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【完結】異世界転生したのでパンデミックしてみようかと思います。 ~宿主の王女をこの国の王にしようと思います~  作者: ミミ公
12 異世界転生したのでパンデミックしてみようと思います
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12-8a 異世界転生したのでパンデミックしてみようと思います

 【パンデミック】の効果は絶大だった。

 日を跨がずして効果のほどが確信できた。

 リストの数が次々と増えていくのだ。

 150億くらいだった【感染】者数が一日の間で300億は超えた。

 リストの個体数の大半が虫なんで、虫の数の何割か増しが総【感染】数だ。全【感染】個体数の合計が表示されない仕様なのでそうやって知るしかない。これって確実に不具合な気がする。

 東京都の人口くらいで上げ止まりつつあった人間の【感染】者数も2割以上増えた。

 とくに【感染】が途上だったアキアや各公領の地方域での効果が莫大だった。

 おかげで“彼“に押されて【感染】者数の減る一方だったエラスティアの地方でも【感染】者が増え始めた。

 【感染】はやり切ったと思っていた王都ですらも【感染】数は伸びた。

 最初は“彼“に強奪された【感染】個体に再感染しただけではないかとも思ったが、リストに『ローズヒップ』とか出てきたので、そもそも【感染】できていない生物はまだまだ居たようだ。

 ちなみに、肝心の【パンデミック】の効果は以下。


 【パンデミック】 『感染時の限定をすべて解除。』


 たったこれだけ。

 多分、【飛沫感染】の3%制限が取れたのだろう。

 ちなみに、レベルと並んで書かれている【感染】上限も『∞』の表示になった。

 この説明分だけ見ると【空気感染】のレベル上げといたほうが良かったようにも思えるが、そんな単純な話でも無いようだ。

 この時期だと本来減るはずの虫や爬虫類あたりの生物への【感染】が倍近く増加しているからだ。

 【空気感染】とは言ったが、自分は呼吸に紛れることはできない。【空気感染】といえど、まず最初は飛沫に乗って体外に飛び出さなくてはならない。

 つまり、人間のように良く鳴く動物でないと【感染】が進まない。

 にも関わらず、虫や爬虫類での【感染】も激増している。

 どうやら【血液感染】や【接触感染】なんかにも、自分が気づいていないだけで何らかの限定があったらしい。それが【パンデミック】で解除されたのだろう。

 あと、素晴らしくどうでも良い話だが、リスト中にヘラクレスが出たり消えたりしていることに気がついた。

 これたぶん、【感染】しては白血球に駆逐されているを繰り返しているものとみた。

 あいつ、白血球まで強いのかよ。

 リストから消えるってことは全部やられたってことで、【免疫B】を取れてないってことだよな?つまり1勝もしてないってことだ。

 今まで【感染】できなかったのってそういう事なの?


 とにかく、この調子なら“彼“の本体にも届くことができるはずだ。

 “彼“は自分との共存を嫌っている。自分が入って来ても数が少ないうちに駆逐しているはずだ。

 だが、もう、そうはさせない。

 これだけの【感染】力があれば、次から次へと細菌を送り込める。

 そうすれば“彼“はこちらを駆逐することができない。


 ところで、スキルポイントが1ポイント余った。

 この1ポイントは例によって残すことにする。

 だけど、これは今までのような保身と臆病の1ポイントじゃない。

 必要な、覚悟の1ポイントだ。

 “彼“の運命はこの1ポイントにかかっている。




 こちらの【感染】力が爆発的に増えた一方で、王都での“彼“の【感染】は少しだけ鈍化を見せてきた。

 アリスの努力のおかげだ。

 ネズミの駆除が進み、“彼“のメインウェポンであるノミが減ってきたことも大きい。

 “彼“は【飛沫感染】スキルも有しているが、人から人への【感染】はアリスが断固として防いでいた。

 もちろん、アリスの目を盗んでの集会は数多く計画されていたが、自分が可能な限り妨害をしている。

 ちょっと【めまい】でふらつかせれば、大体の集まりは病気への恐怖で中止となった。

 とはいえ、依然、新たな患者は増え続けている。このまま患者が増え続ければ、アキアやミンドートはともかく、王都とエラスティア、ベルマリアやモブートの一部地域は立ち行かなくなるだろう。

 患者たちは一度病気にかかればほとんどの場合治ることができなかった。

 極々軽症の場合や初期段階で自分が介在できた場合は治ることもあった。しかし、抗体ができたわけでもないらしく、そういった人間たちも再び罹患する場合がほとんどだった。なんかの【スキル】の効果なのかもしれない。

