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8-8 b さいきんのギルド運営

 ジルドレイの仕事は順調に進んだ。

 ブレグがちょいちょい失敗をしているようだが、ジルドレイ側からは進みに影響はないので問題なしとの連絡が来ていた。

 そしてジルドレイの仕事が始まって10日目。

 この日は王都の軍事パレードの日。


 朝。

 塔の一階でグラディスが輝くようなアリスの金髪を黒く染め上げようとしていた。

 「アリス様。どうしても、染際が少し明るくなってしまいます。帽子で隠さないといけませんね。」グラディスはアリスの髪をくしで撫でながら言った。「それに、仕上がりがごわごわになりそうです。何かトリートメントのようなものをつけたほうがよろしいかと思います。」

 「いいのよ、グラディス。明日のこと考えると髪の毛はそんなきれいじゃないほうが良いの。」服に染料がつかないよう上半身裸であぐらをかいたままのアリスが答えた。

 「そうですか・・・。」グラディスは少し残念そうだ。たぶん黒髪アリスを可愛く仕上げたかったんだと思う。

 グラディスがアリスの髪をきれいに整え終え、ところどころ背中についていた染料を拭い取った。

 それが終わるとアリスは立ち上がってグラディスがあらかじめ並べておいた服を手に取って、選定を始めた。並んでいるのは全部グラディスの普段着だ。

 アリスは中からあまり状態が良いとは言えない地味な一着を選ぶとTシャツでも着るかのようにすっぽりと身につけた。

 いつの間にかグラディスの背丈を超えてしまっていたアリスにはその服の丈は短く、そして胸周りは大きかった。

 「・・・・・。」アリスが胸元を見て不服そうな顔をした。

 「少し詰め物をするんですよ。」グラディスは言った。「私もそうしています。」

 たぶんウソだな。

 自分の眼を信じるならグラディスは乳を偽っていない。

 アリスがグラディスのやさしさに従って胸に詰め物をしていると扉がノックされた。

 「どうぞー。」アリスが胸元を豪快にいじりながら返事をした。

 その状況で誰か入れんなよ。アルトとかケネスだったらどうすんだよ。

 幸い入ってきたのはヘラクレスだった。

 「王女。準備できましたか?」

 「ん。」詰め物を終えたアリスは鏡の前でポーズを取って出来具合を確認しながら答えた。「ちょうど、良い感じにできたところよ。」

 いや、仕上がりに無理がある。

 「アリス様、やり過ぎです。」グラディスがちょっとご立腹気味に言うと、アリスに後ろから無理やり抱き着いて、アリスが懐にねじ込みまくった布切れを何枚か抜き出して形を整えた。「はい。OKです。」

 「グラディスは本当に行かないの?」アリスは残念そうに胸元を確かめながら口を尖らせた。

 「はい、私はお留守番していますわ。」

 「そう。じゃあ、お留守番お願いね。お土産買ってくるから。」

 「楽しみにしていますね。」グラディスはにこやかに返事をした。

 「じゃ、行きましょうか。」アリスはヘラクレスにそう言うと、グラディスから帽子を受け取って扉に向かって歩き始めた。

 「あれ?貴族街からのほうが近いのにこっちから出るんですか?」外扉に向かったアリスにヘラクレスが声をかけた。

 「この格好で貴族街歩いていたら変でしょ?」

 アリスそう答えて回った。

 ふんわり感のないグラディスの服のスカートはアリスが優雅に回ってもひらひらとは舞わなかった。

 普段のアリスに比べれば目を引きにくくなったのは間違いないが、美人という意味ではまだまだ目立つことだろう。まあ、王女だとはばれまい。

 そして、アリスはヘラクレスを連れてスラム側の扉からパレードへと向かった。

 塔を警護していた兵士たちは珍しくメイドとヘラクレスが一緒に出て言ったのを目にしたが、たまたま出るタイミングが一緒だったのだろうと気にもとめなかった。

 アリスの警護のせいでパレードに参加できないっていうのに、警護対象のアリスが抜け出してパレード見に行ってるというのもなんかやるせない話だ。

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