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【完結】異世界転生したのでパンデミックしてみようかと思います。 ~宿主の王女をこの国の王にしようと思います~  作者: ミミ公
12 異世界転生したのでパンデミックしてみようと思います
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12-1c 異世界転生したのでパンデミックしてみようと思います

 アリスは、場所を変えて対策会議を進めている公爵たちの元へと向かった。

「おう、帰ってきたな。乙女。」扉を開けて入ってきたアリスを見て、ミンドート公が意地悪く笑った。

 アリスはワザとらしくほっぺたを膨らませてプイとそっぽを向いた。

「で、状況はどうなの?」アリスは一つだけ空けられていた椅子に座ると訊ねた。

「正確なことは医師が来てからでしょう。」アキアが答えた。「ただ、パーティー会場で気絶した貴族たちは誰も死んおりませんし、気絶した貴族も半数以上が回復したとの事です。」

 アリスが一瞬ホッとした後、驚きの視線でアキア公を見つめた。

「パーティー会場『で』気絶した人『は』?」

「ええ。」アキア公は頷いた。「城や王都の人々にも同じことが起こったようです。市中では何人か犠牲が出ているようです。」

 アリスが大きく目を見開いた。

「細かい情報は確認中だ。」ジュリアスが言った。

「もしかしたら、まだ情報が届いていないだけで、王都だけの話ではないのかもしれない。」

「ねえ、本当の事を聞かせて?私が原因って可能性はない?」アリスは皆の目を代わる代わる見つめながら訊ねた。

「まだ言ってるのか。」ジュリアスが困ったようにアリスを見た。

「おいおい、大丈夫か?」ミンドート公も心配そうにアリスを見つめる。

「大丈夫。冷静。」アリスはいつもの堂々とした口調で言った。「事実が知りたいの。最も効果的な対策を立てなくちゃいけない。」

 そうでもない。

 アリスは無理をしている。今も不安で一杯なのが伝わってきている。

「医者じゃないからハッキリとしたことは言えんが、その可能性はないだろう。」ミンドート公が言った。

「王都全体で発生しているんだ。アリスのせいであるはずがない。」ジュリアスが言った。

「でも私、王都を出歩いてるわよ。その時にうつしたかもしれない。」

「それを言ったら、私たちやグラディスさんやヘラクレスから病気が出ていても良いはずです。」今度はアミールが言った。「そこに頭を悩ませるのはナンセンスだと思います。」

「解った。」アリスは頷いた。

「これでは風評被害が心配ですね。」モブートが言った。「陛下自身がこんなんですからね。」

「ですな。」アキア公も同意した。

 公爵たちは心配そうにアリスを見つめた。

「なに?」アリスが公爵たちの様子に眉をひそめた。「どういうこと?」

「アリス。」ジュリアスが答えた。「多かれ少なかれ国民たちは今回の病気の発生が君の病気が原因だと噂をするはずだ。」

「民衆とはそういうものなのです。」モブート公が頷いた。

「お前は惑ってはいけない。」ミンドート公が言った。「お前が惑えば誤った事実だとしても真実となりかねない。」

「民草は私たちで何とか致します。陛下は表に立つ必要はありません。」と、アキア公。

「ありがとう。大丈夫。心配には及ばないわ。」アリスは気丈に振る舞って応えた。「私が表に出なくてもやっぱり国民は惑う。」

 しかし、そう言ったアリスの両の拳は机の下で強く握りしめられていた。

「辛い目に合うかもしれんぞ?」

「構わないわ。」それでもアリスは答えた。「覚悟はできている。」




 会議が踊っている間に、自分はそこかしこを調べ回った。

 色々なことが分かった。

 病気の発生はやはり王都だけでは無かった。

 国内各地で大勢の人が倒れていた。

 特にエラスティアから王都周辺に向けての発生が多い。

 パーティー会場でこそ死者は出なかったが、国内では多くの人間が死に至っていた。死者が出ているのは王都からエラスティア方面が多いようで、アキアは平穏無事だった。

 病気が多く発生した場所ではパニックが起こっていた。

 街のあちこちで悲鳴や泣き声が上がっている。

 死んでいるのか気絶しているのか、路上にすら人間が倒れていた。

 警備兵や人の良い通行人が気絶した人間や具合の悪い人間を安全な所へと誘導していた。

 各地の公会堂や教会などの床に敷き詰めるように人間たちが並べられていた。自分のイメージの中だと、野戦病院というのが近い。

 ここでも不思議なことに、【発症】した人間たちの中には自分の【感染】者はほとんど居なかった。

 “彼“によって気絶させられた数少ない【感染】者の中には、逆に“彼“が居なかった。

 気絶から回復した自分の【感染】者たちは極度に疲弊し衰弱していた。体の中もボロボロだ。よく人間の体の中で見かけるような細胞たちもボロボロに痛めつけられていた。

 なにかしらの攻撃があったのは間違いがない。

 しかし、“彼“はどこへ・・・?

 だが、本当の問題はそっちではない。

 問題は自分が【感染】して『いない』患者だ。

 彼らには様々な症状が出ていた。

 血を吐いたり、血斑がでたり、呼吸困難や高熱、症状は無くとも意識が混濁するなど、病状は様々だった。

 あまりにも症状が多岐に渡っているため、医者たちは一つの病気ではなく何かしらの原因でメザートの病気が大量にこちらに流れて来たのではないかと考えているようだった。

 だが、自分は知っている。

 これは“彼“が始めたのだ。

 すべての症状が“彼“の【症状】系のスキルの効果に間違いないだろう。

 これは人間たちを巻き込んだ、自分と“彼“との戦いなのだ。


 その戦いのプレーヤーとして選ばれてしまった以上、自分はこの戦いを勝利で終わらせなくてはならない。

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