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54 お出かけの準備

 そして土曜日になり、姫奈と一緒に出掛ける日になった。


 今日もいつも通りの時間にタイマーの音を聞いて目を覚ます。


 少し体がだるいが、それは昨日の夜、何をどうしようかと姫奈と一緒に出掛けることについて色々と悩んでいて、いつもの時間に布団の中に入ったものの、寝付くのが遅くなってしまったからだ。


 それに加え、楽しみで眠れなかった……というのもあるが。


 それでタイマーの方を向いて「んんぅ」と言いながら体を起こすと、視界に琥珀色の瞳が入ってくる。


「え、あぁ……」


 そこいたのはまだパジャマ姿の姫奈で、突然の出来事に驚いてしまい、そのまま後ろの方に少し倒れて手をつく。

 姫奈は自分にニッコリと微笑んだ後、鳴り続けているタイマーを止めて、再度こちらを向いた。


「おはよう。湊斗くん」

「……おはよう」


 いつものようにニッコリと挨拶をした今日の姫奈は何故か少し顔が赤い。


「また俺の寝顔を見ていたのかよ……」

「そうだよ。今日もいい寝顔してたね」

「……何だよ、それ」


 どう反応をしていいのか分からずに、恥ずかしさを紛らす為に少し彼女の目から視線を外すと、彼女はそれに反抗するように顔を近づけてくる。


(小悪魔め……)


 朝から姫奈に起こされてだるかった体も一瞬でシャキッとなり、いい眠気覚ましにはなったものの心臓には悪かった。


「今日だね。一緒にお出かけするの」

「そうだな」

「私がかっこよくしてあげるからね」

「ありがたい」


 自信満々に言った彼女は、いつものように寝ぼけてないようで、もう起きてからだいぶ時間が経っているようだ。


「いつから起きていたんだ?」

「ほんのちょっと前からだよ~。湊斗くんの寝顔を見ていたのもほんの少しだけだよ?」

「……ほんとか?」

「本当だよ」


 少し笑いながら言った彼女にやや不信感を感じるものの、気にすることはせずにそのままベットから出ることにした。


☆☆☆☆☆☆

 

 朝食を食べ終え、行く予定の時刻までまだ時間があったため、少し休憩してから行く準備をすることにした。

 

 今日の予定はまず、午前中に姫奈に自分の服を選んでもらい、お昼にデザート食べ放題の店に行くといった感じだ。

 それからどうするかはまだ決まっていない。


 今住んでいる地域はある程度栄えているため、スイーツ食べ放題の店も調べれば電車で数駅移動したショッピングモールの中にあった。

 今回選んだ店はスイーツのみならずご飯ものもあるようなので、そこで一緒に昼食も済ませようとなった。


 午前中に先に服を選んでもらうことにしたのは、今、自分が持っている服だけで姫奈と一緒に出掛けるのは姫奈に失礼だと思ったからだ。


 というのも、自分のまともな服はジャージしかない。

 

 今思うと後悔しているが、クリスマスの買い出しの時もジャージを着て、上は何とか上着を着て誤魔化したものの、下はそのままのジャージの状態で、クリスマスには当然似合わない格好で姫奈と歩いていた。


 本当に自分の持っている服のバラエティのなさが悔やまれるし、何より、みっともない格好をした自分と一緒にクリスマスに買い物に行ってくれた姫奈には本当に失礼なことをしてしまったと思う。


 穴があったら入りたいっと思うほどに、恥ずかしさが襲ってきていて今は頭を抱えてしまう……


 しかも、今からも姫奈に服を選んでもらえるまで、ジャージを着て上着でまた誤魔化していかなければいけない。


 今もなお男らしくないし、よりにもよって女の子に服を選んでもらうだなんてみっともなさすぎる自分が悔やまれる。


(本当、頭が上がらない……)


 それから、(みじ)めな気持ちでいつも着ている紺色のジャージに腕を通して、チャックを閉める。

 洗面所に行って鏡の前に立つと、今から女子と出掛けるとは到底思えない自分のふしだらな格好が映しだされる。


 こんな姿で姫奈と出掛けることが伊織や小林先輩にバレたら、批判の声を弾丸のように浴びさせられて確実に殺されてしまうだろう。


(はぁ、)


 首から上は普段から綺麗にしているが、首から下が本当に残念だ。


 そんなことで勝手に自分で重い気分になっていながらリビングに戻ると、その気分が一気に冷めるような出来事が目の前で展開された。


 姫奈も先ほどから出掛ける準備に入っており、部屋に入っていた。その姫奈が部屋から出てきていて、かわいい洋服姿に生まれ変わっていたのだ。


「おぉー」


 姫奈は、腰ぐらいまでの長さのショートなアイボリーのコートに、中はハイネックの白の服を着ていて、下はブラウンのロングスカートで小さなショルダーバッグを持っている。それに加え、クリスマスにプレゼントした白いマフラーも首に身に着けてくれている。


「どう?」

「似合ってるよ。今日もおしゃれで、か、かわいいぞ」

「……ありがとう」


 思った通りに褒めると、姫奈は少し視線を逸らした後に柔らかい笑みを見せた。


 いつも彼女の服装のセンスの良さには魅せられていて、今日の服装もとてもおしゃれでかわいい。普段から彼女の服装は見ているが、今日の彼女の服装が普段よりも心にしみるのは、これから二人で一緒に出掛けるからだろう。


 自分の服装に自信はないが、しょうがないので今はこれ以上は気にせずに、彼女と一緒に過ごすのだから恥ずかしい所を見せてはいけないと自分を奮い立たせる。


「それじゃ、行こうか」

「うん」


 姫奈と一緒に家を出て、玄関のドアにカギを掛けて外へ出る。


 それから、姫奈に手を差し出すと彼女は顔を上げて自分を見つめてくる。


「今から色んな所に行くわけだし、一人の大切な女の子を預かっているから、ちゃんと守れるようにだよ」


 そう言うと彼女は微笑んで、自分の手を握ってくる。


「ちゃんと守っててね」


 そう言って姫奈の手を握り返し、そのまま目的の場所へ向かうことにした。

これでまた一旦、休載します(;ω;) 久しぶりに投稿してみて感じたことなのですが、 私、実は少々スランプになっていて、中々筆が進まずに悩んでいたのですが、皆様から評価やいいねを貰えたり、アクセス解析が増えているのを見たりして元気が貰えて、筆が進むようになりました(>A<)ありがとうございます!

いつ再開するかはまだ未定ですが、なるべく早くに投稿できたらと思っております。

ゴールデンウィーク、私は相変わらず忙しいですが、忙しい方もそうでない方も一緒に頑張りましょう(≧A≦)

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