5-7 a さいきんの学園もの2
「おはよー。」アリスが教室にやって来た。
「おはようございますの!」アリスがやって来たのでキャロルのテンションが上がる。昨日アピスに『リデルなんて暇つぶしの相手』などと言っていた同じ口とは思えない。
「おはよー」スラファもいつもの様子だ。
シェリアは小さく手を振っただけだった。
「アピス様とのお茶会はどうだった?」アリスが訊ねた。特に他意はない。純粋に天真爛漫に楽しかったか訪ねているのだ。
「え、ええ。」少し後ろめたそうな声でキャロルが返事をした。
シェリア視点で見た昨日のお茶会はアリスへの悪口大会だった。
今までのアピスのアリスへの文句は正当に怒っている感じだったが、今回のお茶会はアピス一派によるアリスへの陰口の嵐だった。「あの子マジムカつかない~?」みたいなノリだ。
アピスの取り巻きたちがここぞとばかりに点数を稼ごうとリデルの悪口を言っている感じだった。
中でも、アニエスとカルパニアが率先して悪口を言っていた。ほとんどの場合、アピス自身も特にそれを諫めるでもなく、むしろ時には燃料を投下するような感じだった。
シェリアとスラファは息を殺して会話に参加しないようにしていたが、話を振られると否定はせず上手く迎合してその場をやり過ごすのだった。
アリスに夢中のはずのキャロルは調子良く彼女たちと一緒に盛り上がっていた。
そんなわけで、さすがのキャロルも心やましく感じたのだろう。ほかの二人も少しうつむき加減だ。
「良かったわね。」アリスは気まずそうな3人の様子には気づく様子もなくそう言うと、続けて質問をした。「ところで、お茶会って何するの?」
知らんのかい!!
いや、自分もここ来てから、お茶会を見たのは昨日が初めてだけどさ。貴族ってそういうの知ってて当然なもんじゃないの?
アリスの突拍子のない質問にシェリア達3人の悔悟は吹っ飛んだ。
「リデルちゃんお茶会やったことないの!?」
「リデル様!?」
「冗談なのよ??」
「えぇ・・・。」三人に驚愕の表情で詰め寄られて声を失うアリス。
「リデル様、誰かのお家のお茶会とかに誘われたこととかございませんの?」
「うーん。ない。」アリスは素直に答えた。「よっぽどのパーティーとかじゃないと行かないし。」
ずっと病気で部屋に引きこもっていたから、誘われたことないのか。
「びっくりなのー。」
「お茶で何かするの?」
「みんなでお茶を飲みながらお話とかするんですのよ?」キャロルが答えた。
「?」アリスは首を傾げた。「お昼休みにみんなで話しているののお茶バージョン??」
「まあ、そうですわね。」
「ふーん。」アリスは渇いた返事をしながら、持ってきた荷物を机にしまい始めた。
お茶会が思ったほど特別なことをしている訳じゃなかったので興味を失ったようだ。
「昨日はアピス様の用意してくださったオレンジペコと、語呂合わせでオレンジのシュゼットをいただきましたのよ。」
「シュゼット!!?」アリスキャロルを振り向いて声を上げた。「お菓子も出るの!?」
シュゼットというのは前の世界でいうところのクレープだ。
「大体の場合そうですわ。」キャロルはアリスが本当にお茶会について知らないようなので苦笑いしながら答えた。
「マジか・・・」アリスがしてやられたというような顔をした。
スラムに行かずにアピスのお茶会に行けばよかったとか後悔してるな?君は呼ばれとらんぞ?
「私達もお茶会やってみる?」スラファが提案した。
「やる!!」アリスがいの一番に賛同する。「今日!!」
「今日ですの!?」キャロルが急展開に思わず声を上げた。
「ダメ?」
「別に宜しいですけど・・・。」と言ってキャロルはスラファとシェリアを見た。
二人は急な提案に少し戸惑った様子だったが、頷いて肯定した。
「やったー。」
「でも、お茶とお菓子はどうしましょう?」
「グラディスに頼んでくる。」アリスはそう言って席を立ちあがると、「グラディスぅー」と甘えるような声を出しながらペンギンのような走り方で教室の外へ出て行った。




