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 休憩後の三人のコンビネーションはより高まった。


「マーマン……鱗の並びに逆らうよう刺す」



 ブルーマジック【マーマン】を覚えました




「いや、背後から背中一突きだったら鱗も何も関係ないさ」

「あ、はは」


 三叉槍を持った半魚人を蹴って仰向けにし腹部をぐりぐりとショートソードで切り開き蒼い魔石を抉り出すフユの姿を視界から敢えて外すシキは乾いた笑いしか出ない。


「マーマンの魔石は五千ジェニンだから悪くはないさ。ただ矢だと皮膚の粘液に滑って効きが弱いから私とは相性悪い。槍のリーチが長いからシキ君も相性悪いさね」


 さりげなく戦いたそうなシキに牽制するアキ。

 今のシキは【ゴブリン】の約1.2メルの打撃と【マンティス(黒)】の約2メルの斬撃しかないので腕を伸ばせば三メルは届くであろうマーマンとの相性が悪いと言える。


「シキ君のブルーマジック、【メタルイーター】は斬撃に強くなるようだけどどれだけの耐久性か解らない以上はシキ君は接近戦禁止さ」


 先ほどブルーマジック【メタルイーター】を発動させるとシキと仲間二人を包み込むようにメタルイーターが現れた。今のところ【メタルイーター】も【アンブレラバット】も効果が消えていないらしくシキだけにはその半透明の姿は見える状態だ。数時間経つが効果時間は長いようだとシキは更なる検証が必要なことを痛感する。

 その二つは発動させてもそれほど疲れを感じない。【アンブレラバット】はあまり効果があるようには思えないが【メタルイーター】との強化は相殺しない様子である。


「【マーマン】覚えたから試してみるね」

「全部の魔物のマジックを覚えられるのかい?」

「さぁ?」


 【マーマン】発動。


 シキの前に半透明のマーマンが一瞬出現しその口からビューッと水色の液体を曲線を描かないマーライオンの如くアキとフユに浴びせかけた。


「うわ、ごめん! ぎゃっ僕もかいな!」


 シキにしか見えず、フユとアキは首を傾げつつも何かを感じる。


「あ、なんか防御効果着いたさ。【メタルイーター】は物理っぽかったけど今度のは対魔法防御っぽい」

「マーマンだから差し詰め水膜防御、火炎系魔術に強くなったのかも」

「可能性はあるね。ただ当てにしすぎても違った時怖いから注意が必要さ」

「ん」

「しかしホワイトマジシャンかタイムマジシャンのLv.3くらいじゃないとこの手の魔術は使えないから大したものさ」


 シキからすると美少女二人に己の魔術で出した吐瀉物を受け止めさせたようにも見えて罪悪感が凄まじい。勿論魔術的防御膜であるため実際に汚れたり臭いがあったりするわけではない。【メタルイーター】と同様に【マーマン】がどうやって効果を付与したのかその姿すら見えないのでシキが敢えて教えない限りは「この人、本当に有能だなぁ……本人気付いてないけど」と感じるだけである。



 所持スキル

 【解析】


 所持マジック

【ゴブリン】1/6 ※打撃

【ゴブリン(白)】1/6 ※回復(極小)↓回復(小)

【バット(黒)】-/- ※傘

【マンティス(黒)】-/- ※斬撃

【メタルイーター】0/3 ※斬撃・刺突撃回避UP

【マーマン】-/- ※火炎系魔術ダメージ減

【ホーンラット】-/- ※?


**アイテムボックス**

水入り皮袋(五百ml)×90

干し肉(牛肉 百グラム)×91

乾パン(二百グラム)×91

皮袋×9

魔石各種×99 (計:五万ジェニン相当) 

魔石各種×58 (計:三十二万二千ジェニン相当)

空き

空き

空き

空き

==整理整頓=

==ゴミ箱==

************




「東京駅みたい」


 現代日本のダンジョンとも言える駅を何となく思い出すシキは引き続きマーマンを倒す二人を眺めている。シキも魔物の亡骸からの魔石取りを申し出たが二人に「そんなことさせる訳にいかない」と固辞されたのでせいぜい周囲を警戒するくらいしかない。それもフユの気配察知能力で必要ないと言えば必要ないのだが。


