表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/35

バレた?

 挨拶もせずにあたりに厳しい目を向けていた小野田さんがやおら話し出した。


「原さん、日本は夏に負けます」


 一体どうして知っているのだろう?やはり、彼が転生者なのだろうか?


「そうですね。驚かれるのも無理はありません。いや、負けるのが何時かという話でしょうか」


 そう言って俺の顔を窺った。


「確かに、フィリピンに上陸され、海軍はほぼ全滅だそうだからね」


 俺も様子を見る様に彼を窺った。


「海軍は全滅はしていませんよ。舞鶴に二隻、戦艦が居ます。そこにはガスタービンという新型機関を搭載した駆逐艦も。現在、舞鶴には兄が居りまして、その四隻を中心とした艦艇群は兄の指揮下にあります」


 ほう、お兄さんも関与しているという事か。一体何をしようというのだろうか?


「原さんは弟には直接面識はありませんでしたね。弟は艦政本部。陸軍でいえば原さんのいる技本にあたるようなところでしょうか。そこに居ります。弟が働き始めたころ、藤本という技官が居りましてね。彼がガスタービンやレーダー、品質管理などの提唱をして居たそうなんですよ」


 なるほど。で、俺も疑っているという訳だろうか?


「それはすごい人がいたもんだ。では、私のやったことは二番煎じだったのか。少し悔しいね」


 少々韜晦してみることにした。


「いえ、そうでもありません。原さんの働き掛けが無ければ、弟が駆けずり回っただけでは我が国は動いていませんよ。今、生産が始まっているタービン戦闘機も藤本中将が設計したそうでしてね。解析に1年、製作に3年もかかるよなものを一体どうやって一人で設計したんでしょう。不思議に思いませんか?」


 それは不思議だ。だが、俺には分かる、きっと、彼は転生者だったんだ。俺と同じようにタブレットやパソコンを扱えたのだろう。CADなんかを扱えたとしたら、一人でそうした事も可能かもしれない。


「それは不思議な話だ」


「原さんも不思議な人ですね。開発中止の危機にあった戦闘機を一躍我が国最高の機体に変えたのは貴方の一言だったと聞きましたが?」


 抜かりなく聞いてくる。が、あれは偶然でしかない。


「あれはたまたまだよ。小野田さんが発見したという油田について少々嫌味を言われてね、カチンと来て、軽油でも動くタービン機関にプロペラつけたらどうかと言い返したまでの事で、ただの思い付きだよ。嫌味と言った方が近いかもしれない」


 そう、あれはただの嫌味だった。それ以上でも以下でもない。その一言でターボプロップに思い至った彼の功績だ。


「そうでしたか、もしかしたら藤本技官のように超常的な力があるのかと思いましたよ」


 そう言って何やら納得しているらしい。


「ところで、その藤本という人物は?」


「彼は3年前に亡くなりました。惜しい方でしたね。彼が生きていたなら、海軍はもっと変われたかもしれないですから」


 まあ、そうだろう。


「しかし、陸軍にはあなたが居る。では、試験の成功をお祈りしています」


 何だろう。そう言って帰って行った。


 それから、道央で一番寒いと言われるところに二月まで滞在して試験を行った。


 特に問題なく成功裏に試験を終えることが出来た。


 東京に帰ると温かかった。そして、戦局はさらにひっ迫している。とうとう硫黄島への攻撃が始まった。


そんな中で開かれた緊急会議でチハの量産へ了承を求めることになった。


「こんな時期に一体何を言っているんだ、君は!」


 そう叱責されたが引き下がる訳にはいかなかった。すでに欧州戦線にはパーシングも投入されているのではないだろうか。

 ドイツ戦車ほどではないにしても、フィリピンの戦いでは一式や三式が米戦車隊を壊滅寸前まで追い込むことにも成功している。次に狙われる沖縄ではM4以上の戦車が投入されるのは必至だ。


 幸い、沖縄には一式と三式が配備されている。その戦力は強力で、シャーマンなど相手ではない。航空攻撃さえ受けなければ、一方的展開すらありうることはフィリピンでわかっている。そうなると、イージーエイトの投入は間違いない。上陸作戦を遅らせてでも持ってくるだろう。

 地積の狭い硫黄島には残念ながら大型戦車は持ち込まれていない、九七式で頑張ってもらうしかないが、タングステン弾の装備を行っている部隊だ。シャーマンならそれなりに撃破してくれるだろう。


 そして、不思議な話だが、国内備蓄の関係で、鉄鋼よりも使用用途が限定されるタングステンが徹甲弾として大量に配分されている。ライフル砲用の徹甲弾はタングステン材のみだし、滑腔砲用では、心材としてタングステン材を使い、マルエーシング鋼で保持して、風防はアルミという贅沢な砲弾だった。


 何とかチハの生産ラインを開ける許可を受け、五式中戦車の生産が始められた。


 ただ、五式の生産は僅か三か月、150両でストップしてしまう。空襲の影響もあるが、更なる改良型へと移行するためだ。

 五式中戦車二型。


「エンジンは寒冷地試験を終えているから心配ない。長砲身になる以外五式との差異はほとんどないんだ。問題ない」


 空襲の被害も何故だか恐れていたほどではない。三式戦と例のジェット機がずいぶん奮戦しているらしい。


 昭和二十(1945)年七月二十八日、俺は誰の手回しか、順次北海道に送られた五式戦車106両、五式戦車改54両の後を追う様に北海道行きが命じられることとなった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