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2-11 c さいきんの冒険もの

 マハルの話は後にして、まずは、本日、城に帰ってからの話をしなくてはならない。

 今日もオリヴァのお小言を聞き(流し)ながら帰って来たアリスだったが、自分の部屋に帰ってくると思いもかけないサプライズが待っていた。

「おかえりなさいませ!アリス様!!」

 学校から帰って来たアリスを、グラディスが迎えたのだ。

 アリスが目を真ん丸にしてグラディスに飛びつく。「ただいま、グラディス!!」

「はいっ。」飛びついてきたアリスを抱きしめて、グラディスが嬉しそうな声で返事をした。「アリス様、ただいま戻りました。長い間、お暇して申し訳ございません。」

 アリスが、顔をあげてグラディスの顔を見つめてにかっと笑う。

「アリス様のお手紙、とてもうれしかったです。」

「ん。」アリスが照れている顔をみられたくなかったのか、グラディスの胸に再び顔をうずめた。

 なんて書いてあったんだろうか?

「ロッシフォール公に私のことをかけ合ってくれたと聞きました。」

「うん。」アリスが嬉しそうに、少し照れたように笑って顔を上げた。

 かけ合ったっていうか駄々こねてただけだったけどな。

「ただの貧民の出である私なんかを大切にしてくださって、本当に、本当に、感謝しています。」グラディスがアリスを強く抱きしめながら告白する。こみあげてくるものがあったのかだんだんと声が上ずってきた。「それに・・・、それに・・・」

 嗚咽がこみあげてきて言葉が途切れ途切れになったグラディスを、抱きついたままのアリスが心配そうに見上げた。グラディスの目にはいっぱいの涙がたまっていた。ちょっと前までは二人が二度と会えない未来だって存在していたのだ。

 グラディスはこの機会にすべての感謝をアリスにぶつけるつもりらしかった。

「こんなっ・・・、こんな私にも、・・・いつも、いつも、笑顔で話して、くださって・・・。」

 アリスが手を伸ばして、グラディスの頭をなでた。グラディスはアリスの良いお姉さん、そう思っていたが、これではどちらがお姉さんか解らない。

「アリス様と、アリス様と、一緒にいるのが、とても、とっても幸せで・・・」

「うん。私も。」アリスがグラディスの髪をなでながら答えた。

「私が、みんなに虐められたときも、いつも、守ってくれて、、、」グラディスがしゃくりあげながら続ける。

「うん。」

「私が、傷物にされた時も、かたきを討ってくれて、」

「いいの。」アリスがグラディスのセリフを打ち消すように言う。

 傷物!?

 どういうこと??

 本当にそういう意味か?

 もしかしてエルーザへの襲撃って、これが原因か?

 いまさらながらに、グラディスがメイドたちからどんな仕打ちを受けてきたのかと少し戦慄する。アリスがメイドに対してやけにあたりが酷いのにも合点がいった。もし、エルーザとやらがグラディスをそういう目に会わせた黒幕だとというのなら、前歯を折った程度じゃ足りない。

「私が、みんなにいじめられないように、わざと分かるところに、痕を付けてくれているのも知ってます。・・・その度に私は嬉しくて誇らしくて・・・」グラディスの目にたまっていた涙が一つ、こらえきれずに頬を流れた。

 アリスがグラディスに物理的にちょっかい出してたのは、アリスなりの庇護だったのか?

 たしかにメイドたちからの直接的な虐めは回避されてた節はあったけど・・・。もっと他にやり方はなかったのだろうか?

「こんな・・・私を大切にしてくださって、・・・」少しこらえていた嗚咽が再びグラディスののどをつく。

「うん。」

「本当に・・・本当に・・・ありがとうございます。」グラディスは途切れ途切れに思いを紡ぎだした。

「うん。」

「大好きです。アリス様っ。」グラディスがついに泣きだした。「こんな・・・こんな私で良ければ、一生、お供させて下さい。命を賭してお仕えいたします。」

 細菌なので涙は出ないけど、もらい泣き。年取ってくると涙もろくなるって言うけれど、ほんとそうだと実感する。

「私も、グラディスのこと大好き!!」アリスもさっきから『うん』としか言わなかったので感涙してるのかと思いきや、嬉しそうに目を輝かせて満面の笑顔で答えた。うれしい時は素直に笑う子なんだな。「ずっと一緒に居なさい。いなくなったら私のほうから迎えに行くから!」

「はいっ!」再びグラディスがアリスを抱きしめた。

 しばらく、再会の余韻に浸ったのち、涙のおさまったグラディスが思い出したように言った。

「そういえば、私の居ない間の王女殿下の話をうかがいました。」

 アリスが、少しグラディスの声色が下がったのにドキリとして目線をグラディスの方に上げた。

 そうだよ!

 グラディスの居ない間、脱走したり、脱走したり、脱走したりと大変だったんだ!

 グラディスからきっちり叱って欲しい。

 グラディスは眉をつり上げてアリスを睨んだ。


「私のいない間ピーマンとセロリを残しているんですってね?」


 いや、それじゃなくってな。

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