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9-13 a さいきんの農業改革

 さて、アキアの小さな戦争から一夜があけた。


 まず、戦争の顛末について報告しよう。

 あの後、アリスたちが待機していた場所で処理された盗賊たちは5人だけだった。

 砦から蜘蛛の子を散らすように逃げて行った連中のほとんどは街のほうへと向かい、包囲網で各個殲滅された。

 自分の知る限りでは、包囲を抜けてアキアの首都や隣町側に抜けた野盗は居ない。少なくとも被害は報告されていない。

 アリスたち突入部隊は全員生きて帰ってきた。だが、包囲網の部隊には残念ながら何人か犠牲が出たようだった。

 一方の野盗側は、突入隊が仕留めたのも含めて、この一晩で200人以上が命を散らした。そのうちのおよそ半分が夜襲隊(と狼たち)によるものだった。

 問題はヘラクレスが見張っていた集団だ。

 が、

 これもアリスたちが次の作戦を練っている間に壊滅した。

 逃げ出した大集団は集落から1時間くらい街とは逆に進み、天然の要害と呼ぶに相応しいせり立った崖の上に野宿を始めた。彼らはまとまって夜を明かし、追っ手の兵士が再び襲ってくるのではないかと戦々恐々としながら眠らずに夜を明かした。もしかしたら、ペケペケが助けをよこすかもしれないと期待していたのかもしれない。

 日が昇ると、包囲網と別の方向に散り散りに逃げた野盗たちや、アリスに殴られて気を失っていた野盗がこの大集団に合流し、集団は一時100人を超えた。その中にはアリスにパンチ2発で気絶させられた野盗のボスも居た。

 すぐさま伝令で集団の情報がアリスたちに伝えられた。徹夜の戦いからようやく王都に戻ってきたばかりだった兵士たちの間に緊張が走った。

 アキア候を中心にすぐさまこの集団と会戦をする準備が始められた。

 アキア候は即座に兵士たちに休息を与え、ネイベルにも集団の存在を伝える使者を出した。

 シェリアやスラファが武器や防具、義勇兵の募集など会戦の準備を進めた。例によってこの件についても率先して動こうとしたアリスだったが、脱走した事をシェリアに激ギレされて大人しく休むことになった。

 アリスはベットに腰かけるなり倒れるように眠ってしまい、この日は何かをすることは無かった。

 ダクスでは会戦の可能性を視野に入れて急ピッチで準備を進めていたが、事態はその夜のうちに野盗の集団側で動いた。

 まず、野盗のリーダーがネイベルの襲撃を提案した。

 傭兵たちは人数不足を理由に反対したが、結局は数が多かった野盗たちの意見が採用されてネイベルを襲撃することが決まった。明日夜明け後にネイベル付近まで集団を移動させ、その夜に仕掛けるつもりのようだった。

 彼らは英気を養うため、放棄した砦から回収してきた貴重な酒を飲んで、ゆっくりと休んだ。前日はほとんど眠れていない。彼らは二日ぶりに安穏と眠りにつくことができた。

 だが、その夜。

 傭兵たちが野盗を急襲してすべて殺してしまった。

 野盗たちは連夜の夜襲になすすべもなかった。

 傭兵たちは野盗たちから奪った僅かながらの金品だけを手土産に、この国を去って行った。

 100人近くいた野盗集団の自壊によって、アキアの危機はアリスたちの緊張をよそに、あっけなく霧散した。


 次に、城でのアリス暗殺未遂の犯人たちについて報告しよう。

 ウィンゼル卿に噛まれて兵士たちに見つかった犯人たちは、その後、騎士たちによってちゃんと捕らえられていた。

 王女暗殺未遂の犯人を捕まえた騎士たちは、揃って自分が暗殺犯を捕まえたとアリスに報告し、この中の誰が武勲を上げたのかを決めてくれと願い出た。そして、「あなた達が私より強い騎士であるのなら勲功を与えましょう。」というアリスの提案の元、全員アリスと対戦させられ、容赦なくぶちのめされた。

 ざまぁみい。

 この件の功労者は自分とネオアトランティスとウィンゼルじゃい。

 捕らえられた暗殺犯たちは尋問されたが、例によってペケペケより向こうの人間については知らないようだった。

 彼らの他にも、ダクスで窃盗を働こうとしたり、城に火を点けようとしていた人間が何人か逮捕されていた。これも、名前こそ出てこなかったが、ペケペケの差し金であることは明らかだった。


 最後にひっそりと終わった畑への放火未遂についてだ。

 あの後、馬での白血球戦には勝利した。おかげで【操作】に不安の無くなった馬車は無事次の集落まで進むことが出来た。

 ちょうど、その集落には街道の先の領地から兵士の一団が送られていた。

 ダクスの包囲網を抜けた野盗たちが、ダクスではなくその先へと抜けてくる可能性もあったのだから当然だ。

 乗り手の居ない馬車が夜中に到着したとあって、野盗が来ているのではと兵士たちは色めきだった。

 馬車は野盗にやられたと判断され、兵士たちは慌てて集落の守りを固めた。彼らは村を守る小隊から数人を割いて、一人を領主に伝令を走らせ、二人を馬車を襲った野盗の行方を探るため斥候として走らせた。

 そして、彼らは一つの死体と、ディンゴに首の後ろを噛まれ虫の息で倒れていた男を発見した。

 何が幸いするか解らないもので、おかげで男は助かり、男から放火の計画が露見した。

 ペストリー卿の商人ネットワークを通じて油を購入した連中が割り出された。

 油を購入したのはペケペケではなかった。おそらく、畑に置き去りにした男たちだろう。

 アキア公によって彼らは指名手配された。が、ディンゴに噛まれた男の意識が戻るのに一週間かかったせいで指名手配の公布が遅れたこともあり、彼らの行方を掴むことはできなかった。


 ついでに。

 アリスはシェリアに正座させられた。

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