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自動小銃と機関銃

 欧州留学の間、様々な工場を見学することが出来た。

 銃器メーカーではすでに自動小銃の開発や軽機関銃の開発が行われていた。軽機関銃については既に十一年式というものが採用されており、それを改良することで何とかなるのではないかとも思ったが、車載機関銃まで箱型弾倉というのには正直驚いた。ベルト給弾だとばかり思っていたのだ。


 各国の銃器開発の状況を見ると、どこも大同小異、自動小銃は暗中模索に近い様だった。


 どこの誰だよ、自動小銃全盛の時代に日本だけがボルトアクションだったとかウソ抜かしたのは。


 もちろん、ここには様々な誤解も混じっているのも確かだ。


 トンプソン、シュマイザー、ステンガン。これらは確かに第二次大戦で使われた自動銃ではある。しかし、使用弾薬は拳銃弾であり、その射程は50~100mでしかなく、市街戦や近接戦闘に使用は限られていた。


 これらをもって、外国は自動小銃だったというのはいささか語弊がある。


 なにせ、小銃の射程は400~600mに達するのだから、これら拳銃弾を使用した武器では、相手がボルトアクション小銃であっても、接近する前に少なからず犠牲を出してしまう。

 相手が小銃である以上、やはり、同等の距離で撃ちあえる性能が必要になるのだが、その様なシロモノを大戦中に大量配備した国は米国しかない。


 確かに、ドイツやソ連は半自動小銃を作り、ソ連はかなりの数を前線に送り出していた、戦争後半、ドイツは戦後のスタンダードともいえるアサルトライフルの原型を戦場に送り出したが、数は満足できるほどではなく、戦局を挽回するような戦力とはなりえなかった。


 日本も戦前、半自動小銃の開発は行っていた。


 さて、少し話は変わるが、そもそもの話、命中精度というものは何で決まるか?


 ここがまず基礎として押さえておく必要がある。


 射撃に際して、銃口から銃弾が飛び出す前にガスが抜ける、銃身や機関部が動き出す。そういう銃ではおのずから命中精度が落ちてしまう。

 簡単な話、これらの動きがあれば、銃弾に余分な偏向やエネルギーの減少が起きてしまうからである。


 ボルトアクションライフルというのは、薬室に銃弾を装填し、発射後に手動で再装填しない限り、機関部や銃身が動くことは無く、ガスが漏れることも原理的にあり得ない構造となっている。


 それに対して、自動小銃というのは、銃弾を押しているガスや発射の圧力を利用して、何かしらを作動させることで、自動的に排莢、次弾装填という動作を行っている。

 そのため、銃口から銃弾が飛び出す前に、機関部が動いたり、ガスが銃弾を押す以外の動作に流用されることとなる。

 こうした動作が起きることで、ボルトアクションに対して、銃弾は余計な影響を受けて目標からそれてしまうという動きをしてしまう。


 21世紀現在でも、狙撃銃と言えばボルトアクションが多く使われ、スナイパーという職種が自動小銃ではなくボルトアクション銃を携行しているのはこのためである。


 日本軍というのはボルトアクション小銃を基準にした命中精度を設けて、自動小銃の試験を行なっていたわけだから、そりゃあ、どんなものを持ち出しても「命中精度が悪く、採用には適さない」となるのは当然の成り行きだったと言えよう。

 後の狙撃用自動銃みたいな精巧な機構を備えることなど望めないこの時代の自動銃では、どうやっても日本軍での採用は難しい。


 さらに、アサルトライフルやサブマシンガンという銃器には連射機能が備えられているのだが、よほど訓練した戦闘員でない限り、連射で敵を倒すのは難しい。弾倉にはたかが20発や30発しか弾が無いのだが、それがどのくらいの時間で無くなると思う?

 10秒と掛からないんだよ?振動する銃を制御し、目標に狙いをつける間に全弾撃ち尽くすという事態は当たり前のように生じることになる。

 これを防ぐために、バーストモードというのを備えた銃が存在している。自衛隊の89式小銃にも3バーストが存在し、引き金を引いて3発は連続で発射されるが、そこで射撃を停止するようになっている。

 こうして弾の浪費を抑えることで、火力を維持するが、無駄な消費を抑えるという策が取られている。


 そもそも、命中率というのは火縄銃が出来てこの方、射程が伸びるごとに悪化を続け、連射が可能になったアサルトライフルに至っては、数千発や数万発に一発しか敵に命中していないなどという研究発表もあるほどだ。それだけ弾を浪費している。


 当時、日本がどれだけ貧弱な工業力と輸送力しか持たなかったかを考えると、自動小銃の採用は自らの首を絞める行為となっていたかもしれない。

 徴兵でまともに照準も付けられない兵士に自動小銃を持たせても「戦っているつもり」で明後日の方に射撃してしまうだけで、まるで役に立たない場合もありうる。



 まあ、そんな考察はさておいて、十一年式軽機関銃を開発した南部さんのところに欧州土産という名目で、ドイツの名機関銃MG34とソ連の隠れた名自動小銃SKSの資料を渡すことにした。


「これが現在、欧州で開発されている軽機関銃と自動小銃です」


 そう言って渡すとしげしげと資料を見た後


「この小銃、薬莢がずいぶん短いですね」


 と、すぐに気が付いたようだった。


「そうなんです。大威力のライフル実包では銃が暴れるので、実用射程に限定した能力のみを与えた短小弾というものが考案されています。弾頭は機関銃や小銃と同じで薬莢だけ短くした代物です」


 南部さんはしばし考え込んでいた。


「しかし、これなら三八実包ならばそのままでも作れやしませんかね」


「はい、たぶんできると思いますよ」


 こうして渡した資料を基に、南部さんは手始めとして陸軍の自動小銃研究の契約を結び、SKSベースの半自動小銃を製作、試験を行うこととなった。


 MG34の方はすぐにはどうにもならなかったが、後に国産初のベルト給弾機関銃として車載、歩兵用に採用されることになる。


 が、そのきっかけは、海軍が推進して行われた規格統一、いわゆるJIS規格運動だった。


「ジスと言って、工業規格や鉄板の規格を統一するのは良い、なぜ、銃弾までそこに含まれるんだ?」


 陸軍はそのように反発したのだが、


「銃弾も工業規格によって定められた工作機械によって作る出されるものです。機械の規格を統一するには、銃弾も統一するのは自然ではありませんかな?」


 そう言われて反論に窮したらしい。


 結局、すでに普及している野砲の規格統一までは実施できなかったようだが、高射砲は陸海軍で共同開発を行うという事になり、これが後の戦車開発にまで影響することとなった。

 銃弾の統一って、やはり、転生者の仕業としか思えない。小野田兄弟が暗躍している話は耳に入っているから、彼らがそうなのかもしれない。疑念は深まった。


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