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2-6 a さいきんの冒険もの

「学校?外行っていいの!?」アリスはランランと目を輝かせて言った。

「構いませんよ。殿下はもっと常識を学ぶべきかと存じます。」オリヴァのやつ、本人の前で言う言う。

「やったー。」アリスはオリヴァの無礼な物言いを気に留める様子もなく喜んだ。そして訊ねた。「で、学校ってなに?」

 オリヴァはその返しは想定外といった様子で目を閉じ、代わりに情けなく口を開けた。

 アリスよ。それだから常識がないって言われるんだ。

 オリヴァが学校について説明すると、アリスは少し考えた後、子供のように喜んだ。面白そうな場所だと認識したようだ。

「その代わり、王女殿下には王女であるということは伏せて登校していただきます。」

「なんで身分を隠さなくちゃいけないのよ?」予想通りのアリスの返し。

「殿下の身の安全のためでございます。」

 これはオリヴァがロッシフォールの反対を少しでも和らげようと提案したことだ。ロッシフォールはオリヴァのこの提案に対して、しばらく考えてからそれならばと受け入れた。

「ふーん。」アリスのヤル気なさそうな返事。「分かったわ。別にいいわよ。」

 この間みたいに『嘘つかなきゃいけない世の中なんておかしい!』とか騒ぎ出すかと思ったが、そんなことはなかった。

 よく考えたら、アリス、この間脱走したときにさんざんマハルを名乗ってたわ。

「では、明後日に登校いたしまします。よろしいですね?」オリヴァはそのように念を押してから今日の授業を開始した。

 そういや今までのオリヴァの授業は人付き合いにかかわる内容ばかりだったが、それは学校への登校に焦点を合わせたものだったのかもしれない。

 ただし、あまり成果が出ているとは言いがたい。

 学校でのアリス言動が心配ではあるけれど、それ以前にオリヴァから学校行きの提案を受けたアリスが大騒ぎしなかったのでホッとした。

 ところが、オリヴァのこの提案のせいでアリスは学校に行くよりも前にちょっとした一波乱を起こすことになる。

 アリスがおとなしく納得した時ほど要注意なのだ。


 この時は、学校に行く前にアリスがやらかすとは想像もつかなかったので、アリスが学校へ行った後に何が起こるかを必死にシミュレーションしていた。

 クラスメイトとひと悶着あるのはこの際しょうがない。受け入れよう。

 アリスだし、絶対なんか揉める。ここに頭を悩ますのはオリヴァの仕事だ。

 ただ、そのオリヴァが『本当にアリスを学校に通わせたくてアリスの登校を提案したのか』が問題だ。

 アリスを城外に出して、殺害とは言わずとも、レジスタンスと接触させて懐柔を試みようとしている可能性が排除できない。というか結構高い。

 うーん。アリスを外に出すのは不安だ。

 ベルマリア公のことも気になる。サミュエルがやったように何かを起こすかもしれない。第ニ候補であるジュリアスは、アリスさえいなければ次期国王の座が目前なのだ。

 安全のためアリスの身分を隠すとは言ったが、そもそもアリスを狙っていると目されるエラスティア一派やベルマリア一派、レジスタンスの関係者がアリスが城の外に行くことを決定した会議に出そろっていた。これではまったく身分を隠した意味がない。

 だいたい、アリスの傍若無人は王女だから許されているようなもので、身分隠したらただの我儘娘だ。虐められたりしたらどうしよう。いや、アリスがそのまま虐められるような姿が想像ができない。むしろ虐めてきた相手のほうが心配だ。

 脳内シミュレーションが凄惨な方向に向かったので、もう一度、クラスメイトではなくアリスの身の安全について考え始めた。

 ベルマリア一派やエラスティア一派はアリスを暗殺しにかかるだろうか?

 レジスタンスは今のところそのような行動を起こす感じではない。オリヴァ自身も自分が推薦したわけだから、アリスに何かあったらただでは済まないはずだ。今のところレジスタンスに関してはオリヴァの良識を頼りにするしかないだろう。

 ただ、オリヴァはただのおばちゃんだ。何かしらのことが起こった時に問題を止められる行使力になるとは思えない。それこそ逆切れしたアリスが大暴れするのすら止められないだろう。アリスがクラスメイトをしばき倒し始めたら誰が止めるのだろうか。また、誰かの前歯とか折ったりしたら・・・。

 いや、ちがう。クラスメイトじゃなくてアリスの身の安全について考えなきゃいけないんだって。

 とは言え、やれることは一つだ。

 【感染】をして、守ろう。

 人よりも操りやすい動物が良い。できれば人間を恐れないようなの・・・と考えてはみるものの、そんなものはそうは居ない。

 現在感染リストにはオリヴァ、兵士*3、スラムの人*2、少年(タツ(スタン))、少年(タツ(スタン))の母親、クロ、ネズ子、ゴリ*2、ネオアトランティス、それとマハルが並んでいる。

 オリヴァに【感染】した後すぐにマハルにも【感染】成功していたのだが、オリヴァの濃いプライベートのあとでは特に話すようなことが出てこなかったのですっかり忘れていた。

 このリストの中でアリスが学校に行っている間にトラブルに介在できそうなものは、クロ、ネズ子、ゴリ*2くらいだ。全般的に攻撃力が足りない。あとは、感染した兵士のうちの誰かが、アリスの護衛の任に当たる可能性くらいだが、仮に兵士が当たったとしても自分には兵士を操ることはできない。せめて、虫の知らせで、王女の危機を知らせるだけでもできればいいのだが。


 そんなわけで、少しでも何かしらの行使力を得るべく、アリスの初登校までの間に感染拡大を試みてみた。

 【感染】対象は必ずしも選べないが、何かしら【操作】できて戦うことができる動物が良い。

 ネズ子から全力で感染拡大を試みることにする。動物たちは密集しないので、【経口感染】メインで進めることにした。

 そして、ネズ子の糞からハエへ。

 その後ハエを操り、食物連鎖でクモに。

 続いてクモを操ってカマキリまでたどり着いた。

 戦うことができて、攻撃力もあり操りやすい!やったぜ!

 って、カマキリで何ができるちゅーねん!!

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