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10-10 e さいきんの王国革命戦記

 戦場もかなりきな臭くなっていたが、今はオリヴァとエウリュスの動きのほうが危急だ。

 ペケペケたちの動きも少し気にはなるが、反王家軍もペケペケ軍もはすぐに動く気配はない。

 今はオリヴァたちに張り付いて黒幕が出てこないかを見張るほうが重要だ。

 例によって黒幕がその身を現すことは無くても、今回はエウリュスあたりが名前だけでも口走ってくれるかもしれない。

 いざとなればオリヴァはいつでも気絶させられる。エウリュスも・・・エウリュスは【感染】が浅いからすぐには微妙かな?それでもパラメーターを上げ下げしていればそのうち気絶に追いやれるはずだ。

 さらには、大勢のネズミを【操作】してこの一団を襲う事もできる。その場合【管理】を使うことになるので襲う相手についてネズミたちの自主性に委ねる部分が増えてしまう。だが、気絶していない人間だけを襲わせることはたぶん可能だろうとは思う。

 もしも、気絶しているオリヴァとエウリュスも襲ってしまったとしても仕方あるまい。

 必要に迫られれば、王を生かすか、オリヴァたちを生かすか。人の命を選ぶ必要がある。

 もちろん、最悪の場合の話だ。オリヴァもエウリュスも死なせたくはない。

 彼らは誰一人言葉を発することも無く、暗く狭く細い通路を進んだ。

 おそらくこの通路は王家の人間が脱出するときに使う抜け道なのだろう。

 道は50人が進むには狭く、彼らの進行は遅々としていた。

 通路には空気孔と思しき穴がいくつか開いていて、それは城の内部から川へと向かう下水道へと繋がっていた。もちろん人は通ることはできない。だが、ネズミたちなら自由に移動可能だ。

 その通路を伝って、いつでも殴り込めるように、並行した下水道沿いにノロイを筆頭とした1000匹ほどのネズミの軍勢を並走させる。

 だが、今はまだ待機だ。

 エウリュスは搭に来た時に言った。

 『これ以上待てない。』

 これがなんとなく気になる。

 多分、エウリュスが待てなかったのではないと思う。

 時間を浪費する訳にはいかない何か理由があるはずだ。なんらかの作戦に差し支えるか、あるいは誰か待たせている人間がが居るのか。

 それも突き止めておきたい。待たせている人間が居るのならそいつが黒幕である可能性は高い。

 ただ、深追いはしない。

 必要なら動く。いつでも殺る。

 オリヴァたちはエウリュスたちが持っている松明の灯りを頼りに一列になって進んだ。

 ネズミの斥候によって、この先はしばらく一本道なことは判っている。ちなみに、斥候はノロイがかってに放ったものだ。本当にノロイは頭が良い。

 エウリュスたちはゆっくりと狭い通路を進んで行った。

 しばらく、重苦しく、何事も無い暗闇での行軍が続いた。

 そろそろ城の真下のはずだ。

 さすがに、城の中にまで進ませる気はない。

 残念だがエウリュスを操っている人間までは知ることはできなかった。

 みんな構えろ!!

 ネズミたちに【操作】で指示を出す。


 と、

 その時、


 ノロイの放っていた斥候が戻ってきた。

 通路の先から何人かこっちに向かって来ているようだ!

 ネズミたちを突入態勢のまま待機させて、エウリュスに視点を移す。

 エウリュス視点からは通路の先はまだ暗闇だ。

 と、しばらく先にある曲がり角の先からうっすらと光が漏れて来た。

 誰かが近づいて来ている!

 光は徐々に明るくなり、曲がり角かに人だと分かる影がいくつか現れた。

 ハッキリとは見えないが、騎士二人とその後ろに一人。

 顔が見えない。

 ロッシフォールではない気がする。

 だが、見たことある立ち仕草だ。

 誰だっけ?

 通路の先から声がした。


 「遅かったではないか。待ちわびたぞ。」


 この声・・・。

 エウリュスと近衛騎士たちがその場で膝をついた。


 勘弁してくれ!

 何なんだよ!次から次へと!

 こんなの、どうしたらいいんだよ!

 もう訳わかんねえよ!!


 「このようなところまでご足労頂き誠に恐悦至極に存じます。」オリヴァもエウリュスにならって膝をついた。

 嘘だと言ってくれ・・・。

 自分はこの事態をどうやって片付ければいいんだ!?

 「予のわがままに付き合わせてすまぬな。」

 お付きの騎士の松明の光に照らされて、声の主の姿が露わになった。


 声の主はアリスの父、ネルヴァリウス王だった。


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