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6-5 b さいきんの学園もの3

 夏休みの間、アリスはスラムの少年たちと何度か遊び、アリスは何度かシェリアたちと遊び、アピスも含めて3回ほど長めの勉強会を行った。

 勉強会ではショウが技師として旅立っていったことがみんなに告げられた。みんな寂しく思いながらも彼の将来を願って祝福した。

 夏の勉強会は今までの勉強会とは若干様相を変化させた。

 勉強会は最初のころは学校の復習とちょっとした予習程度だった。

 が、夏休みの前にはクラスの底上げが済んでしまっていたため、予習・・・というか予習の範囲すら逸脱した勉強が行われ始めた。

 そこに来て夏休みなので授業は進まない。

 生徒たちはカリキュラム関係なくガンガンに勉強を進め始めた。

 しかも、夏の間暇だった各自がそれぞれみんなを驚かせようと自習してきたりしたものだから、気づけば勉強会はインテリ集団の集まりとなっていた。

 こうなってくると、アリスが強い。

 一部の生徒がアリスの話についてこれるようになってきたのだ。

 前提条件となる共通の知識がそろってしまえばアリスの話は理解できるようになる。この結果生徒たちの勉強はさらに加速した。

 「確かに、人と人との出会いの確率ですから、人口に対して比例ではなく、二次関数を基軸にするべきですわ。」この間まで、方程式も分からなかった生徒たちが、社会の統計を数学を使って平然と解析するようになっていた。自分はすでに会話についていけてない。

 「最初はそう思ったんだけれどね、一定数居る犯罪者気質の人が高確率で犯罪を起こすっていうモデルで考えると、単純に人口に比例でもいいかなとも思い始めたのよ。もちろん犯罪者が人口に対して圧倒的に少ないという前提ね。」とアリスは答えた。

 こんな感じだ。もう何がなんだか。

 「各都市の人口密度と犯罪数の相関をとってみて、2次の項と1次の項に分けてみるのはどうでしょう。」と、セリーヌ。

 「確かに一般的なトラブルと一般的ではない犯罪が切り分けられるかもしれませんわね。」と、ノーラ。

 「切片はどう扱いましょう?」と、マライア。

 と、この訳の分からないやり取りにみんなついてくる。恐ろしい話だ。

 さすがに全員がこのレベルまで達しているわけではない。アリスの友人面々の中だとこのレベルの話についてこれるのはシェリアくらいだ。

 とはいえ、現在勉強会の中で一番できの悪いと思われるクリスティンですら方程式を教わっている。卒業間近のアピスがこの間までアリスの方程式の解答が理解できていなかったわけだから、方程式は学校のカリキュラムを超越しているはずなのだ。

 それを学ぶことがこの勉強会に出ている貴族たちの最底辺レベルなのだ。

 ちなみに、なぜみんなが方程式を覚えたかというと、アピスがケネスに教わり、みんなに広めたからだ。アピスはアリスの方程式の解答を見たその日のうちにケネスから方程式について教えてもらっていたらしい。

 あと、元一番の劣等生のエドワルドは必死の努力により、今ではクリスティンやキャロルやカルパニアに勉強を教えている。

 成績の序列の変化という意味ではジュリアスがやばい。彼は夏の勉強会に参加していないので、おそらく、アピス派の女子たちやゲオルグよりも勉強ができなくなっているのではなかろうか。あいつ忙しそうだから自習とかしてなさそうだし。

 それくらい勉強会の生徒たちの成長は目覚ましかった。

 娯楽のない時代の子供たちにガチで勉強をさせるとこうなるのか・・・。




 ついでに夏の間の自分の動向についても少し。

 休みの間にはレベルは上がらなかったが、先日言っていたアリス軍候補の動物について決めた。


 鳥だ。


 ショウがスラムを旅立っていくきっかけとなった鳥の置物を見て思いついた。

 鳥ならば見た目も悪くないし、街中でも空から助けに行ける。戦闘力的な不安はあるが、アリス自身が大抵の戦闘は乗り越えそうだから、実際の戦闘で役に立つよりは、偵察や不意打ちの防止のような面で活躍できるほうが良いんじゃないかという判断だ。。

 鳥に【感染】するにはどうしたものか。

 鳥インフルの感染経路ってどんなんだろう?鳥から鳥ってとこからしか知らない。その最初の鳥にインフルはどうやって感染したんだ?

 とりあえず、思いついたのを何パターンか考える。良さそうなルートに余らしているスキルポイントを充てていこう。

 1)虫などからの食物連鎖による経口感染

 2)果物などからの媒介による経口感染

 3)ノミなどを介した血液感染

 4)空気感染。

 まず、1)はまず虫に感染しないといけない。虫への【感染】は【飛沫感染】では無理だ。一つの【感染】方法は糞尿からハエなどへの【経口感染】。ハエドローンの時の流れだ。これは、現状のスキルでも達成可能。もう一つはノミや蚊への【血液感染】。こちらはスキルを取らないと達成できないルートだ。蚊とノミはこの世界にも居るのでスラムの人間から蚊やノミに感染して、その先に食物連鎖で鳥に到達を狙う。イメージ的に蚊やノミから食物連鎖で鳥に向かうルートがあまり見えてこなかったが、3)の狙いもあるので、まずは【血液感染】のスキルを上げた。

 2)も基本は虫に感染するのが良いだろう。ハエを使って鳥の食べそうな果物に細菌の擦り付けをするのだ。こういう経路があるのかは解らないが、こちらもスキルを取らないでも試すことができる。

 3)は蚊やノミに感染して彼らの吸血対象への感染を狙う。あるいは血液として取り込まれてほかの動物へと媒介してもらう。たぶん前世で蚊が最高の媒介者だったのは後者の理屈なんじゃないか思うのだが、これを円滑に回すには、細菌としての耐性を身につけないといけないと思われる。蚊のお腹の中で生きていかないといけないからだ。たぶん【環境適正】か【温度適正】か【耐久】で自分が体内環境以外でも長時間生存できるようにする必要がある。ちょっと悩んだが、【環境適正】を取得した。これなら蚊のお腹の中だけでなく、糞尿からの感染や果物からの感染もやりやすくなるはずだ。

 心の内では、【環境適正】を取ったら【空気感染】を取得できるようになるんじゃないかとも期待していたのだが、残念ながら【空気感染】の文字は薄いまま変わらなかった。まだ取得条件を満たしていないようだ。レベルをもっと上げないといけないのかもしれない。というわけで4)はお預けだ。

 とりあえずスキルポイントは1点余らせておく。


 結果、夏休み中に2羽の鳥に感染をすることに成功した。

 ちなみに感染経路はアリスからの【飛沫感染】だった。

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