3-1 a さいきんのミステリ
まずは、アリスが城に戻ってきてからの雑多な話から始めよう。
最初にスキル説明。
現在のスキルだが【解析】【経口感染2】【操作2】【飛沫感染】だ。
ここ最近の脱走案件で結構いろいろやったと思ったのだが、ここではレベルは上がらなかった。
レベルアップはしていないため、三つの数字のうちレベルと思われる数字は5のままだ。一番右は相変わらず0のまま。もう一つの数字については後述するが、こちらも16のままかわっていない。
感染者はゴリ*2、ネズ子、ネオアトランティス、クロ、タツ、タツ母、オリヴァ、マハル、スラム民*2、兵士*3、カマキリ。
そしてウェイトレスだ。
ウェイトレスとは、オリヴァが行った例の酒場のウェイトレスのことだ。
アリスのスラムでの宣言から二日後、自分はオリヴァが酒場に行くのについていった。
その日は前回とはちがうウェイトレスがオリヴァを地下の部屋に案内した。
そして、そのウェイトレスがめっちゃタイプだったのだ。
清楚、そしてナイスオッパイ、たまらない。タイプ。絶対いい娘。方向性的にはグラディスが近いが、可愛い系以外に美人系統が含まれている。おっぱいも大きい。純粋に見た目が好みだった。きっと大切に育てられてきた娘に違いない。そういう感じの女の子が好きなのだ。あと、ナイスオッパイ。
彼女がオーダー取りに来た。
彼女は部屋に控えていた一癖ありそうなメンツにおどおどしながら、怯えるような上目遣いでオーダーが無いか訪ねて回っている。イイ!!
声もかわいい。おしとやかが音になって出ているようだ。
「お客様は何になさいますか?」彼女がオリヴァのもとにオーダーを取りに来た。
「果実酒をお願い。」
ここぞとばかりに、全力でオリヴァから自分をまき散らした。
ちょっとくらい悪用したっていいじゃん?どうせもう自分ただの細菌だし?
・・・・・しばらく待つも、感染の知らせは訪れず。そのままオーダーを取った彼女は部屋から出て行ってしまった。
残念。
しかし、あきらめてからしばらくしたころ、いつもの
『感染しますか →スキルを選択してください/N』
の選択肢が現れた。即座に【経口感染】を選択したところ、リストにウェイトレスの文字が現れた。白血球戦にも勝利。
やったぜ!
さて、ウェイトレスはともかく、このレジスタンスの誰かにも取りついておきたいところだった。
今のところアリスの敵か味方かも判らないが、このキナ臭い連中にはひもを付けておきたい。
が、一向に誰にも感染ができない。
ちょっと、おかしい。
今日のオリヴァはアリスの脱走の件でロッシフォールに嫌味を言われイライラだったためか、結構遠くまで飛沫を飛ばしてくれていた。
仕様としてスキルを使用すると体内に存在する細菌を消費する。【飛沫感染】は体外に飛ばす細菌とは別に数千の細菌を消費する。オリヴァに感染してから二週間くらいのため、まだ彼女の中の自分たちの数はまだ1万超えたくらいだ。なので潤沢に飛沫を飛ばすことはできない。
それでも、ここは勝負。上限いっぱいの細菌を飛ばす。
オリバのしゃべった飛沫のついたグラスがいくつか生産され、それをちょいちょいみんな口につけている。
しかし、音沙汰がない。
たしかに少量しか飛ばしていないので、感染チャンスが必ず発生するとは限らないが、自分たちの付着したカップをこれだけの回数口につけて、ポップアップの出現すらないのはおかしい。
何故だ・・・、ん、待てよ。
感染者リストを思い出してみる。
ゴリ*2、ネズ子、ネオアトランティス、タツ、タツ母、クロ、オリヴァ、マハル、スラム民*2、兵士*3、カマキリ、そしてウェイトレス。
全員で16人(匹)。
例の数値だ。
もしかして感染者数に上限があるのか??
よくよく考えてみれば、グラディスやアルトに感染しようとして無理だった時、この数値は1か2か4だった。その時もネオアトランティスやハエドローンなんかで枠がいっぱいだった可能性があったってことか。
しゃあない。レベルがあがれば感染者上限もたぶん32になるだろうから、それまで待つか。
ここ数週間レベルアップしていないので、そろそろレベルも上がるだろう。
ちなみに、感染成功したウェイトレスちゃんだったが、喜び勇んでオフの彼女を覗きに行ったところ、部屋は汚部屋、一人で酒かっ喰らいながら、口ぎたない言葉で誰かの悪口を言って、そのまま着替えるでもなくいびきをかいて寝はじめたので、心にダメージを負ってそっと戻ってきた。今後、彼女に意識を合わせることはないだろう。
そういえば、彼女がオリヴァからオーダー取った時には【感染】できず、しばらく時間がたってから【感染】が起こったのも、【飛沫感染】が選択できず【経口感染】で感染したのも変だとは思っていたが、おそらくこの娘、オーダーからの戻りしなに鼻く(思いやりによる削除)べたんだろう。
タツの母親についてもかるく述べておこう。
アリスの薬のおかげで、タツ母は数日待たずに回復した。
復活したタツの母親の稼ぎのおかげで、タツの食卓はあいかわらずひもじいとは言え、雑草以外にも、多少の炭水化物やタンパク質は出るようになった。
しかし、それは自分にとっては口に入れるのもはばかられるようなモノだった。彼女たちがそれを食べようとするときには、誰か別の感染者へと逃げさせてもらった。
タツの母親の仕事は基本的にはどぶさらいだ。いいものがあったら拾ってくる。タツもこの仕事は良く手伝っている。どぶさらい以外だと、時々回ってくる街のトイレの清掃や生ごみの回収などだ。対価はお金では支払われない。残飯や、場合によっては回収した生ごみそのものが報酬となる。
夜はいわゆるそういう仕事も狙うものの、特に美人でもないし年齢的にも若くはなく、そして何より汚いために、そういったことでお金を得ることはできなかった。彼女もそれは分っているようで、無理して引き込んだりはせず、おとなしく帰るのが常だった。
他のスラムの人間たちも同じような暮らしをしていた。
自分たちの最低限の食べ物を必死でかき集めてきて一日が終わる。それが日常であった。
そして、これがアリスが怠惰と等しいと断じた生き方だった。
アリスがこの状況を知ったらどう思うのだろうか?
やはり、それでもアリスは自分の考えを変えないだろうか?
これでも怠惰にも等しい暮らしと思うのだろうか?




