大人らしいファッションで身を包んでおり、上は水色の服に下は白いロングスカートだ。


 夕日に照らされていて、今日も綺麗な彼女が一層輝いている。


「今日も綺麗だね」

「……ありがとう」


 緊張しているのか彼女は控えめに頷く。


 それから彼女は、少し頬を赤く染めながら上目遣いで恥ずかし気に聞いてくる。


「……湊斗くん、どうしたの?」

「姫奈、伝えたいことがあるんだ」


 そう言うと、彼女は瞳の色を変えてより一層顔を赤くして、そのまま自分の事を見つめてくる。


 自分もその瞳を1ミリも外さずにじっと見つめる。


「姫奈」

「はい」

「俺は君の事が好きだ。他の誰よりも、1番に君が」

「……うん」

「ありのままの姫奈が好きだよ。甘えてくる所とか可愛い笑顔も全部」

「うん……」

「だから、これからも一緒にいたい。もっと姫奈の事を幸せにしたい」

「うん……」


 姫奈を目の前にして心臓がドクドクと鼓動を打つのを感じながらも、真剣な眼差しで、(ささ)くように姫奈に伝える。


「俺と付き合ってくれませんか……?」


 そう言いきる。


 すると、姫奈は頷いて、涙を零し始める。


「……私も湊斗くんが好き。一番大好きだよ。だから私、湊斗くんの大切な人になりたい」

「うん……なってほしい」

「だから、よろしくお願いします」


 そう言って、姫奈は微笑んだ。


 自分も笑って、頷く。


 嬉しくて、涙が……


(え……出てる)


 頬を何かがつたる感触。


 自分の顔を手で拭うと、白い手袋は濡れている。


 泣けない自分が泣いている……


 6年間泣けなかった自分が……


 それほどに今、心が動かされている。


(姫奈、君は俺の心をどこまで動かすんだ……)


 それから、ポケットから白い小さな箱を取り出す。


「ホワイトデー、遅れてしまったんだけど」

「……これは」


 その白い箱から取り出したのは、前に買っておいてあった、中央にピンクの宝石が埋め込まれている指輪だ。


「姫奈、手を出して」

「うん……」


 姫奈は涙を夕日に反射させながら、自分の前に左手を出してくる。


 その薬指に指輪をはめる。


「こんなことして貰えるなんて……私、思ってもみなかったよ……」

「喜んでくれているみたいで嬉しいよ」


 そう言ってにっこりと笑うと、姫奈は涙をより一層零し始めて、その涙を自分が手で拭う。


「嬉しいな……」

「俺もだよ……」


 今まで彼女にしてあげたいと思っていたことが現実となって、心がじんわりと熱くなってくる。


(彼女を絶対に幸せにしてみせる)


 手を広げると、姫奈は自分の胸に飛び込んでくる。


「……湊斗くんは私を変えてくれた。とっても。だから私が1番感謝している人。今まで同性ともあまり心から好きになったことがなかったのに、今は湊斗くんだけが心の底から好きだよ」

「嬉しい。姫奈の事を変えてあげられることが出来てとっても」

「うん……。これからも湊斗くんに迷惑掛けちゃうかもだけど、湊斗くんといたい」

「そんなことないよ。でも、何かあった時は遠慮せずに頼って。俺が姫奈のことを支えるよ。俺の方こそ、姫奈に迷惑を掛けてしまうかもしれない」

「そんなことない。湊斗くんに今までに迷惑を掛けられたって思ったこと一度もないよ」

「そっか」


 姫奈が自分の胸で涙を零しながら、いっぱいいっぱいに話す。


 それを自分も涙を流しながら、姫奈を抱きしめている。


 その温かくて、1番大切な体を……


「姫奈、大好きだよ」

「私も……」


 それからも沢山、姫奈と思いを、これからの事を話し合った。


 姫奈と自分は一旦落ち着いた後、彼女は自分から離れてにっこりと笑う。


「湊斗くん、王子様みたいだね」

「そうか?待ってましたよ、プリンセス」


 そう言って、優しく微笑んでから姫奈の前へ白手袋を身につけている手を差し出す。


 姫奈は微笑んで、その手を握ってくれる。


 そのまま彼女の事を自分の前にまた抱き寄せて、彼女の背中に腕を添える。


 姫奈の顔が目の前に来る。


「ほんと、1番かわいい」


 夕日に照らされて、彼女の瞳が、彼女の薄紅色に染まった頬が、綺麗に照らされている。


 そのまま、姫奈と見つめ合う。


「湊斗くん……」

「姫奈、これからも君の事を1番大切にするよ……」

「うん……」

「大好きだよ」

「私も大好き……」


 それから、姫奈の唇に優しく口づけをした。


 太陽は一層、光を強くして、2人を照らす。


 周りの花々は、横にゆらゆらと揺れながら、彼らを祝福している。


 2人だけの秘密。2人だけが知っている、2人だけの物語があった。


 これが、今までに異性を好きになることがなかった少女が1人の少年に一途になった物語だ。

皆様、ここまでお読み頂きましてありがとうございます。

改めまして、海老猫ですヽ(=´▽`=)ノ


くっつきました(≧Д≦)


夕日に照らされ、花に囲まれて、愛を誓った王子と姫を……


ご想像頂けましたでしょうか?


私の執筆能力が足らない部分があったり、途中更新が止まってしまって、もう一度前の話を思い出さなければならないこともあったかと思います。ここまで読んでくださった皆様は、それでも読んでくださって、私は心より感謝しています。


小説は何せ、大切な時間を頂きますからね……


その大切に頂いた時間を、私が取り返すことは出来ませんが、それでもこの物語が皆様の何かに繋がっていれば幸いです。


初の長編連載作品。初のランキング入りも果たせ、沢山の方々にブックマークと評価を頂けました。


それは私の原動力となり、区切りのいいところまで書き続ける事ができました。


本当にありがとうございます。幸せです。

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