「トウキョウエキ?」

「迷宮に入ったことあるのかい?」

「あー、迷宮じゃなく町の中にある建物のこと」


 二人は首を傾げる。どちらも当然そのような地名や建物を聞いたことがない。迷宮ほどの広さがある建造物などそもそも王城や要塞でもなければ存在しないしその程度の名称は彼女たちにとっても一般常識であった。


「シキさん、どこから来た?」


 やんごとなき身分の箱入り息子としか思えないシキに聞いても大丈夫なのかとフユは思っていたがこのタイミングなら不自然ではないと切り出す。


「んー……ちょっと信じて貰えないくらい遠いとこかな」

「記憶喪失の設定は?」


 思わずツッコむフユにハッとした表情になるシキ。見事に引っかかった。


「シキ君……今後は発言に気を付けて記憶喪失で通すべきさ」


 アキが厳しい目つきで弓を通路の奥に向け構える。


「え?」

「シキ君のマジックは特殊だからね。ユニークジョブの人はそれなりに居るけれど、魔物の技を使える人で出身地不明となると、余計なトラブルを招きかねないさ。ましてやアイテムボックスの異常な容量だけでも浚う価値有りさ」

「同意」


 歩く倉庫を手に入れたいのはハンターだけではない。むしろ国が確保に尽力する兵力と言えた。


「よっ」

「お見事。【集中】と【属性付与】?」


 フユはアーチャーがジョブLv.1で覚える【集中】とLv4の【属性付与】と思い確認する。アーチャーのLv.4ともなれば相当な手練れでありフユの目にはアキがその位の腕前に見えた。そして長命種のエルフであるアキの年齢が解らないのでそれなりに年齢と鍛錬を重ねれば有り得ると思った。

 がアキは苦笑いを浮かべ否定する。


「いや、恥ずかしながらLv.3アーチャー兼Lv.3精霊使い。ダブルジョブさ」


 

 ブルーマジック【ゴースト】を覚えました



 シキの目には見えなかったが脳内アナウンスと矢以外の何か、魔石だろう、が落ちて硬い音がしたためアキが魔物を倒したのに気付く。


「おー。ダブルジョブ、格好良い」


 二つもジョブに就けるのかとシキは思わず拍手したのに二人はまた大きなため息をはいた。


「シキ君、褒めてくれるのは嬉しいけどね。ダブルジョブというのはあまり良い事じゃないのさ」

「え、そうなんですか?」


 単純に出来ることが多いのは良いことだと思うシキだがどうやら違うらしいと二人の様子から知る。


「ダブルジョブだと成長が普通の人の倍掛かると言われてるし事実、里の同世代達は皆だいたいがアーチャーかもしくは精霊使いのLv.6か7さ」


 ジョブポイントがそれぞれに振り分けられ、結果として成長速度が半分になるということか、と納得する。

 ダブルジョブの傾向として一番多いのは種族固有ジョブとの組み合わせである。アキの場合はエルフ族固有ジョブである精霊使いとアーチャーの二つのジョブに就いていることとなる。


「私がナツ以外の誰からも相手にされなかったのはその辺りも理由さ。寿命が長い種族なのが救いと言えば救いかもだけど」

「でもアキさんかなり強いですよね」


 自嘲気味のアキにシキはフォローの意味合いも含め言うが苦笑いされただけであった。


「まぁジョブスキルに頼らないで済む状況なら里一番だったと自負してるよ。努力はそれなりにしたから。ただ、ジョブスキルの壁は厚過ぎるさね。ああ、だからナツはともかく私は後々役に立たなくなったらパーティーから外して貰っても構わないさ」


 魔物が強力になればなるほど努力で身につけた技術だけでは立ち向かうのが難しいのだと言外にこぼした。そこに諦観を感じたシキは思わず反発しそうになる。無駄に前向きなブラック企業育ちのシキの精神を逆なでした。


「ボクは」


 が、不意にフユが前を向きながら、奥へと向かって歩き出す姿にシキの激情にストップが掛かる。


四種(クォドルプル)。四倍、努力が必要」


 アキが息を飲む音を横を歩くシキは聞いた。


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