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三式中戦車  チロ

 昭和十七(1942)年、来年に迫った75ミリライフル砲の使用期限に合わせて滑腔砲搭載戦車の試作を始めることとなった。

 基本車体を一式として、装甲厚の強化と砲塔を滑腔砲に合わせて改良する事に主眼が置かれている。


 戦争の状況だが、レーダーあるのにミッドウェーで負けるという信じられない事態となっている。海軍はどんだけアホなんだ?

 そうかと思うと、マレーやフィリピン上陸にはドック型輸送艦や戦車揚陸艦も使用され、電撃戦が展開されたらしい。


 輸送艦や揚陸艦の実物も見て見たかったが、それどころではない。三式の設計でうちは忙しい。


 三式は一式の車体をほぼそのままに、装甲厚を正面75ミリ、側面45ミリに強化したものを使用することとなった。砲塔は正面、側面75ミリと十二分に防御力がある。おかげで重量は26トンになったが、トーションバーも進化していたので心配はなかった。


 搭載すべき滑腔砲も、当初は75ミリ試作砲を装備して試験を行った。そのため、90ミリ砲についても、75ミリ砲と同じ長さであることが必要となり、54口径75ミリ砲に合わせる形で45口径90ミリ砲を装備することになってしまう。当初、初速を得るために50口径以上を考えていたことからすると、徹甲弾の有効射程が落ちてしまう事となった。

 そもそも。滑腔砲の利点というのは、その高初速によって、被弾経始すらほとんど無視して、ユゴニュ?・・え~っと、何だっけ?

 オッホン。ユゴニオ弾性限界を超える圧力を装甲表面に発生させて、固体なのに液体のようにふるまう状態を出現させ、穴を穿って突き進むことで貫通力を得る。なるほど。

 

 ただ、タングステンで850m/秒、鉄ならば1100m/秒の速度が無いと、通常の徹甲弾に成り下がるらしい。そのため、有効射程は非常に限られてしまう。

 それでも、試製三式90ミリ戦車砲は1000mで鉄製166ミリ、タングステン内包製で198ミリの貫通力を持たせることに成功している。タングステン内包製ならば1400mでも有効初速は維持しているので、まあ、良しとするしかない。


 一式中戦車の時点でそれなりに低姿勢で作っているのだが、三式では砲の可動範囲を犠牲にしない程度にさらに低く抑えることにした。

 その結果高さは、一式で2.7mあったものが2.55mへと若干低くなっている。ただ、幅に関しては鉄道輸送限界とされる2.95mを超え、3mへと拡大している。重量分履帯を幅広にした結果だ。


 エンジンは相変わらず空冷V型12気筒ディーゼル320馬力を搭載することになるので、時速40kmが限界だった。


 一式中戦車だが砲身の製造数が少なく、最大でも700両程度しか生産できないという事態となっているので、来年の期限を待たずに三式中戦車の製造が開始されることになるかもしれない。


 本当にはた迷惑な話だ。確かに能力では劣るとはいえ、自分たちが数を数をと言いながら、その数すら制約することに賛成してしまうんだからあきれかえってモノが言えない。


 そりゃあ、事こうなっては砲身製造施設の能力限界から、砲の奪い合いになるのは火を見るよりも明らかだが、量産性の高い76ミリ高射砲を使う分には困りはしないように思うのだが、それでも彼らは納得しなかった。おかげで滑腔砲の開発へと至り、専用施設を建設するという資源小国にあるまじき事態が発生している。

 そりゃあ、これで戦車は戦車だけの生産に専念できるから良いのだが、果たして、それでよかったのだろうか?


 さて、ミッドウェーで負けた後の話だが、海軍の動きはどうにも史実ルートそのままだった。これ、本当に転生者がいるのかと思うほど怪しい。しかし、レーダーの実用化という画期的な進捗があるし、溶接の早期採用を見てもそれは頷ける。

 ただ、作戦面ではあまり大きな進展があるようには見えない。そういえば、小野田さんはどこで何をしているのだろう?


 三式中戦車が意外とすんなり完成したわけだが、それはあくまで妥協の産物だった。


 まず、一式中戦車の製造ラインを最大限生かす事を前提にした設計、エンジンも同型、ないし改良型として生産移行時の混乱を減らすこととした。

 違いがあるのは4年前から決まっている主砲だけ。いわば、三式中戦車とは、一式中戦車の改良型でしかない。一式中戦車改としても良いのだろうが、砲兵との約束で、「新しく作りました」というタテマエが必要になるのだとか。めんどくさい話だ。


 ただ、個人的にも技術本部の面々も、満足はしていない。三菱側も水冷400馬力と言っていた。


 そして現在、サイズを多少大型化した水冷ディーゼルの開発に乗り出している。過給なしで450馬力を目指すのだそうだ。

 こちらとしてもそのエンジンを積む戦車の開発に乗り出している。


「チハたんがまさかこんなところで誕生するなんて!」


 俺が無邪気にそんな独り言をいうと、皆が注目した。


「チハtankですか?」


 誰かがそんな事を言った。「たん」の説明が難しいのでそれを肯定した。


「そう、チハtankだよ。世界最強の戦車を目指そうじゃないか!」


 そう、もう目標をぶち上げることとなった。

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