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空冷ヂーゼルと九二式重装甲車

 昭和六(1931)年三月に帰国した俺は、そのまま古巣に戻ることが出来た。

 向こうでも戦車開発と共に新たに高速、まあ、高速といっても、八九式が25km程度しか速度が出せないで、当時の世界の情勢から40km程度出せる車両の開発という話が持ち上がり、技術本部でその要目が検討されているという話だった。


 タブレットで調べてみると、装甲厚6ミリという薄さで、武装は13ミリ機関砲と6.5ミリ機銃だという。

 この当時、陸軍では12ミリ以上のモノを砲と呼んでいたため、13.2ミリのモノは機関銃ではなく、機関砲になった。

 そして、13ミリは車体装備で、砲塔には6.5ミリしか装備しないというのである。それが流石にどうかと思った。

 そこで、返電には

 「13ミリは威力過少の恐れあり、願わくば37ミリ狙撃砲の装備が望ましく思う。砲塔には13ミリ、6.5ミリを連双にし、目標に使い分けるのが望ましい。砲塔過大となるなら、6.5ミリのみで致し方なし。装甲も重量の許す範囲での増厚を」

 という内容で送った。バネがどうかわからないのでシーソー式は提案していない。

 エンジンが小さいので、あまり重量増も望めないらしいが、最低限、機関銃に耐える様に10ミリ以上にしてほしかった。



 久々に古巣へ戻ってどうなったか尋ねてみた。


「あ、TBですか?欧州で最新の技術に触れる原さんの提案と言ったらすんなり通りましたよ。主砲はイ号に臨時採用されている狙撃砲砲架を代用して13ミリの替わりに装備できるようです。装甲に関しても、どうやら海軍系の繋がりで、石川島さんが増厚に対応してくれています。流石に12ミリ貼るのは正面だけですが、重量が4トン近くになりまして、足回りをどうしようかという段階です」


 さすがに砲塔に13ミリと6.5ミリという訳にはいかなかったらしい。ついでに重量オーバーか・・・

 今更大規模に弄れないだろうが、いや、やるしかないだろう。

そう思って例のバネメーカーに問い合わせたら、巻きバネつまりコイルスプリングは満足するものが出来ているらしい。トーションバーはまだまだだね。


 ならばと、シーソー式を勢い採用することにした。それで多少は軽減できるかと思ったが、甘かった。装甲倍増はどうにもならんし、37ミリ砲というのも重量増だった。


 ただ、攻撃力が増すことについて騎兵科は了承していたので、その分の重量増は目をつぶってくれるらしい。問題は重量増加で38kmに速度低下した事だが、何とか了承してもらった。

 史実では九四式37粍戦車砲となるところが、九二式車載騎兵砲として採用されるという、ちょっと何ともな話になってしまった。が、結果オーライという事で。

 しかし、あれだな、まるでイタリア戦車のM11/39みたいになってしまった。


 原さんでなければいらぬ横やりと言われかねない介入が一息ついた頃、もう一つの話が舞い込んできた。


「原君、君の報告にもあるが、本格的にヂーゼルエンジンを開発したいのだが、君の意見はどうだね?」


 上司がそう聞いてきた。


「私もディーゼル開発に賛成です。ガソリンエンジンに比べて熱効率の関係で燃料消費も少なく、航続距離の増大や補給への負担軽減にもなります。そして、被弾や整備性を考えれば空冷が望ましいのではないかと思われます」


「なるほど、英国で直に見てきた君の意見だ、その様にしよう。戦車開発同様、三菱が中心になってヂーゼルの開発を行うことになるから君も協力してくれ」


 上司にそう言われて、二つ返事で了解した。


 21世紀現在、戦車のエンジンと言えばディーゼルというのは一部の例外を除いて常識となっている。

 しかし、昔から常識だったわけではない。特に、日本が世界に先駆ける形でディーゼルエンジンを採用したのには訳がある。


 当時の日本では、ガソリンエンジンが何かと手に余るものだった。

爆炎が吸気側に逆流するバックファイア現象もよく起こり、当時、キャブレター式だったエンジンはよく火災を起こしていた。

 エンジン技術、燃料の品質という日本の足らなさ加減が欧米以上にガソリンエンジンの扱いを困難にしていた。


 後に、ディーゼル化の効用として火炎瓶攻撃や被弾時の火災抑制という利点が挙げられているが、よく考えてもらいたい。ガソリンと軽油、どちらが消火しにくい?


 実は、燃料というのは比重が重くなればなるだけ、熱量が大きくなる。原油が火災を起こしてなかなか消えないのもこれが理由だったりする。つまり、軽油の方が火も点きにくいが、燃え出すと消しにくいという事になる。


 バックファイアや漏洩が原因でエンジンが燃えるような国だから、バックファイアが起きず、漏洩しても燃えにくい軽油にするのは非常に大きな利点だった。

 しかし、本来の目的である「大きな出力」という点で見ると、ディーゼルエンジンは日本に限らず、世界的にガソリンエンジンより低出力で推移している。


 ドイツのティーガーやパンターのエンジンが700馬力のガソリンエンジンだった時、排気量ではより大きなエンジンを積んだソ連のKV1やT34のディーゼルは500~600馬力でしかなかった。


 戦後もこの状態は変わらない。M48パットンに搭載されたガソリンエンジンは810馬力に達するが、M60が搭載したディーゼルエンジンは750馬力にダウンしている。

 ドイツのレオパルト1は800馬力超えのディーゼルエンジンを搭載しているが、M48の29.4Lという排気量に対し45Lにも達する巨大なエンジンだった。


 日本では61式戦車が570馬力で当時の技術上の限界点に近く、戦車を大型化させないように、排気量を抑えようと2ストロークエンジンを74式戦車に採用したほどだった。仮に4ストロークで720馬力を目指すなら、エンジンが大型化することで車体も大型化してしまい、レオパルト1のように40tを越えたのではなかろうか?


 日本が1000馬力級の4ストロークエンジンを開発したのは10式戦車での話で、74式や90式同様の21L程度という小排気量で2ストローク同等の出力を出せる4ストロークエンジンを開発するには1990年代にならなければ自信が持てなかったという事でもある。

 より早く開発できる自信があったなら、燃費の悪い2ストロークなどさっさと捨てて4ストロークエンジンを90式戦車に採用していたことだろう。


 まあ、ドイツも小型化したエンジンで1000馬力超えとなるモノを開発したのは90年代ごろになってからだったようだが。


 この様に、重量物を高速で走らせる大出力を得るという点では、ディーゼルよりガソリンエンジンが優れており、第二次大戦中、ドイツが燃料に苦しみながらも戦車にガソリンエンジンを採用し続けた理由はここにある。

 ドイツにディーゼルエンジン技術が無いなんて、ンな訳ないんだからさ。500馬力や600馬力では、パンターやティーガーを走らせるには非力だったから、ディーゼルにしなかったのではなかろうか。


 


九二式重装甲車の火力が上がってしまった件


これでより高い評価を得るんだろうなぁ~

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