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見え始めた敗戦

 昭和十九(1944)年、戦時体制への完全移行がようやく完了した。

 KAIZENとJIS規格によって戦前から陸海軍の銃弾が統一されたり、航空機のエンジン部品が統一されたりしている。機体固有の部品はともかく、共通化した部分では何の違いも無いものが使用されていた。

 一番大きなものは燃料かもしれない。

 

 驚くなかれ、陸海軍では使用燃料の規格すらバラバラだった。それをJISによってすべて規格化し、燃料も出来るだけ統一することとなった。

 ただ、燃料については初めから統一できたわけではない。やはり運用環境や輸送環境、保管状況の違いから、JIS規格はあるものの、ガソリンと一言で言っても何種類もの規格が存在している。海軍がAを使えば陸軍はBだった。戦闘機はAだが、陸攻はCで、重爆はDといった具合だ。

 まず、小型機の燃料統一が行われ、それが終わったのは昭和十八(1943)年、そう、昨年ようやく規格統一を成しえた。

 なんとも悠長な話だと思う。そして、雑多に陸海軍が開発、生産してきた航空機の整理、統廃合が始まったのが昨年。

 件の技術者が狂喜していたのも理由がある。時速570㎞台ならば、キ61戦闘機はそのまま廃に含まれていたそうだ。そこからの大逆転劇を遂げたわけだ。いまや陸上運用の戦闘機では第一優先として生産されている。タービンエンジン工場も何を思ったのか新潟に作ったとか。ちょっと考えている事が分からない。


 それ以外には、海軍が試作していた新型艦戦が計画中止となっている。ゼロ戦だけでどうすんだと思ったが、キ61のエンジンを使う方向で新たな機体を作るんだとか、三菱の人から小耳にはさんだ。あと、ジェット戦闘機がすでに飛行してるとも聞いた。そういえば、今年には生産も開始されるという。なんでも、エイに背びれと機関銃とエンジンを積んだようなヘンテコリンな機体という。全く想像できない。なんだ?それ。


 鞍山で見つかった石油だが、かなりの軽質油で、ちょっとした精製でディーゼルに使えて凍結防止剤を混ぜることでジェットエンジンにも使えるという。なんとも便利なものを掘り当てたものだよ、小野田さん。アンタが転生者なのかい?


 その石油が国内に持ち込まれ、今では様々に利用されている。そこで輸送に利用されている多数のタンカーは早期から溶接の導入を行い、ブロック建造まで導入した海軍のおかげだ。

 そういえば、もう使う場所すらないだろうに戦艦が二隻、そろって進水したとかいうニュースが流れてたが、あれから続報を聞かないな。何だろうか一体。



 そんなころだった。


「原さん、少し頼みたいのですが、こちらに戦車を融通してはもらえませんか?」


 北海道に居る小野田さんからの連絡だった。ただ、俺にそんな権限はない。


「それは理解しています。量産している三式でなくて構いません。試作車でも良いんです」


 何だか要領を得ないが、寒地試験で満州に持って行くにも危なくなっている。現在開発中のチハの試験は北海道で行う事はほぼ確定だった。


「それでしたら、その試作車だけでも構いません、出来る限り早く、出来るだけ沢山、お願いします」


 なぜそんな事を言うのだろうと不思議で仕方なかった。夏にはサイパンやテニアンが落ちたというニュースが流れ、とうとう日本が負けるんだなという事が誰にも分かるようになってきている。三式中戦車の生産はフル稼働で、砲の納入が出来た分から次々工場を出ていく状態が続いている。


 三式の生産計画は昭和十九(1944)年だけで700両を超える。生産移行してからではすでに1200両を超えただろうか。


 一部はフィリピンにも送られている。


 そんな状況だから、誰もチハどころではないという空気なのは理解しているが、三式ではイージーエイトが現れたら互角以下になってしまいかねない。更に上の戦車が必要だった。


 そして十月、とうとう海軍はフィリピン沖の決戦でその戦力の大半を失ったらしい。もう、フィリピンへの輸送はままならなくなっている。フィリピンの戦車師団は一式が大半を占め、ごく一部に九七式が、三式もわずかながら配備されている。


 ここで三式の性能を掴まれたら、沖縄ではさあ、どうなるだろう。


 そして十二月、チハの試験車両を伴って北海道へと渡った。



 わたるとすぐさま小野田さんがやってきた。


「やあ、おひさしぶり、試験に来たよ」


 俺がそう話しかけるが返事がない。周りを気にしているらしい。




 

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