はじめての中
昭和十三年十月、とうとう新戦車の開発に許可が下りた。
戦車の概要は九七式同様にトーションバーとショックアブソーバーと思っていたのだが、メーカー側から25トン級までならバネなしダンパーのみで十分なトーションバーが出来たとの知らせが入ったので、それを採用して足回りが多少軽量化できることになった。
当然ながら全溶接構造で全周傾斜装甲なのは当然。エンジンは空冷ディーゼル12気筒、ただ、今のところ250馬力しか見込めないという。
「過給器付ければ?」
と、三菱に言ったので、その方向で開発に入るらしい。
主砲は現在新規開発中の陸海共通高射砲計画によって余る旧式の高射砲を使うことになった。ただ、使えるのは砲身だけ。砲架は専用で開発する。
こうして設計を開始したのだが、どう見てもT34に見えて仕方がなかった。
というのも、傾斜装甲としたことで装甲厚を正面50ミリ、側面35ミリ、後部20ミリに抑えることが出来た結果、そのままそれをゆうこうに配置したらそうなった。
砲塔は明らかにT34とは異なる溶接構造で史実の三式中戦車に近い砲塔になっている。
T34との大きな相違点は大径車輪5個ではなく、それより小さな車輪6個で足回りが構成されている事だろうか。
そして、これまで肩撃ち式だった砲はハンドル可動式となり、砲弾が重くなるので、専門の装填手が配置されることとなった。
このため、車長は装填から解放されて車両の指揮に専念は出来ない。砲塔後部に搭載される無線機の操作を車長が行うようになるからだ。まあ、無線通信も指揮のうちだから別にいっか。
他国では無線手を乗せ、車体機関銃が装備されているが、日本戦車にはすでにそのような装備はない。その隙間を燃料タンクや弾薬庫として利用している。
こうして設計した戦車の重量は計算上20トンになった。あとは、開発にどれだけ時間がかかるかってところだな。
そもそも、20トンの戦車が設計できた背景には、RORO船の実用化が大きい。更には、すでにドック型輸送艦や戦車揚陸艦の開発も行われているという。
それらの開発にあたって、俺が要求したのは、20トン戦車2台、ないしはさらに大きな重戦車を1台揚陸できる性能を持った舟艇の開発と、車幅3m超えでも通行可能な通路を持った輸送艦の開発だった。
なぜそこまで大きなという声もあったのだが、諸外国の戦車がすでに大型化している現状からそれだけの余裕が必要だと説明している。
正直、国内での列車輸送は諦めた。RORO船で輸送できるようにすることを求めている。
つまり、狭軌はクソ。
設計がひと段落した昭和十四(1939)年五月、ノモンハン事件が起きた。
史実通りなら、三月から前線勤務となっているはずなのだが、新型戦車の開発を優先するためとして移動は取り消されている。
事件の報を聞きながら試作が進み、十月には車体が完成した。
ただ、未だエンジンは250馬力しかないのが問題だ。
十二月には砲塔も砲架も一通りの完成を見て、試作車が組みあがった。試験結果は概ね良好、唯一、エンジン出力が低すぎる以外を除いては。
エンジンについて、過給器装着という事で少々開発が遅れている。
エンジン自体は例の噴射ポンプを再現して、そこから発展させたモノだから問題はない。ただ、求めた360馬力は酷だと言われた。
「出して出せない訳ではないですが、熱対策上かなり無理が出てきますよ、現状では320馬力が妥当なところでしょう」
そんな風に言われてしまった。
「耐久性として、熱対策を無視すればどこまで行けますか?」
その問いに対して
「過給圧の限界を考えて360ですね。それ以上は排気量を上げないと無理ですし、仮に、今の外寸で排気量を上げて360馬力を狙うとしても、熱問題が立ちはだかります。解決するには水冷かしかありません。水冷であれば、400までは作って見せます」
そんな事を言われてしまった。空冷というのは熱対策上、どうしても水冷ほど安定していない。結局、大出力を目指すなら、水冷にするしかない。確か、90式のエンジンも、まずは74式の水冷化試作から始まっていたしな。歴史は繰り返すのか。
違った、歴史を50年はやめてしまったのか?
一応聞いてみたら、冷却剤の問題は困難はあったがほぼ解決されているらしい。後は安定して生産できる設備の完成を待つだけらしい。
するってぇと、将来的には水冷化も考えないといかんのだろうか?
ポルシェの水冷化は排ガス対策が理由だったけど、それ以降のハイパワー化がえげつないよね。991型って水温100℃超えてるんだってさ。燃焼効率を最優先にするために、理想の温度を実現するとかなんとか。
ただ、スポーツモードでは熱容量を稼ぐために95℃だっけか、まで下げるんだそうな。
知ってる人にはどうでも良い話だけど、伊400型には温水装置が装備されていて、晴嵐のエンジンに温水を供給することで、暖機なしの発艦を可能にしていたそうな。