 患者たちはすぐ死ぬわけでもない。

 前世のペストがどれほどのものだったか分らないが、“彼“のペストにかかった人間たちは長い間苦しめられた。

 おそらく“彼“が【感染】源である人間たちがすぐ死ぬことを嫌ったからだ。

 黒死病と前世で謳われたその見た目もあいまって、人間たちの精神は蝕まれていた。

 隔離場所が足りなくなり、新たな隔離施設の数が増えた。

 元気な人間たちも厳戒令に辟易していた。

 ファブリカ国全体が停滞していた。

 どんどんと世の中は悪化している。

 だから、アリスが頑張れば頑張るほどに人間たちの憎悪は増していった。

 でも、アリスの頑張りおかげでこの状況で踏みとどまれていることも確かだった。

 その張り詰めた努力の先に出口があるかどうかも分らないにも関わらず、アリスは寝る時間も削り一人でも多く救うために対応に勤しんでいた。

 自分には“彼“をどうにかするための作戦がある。

 だが、アリスにその作戦をアリスに伝えることはできない。

 アリスは独りだった。

 アルトが言っていた。


 『心が枯れていくんだ。』


 アリスの顔は目に見えてやつれ、目の下にはほんのりとくまができてきていた。




 王都の人間に状況が解かるわけもない。解かっても納得することはできないだろう。

 当然、アリスにを打倒してこの状況を打破しようと考える者たちが出てくる。

 彼らはとある酒場の一室で・・・って、例の酒場の地下じゃねえか。

 貴族の反乱の相談とかミスタークィーンたちの会合とか、毎度毎度悪だくみにしか使われとらんな、ここ。

 もう、潰したほうが良いんじゃない?

 ともかく。

 とある例の酒場の一室で、アリスに対する反逆の計画が話し合われていた。

 ここまで組織だっている様子の集会は初めてだ。

 3人ほど【めまい】させたが、それでも集まりを決行したのも初めてだ。

 そんなわけで、ちょっとどんな感じなのか観察中。

「この状況を招いたのはタイラント・アリスだ。」

「貴族共で利益を独占する気に違いあるまい。」

「我々は自らの力を以て、この国の自由と自治を高慢ちきな貴族共から取り戻さなくてはならん。」

「暴虐王は暴力で私たちの自由を奪い、病気の蔓延を助長している。」

「そうだ、経済と流通が戻り、健全な生活が行われるようになれば病気は減るはずだ。」

「その通りだ。暴虐王の臆病な施策がこの事態を招いているのだ!」

 みんな好き勝手言っている。

「しかしどうするのだ?」

「こちらには、軍が無い。」

「市民たちはアリス王と兵士たちを恐れている。賛同してくれるかどうか・・・。」

「収監所や隔離施設を襲い、囚われている人間たちを助け出すのはどうだろう?」

「患者たちを救い出せば彼らが味方となって数が増えるはずだ。」

「すばらしい!良い作戦だ!」

 それ【感染】大爆発するよ?

「暴虐王アリスを討ち滅ぼそう。」

「その後はどうする?」

「アリス王の愚策を撤廃し元の時世に戻すだけで充分だ。」

「今より悪くなるものか。簡単な話よ。」

 革命した後のビジョンが雑。

 革命なんてそんなもんなのかもしれんが。

「資金繰りが懸念点だな。商人たちの出入りが減ったのが痛い。」

「今や、商売もアリス王の子飼いが独占しているからな。こちらに味方する商人が居ても今は余裕がない。」

「忌々しい。あの女、巧妙に手を打ってやがる。」

 しばし、集団が沈黙する。

「アミール殿下を擁立するのはどうだろう?」ふと、一人の男が提案した。

「それはいい。アミール殿下を擁立すればアミール派の貴族たちが動いてくれるはずだ。」

 お前、さっき貴族から支配権を取り戻すとかなんとか言ってなかったっけ??

「なるほど、上手くやれば、彼らの協力が取り付けられる。」

「素晴らしい。アミール殿下ならアリス王のようにはなるまい。」

 お前たちの言葉には信念がない。嫌なことから脱却することしか頭にない。周りが都合よく動くことしか考えてない。

 みんなを幸せにするためアリスがどれだけの苦労と労力を今まで捧げて来たかも解っていない。

 そもそも、皆を幸せにしたいという思いがない。

 だから、自らの手で自由を取り戻すとか言っていたのに、いとも簡単にアミールを擁立して貴族を頼るなんて言えるのだ。

「ゴールまでのロードマップさえ作ってしまえば、あとは肉付けしていくのみ。」

「私たちの未来は正しい世界だ。いずれみなも分かってくれよう。かならずや我々に協力してくれるはずだ。」

「我々の小さな幸せすら踏みつぶさんとする暴虐王に我々の王たる資格はない。」

 うるさい。

 もうお前ら全員吐け。

 “彼“を保有してる奴が3人いるが、知ったことか。

 二度とこんな下らない話し合いをしようなんて思わないように、地獄のようなトラウマを植え付けてやる。

 ゲロの海で溺れるくらいに【嘔吐】し続ければいい。

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