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外伝 1

 戦車ゲームの日本ツリーは味気なさすぎる。


 ひ弱な戦車とゲームのために割増性能にした戦車が並ぶ光景は悲哀そのものに思えてならない。


 それが戦後となると更に悲惨だ。61式、74式、90式と並ぶわけだが、日本ツリーには偵察車両が無い。

 他国ツリーは軽戦車の系譜が戦後も続いており、試作、実用問わずいくつか存在し、それらがゲームでは大活躍してくれる。



「ほう、戦車か。なるほどのぉ」


 いきなり画面に変な爺様が現れた。


 こんなのあったか?


「ゲームにはないの。お主がゲームに不満を持って居るようだから現れたのだが」


 などと、意味不明な事を供述する爺様。


「反応はそんなものだろうのぅ」


 なぜ会話が成立するのか、いま、不思議に持った。遅すぎだろうか?


「軽戦車か。それも戦後?ちと難しいの」


 そりゃあそうだろう。日本にそんな余裕は無かったろうし、主力戦車ほどの主砲威力は無いものが多い。

 西側でいくつか存在してはいるものの、76ミリ砲であったり低圧砲の類がほとんどで、真っ当な性能の車両となると冷戦後を待たないといけない。


 さすがにそれではゲーム上使い勝手が悪い。90式やM1の這いまわる戦場に出てくるそれらは本当にただ隠れて逃げ回るだけの存在になり果てているのだから。

 いくら暗視装置の能力が考慮されなくとも、発見されて撃たれたら終了するようなひ弱な車両なんて、どんなMが扱うんだ?


 もう一世代前に戦車主砲を積んだ軽戦車が欲しい。


「それは中々欲張りな話だ。お、出来んことも無いな」


 爺様は何か思い当たる事があるらしい。なんだ、そんな夢の芸当があるならそうして欲しい。アレか?75式自走榴弾砲の車体に105ミリでも載せるか?


「そうだの。じゃが、それでは面白くなかろう?お前さんの考える面白いものを作れる都合が良いモノがあるところへ送ってやろう」


 やはりオカシイ爺様だ。送るって、どこのラノベだよ。駄女神とかポンコツヒロインとか要らんぞ?頼れるオカンや男前な姉御なら良いかもしれんな。


「なるほど、そう言う趣味か」


 趣味はどうでも良いじゃないか。


 そんな文句を言おうとしたら目の前の景色が変わった。


「61式は確かに文句のつけようが無い戦車であるのは確かです。T55とも十分に戦えるでしょう。ただ、そのための防御力を持たせた結果、重量は40tを越え、42tに達している事が大きな問題です」


 61式戦車が42t?これは耳を疑う話だ。35tではなかったか?


 そう思って手元の資料へと視線を落として驚いた。そこにあるのはどう見ても俺の知る61式戦車などではない。74式戦車と言って差し支えが無い戦車の図面があった。しかも、主砲は90ミリ滑腔砲だと?知らんな、そんな戦車。


 そう思っていると、頭に流れ込んでくる情報。


 それは俺の知る日本とはまるで違う歴史を歩んだ日本の姿だった。


 なんやかんやで樺太や千島を保持したままの日本。


 樺太にあった陸軍部隊と日本海にあった艦隊がそのまま戦後も保持された日本。


 この世界では戦車の歴史も大きく様変わりして、陸軍内では砲兵と戦車の縄張り争いの結果、戦車砲にライフル砲が使用できない不文律が出来てしまっているらしい。戦後に至るも西側で標準化された105ミリ砲が使えないという滑稽な状態らしい。


 ただ、開発された60口径90ミリ滑腔砲は105ミリ砲とそん色ない威力を持っており、この時点では全く不満が無いらしい。戦時中に三式50口径90ミリ砲、五式56口径90ミリ砲と進化を遂げて、戦後、樺太の戦いの戦訓からさらなる強化を行って開発されたのが61式戦車との事らしい。


 五式改の段階で74式戦車同等の攻防性能はあったらしく、それを強化するために長砲身化、装甲増厚を行った結果、37tから5t重量が増したとの事。

 装甲厚を知っている戦車で言えばT55からT62への強化に近いだろう。


 防御力もあって、攻撃力もそれなりにある。エンジン出力が低いが、樺太での防御戦闘が主体と考えれば650馬力エンジンで時速47kmでも悪くは無いだろう。


「61式戦車は樺太での運用だけを考えれば問題はありませんが、本州や千島への展開を考えた場合、重量が問題です。未だ道路網が未発達な中で、鉄道輸送が出来ないのは痛恨事です。幅3メートル、25t程度の本州での鉄道輸送が容易に行え、千島への展開も容易な軽量戦車の開発が必要ではないかと」


 先ほどから制服を着た人がその様に懇々と主張している。


「昨今、西ドイツでは偵察戦車の開発が中止されましたが、我が国では事情が違います。なにより、西ドイツが開発していた偵察戦車の主砲は40口径90ミリライフル砲。我が国が使うのは50口径以上の90ミリ滑腔砲です。ソ連軍のT54を撃破可能な事は樺太で五式戦車が証明しています。よって、三式中戦車程度の軽量戦車を現在の技術によって再度開発を行えば、十分ソ連軍に対抗可能であることは明白です」


 確かに、資料にある通りならばそうだろう。


 だが、問題が無いわけではない。


 五式戦車は最大100ミリ程度の装甲を持つ優秀な戦車であったが、T54の積む100ミリ砲に容易く撃破されている。三式中戦車となると確かに車重は25t程度だが、装甲は最大で75ミリでしかない。


 当然、その様な指摘を受けている。


「もちろん、主力を担うのは61式です。軽量戦車は樺太正面では偵察車両として、本州や千島では緊急展開を念頭にしております」


 との事だった。 



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